NINTH / the GazettE | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

NINTH/the GazettE

 

1. 99.999

2. Falling -NINTH MIX-

3. NINTH ODD SMELL

4. GUSH

5. THE MORTAL

6. 虚 蜩

7. その声は脆く

8. BABYLON`S TABOO

9. 裏切る舌

10. TWO OF A KIND

11. ABHOR GOD

12. UNFINISHED

 

the GazettE、3年ぶりとなるオリジナルアルバム。

通算9枚目の作品が「NINTH」とは、随分とストレートにきたものです。

 

前作「DOGMA」にて、ヘヴィーで激しいダーク路線への舵を切った彼らですが、本作は、そこからの上乗せを図った印象。

しかも、上乗せする要素が、初期のメロディアスな作風や、その後のラウドへのシフトを図ったサウンド、「TOXIC」以降のEDMを取り入れたスタイル…と、これまで通ってきた道の総括的な音楽性だったりするわけで。

攻撃性を維持したまま、ある種、現時点におけるthe GazettEの集大成的な作品に仕上がっているのではないでしょうか。

デジタルサウンドが強まった時期における「BEAUTIFUL DEFORMITY」を聴いたときも似たようなことを感じていたのだけれど、極端な実験作を作っておいて、それらから得たものをベースに総括的な作品にまとめあげる、という中長期的な制作ペースが彼らにはありそうですね。

 

特に素晴らしいのは、導入部分。

SEから繋がるのは、先行的に公開されていた「Falling」と、アルバムタイトルを含む「NINTH ODD SMELL」の流れが、実にドラマティックなのですよ。

「Falling」については、SE「99.999」との組み合わせで更に深いところまで辿り着けるようにミックスされており、これ1曲だけでも充実感を得られるように作り込まれている。

逆に、これで一度完結しているイメージすら与えているので、アルバムとして連動させていくのは難しいのでは、という懸念が頭をよぎるぐらいに。

しかしながら、改めてスタートを切るように勢いをもたらす「NINTH ODD SMELL」が続くことで、場面転換を意識させながら、世界観は地続きであることがはっきりと示されているのです。

 

疾走感のある「虚 蜩」、哀愁のあるミディアムナンバー「その声は脆く」と、中盤の歌モノパートも効いていて、ハードな構成に振り切っても、メロディアス性を捨てていないことに安心感を覚えたリスナーも少なくないのでは。

ディープでマニアックな「BABYLON`S TABOO」を挟んで送り込まれる、「裏切る舌」も、なんだか懐かしい。

コテオサ的なノリを、今のthe GazettE風に黒く染め上げたうえ、ツタツタ突っ走る2ビートに乗せて、アップデートされた王道感を出しています。

こういう楽曲も、しっかり土台として認識してくれているのだな、と嬉しくなってしまう。

 

そして、その極みが「UNFINISHED」でしょう。

スピーディーに展開する刹那的な演奏に、切なく心情を切り取る歌謡メロディ。

まさに"異端"時代の香りが残る楽曲構成に興奮が冷めません。

「DOGMA」からの世界の延長線上に、まさかこんなキラーチューンが待っているとは予想しないじゃない。

しかも、これが中盤のアクセントではなく、締めくくりの重要な位置。

初期の音楽性への回帰が良い、とは必ずしも思わないけれど、やはり主観の部分では好きになった時期のスタイルを求めてしまう部分がないわけではない。

その中で、客観視したって格好良いアルバムの世界観を壊さず、それを叶えてくれたというのは、ファン心理としてとても大きかったのではないかと。

 

3年待たされても、これだけの作品を届けてくれるなら、待った甲斐があったというもの。

リアルタイムでthe GazettEを追いかけている人が、新曲たちにドキドキするのは当然として、少し離れていた層を引き戻すためにも効果的に機能しそうな1枚です。

 

<過去のthe GazettE(ガゼット)に関するレビュー>

DOGMA

BEAUTIFUL DEFORMITY
DIVISION
TOXIC
大日本異端芸者的脳味噌逆回転絶叫音源集

蛾蟇
[reila]
斑蠡~MADARA~