Identification Card / Dear Loving | 安眠妨害水族館

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Identification Card/Dear Loving


1. Missing
2. Bind hand and foot
3. to you…

Dear Lovingの2ndCT。
2000年にリリースされました。

本作は、会場限定で500本だけ先行販売されたバージョンも存在しており、そちらはジャケットが"天才TAKUYA画伯仕様"となっています。
流通されたものは、限定2,000本と公表されていましたが、リリース時のインタビューで3,000本プレスしていたことを暴露。
現在では、3,000本と記載されているケースが多いようですね。
この辺り、当時の"限定商法"の闇を考えさせられるエピソードかと。

現在では、"ポジティブでポップでロックなバンド"として笑いあり、涙ありの楽曲展開をしている彼らですが、この頃は、正統派のソフトヴィジュアル系。
Vo.MASAさんのルックスや声質などから、ポストMASCHERAと言われていたりもしました。
リードトラックである「Missing」は、その後、オムニバス作品にて移植されており、CD音質でも聴くことができます。

やはり肝となるのは「Missing」。
壮大さのあるイントロ、キメの多いAメロ、疾走感のあるBメロ、テンポを変えてアクセントをつけるCメロと移行していき、待ちに待った爆発的に盛り上がるサビへ。
この構成がたまらない。
力強く、だけど切なく、ソフビ系に興味がない層にも刺さるくらいにビリビリくるメロディを紡いでいきます。
ラストシーンで美しく添えられるシンセとコーラスも絶妙で、フェードアウトがやや早すぎる感があるのだけがもったいない名曲である。

SEで繋がるようにクロスフェードして入ってくるのは「Bind hand and foot」。
トラック分けが曖昧なデモテープだからこそのギミックといったところ。
スピード感があるタイトなナンバーで、激しいと言えばツタツタドラムという時代に、硬派なハードさを求めており、当時としては新鮮に映りました。
キメの連発でインパクトを残すサビの格好良さと言ったら。
ソフビ系が奏でる、ほんのりダークな楽曲。
改めて聴くと懐かしさもあり、現代ではあまりお目にかかれないタイプの昂揚感がありましたな。

B面に収録されていたのは、切ないポップロックチューンである「to you…」。
これこそソフビ!という白いサウンドと、ポップなメロディ。
リアリティの中に甘いフレーズがある歌詞も含めて、現在のDear Lovingに繋がる点も多そうな1曲です。
構成も凝っていて、5分半以上ありますが、ダレることはない。
ピアノだけになって、余韻を残すラストも良し。
ポップ要素が強い楽曲でもツボっていうのは、これは本物だぞ!とテンションが上がったものですよ。

これをリアルタイムで聴いたときの、"凄いバンドを見つけた!"という興奮は半端じゃなかった。
路線変更などもあり、予想以上にメジャーデビューが遅れてしまった感はありますが、2015年に再デビューを果たしたところを見ると、やはり地力があったのだな、と。

手に入りにくく、手に入ったとしても聴きにくいCTという形態。
しかしながら、16年前の作品とは思えない普遍性、衝動性を見せつけており、ポテンシャルの高さを感じずにはいられない作品です。
本作が完璧すぎるあまり、以降の作品を聴いていないリスナーが多いのは寂しいのだけれど、無理もないという納得感もある。
今のディアラビが好きな層には、この時期の初期衝動にも触れてもらいたいですし、これを見て久しぶりに聴いてみようかと思った層には、今の彼らに触れるきっかけにしてもらえればいいなぁ、と思います。

<過去のDear lovingに関するレビュー>
Positive Toy Box
その手に未来を
イマココニアイ
恋は二人で~Boys to~
Loose Vision