shimmer/Sioux
1. 楽園
2. ダリルダラ
3. mane of light
4. Navy
5. depth of sea
6. shimmer
Siouxにとって、初となるミニアルバムは、なんと無料配信でのリリース。
2017年末~2018年2月初旬まで、毎週1曲ずつ、合計6曲を順次配信するというスタイルでした。
V系シーンにおいては、まだまだCD媒体が根強いのですが、移り変わっていく音楽業界。
前作、「アムリタ」に引き続きの無料ダウンロード制をとった彼らですが、多種売りやインストアイベント商法でCDの売り上げを伸ばすのではなく、率先して次のビジネスモデルを探そうとする姿勢は、シーンを存続させるために必要な働きかけ。
楽曲を知ってもらうためにMVやライブ映像をYouTubeなどに公開するのも一般的になった昨今でも、YouTubeで見ているのと、"正規品を所有している"と意識づけられるのとでは、思い入れが違ってくるはず。
どうせ無課金分だけで満足されてしまうなら、優先順位を上げてもらってライブに呼び込むという方法論は、案外効果的なのかもしれません。
もっとも、内容が良くなければ成立しない戦略ですが、無料だからといって、手抜きはなし。
綿密なアレンジのもとに完成されたクオリティの高さで、デモバージョンといった粗さは見られず。
楽曲のバラエティも富んでいて、配信シングル×6ではなく、きちんとアルバムで届けることを意識している印象です。
異国情緒漂うギターと、手数が多いドラムが特徴の疾走チューン「楽園」、Vo.Kanameさんの荒々しい歌い方と、ダークとダンサブルを融合させたサウンドに名古屋系の魂を感じさせる「ダリルダラ」、浮遊感が心地良いワルツ調のバラード「mane of light」と、Siouxの強みを分解し再構築したような流れでリスナーをグッと掴むと、続く「Navy」は性急なリズムがスリリングで、まさに彼らにとってのキラーチューン。
どっぷり世界観に浸るための「depth of sea」を挟み、ラストは集大成的な「shimmer」。
拍子がコロコロ変わったり、一筋縄ではいかないマニアックさはあるのだけれど、サビの開放感は、すべてを浄化してしまう力を持っているのですよ。
1曲目が発表されてからミニアルバムが完成するまで、1ヵ月半引っ張られたわけですが、次に出てくる音楽が楽しみでワクワクする感覚、出てきた音楽が期待以上で驚く感覚。
なんだか久しぶりに経験できたなぁ、と。
蒔いた種は、いつ芽吹くか。
無料の音楽が溢れている中、ダウンロードのひと手間を惜しんで、あまり聴かれないかもしれない。
聴かれたとしても、ライブの動員には結びつかないかもしれない。
それでも、この音楽に惹かれた身としては、ひとりでも多く、Siouxのサウンドと出会ってほしい。
そういえば、そんな企画もあったよな、とこれを読んで思い出した人は、是非この機会にオフィシャルサイトへ。
なお、ライブ会場限定で、本作のパッケージ盤もリリースされたようで。
どうしてもCDで欲しいよ、というコア層に向けた救済もあって、気が効いています。
曲順も変更され、ボーナストラックに「アムリタ」が収録された全7曲。
言わば、CD未収録だった配信音源をまとめた1枚となるのですが、彼らのことだから、きっと新たに示された曲順にも意味があるのでしょうね。
<過去のSiouxに関するレビュー>