PRETTY NEUROSIS / MASCHERA | 安眠妨害水族館

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PRETTY NEUROSIS/MASCHERA

¥2,621
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1. I miss...
2. 運命の車輪[dimensionally textured]
3. GOD IS DEAD
4. コンドル
5. METAMORPHOSE
6. PRETTY NEUROSIS
7. Lasting...

MASCHERAが1996年にリリースしたミニアルバム。
初回盤と通常盤で、ジャケットが異なります。

コンセプチュアルでダークな要素が目立った「悪徳の栄え」の頃から比べれば、だいぶポップさが出てきたと言えるのが、この「PRETTY NEUROSIS」。
シングルになった「運命の車輪[dimensionally textured]」や、ライブのラストはこの曲しかないという代表曲「Lasting...」が象徴しているように、全体的なバランスだけでなく、個のインパクトでも勝負できる作品になっていました。

ポップになった、とはいえ、あくまでそれはサウンドベース。
メジャー進出直後ほどの吹っ切れ方はしておらず、インディーズ時代の彼ららしいデカダンな空気を感じるな。
メロディはキャッチーなのに、なんとなくアングラっぽさを匂わせる。
耽美的なのか、文学的なのか、不思議で難解なMICHIさんの歌詞も相まって、とてもバランスの良いアルバムが出来上がったのではないかと。

音は骨太。
ところどころでシンセは入るものの、基本的にはシンプルなバンドサウンドで攻めきってしまう。
現代の情報量の多いサウンドに慣れてしまっていると、音の隙間に物足りなを感じてしまうかもしれませんが、ザクザク切れ込んだかと思いきや繊細なアルペジオを奏でるギターにしても、淡々と刻む部分とアヴァンギャルドな部分とのメリハリを効かせたベースにしても、誤魔化しが通用しないアレンジだからこそ、創意工夫が耳で聴いてわかりやすいのですよね。

歌謡メロディで引き付ける「I miss...」から、疾走感が切なさを煽る「運命の車輪[dimensionally textured]」に繋いで盛り上げる、序盤の構成は素晴らしいの一言。
中盤の幅を広げる役割のナンバーも粒ぞろいで、この段階で良作であるのは間違いない。
しかし、やはりここで触れておかねばならないのは、「Lasting...」の名曲っぷりでしょう。
テンポは相応に早いのだけれど、どんどん広がりを見せていく壮大なスケール。
一発でガツンとくるタイプの楽曲ではないのかもしれないが、神秘的、宇宙的なパワーを感じるのである。
これには圧倒されてしまいましたよ。

音質には時代を感じるも、MICHIさんのボーカルは、改めて聴いてもオーラが違う。
安定した演奏を、更に強固にする艶っぽい歌声。
楽曲のクオリティも高く、聴き終わった後には、まるでフルアルバムを聴いたかのような充足感が残っていることでしょう。
中核となる楽曲はベストアルバムなどでも聴くことができますが、やはりオリジナルで聴きたいというのがファン心理。
インディーズ時代のアルバム作品としては手に入れやすいので、未聴であれば、是非手に取ってもらいたい1枚です。

<過去のMASCHERAに関するレビュー>
orb
悪徳の栄え