シリアル⇔NUMBER / シリアル⇔NUMBER | 安眠妨害水族館

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シリアル⇔NUMBER/シリアル⇔NUMBER

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1.ふたりのパラダイス
2.TWO-FACE WOMAN
3.マックの女
4.愛らシーサー
5.ストロベリーハニー
6.旅人
7.星砂の伝説
8.ヤ・メ・テ・よ
9.Street Dunk
10.GURUGURU
11.「セーラー服と第2ボタン」
12.君に会えて

2008年にリリースされた、シリアル⇔NUMBERの2ndフルアルバム。
プロデュースを担当しているのは、中島卓偉さんです。

シングル、「愛らシーサー」が出来上がった影響か、少しずつ沖縄色を強め出したのがこの頃。
そのため、なんとなく漂う夏っぽい雰囲気がありますな。
このくらいの時期にはぴったり。

1曲目の「ふたりのパラダイス」から、夏真っ盛り。
80年代J-POPを匂わせる懐メロ風な展開から、サビではパンキッシュに元気良く。
ビーチに流れてくるのを意識していそうな楽曲構成です。

「TWO-FACE WOMAN」、「マックの女」では、レトロな歌謡ロックを引き継いで。
季節感を前面に出さない楽曲についても、当時におけるアバンギャルドな音楽性を継続することで、きちんと流れを作っていく。
"夏"のイメージを確固たるものとする「愛らシーサー」へと繋げていきます。

言ってしまえば、曲単体で夏!というイメージを与えるのは、「ふたりのパラダイス」と「愛らシーサー」くらいなのかもしれないけれど、他の楽曲も、アッパーでパンキッシュだったり、ギラギラとしたレトロサウンドだったり、そこに馴染むようなアルバム構成にはなっていくのですよね。
Vo.佐々木仁さんの癖のない歌声も、変に凝った楽曲より、こういう楽曲たちのほうがハマるような気がするな。

その中で、「ストロベリーハニー」、「星砂の伝説」のような、ヤンキーロックにも近い楽曲があるのも面白い。
確かにこれも、ギラギラしたレトロサウンドなのだけれど、シリアル⇔NUMBERのパブリックイメージ的に予想していなかった路線の楽曲だったため、驚いてしまいました。

振り返ると、「星砂の伝説」あたりが、前半のレトロゾーンから、後半のパンクゾーンへの橋渡しになっているのかな。
後半は、ミクスチャーパンク風に勢い良く展開される「Street Dunk」、歌謡テイストを残しつつも、激しさがある「GURUGURU」、青春ナンバー「セーラー服と第2ボタン」など、勢い重視で進行していきます。
ラストスパートのスタートダッシュが早すぎたようなきらいはあるのですが、それぞれがコンパクトにまとまっているからか、これはこれでバランスはとれているのかも。

ラストに持ってきたのは、「君に会えて」。
これまた、ポップさを押し出したアッパーチューンで、次々と送り込んできた楽曲たちを総括するような内容。
ストレートで聴きやすく、これが最後というのは、最初から決まっていたのだろうな。

「愛らシーサー」は、正直、全体の中で浮いている。
沖縄感を出しているのはこれだけで、あとは、比較的正統派である。
しかし、その1曲が、アルバムのイメージを固めているのだから興味深い。
インパクトとは、こうも大事なものなのですね。

また、夏っぽいのは、おそらく、サウンドの影響もあるのかと。
卓偉さんの色が入ったことによるのか、シンプルなパンクサウンドがV-ROCKに馴染むように散りばめられていて、暑苦しさと清涼感が両立。
上手く、彼らのコンセプトとマッチしました。

まだまだ現役のシリアル⇔NUMBER。
メンバーチェンジのバタバタもあり、しばらくフルレンスの発表はありませんが、これが最高傑作だったね、なんて言われないように、現在進行形での集大成を、そろそろ聴いてみたいものです。

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