
大阪市、1時間で20ミリ以上の雨には注意
大阪市南東部などの雨水をためる「なにわ大放水路」では、排水を担う「住之江抽水所」のポンプ6基すべてが今年6月に水没した。現在は仮設ポンプを設置しても、排水機能は従来の1%未満にとどまっている。平野区や生野区、東住吉区などで通常より浸水リスクが高まる。
これを受け横山英幸大阪市長は6月29日、記者団に「想定を上回る降雨だった」と述べ、復旧には4年300億円かかる見通しを示した。修理できるまでお風呂とトイレを控えるように横山英幸市長が市民に協力を求めた。
一方で横山英幸市長は9月8日、大阪市にレベル3の大雨警報が発令される中、今年6月の大雨で排水機能が低下している問題について「想定外の雨が降って直ちに浸水するという状況ではない」として、市民に冷静な対応を呼びかけた。
- 今年6月は「想定外の雨」を理由に「住之江抽水所」のポンプ6基すべてが水没したと発表したが、「想定外の雨」でも直ちに浸水しないとはどういうことか?
- それは大阪南部の市民が4年間お風呂とトイレを控えるれば、浸水しないということか?
- 復旧に4年300億円かかる「住之江抽水所」はそもそも不要だったのでは?
- 不要だとしたら300億円の市税無駄使いと4年もお風呂とトイレを控えることはないのでは?
相変わらず横山英幸市長の言うことには整合性が見られず、市民にばかり苦行を押し付ける。
MBSニュースより
社会医療法人の公益性と職場問題【連載第6回】
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社会医療法人の公益性と職場問題【連載第6回】
「先に指導、後から指示」は、医療だったのか
――Y主任、医師の指示、包括指示、
そして診療報酬――
【イントロ】
Tは入職後約3年間、栄養指導の対象患者について、医師から、「この患者に、このような内容で栄養指導してください」という具体的な指示を先に受け、その指示に従って患者を選ぶという方法ではなく、管理栄養士側が電子カルテから対象になりそうな患者を探すという方法で仕事をしてきたという。
現場では患者を探して選び出すことを「ピックアップ」と呼んでいた。Tの申告では、約3年間、患者ごとの医師の具体的な指示を事前に受け、その指示に基づいて患者を選定した経験は一度もなかった。
そしてTが、
まず医師の指示を確認する。
予約を入れる。
その後に患者へ栄養指導する。
という順番で仕事をしようとすると、Y主任から「非効率」という趣旨で叱責されたという。
なぜ「医師の指示を先に確認すること」が重要なのか。
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1 管理栄養士と医師の関係
管理栄養士は栄養について高度な専門知識を持つ。しかし医師とは役割が違う。栄養士法第5条の5は、管理栄養士が傷病者に対して療養のため必要な栄養指導を行うに当たっては、「主治の医師の指導を受けなければならない」と定めている。
Tが問題にしているのは、管理栄養士が専門性を発揮してはいけないということではない。
その患者について療養上の栄養指導が必要であるという医学的判断と、それを受けて管理栄養士が栄養の専門職として介入することの関係である。
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2 Tが経験した業務フロー
Tが約3年間経験したという流れは概ねこうだった。
管理栄養士が電子カルテを見る。
栄養指導の対象になりそうな患者をピックアップする。
患者のところへ行く。
栄養指導する。
その後に栄養指導依頼を入力する。
予約表を作る。
実施内容を記録する。
算定処理へ進む。
つまり、医師から個別の指示で患者のところへ行くのではなく、管理栄養士が先に患者へ介入し、その後に依頼等が整えられるという順序だったとTは説明している。
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3 Tが行おうとした順番
Tが適切だと考えた流れは違う。
まず、
医師が必要性を判断する。
患者ごとの指示を出す。
管理栄養士がその指示を確認する。
予約する。
栄養指導する。
実施した内容を記録する。
この順序なら、患者への介入の医学的根拠が先に存在する。
Tが医師の指示にこだわるのは事務処理上の好みではない。自分が患者へ専門的介入をする根拠を確認したいからである。
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4 「非効率」と叱責したのはY主任
医師指示なく栄養指導の介入を指導したのはY主任。
Tによれば、医師の指示を先に確認し、予約してから患者へ栄養指導しようとしたところ、その方法では非効率だという趣旨でY主任から叱責された。
Tは、件数を確保するには従来のピックアップ方式の方が効率的だという趣旨だったと受け止めている。
ここでTには、医療上の根拠を先に確認することより、件数や効率が優先されているのではないかという疑問が生じた。
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5 「後から入力したから無指示」と推測しているのではない
依頼入力が栄養指導後だったとしても、実施前に口頭で医師から指示を受けていた可能性は一般論としてあり得る。
したがって、依頼入力が後だったという事実だけで、医師の指示が一切なかったとは断定できない。
しかしTの問題提起は入力時刻だけから推測したものではない。T自身が約3年間その業務を行い、患者ごとの医師の具体的な指示を先に受け、それに基づいて患者を選んだ経験がなかったと申告している。
だから法人が、「事前の医師による指示は存在した」と説明するのであれば、記録で確認させてほしいと再三求めている。
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6 診療報酬上も「医師の指示」が必要
令和8年度の通常の外来栄養食事指導料については、管理栄養士が医師の指示に基づいて指導することが明記されている。
さらに管理栄養士への指示事項については、その患者ごとに適切なものとし、熱量・栄養素量、病態に応じた食事形態などについて医師が必要と認める事項の具体的な指示を含むことが求められている。
入院栄養食事指導料についても医師の指示に基づくことが要件とされ、外来栄養食事指導料の留意事項のうち、患者ごとの具体的指示に関する規定などが準用される。
だから問題は、
「包括指示という名前の仕組みがあります」だけでは終わらない。その中身が、患者ごとに適切な具体的指示という算定上の取扱いを満たしているのか。
そこが問われる。
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7 「包括指示」とは何か
医療では、すべての場面で医師が一つ一つ細かな行為をその都度口頭で指示するとは限らない。一定の条件を定め、「この条件に該当する患者については、この方針で対応する」という形で多職種が動く仕組みはあり得る。
したがって本稿は、包括指示という仕組み自体が違法だとは書かない。
問題は、その実体である。
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8 「包括指示があります」で終わるのか
仮に法人が、「包括指示があるから管理栄養士が患者をピックアップしてよい」と説明するのであれば、
誰が包括指示を出したのか。
いつ出したのか。
文書はあるのか。
対象患者の条件は何か。
どの期間有効なのか。
患者ごとの具体的な医師指示はどのように担保されているのか。
患者へ栄養指導する前に担当医師はその患者への介入を把握していたのか。
を示すことができるはずである。
「包括指示」という名称だけで、管理栄養士が先に患者を選び、先に指導し、後から依頼を整えることまで自動的に正当化されるわけではないというのがTの疑問である。
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9 別院クリニックでは「改善の余地」
ここで同じ法人内の別院クリニックで行われていた外来栄養指導が問題になる。
Tによれば、別院クリニックの外来患者を対象とする栄養指導でも、包括的な医師の指示を前提とする運用を強いられた。
この運用についてO部長は2026年8月7日の回答書で、
不備があり、「改善の余地がある」
との趣旨の回答をしたという。
一方、総合病院の入院患者に対する包括的指示の運用については、「適切である」という趣旨の説明が繰り返されているとTはいう。
では何が違うのか。
別院クリニックでは何が不足していたのか。
入院患者では何が満たされているのか。
患者ごとの具体的指示はどこに記録されているのか。
同じ法人が、一方は「改善の余地」。一方は「適切」。と評価するなら、その違いを客観的資料で説明できるはずである。
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10 2026年8月12日現在も、Tは根拠を求めている
Tによれば、2026年8月12日現在も、M課長、Y主任、M主任らへ、
現在の入院栄養指導を適切と判断する根拠。
診療報酬上の算定要件との関係。
患者ごとの具体的な医師指示がどこにあるのか。
を示すよう求めた。
しかしTの面談記録では、具体的な資料が示されないまま、「適切」という趣旨の回答が繰り返されただけである。そしてM課長の、「会社の決まりを変えるのは大変です」という趣旨の発言へつながった。
Tには、適切かどうかを客観的に検証することより、現在の仕組みを維持することが先になっているように見えた。
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11 Tが求めているのは「私を信じて」ではない
Tは、「私は絶対に正しいから、私の言う通りにしてください」と求めているわけではない。
自分にも分からない。
だから厚生労働省の通知を示してほしい。
医師指示の文書を示してほしい。
電子カルテ上の記録を示してほしい。
法人の正式なルールを示してほしい。
と求めている。
つまりTの要求は、「私を信じてほしい」ではなく、「客観的な根拠を示してほしい」。
その一点である。
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12 記録を調べればかなりのことが分かる
法人には、
医師の診療録。
医師指示の内容。
指示日時。
栄養指導依頼の入力日時。
入力者。
予約表作成日時。
栄養指導実施日時。
栄養指導記録。
電子カルテの更新履歴。
算定日時。
レセプト請求記録。
が存在するはずである。
これらを時系列に並べれば、
医師の指示。
管理栄養士による患者選定。
予約。
栄養指導。
記録。
算定。
請求。
の順序を確認できる。
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13 一症例ではなく、部署全体を調べる
仮に一人の職員が医師の依頼入力を忘れ、後から入力したという一件だけなら、個人的な事務ミスとして説明できる可能性もある。
しかしTが訴えているのは、
約3年間その方法で仕事をしてきた。
管理栄養士側が患者をピックアップする業務フローだった。
医師指示を先に確認しようとするとY主任から叱責された
という問題である。
ならば、一症例ではなく一定期間の複数症例について、
医師指示日時。
依頼日時。
栄養指導日時。
記録日時。
算定日時。
を調べる必要がある。
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14 法人は2024年から問題を知らされていた
Tは2024年8月22日に法人との面談。9月13日に回答面談。
Tによれば、この段階ですでに、
管理栄養士側で患者をピックアップしていること。
医師の患者ごとの具体的指示を事前に確認していないこと。
指導後に依頼や予約を整えること。
T個人だけではなく職場の運用であること。
を伝え、調査を求めた。
法人は遅くとも2024年にはこれら厚生労働省の定める栄養指導の手順に対する問題提起を受けていたことになる。
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15 別院では改善、入院は適切――その根拠は
法人とのやり取りを単純化すれば、こうなる。
T:包括的な指示の運用は本当に算定要件を満たしているのか。
法人:別院クリニックでは改善の余地がある。一方、入院については適切である。
T:では、その違いを客観的な資料で説明してほしい。
法人:「適切」だの一点張り。この最後の問いへの十分な回答が、Tにはまだ示されていないという。
ここに、前編で何度も現れた構造が再び見える。
「結論はある。根拠が見えない。」
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16 「違反」と断定する前に調査する
現時点で、「法人が違法な診療報酬請求をしている」と断定することはできない。
実際の医師指示。
電子カルテ。
算定データ。
レセプト請求。
を確認する必要がある。
一方で、現行の通常の栄養食事指導料では医師の指示が必要で、外来の指示事項については患者ごとに適切な具体的指示を含むことが求められ、入院についてもその取扱いが準用されている。
Tは約3年間、そのような事前の患者ごとの具体的指示を受けて患者を選定した経験がなかったと申告している。法人へ根拠を求めても十分な資料が示されないという。
別院クリニックの類似運用には、法人側から「改善の余地」が示されたという。だからこそ、算定要件とコンプライアンス上の疑義として正式な調査を求めることには理由がある。
必要なのは断罪ではない。記録による検証である。
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17 そして再び「患者に申し訳ない」
Tは患者の前に立つ管理栄養士である。
患者は、自分の病気を理解し、医師と連携した上で栄養指導してくれていると信じているだろう。
そのT自身が、
この指示で本当にいいのか。
指導前に医師は判断しているのか。
この時間でよいのか。
この記録でよいのか。
この算定でよいのか。
という疑問を持ったまま患者へ接する。
それはTにとって大きな職業倫理上の苦痛だった。Tは、「患者さんに申し訳ない」という思いを抱えている。
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18 六つの問題をつなぐもの
第1回。未払い賃金。
第2回。患者カルテ、職場会議、ポッキー事件、「優しさ」という説明、ハラスメント委員会、傷病休暇、栄養指導件数。
第3回。患者給食、患者負担、ポッキー事件、焼肉事件、衛生管理。
第4回。法人回答、相談窓口、謝罪、ハラスメント対応、ガバナンス。
第5回。約10分の栄養指導と30分記録、診療報酬。
第6回。医師の指示、包括指示、診療報酬。
一つ一つは別の問題である。しかしTの記録を通して見ると、共通する構造が見えてくる。
- Tが管理職へ報告する。
- 「確認した」
- 「注意した」
- 「適切である」
- 「ハラスメントではない」
- 「今後徹底する」
という結論が返る。
しかし、
- なぜ起きたのか。
- 誰が責任を負っているのか。
- 何を調査したのか。
- 調査結果は何だったのか。
- 根拠資料は何か。
- Tが受けた精神的負担について、その後どのような職場改善をしたのかは十分に示されない。
- 問題だったとTが考える行為について、全く謝罪がない。
- 問題が長期化する。
- Tのストレスが増す。
- 患者や職場のために問題を指摘しているはずのT自身が、声を上げることによってさらに精神的負担を抱える。
これが、Tが経験したという一連の構造である。
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19 公益性は、何によって示されるのか
社会医療法人には、公的な運営に関する制度上の要件があり、一定の医療保健業について法人税上の非課税措置も設けられている。
しかし、「税制上の措置を受けているのだから、一件の職場問題も許されない」というのが本稿の主張ではない。
公益性は、問題が一度も起きないことだけで証明されるものではない。むしろ、問題が起きた後に、その組織がどう振る舞うか。そこに表れるのではないだろうか。
- 未払い賃金が判明した。→ならば同じ勤務をしていた職員を調べる。
- 患者情報の扱いが問題になった。→ならば事実確認を行い、患者情報を扱う職員へ是正を徹底する。
- 患者給食の喫食が判明した。→ならば喫食だけでなく、食材管理、衛生区域、動線、休憩区域まで検証する。
- 職員が管理職の発言によって強い精神的苦痛を訴えた。→ハラスメントに該当しないと判断したとしても、職場環境上改善すべき点がないかを調べる。
- 診療報酬の算定に疑義が示された。→ならば電子カルテと算定・請求記録を調べる。
- 管理職の対応そのものに疑問が示された。→ならば、その管理職とは別の立場から検証する。そして結果を説明する。
問題がないことを前提に職員を説得するのではなく、問題があるかどうかを記録から調査する。
その姿勢こそが、公益性を掲げる組織に求められるのではないだろうか。
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【公的資料】
- 「栄養士法」第5条の5
管理栄養士が傷病者に療養のため必要な栄養指導を行う際、「主治の医師の指導を受けなければならない」と定めている。 - 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(医科点数表)」
外来栄養食事指導料について、医師の指示に基づくことに加え、管理栄養士への指示事項は患者ごとに適切なものとし、必要な栄養素量や食事形態等について医師が必要と認める具体的な指示を含むことを定めている。 - 同通知「入院栄養食事指導料」
入院栄養食事指導についても医師の指示に基づくことが必要で、外来栄養食事指導料の留意事項の一部が準用される。 - 「医療法」第1条の4第2項
医療者側の指示・運用とは別に、患者への適切な説明と理解という観点を確認する資料。
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【前編エピローグ】
⚫️Tを傷つけた二つのもの
Tを精神的に追い詰めたと本人が認識しているものは、大きく二つに分けられる。
一つは、自分自身が職員として受けたと感じる扱いである。
- 未払い賃金。
- サービス残業を容認・要求するように受け取れるY主任の発言。
- 職場環境について話すよう指定された職場会議に、他職員より著しく低い割合しか参加できず、7か月連続で参加できなかったこと。
- 問題を指摘しても、根本原因や調査結果が十分に示されないこと。
- 問題だったとTが考える行為について、十分な説明や謝罪がないこと。
そしてポッキー事件では、M課長へ衛生上の問題を報告しても十分な対応が得られないと感じ、上位者であるH部長代理へ相談した。
その際、M課長が強く対応しなかったのは「部下への優しさ」によるものという趣旨の説明を受けたという。Tには、「問題を指摘する自分には、優しさが足りない」と言われたように聞こえた。
Tはこの件を法人のハラスメント委員会へ報告したが、「ハラスメントには当たらない」との結論を知らされた。しかしTが求めていたのは、名称としてハラスメントに当たるかどうかだけではない。
なぜ自分がここまで傷ついたのか。その職場環境を組織としてどう改善するのか。そこまで考えてほしいということだった。
もう一つは、管理栄養士として、患者に誠実でありたいという職業倫理に関わる苦痛だった。
- 患者のカルテが揶揄の材料になる。
- 患者のために用意された給食を検食ではない職員が食べる。
- 衛生管理上特別な取扱いが必要な場所に、食べかけの私物食品が置かれる。
- 件数を増やすため、患者一人への栄養指導時間を短縮するよう求められる。
- 実際とは異なる時間が電子カルテへ記録される。
- 栄養指導が費用の発生する医療であることを患者へ知らせたいと考えても、その必要はないという趣旨の認識を示される。
- 医師の具体的な指示を先に確認しようとすると、「非効率」という趣旨で叱責される。
Tは、「自分が黙ることで、患者に対して不誠実だと感じる医療の運用に加担することにならないか」という葛藤を抱えた。
だから、黙っていても苦しい。声を上げても苦しい。その状態が続いたという。
Tは、こうした職場上の出来事と、その後の法人・管理職の対応が重なる中で精神的負担を募らせ、心療内科へ通院し、傷病休暇に至ったと説明している。
本稿は、個々の出来事とTの傷病との医学的因果関係を独自に認定するものではない。しかし、人の健康を守るはずの病院で働く職員が、心療内科へ通院するに至った。その職場で起きた出来事と対応をストレス要因として訴え。その経過は、組織として重く受け止めるべきではないだろうか。
⚫️法人自身が掲げる「人権」と「心柱」
ここで、この社会医療法人自身の理念に立ち返りたい。
法人は、「私たちが見失ってはいけないことは『職員を含めすべての人々の人権を守ること』。」と理念に掲げている。
さらに、事業には大切な「心柱」が必要であり、それが、「ともすれば弱気になりそうな私たちの心を叱咤激励するように働いてくれる」とも述べている。
ならば、その理念を今回の出来事にも当てはめる必要があるのではないか。
- 未払い賃金を訴えた職員の権利はどう守られたのか。
- 患者情報や衛生管理に疑問を呈した職員の声はどう扱われたのか。
- 精神的苦痛を訴えた職員に対して、「ハラスメントではない」という結論の先に、どのような職場改善が行われたのか。
- 患者に誠実な医療をしたいと訴える専門職の声は、どう受け止められたのか。
これらも、「職員を含めすべての人々の人権を守る」と記された法人が掲げる理念の中で検証されるべき問題ではないだろうか。
⚫️職員からの進言も「叱咤激励」ではないのか
法人は、自らの理念を、組織を目標へ導く「心柱」と表現している。ならば、法人にとって耳の痛い問題を指摘する職員の声もまた、組織を正しい方向へ戻すための「叱咤激励」になり得るのではないか。
- 未払い賃金があります。
- 患者情報の扱いがおかしいのではないですか。
- 衛生管理を確認してください。
- 患者給食を職員が食べてよいのでしょうか。
- 実際の栄養指導時間とカルテ記録が違います。
- 患者に費用が発生することを知らせた方がよいのではないですか。
- 医師の具体的な指示を確認してから患者へ介入すべきではないですか。
Tは、こうした疑問を繰り返し法人へ伝えてきた。その声を、
- 厄介な指摘。
- 細かすぎる要求。
- 職場の和を乱すもの。
として遠ざけるのか。
それとも、法人自身が掲げる理念に照らし、自らの運営を見直すための声として受け止めるのか。そこに法人の掲げる理念が本当に生きているかどうかが表れるのではないだろうか。
⚫️人を治す病院が、職員を病ませる場所にならないために
病院は、本来、人の病気を治し、健康を守る場所である。だからこそ、そこで働く職員が、職場で起きた出来事と、その後の対応によって精神的負担を増したと訴え、心療内科へ通院し、傷病休暇に至ったという経過は重い。
本稿は、「この病院がTの病気を医学的に引き起こした」と断定するものではない。
しかし、人を治療する病院が、職員から「この職場での出来事と対応が自分を病ませた」と訴えられている。
その声を軽く扱ってよいはずはない。そして、何を進言しても十分に聞いてもらえないと職員が感じ続けているのであれば、理念に掲げる「叱咤激励」という言葉も空虚になってしまう。
組織への進言を聞くことができなければ、理念が組織を叱咤激励することもできない。
Tが求めているのは、この法人を壊すことではない、Tが求めていることは単純である。
- 職員が安心して働けること。
- 働いた時間には賃金が支払われること。
- 患者情報を大切に扱うこと。
- 患者のための食事と衛生管理を適切に扱うこと。
- 患者一人一人に必要な時間を使って栄養指導すること。
- 栄養指導が費用の発生する医療であることを患者に分かるよう伝えること。
- 電子カルテには実際に行った医療を正確に残すこと。
- 医師と管理栄養士が、患者ごとの医学的根拠を確認できる手順で連携すること。
そして問題があったなら、
- 調査する。
- 説明する。
- 必要なら謝罪する。
- 是正する。
- 再発させない。
それだけである。
社会医療法人だから、一件の問題も起こしてはいけないわけではない。むしろ問われるのは、問題が起きたとき、それを直す力を持っているか。
内部から上がった声を、厄介なものとして処理するのか。それとも、自らを正すための「叱咤激励」として受け止めるのか。法人自身が掲げる、「職員を含めすべての人々の人権を守ること」という理念。そして、組織を目標へ導くという「心柱」。
前編6回で問うてきたのは、その理念が、現場で本当に機能していたのかということでもある。
- 患者に誠実でありたいと声を上げた医療職を、その組織はどう扱ったのか。
- 公益性を認められた社会医療法人は、その声にどう向き合ったのか。
- その答えを示すのは、理念集に書かれた言葉ではない。
前編で問うたのは、公益性を認められた社会医療法人の内部で、何が起きていたのか。今後後編で問うのは、そこで声を上げた職員を守るはずの仕組みは、本当に機能していたのか。
そしてシリーズ全体を通じて問い続けたいことは一つである。患者や職員からの声を、組織にとって都合の悪いものとして退けるのか。それとも、その声を組織改善に生かし、患者にも職員にも誠実な、公益性にふさわしい社会医療法人へ変わることができるのか。
【後編 労働組合と団体交渉編】として改めて検証する。
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【公的資料】
- 「栄養士法」第5条の5
管理栄養士が傷病者に療養のため必要な栄養指導を行う際、「主治の医師の指導を受けなければならない」と定めている。 - 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(医科点数表)」
外来栄養食事指導料について、医師の指示に基づくことに加え、管理栄養士への指示事項は患者ごとに適切なものとし、必要な栄養素量や食事形態等について医師が必要と認める具体的な指示を含むことを定めている。 - 同通知「入院栄養食事指導料」
入院栄養食事指導についても医師の指示に基づくことが必要で、外来栄養食事指導料の留意事項の一部が準用される。 - 「医療法」第1条の4第2項
医療者側の指示・運用とは別に、患者への適切な説明と理解という観点を確認する資料。
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【資料について】
本稿では、法令・制度については厚生労働省、個人情報保護委員会等の公的資料を参照しています。個別の職場内出来事については、Tが保有する文書、写真、電子メール、勤務記録、録音、電子カルテで確認した内容、法人への申入書、法人からの回答書等に基づいています。公的資料から直接確認できない個別の事実については、Tの申告・記録に基づくものであることが分かるよう本文中で区別しています。
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【取材・お問い合わせについて】
本連載は、現時点でTが保有する文書、写真、勤務記録、録音、電子カルテで確認した内容、法人へ提出した申入書、法人からの回答書等に基づいて問題を提起するものです。
法人側の見解を確認できていない事項については、Tの申告・記録に基づく内容であることが分かるよう記載しています。
本稿は、Tの傷病と個別の職場上の出来事との医学的因果関係を独自に確定するものではありません。Tが、職場上の出来事とその後の法人・管理職による対応をストレス要因として訴え、心療内科への通院、傷病休暇に至った経緯を記載しています。
未確認事項について、犯罪、カルテ改竄、不正請求、ハラスメント、隠蔽その他の違法行為が確定したものとして断定するものではありません。
関係資料については、患者および職員の個人情報、診療情報その他の機微な情報を保護したうえで、必要性と相当性を確認し、可能な範囲で提示します。
当該社会医療法人から具体的な説明、反論または資料の提示があった場合には、その内容を確認し、必要に応じて記事を追記・訂正します。
本連載の目的は、特定の個人を攻撃することではありません。問題の事実関係を検証し、職員が安心して働き、患者が安心して医療を受けられ、法人自身が公益的な立場にふさわしい、より健全な組織になることを求めるものです。
メディア関係者、医療・労務・法律関係者からの取材およびお問い合わせを受け付けています。
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