Radicarhythm / シリアル⇔NUMBER | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

Radicarhythm/シリアル⇔NUMBER

¥2,160
Amazon.co.jp

1. [α]rhythm
2.色彩DREAM
3.病ンデミック
4.泡泡
5.パリラ
6.letter of smile

ex-Ap(r)ilのGt.ナツメさんが加入し、5人体制となったシリアル⇔NUMBER。
いよいよフルメンバーが揃ったぞ、といったところだったのですが、なんと、Vo.佐々木仁さんを残して全員の脱退が決まってしまったのだとか。
通算2度目の楽器隊総入れ替えを余儀なくされたわけで、なかなかメンバー編成が落ち着かないですなぁ。

本作は、「Radical」をテーマに制作されたミニアルバム。
どれだけ過激な音楽を聴かせてくれるのかと思いきや、トップバッターの「[α]rhythm」は、ストレートな疾走ポップ。
キャッチーなサビから始まり、爽やかに駆け抜けていく楽曲スタイルは、"ソフトヴィジュアル系"さながらで、むしろ、彼らとしては初期の音楽性に近いのかもしれません。

MVも作成され、リードトラックということになるのであろう「色彩DREAM」も、シリアル⇔NUMBERのイメージを大きく崩すことないアッパーチューン。
序盤はロック色を強めて、サビではダンサブルに。
うむ、確かにクオリティは相応に高く、安定感もあるのだけれど、「Radical」というわりには、王道で攻めすぎてはいないだろうか・・・

そう思っていたら、徐々に違う顔が見え出すのは、「病ンデミック」から。
なるほど、導入としてはわかりやすいナンバーを持ってきたけれど、それはあくまで振り幅のひとつ。
アグレッシブなチャレンジは、中盤からといったところなのですな。

その「病ンデミック」は、ダークなテイスト。
駄洒落っぽいタイトルに、ややお洒落系バンド感が出ているのだけれど、コーラスワークをメインに押し出すようなサビの作り方が面白い。
アクセント的に、こういう楽曲が入ってくると、次の展開が読めません。

さて、本作におけるメインディッシュは、ここからとなるのでしょう。
「泡泡」、「パリラ」という、不思議なタイトルの楽曲が立て続けに。
そして、この2曲が問題作なのである。
可愛らしさのあるポップなメロディラインはいかにも彼ららしいのだけれど、どうも大学生の宴会的な雰囲気が漂う。
ジャパニーズスタイルのパーティーソングと言われればそうなのかもしれませんが、まさか、ホストのようなヴィジュアル系、通称"Vホス系"の拡大解釈だったりするのかしら。
そこまで考えての構成であれば、なかなか皮肉の効いたネタですよね。

特に、「パリラ」のインパクトが凄かった。
コールをモチーフにしたサビと、時折入る合いの手。
完全に飲み会ソングです。
明るく弾けた歌メロに対して、不協和音を奏でるようなギターフレーズが独特なのですが、もしかして、これは酔っ払っていることを音で表現しようとしたのでは。
呑んでいるつもりが、呑まれている。
斬新すぎるアプローチでした。

ラストの「letter of smile」は、1曲目同様、アッパーポップスに戻ってくるのですが、既に衝撃を残した後。
ベタな曲で締めても、印象が違って聴こえるからズルい。
個性的な楽曲を持ってくるよりも、かえって良いパフォーマンスを見せてくれたってことでしょう。

王道路線で引き締めつつも、遊ぶところはしっかり遊ぶ。
この"遊ぶ"ところで、はっちゃけるバンドが最近では少なくなってきたこともあり、好き嫌いは分けるにしても、フックにはなっています。
だからこそ、この編成でメンバーを固定化できなかったのは残念。
方向性がはっきりしているわけではなくとも、置きに行った作品でないことは確かですので、このテンションを引き継げるメンバーを見つけ出し、是非とも復活を遂げてほしいです。

<過去のシリアル⇔NUMBERに関するレビュー>
シリアル⇔NUMBER
ヒューマンドラマ