覇道明王 / 陰陽座 | 安眠妨害水族館

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覇道明王/陰陽座

覇道明王(通常盤) 覇道明王(通常盤)
3,200円
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1. 覇王
2. 覇邪の封印
3. 以津真天
4. 桜花忍法帖(覇道MIX)
5. 隷
6. 腐蝕の王
7. 一本蹈鞴
8. 飯綱落とし
9. 鉄鼠の黶
10. 無礼講
 
陰陽座、通算14枚目となるオリジナルアルバム。
シングル「桜花忍法帖」のアルバムミックスを含む、全10曲を収録しています。
 
前作、「迦陵頻伽」は、黒猫さんの美声を活かしたメロディアスな作風により、陰陽座のひとつの到達点へ辿り着いた傑作。
それだけに、次回作というのはどうしたってハードルが高くなってしまうのですが、なるほど、こうきたか。
彼らの根幹であるヘヴィーメタルに絞りを入れて、前作の神々しさに対して、黒一色で勝負してきたという印象です。
 
バラードや組曲的な楽曲を含まず、曲数もフルアルバムとしてはコンパクトに仕上げているので、尺としては従来の陰陽座の作品と比較して短め。
だからといってボリューム感が落ちたということはなく、その分、内容はとても濃厚なのですよ。
結成して19年、熟成されたテクニックがすべて注ぎ込まれたヘヴィーメタルは、ダークな曲調とは裏腹、とても爽快。
あえてドラマ性を排除し、ハードに振り切ったことで、この気持ち良さが生まれているのだろうな、と。
 
やはり象徴的なのは、テーマである「覇王」。
サンプリング音なども巧みに取り入れ、世界観を明確にすると、シャウトの掛け合いで激しさを打ち出す。
ツインギターのリフも耳に残り、サビでは黒猫さんの高らかな歌声も。
この凝縮っぷりは、たまらないですな。
他にも、疾走感のある「覇邪の封印」、モダンなアプローチを取り込んだ「隷」、重さと速さの「一本蹈鞴」、「飯綱落とし」のコンボなど、ブレずに取り組んできた成果は、十分に見て取れるでしょう。
 
ヘヴィーメタルに徹しているということで、瞬火さんが主張する場面は格段に増えているのですが、黒猫さんをメインボーカルに据えているメリットとして、それでもバラエティが広がるということなのですよね。
「桜花忍法帖」や「腐蝕の王」などは、メロディがキャッチーなので、サウンドが禍々しくてもポップに聴こえる。
「鉄鼠の黶」のような表現力がものを言う楽曲では、出番は少ないものの、存在感が際立っています。
結果として、一辺倒という印象は微塵もなく、アルバムとしての流れも完璧。
この構想が「迦陵頻伽」の制作時からあったというから、恐ろしいものだ。
 
なお、「覇道明王」とは陰陽座自身のことで、覇道を突き進んできたからこそ、今の彼らがあるという決意表明とのこと。
ストイックに音楽を追求するスタイルが覇道となってしまうのも、いささか寂しい気がしますが、彼らのようなバンドが長年第一線で活躍できているのは喜ばしいことですね。
 
<過去の陰陽座に関するレビュー>