動かなくなるまで、好きでいて。 / メガマソ | 安眠妨害水族館

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動かなくなるまで、好きでいて。 (B TYPE)/メガマソ
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1. 動かなくなるまで、好きでいて。
2. 望ミガ窪
3. SurrenderPowerPlantの看守
4. fish tank
5. ザガールダイドホエンバウンド(カレノオモイデ)
6. 水没寺院
7. 雪はまだ降り注いでいるか?(still snowing)
8. SWANSONG
9. ベゾアルステーン
10. WINTER HOLLOW
11. 最後の夜にKissをして
12. 万国砂糖品評会(最優秀甘味賞受賞)

「少女は少年の再生を願い、うみべのまちを歩きはじめる。そこで繰り広げられる不思議な物語。」
久々のアルバム作品となった、メガマソの新作は、コンセプトCD。
初回盤は、「コンセプチュアルミニアルバムサイド」と、「シングルサイド」の2枚組みに、「望ミガ窪」のDVDが収録された仕様で、ジャケットは、彼ららしいコンセプトを表現したイラスト。
通常盤は、ボーナストラックに2曲を追加したうえ、それらをCD1枚にまとめた内容で、ジャケットはアーティスト写真となっています。

1曲目から6曲目までが、「コンセプチュアルミニアルバムサイド」に該当。
初回盤には、更に「うみべのまち-SE-(かのじょのおもいで)」が収録されているようで。
インストながら、コンセプトを締めくくるための名曲に仕上がっているとのことであり、曲数を考えて通常盤を購入したものの、これはこれで気になるなぁ。

ストーリーとしては、少年が死んでから、再生を願う少女の6日間を描いた物語。
涼平さんらしいメルヘンタッチな言葉や登場人物によってマイルドにはなっていますが、全体的に、物悲しい空気で染め上げられているのは、背景として、"死"へ向き合うというテーマが置かれている楽曲で構成されているからなのでしょう。
ひとつひとつは、シーンの一部を切り取った歌詞なので、明確なストーリーが語られているわけではないのだけれど、主人公である少女のとった行動や、感情の変化が、なんとなく伝わってくる。

個人的に嬉しいのは、コンセプトへの表現に絞り込んだためか、楽曲構成やアレンジについて、涼平節が完全復活しているところ。
最近では、テクニックの向上に伴い、普遍的なアプローチに重点を移しかけていたメガマソですが、真っ向からの勝負を避け、斜め上からの表現を提示し続けてきた、策士・涼平の本領発揮。
こんな感じのギターソロは懐かしいなぁ、というフレーズに、メジャー進出等を踏まえて培ってきたスキルが、しっかりと反映されています。

コンセプトへの表現方法に関しても、初期の「櫂の目塔の属領」や、アヤビエ時代の「鉄の島」に通じるところがあり、サウンドとともに、歌詞カードを読み進めるのが、実に楽しい。
一見して難解なのだけれど、妙にリアリティを持った詩の選び方は、彼にしか書けない独創的な切り口としか言いようがありません。

アヤビエを脱退し、歌唱力が抜群なインザーギさんをボーカルに据えて結成したメガマソ。
技術的に未熟な部分を克服すべく、新たな見地を加えるために進出したメジャーシーン。
その先に、当初からのファンが見たかった景色が、遂に本作で実現できたのではなかろうか。
新たな試みとして、涼平さんがツインボーカル的に歌詞を歌うパートも増えてきており、原点回帰ではなく、進化の結果としてのコンセプト作品。
こんなにワクワクしたアルバムは、久しぶりに聴きましたよ。

後半の「シングルサイド」&ボーナストラックでは、ポップさ、キャッチーさという側面も維持。
ライト層にとっては、お口直しに、シングルを買っていないファンにとっては、安心感に繋がる内容。
「最後の夜にKissをして」は、本作中、唯一のインザーギさんの作詞作曲によるナンバーとなっています。
ラストに、カップリングだった「万国砂糖品評会(最優秀甘味賞受賞) 」を持ってきたのは意外でしたが、再録の効果か、前半部からの雰囲気も踏襲しているようで、まとまっているように聴こえるから面白いものだ。

推測でしかないのだけれど、葵&涼平としての活動が、このような世界観重視の作品へのモチベーション向上に繋がっていたのでは、と思ったり。
ストレートな曲調でも、器用に安定感のあるキラーチューンを送り込める作曲家ではありますが、やはり、涼平さんには、新たな表現の可能性を模索していって欲しい。
自信満々に、二手三手先を見据えた音楽を奏でていて欲しい。
ここに来て、彼の音楽にはじめて触れたときの衝撃を思い起こさせてくれたという意味でも、本作を作り上げた価値は計り知れません。
メガマソにとって、現時点での最高傑作であるのは、間違いないですね。

<過去のメガマソに関するレビュー>
雪はまだ降り注いでいるか?
Loveless, more Loveless
キスミイチュチュ(メガマチュ)
ニューロマンサー(神経系亜人性)