Palette / RONDE | 安眠妨害水族館

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Palette/RONDE

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1. DOUBT LAND
2. Tapestry
3. 空中ブランコ
4. 星見の丘
5. Scissors of “ATROPOS”
6. 人格
7. As if...
8. 時間旅行記
9. Prussian blue
10. 夢想原

2001年にリリースされた、RONDEの1stアルバム。
結果的に、唯一のアルバム作品となりました。

過去のデモテープから、「Tapestry」、「Scissors of “ATROPOS”」、「Prussian blue」を再録。
また、配布シングルの「空中ブランコ」は収録されましたが、CDシングルとしてリリースされていた「Graffiti」、「story」の楽曲からは選曲されませんでしたね。
「地球樹の風に吹かれて」あたり、この作品の中で聴いてみたかった気もするけどなぁ。

彼らの音楽性の特徴は、キャッチーなメロディと、演奏のマニアックさが絶妙に混ざり合っていること。
さらっと聴き流す分には、ソフト・ヴィジュアル系のバンドの楽曲らしく、気持ち良く耳を流れていく。
ライト層にも受けそうな、実にとっつきやすいポップ感。

一方で、じっくり聴いてみると、どうでしょう。
なんだこのマニアックなフレーズの応酬は!と驚かされてしまうのです。
どのパートもテクニカルで、コード進行も一筋縄ではいかない様子。
転調も加えたドラマティックな楽曲構成も相まって、なかなかに玄人好みの一面も顔を出してきます。
これを、ポップなソフヴィのフォーマットに落とし込んでいるのだから、抜群のセンスと言えるでしょう。

序盤を、「Tapestry」、「空中ブランコ」など、疾走感のあるナンバーで勢いをつけると、フレンチポップ風のお洒落さを纏った「星見の丘」、ダークな雰囲気から幻想的なサビへと流れる「Scissors of “ATROPOS”」で本領発揮。
どこか異国情緒があり、どこかメルヘンチック。
「As if...」など、バランサー的に疾走チューンを織り込んではいますが、とことん世界観を追及する楽曲たちを送り込んできます。

「Prussian blue」は、初期ラルクの匂いも漂う。
ラクリマの系譜に捉えられることが多い彼らですが、異国的かつ幻想的なサウンドは、伝統的な白系の正統進化でもあるのかも。
なぜか、同一トラックに「魔法が使えなくなった魔法使い」のデモ音源も収録されています。
きちんとクリアな音で、トラックを分けて収録してくれよ、といったところですが、ライブ会場での配布盤との違いをつけたかったのだろうか。
ラストの「夢想原」が、広がりのある締めくくりにふさわしい楽曲であるだけに、流れを止めないでほしかった、というのが本音ですかね。

なお、Vo.TOMONORIさんの歌声にも安定感あり。
歌い回しに癖はありますが、この世界観に埋もれることなく、しっかりと存在感を示しているのも魅力です。
ポップでもダークでも危なげなく歌い上げ、それをRONDEという器に落とし込んでいるのは、まぎれもなく、彼のフロントマンとしてのスキル。

これでセールスが伸びなかったのは、もったいないとしか言いようがない。
露出も相応に多く、チャンスはあったのだが、テレビでドン!と注目させるよりも、じわじわ口コミで広がっていくようなマーケティングのほうが、彼らの音楽性には合っていた気もします。
同期の音使い、バンド演奏のコンビネーション、個人個人のテクニック。
どれをとっても、レベルが高いバンドではありました。

<過去のRONDEに関するレビュー>
Graffiti