リデルの赤い書物 / Eliphas Levi | 安眠妨害水族館

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リデルの赤い書物/Eliphas Levi
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1. 第七の悲劇

2. 赤い迷宮

3. マロリー夫人の秘やかな欲望

4. rebirth

5. 時計の傷跡

6. 懺悔の朝に・・・

7. 美しきローゼの十字架


マリスミゼルのブレイクとともに一般化した感のある中世ヨーロッパ的世界観のクラシカルなダークバンド。

もっとも、ほとんどが付け焼刃な感じで、初志貫徹できたバンドはほとんどありませんでしたが。


このEliphas Leviは、その点では最後まで徹底して、クラシカルな様式美を貫いていたバンド。

そして、この手のバンドの多くは、ゴシック、インダストリアルといったアプローチに活路を見出したのに対して、Eliphas Leviは、あくまでコテコテ発狂系のジャンルで、それを成し遂げたところに注目すべきでしょう。


本作は、彼らの1stアルバム。

どの曲にも、荘厳な雰囲気にしようとするシンセと、血や十字架といったお約束のモチーフを惜しみなく塗りたくった語りが入っています。

今となっては陳腐な演出に聴こえる部分もありますが、そこは割り切って聴いてもらいたい。


SEの「第七の悲劇」で、ゴシック・ダークに幕を開け、短く勢いで駆け抜ける「赤い迷宮」へ進む展開は、コテコテ好きにはたまらない流れ。

メロディパートには心許ないところもありますが、一度音が止まってから、サンプリング音を噛ませて、一気にラストスパートに突入するあたりは、素直に気持ちが良い。

これだけクラシカルな音楽を取り入れつつ、ツタツタドラムを欠かさないあたり、ツボを押さえています。


続く、「マロリー夫人の秘やかな欲望」ではメロディアスさを押し出していて、美しいピアノとドロドロとしたボーカルラインとのコントラストが、褒め言葉として気持ち悪い。

もう少しボーカルが垢抜けてほしいというのも本音だが、そのくぐもったところも演出になっているというか。

スケールアウトして余韻を残す、サビの歌い尻が印象に残ります。


一転して、「rebirth」は、耽美さよりも、ハードさを押し出した楽曲。

歌人.Keiさんのボーカルスタイルには、やはりこういうのがハマります。

前後の「マロリー夫人の秘やかな欲望」、「時計の傷跡」が、ミドルテンポの曲だけに、より激しさが目立ち、ついついテンションが上がってしまう。

ここまでの流れはバラエティに富んでいて良いですね。


一方、「時計の傷跡」、「懺悔の朝に・・・」の流れは、世界観としてはエリファスらしいし、出来が悪いわけではないのだけれど、ちょっとダレてしまうかなぁ。

雰囲気重視!ホラーチックな表現力で勝負!という楽曲には、まだ力量が追い付いていない印象。

この2曲を飛ばして、「美しきローゼの十字架」に突入したほうが、バランスは良かったのかも。

実際、そうなっていたら、もっと曲が聴きたい!とか言ってそうな気もするので、難しいのですが。


その「美しきローゼの十字架」は、前半はスローでドロドロとした雰囲気、後半でテンポアップして、激しくツタツタになるという、ドラマ性のあるナンバー。

非常に様式美でありながら、ヴィジュアル系として昂揚感のある展開に昇華しているあたりは、らしさを貫いたうえで、期待どおりの締めくくりをしてくれたとして評価すべき。


率直に言って、やろうとしている音楽にスキルが追い付いていなくて、グダグダになっている場面も多い。

ただし、粗削りだからこそ出せる雰囲気もあって、好きか嫌いかとなると、好きなバンドになってしまうのが悔しいのだ。

演奏がおぼつかない不安定さも、ドキドキワクワクのホラー要素にもつながっていて、聴いているうちに味わいに変わってしまう。


そういった結果論も含めて、バンドの見どころは、技術だけではないから面白いですよね。
音源的には、もう少しアルバムとしてのまとまりが出ている2ndミニアルバム、「冷たいアトリエの魔術師」のほうが好みかな。


<過去のEliphas Leviに関するレビュー>

冷たいアトリエの魔術師