INITIALIZE / Initial'L | 安眠妨害水族館

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INITIALIZE/Initial' L

 

1. CAN YOU FEEL IT ?

2. PLEASURE

3. CALLING

4. ALL I WANTED

5. ALONE

6. NA.NA.NA.

7. KINGS AND QUEENS

8. UP DOWN SWING

9. WAKE UP

10. STAY

11. I NEVER SAY GOODBYE

12. SUPERSONIC

13. EVERY TIME YOU GO

14. LIGHT YEARS

15. TONIGHT TONIGHT

 

Initial'Lとしては初となるフルアルバム。

先行シングル「Can You Feel It ?」を含む、全15曲を収録しています。

 

アルバムタイトルの意味は、ズバリ"初期化"。

Lycaonとしてのキャリアにはとらわれず、ゼロからのスタートを切るというメッセージが込められているうえ、バンド名にもかかっていて、なかなか気の利いたタイトルと言えるでしょう。

 

音楽性としては、ミニアルバム「FIREFLY」で見せた現代邦ロックシーンへの歩み寄りを、更に強めた印象。

デジタルサウンドも駆使しつつ、ヘヴィーでハードなロックスタイルに仕上げている。

ボリューム満点のフルアルバムにおいて、バラエティ性よりも一貫性を求めるアプローチに徹しており、彼らのやりたい音楽が、より明確化されました。

 

その結果、所謂"V系"っぽさは薄れる形になったのですが、ポイントとしては、それでも従来からのリスナーにも響くということ。

というのも、一口に邦ロックといっても、ピンからキリまであるわけで。

その中で、V系リスナーの琴線に触れやすい曲調、リズム、アレンジを感覚的に掴んでおり、V系を中心に親和性の高いその他のジャンルにも守備範囲を広げていくような聴き方をする人にとっては、刺さりやすい作品になっているのですよね。

ハズレが少なく、高打率で好きな感じの曲が押し寄せるわけだから、そりゃハマるよ、という。

「CAN YOU FEEL IT ?」で"格好いいな"と思った層であれば、その印象のまま最後まで聴き切れるのではないかと。

 

一方で、このまま邦ロックシーンでも通用するかと問われると、レッドオーシャンに飛び込んでいる感は否めず。

言ってしまえば、ここ10年くらいでの飽和したジャンルを今になって深掘りしているため、新鮮味は薄く、プラスαのインパクトをもたらす何かを見つけないと厳しそうというのが本音です。

キャリアにおけるどの段階で、このような音楽に目覚めたのかは想像するしかありませんが、これを表現するために、Lycaonを解散させ、一定期間を置き、Initial'Lとして再始動という段取りを踏まねばいけなかったのだとすると、数年出遅れたという意味でもったいないよな。

 

もっとも、それはそれとして、彼らには、ブレずにやりたいことをやり切って欲しい。

作品単体としては、コストパフォーマンスも込みで、良質な1枚。

まだまだ彼らの個性を上乗せする余地だってあるのだから、伸びしろも感じられるはずです。

 

<過去のInitial' Lに関するレビュー>

FIREFLY