DOGMA / the GazettE | 安眠妨害水族館

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DOGMA/the GazettE

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1. NIHIL
2. DOGMA
3. RAGE
4. DAWN
5. DERACINE
6. BIZARRE
7. WASTELAND
8. INCUBUS
9. LUCY
10. GRUDGE
11. PARALYSIS
12. DEUX
13. BLEMISH
14. OMINOUS

the GazettEの約2年ぶりとなる通算8枚目のフルアルバム。
もはやお約束となりつつある限定盤の大きさが気になるところですが、相変わらず、置き場所に困るサイズのようですね。

様々な色を重ねると、どんどん黒に近づいていく。
そんな感覚が、この「DOGMA」には感じられた。
アートワークにしても、サウンドにしても、とにかく"黒"という印象を受けるのである。

彼らのサウンドは、アルバム数枚周期で転機を迎える傾向があるのかな。
コテコテ路線、ラウド路線と変遷し、「TOXIC」以降は、EDM的なアプローチを積極的に取り入れた実験的なサウンドを、the GazettEの音楽に落とし込む作業を行ってきました。
前作、「BEAUTIFUL DEFORMITY」が、その集大成かつ原点回帰的な作品に仕上がったことで、次の転機が来る予兆はあったのですが、そうか、こう来たか。

全体的には、ハードさ、ヘヴィーさが高まり、攻撃性を増した。
Vo.RUKIさんのスクリーム、グロウル等が飛び出す楽曲が多いという事実も、それを裏付けていると言えるでしょう。
バラードらしいバラードも用意されていない。
前作からのインターバルが長かったことを考えれば、バラエティを大袈裟に広げず、コンセプチュアルに楽曲を畳み掛ける構成になったことは、意外性すら感じられます。
今の彼らがこれだけ激しさに特化した作品を送り込んできたという意味でも、インパクトは大きかったのかと。

また、ラウド一辺倒に戻ったのかと言うと、必ずしもそうではないのだ。
これまで実験的に取り組んできたサウンドアプローチは、しっかり血肉となっているようで、デジタル色の強いアレンジを部分的に採用したり、女声ボーカルとコラボレーションしていたり、似たような曲が続くという感覚を与えないように、絶妙に色味を加えている。
それを雑多なものにせず、"黒"の中にさらりと溶け込ませているあたりは、やはり彼らのキャリアがなせるクオリティなのだと思います。
特に、本作を締めくくる「OMINOUS」などは、激しさだけでなく、感情の起伏を音で示しているようなドラマティックな展開になっており、格好良く「DOGMA」の世界をクロージングしてくれました。

ただし、結果として完成された楽曲群が、シーン全体の中では目新しさがないものになってしまったのが、本作の賛否両論を分ける一番の理由になっているのだろうな。
ある意味、シーンを最先端で引っ張り、"ガゼットみたいなバンド"を量産させた張本人が、"黒"への回帰ブームが飽和しつつある現代シーンのど真ん中に少し遅れて飛び込んできたようなもの。
クオリティは申し分ないだけに、これが数年前に出ていたものなら世論的な評価も違っていたと考えますが、想像できる範囲内でまとまってしまったように見えても仕方ないか。

リアルタイムでは、そのときのシーン内での流行や、これまでの作品の変遷から、次にドロップされるものへの期待が生まれる。
その点では、本作は、"リアルタイム感が薄れたとき"が聴き頃なのでは。
"期待とのギャップ"で評価される現状ではなく、より俯瞰的な感覚で捉えられるタイミングで聴くことができれば、レベルが高い作品であるのは間違いない。
攻撃性の高い作品にはやや場違いな感想なのかもしれませんが、焦らず、ゆっくり聴き込みたい1枚です。

<過去のthe GazettE(ガゼット)に関するレビュー>
BEAUTIFUL DEFORMITY
DIVISION
TOXIC
大日本異端芸者的脳味噌逆回転絶叫音源集
蛾蟇
[reila]
斑蠡~MADARA~