弱肉教職 / ラッコ | 安眠妨害水族館

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弱肉教職/ラッコ

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1. 教育

2. 生物学(幽囚谷のバッタ)

3. 化学(色彩皆無)

4. 時間学(PM5:00)

5. 精神分析学(青年ナイフ)

6. 心理学(火花散らしたら)

7. 芸学(白昼夢)

8. 葬学(循環)

9. 農学(本当の自分の物にナッテイナイ物)

10. 数学(7/8)

11. 音楽(冷えきった魂について)

 

ハイペースでリリースを続けるラッコの1stフルアルバム。

"学科"をモチーフに、全11曲を収録しています。

 

本来のタイトルに加えて、学科名が割り振られた収録曲たち。

「循環」として生まれ変わった「偽物語」も含めれば、3曲がミニアルバム「怪しい眼鏡屋さん」からの楽曲。

「幽囚谷のバッタ」もシングル曲であり、少なくとも4曲はモチーフが"学科"と決まる前から存在していたと思われるのですが、これがまた、上手くピースとしてハマっているな、と。

既存曲がアルバムに入ることで更に魅力が際立つという科学反応は、これぞフルアルバムの醍醐味!といったところですね。

 

総論であるショートナンバー「教育」からスタートし、あの手この手でVo.平一洋さんが生き様を叫び続ける。

ほとんどの楽曲が3分~4分で仕上げられていて、テンポ良く進んでいきます。

飽きる前に次に、飽きる前に次に、とワクワクを持続させながら次の授業に進んでいくので、学校の授業もこんな気持ちで受けられていたら楽しかったのだろうな、と思ったり。

タイトル的に、「教育」はSEだと思っていたので、歌入りナンバーだったから得した気分でした。

 

その中で、唯一4分を超えるのが、「精神分析学(青年ナイフ)」。

平さんらしい詩的でもあり、リアリティもありの歌詞が、まさにナイフのように胸を抉るバラードとなっており、グッときます。

他の楽曲が短くまとめられているのは、この曲にスポットを当てるためなのでは、と邪推してしまうぐらいですよ。

尖ったものの象徴として使われることが多い"ナイフ"というテーマですが、それは少年性と結びついてのこと。

"青年"というワードと結びつけることで、一気に脆く弱いイメージに変わってしまうというのは、目から鱗が落ちました。

これは、授業を受けている学生というよりも、卒業してしばらく経った大人こそ聴くべきなのでしょう。

 

サウンド的には、激しいけれど、無駄がない。

神経質で繊細だけれど、血が通った人間が演奏している生々しさもある。

とにかく音を重く歪めて激しさを表現したり、同期を多用して情報量を増やす手法が近年では一般的ですが、きめ細やかなフレーズを織り交ぜてスッキリお洒落にまとめつつ、そのうえでバンドとしての攻め気を示すセンスの良さは、ラッコの大きな武器となっています。

カリスマ性のあるボーカリストを擁して、更に音も個性的なのだから、そりゃ名盤が生まれるってわけだ。

 

「数学(7/8)」から「音楽(冷えきった魂について)」に繋いでのクローズは、その集大成。

複雑に絡み合う音の迷路の中を、道標のように一本の軸を通す平さんの歌声は、予感を確信に変えるには十分なインパクトを残していきました。

派手さはないけれど、心の奥で、しっかりと自分の礎になってくれる。

そんなところも、学校の授業に似ているのかもな、と思わせる1枚。

 

<過去のラッコに関するレビュー>

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