乙女は今病んでい ます。 / 乙女国家 | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

乙女は今病んでい ます。/乙女国家

¥2,000
Amazon.co.jp

1. 外道少女、恥の多い生涯をおくる
2. コミュニケーション障害
3. いじめ
4. セシリー
5. 昔の女が嫌い

乙女国家の2015年末にリリースされた1stミニアルバム。
流通盤としては、初の作品となりました。

ex-ヒトツメ、ex-レインマン、ex-ヱレキテル式のメンバーにより結成。
当社は、エキゾチックショートヘアというバンド名で始動していましたが、半年ほどで乙女国家に改名しています。

哀愁を含んだサウンドを得意としていたメンバーが揃っており、案の定、どことなくレトロな香り。
同時に、フロントマンであるVo.ミスターさんの前身バンド、ヒトツメで見せていたサブカル色の強い音楽性や世界観が融合しており、昭和と平成が混在する雑多とも言えるスタイルに落ち着いています。
デジタルもアナログも、なんでもござれ。
新しくもなく、古くもなく、独自の時間軸を進んでいるような印象ですな。

インパクトを優先してサビからスタートする「外道少女、恥の多い生涯をおくる」。
ギラギラしたシンセにより現代版ディスコティック的な「コミュニケーション障害」。
そこにハードな要素を追加して、サビのメロディすら荒っぽく吐き捨ててしまう「いじめ」。
バンドサウンドが強まり、疾走感を出したセツナレトロナンバー、「セシリー」。
ダンサブルに仕上げながらも、もっとも哀愁感を前に出した「昔の女が嫌い」。
5曲とも、それぞれの個性を放ちながら、しっかりとひとつの音楽性の軸の上にあって、結成間もないながらも、コンセプト作のようなまとまりは感じられるでしょうか。

ミスターさんは、ヒトツメからのブランクが5年近くあったわけだけれど、アクがなくなり、聴きやすくなった。
その分、表現のメリハリが弱まった感はありますが、歌詞の内容的に、それも狙いなのかもしれません。
外目に感情の起伏は表さないが、内面にはどす黒いものが渦巻いている。
どの楽曲も、そんなテーマが歌われている気がするのですよ。

全体的に、演奏力についてはもう少し迫力が欲しいかな。
同期に頼っている部分が見られ、大人しすぎるきらいが。
メンバーのキャリアを考えれば、いつまでも若手とは言っていられないはずなので、センスだけでなく、演奏でも見せ場を作れるようになるのが、当面の課題となりそう。

加えて、軍国主義的なモチーフをレトロなサウンドと関連付けて、コンセプト化していくバンドが増えてきている中でどう立ち回ることができるか。
言うほど、"国家"とか"建国"とかを意識した楽曲はないようですので、あえて飽和しつつある路線に突っ込んでいく必要もなかったとも思うのですが、そこは流行的な側面もあって一長一短なのかしら。
楽曲センスが良く、一皮剥ければ化けそうなだけに、まずは注目を集める個性を見つけ出したいところです。