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社会医療法人の公益性と職場問題【連載第5回】

本シリーズへのリンクは以下

第1回 、第2回 、第3回 、第4回 、第5回 、第6回 

 

社会医療法人の公益性と職場問題【連載第5回】

 

<患者のための30分は、なぜ10分にされたのか>

――YA元主任の「件数」と

電子カルテの30分記録――

 

【イントロ】

 Tが最も「患者に申し訳ない」と感じている問題の一つが、栄養指導時間である。

 Tによれば、YA元主任から、栄養指導件数を増やすため、患者一人当たりの栄養指導時間を約10分へ短縮するよう求められた。

 そしてTは、その運用の中でさらに不可解な事例を確認したという。

 実際に患者へ栄養指導した時間は約10分。しかし電子カルテには「30分」と記録されていた。さらに栄養指導料が算定・計上されていた。

 

 患者は、この栄養指導が診療報酬の対象となる医療であり、自分自身にも医療費の負担が生じ得ることを、どこまで理解していたのだろうか。

 

 なぜ10分が30分になったのか。そして、患者に何を説明した上で行われていたのか。

 

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1 栄養指導は「食べ過ぎないでください」と言う仕事ではない

 管理栄養士の栄養指導を、「野菜を食べましょう」「塩分を控えましょう」という簡単な助言だと思う人もいるかもしれない。

 

 実際には、病状、検査値、薬剤、体重、普段の食生活、仕事の時間、家族構成、調理環境、経済状況、患者本人の理解度などを確認する。患者の生活は一人一人違う。

 

 したがって、「同じ病名だから同じ話を30分する」という仕事ではない。

 

ChatGTPにて生成したイメージ画像

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2 患者と話す時間以外にも仕事がある

患者と話す前にはカルテを読む。

検査値を確認する。

医師や看護師の記録を読む。

指導内容を考える。

指導後には電子カルテへ記録し、必要なら他職種へ情報を伝える。

 

 したがって、「栄養指導1件30分」といっても、管理栄養士の仕事全体が30分で済むわけではない。

 

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3 「件数を増やすための手法」

 Tによれば、件数を増やすためにその栄養指導時間を約10分へ短縮するよう求めたのが、YA元主任だった。

 

 さらに患者への栄養指導の事前説明について、「事前に説明する必要はない」という認識を示した※のは、Y主任だった。

 

※※2026年8月12日の面談で、Y主任の発言では明確に診療報酬の算定を優先に栄養指導する患者の選定をTに強要した録音より

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4 患者のために10分で済んだのか、件数のために10分にしたのか

 患者によっては結果的に短時間で指導が終わることもあり得る。それは、患者の状態を見た結果、10分で済んだという話である。

 

 一方、件数を増やしたいから最初から10分程度で終えるのであれば、判断基準が違う。患者ではなく、「一日に何件できるか」という数値が基準になる。

 

 Tが問題にしているのは後者である。

 

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5 そもそも「診療報酬」とは何か

 日本の保険診療では、診療行為等について点数が定められ、その点数をもとに医療費が計算される。患者は自己負担分を支払い、そのほかは医療保険等から医療機関へ支払われる。

 

 栄養食事指導にも診療報酬上の項目がある。つまり、一定の要件を満たす栄養指導を実施し、算定・請求が認められれば、医療機関の収入につながる。これは悪いことではない。医療機関が適切な医療の対価として診療報酬を受け取ることは、医療提供を続けるために必要である。

 

 問題は、病院は患者に必要な医療を提供した。その結果として診療報酬を得るのか。それとも、※診療報酬として算定できる件数を増やすことを優先に、患者への医療を組み立てるのか、という順番である。

※2026年8月12日の面談で、Y主任の発言では明確に診療報酬の算定を優先に栄養指導する患者の選定をTに強要した録音より

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6 現在の栄養食事指導の算定ルール

 令和8年度の通常の外来栄養食事指導料では、管理栄養士が医師の指示に基づき、初回は概ね30分以上、2回目以降は概ね20分以上の栄養指導を行う取扱いが示されている。入院栄養食事指導料についても、医師の指示に基づき、初回概ね30分以上、2回目概ね20分以上とされている。

 

 一方で、栄養食事指導には区分によって異なる取扱いもあるため、「どのような栄養指導でも30分未満なら必ず算定できない」と一律に断定することはできない。

 

 なお、問題となった出来事は2024年であり、当時の算定要件との最終的な適合性については、当時の診療報酬通知と実際の症例記録を照合する必要がある。本稿で現在の令和8年度の通知を紹介するのは、現在の制度を読者に理解してもらうためである。

 

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7 実際は約10分、電子カルテには30分

 Tは、実際には約10分だった栄養指導について、電子カルテには「30分」と記録され、栄養指導料が算定・計上されている事例を確認したという。

 この問題は三つに分けると分かりやすい。

 第一に、実際に患者へ行った医療。第二に、電子カルテへ記録した内容。第三に、診療報酬として処理した内容。

 本来、この三つは整合している必要がある。

 

ChatGTPにて生成したイメージ画像

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8 電子カルテは単なる請求用メモではない

 電子カルテは、患者にどのような診療を行ったかを残す医療記録である。

 だから、実際には約10分だったものについて、最初から30分と入力したということがあったのであれば、診療報酬以前に、診療記録として事実に即しているのかという問題が生じる。

 

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9 「カルテ改竄」とは断定しない

 ここは慎重に区別する。本稿は、一度10分と正しく記録し、後から30分に書き換えたという証拠まで確認しているわけではない。したがって「カルテ改竄」と断定しない。

 

 Tが問題にしているのは、実際には約10分だったにもかかわらず、最初から事実と異なる30分という内容を入力した可能性である。これは後から書き換えたかどうかとは別の問題である。

 

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10 「算定」と「請求」は同じではない

 医療機関内部で「この患者には栄養食事指導料を算定する」という処理が行われたことと、最終的に診療報酬明細書、いわゆる「レセプト」として保険者へ請求され、支払われたことは厳密には同じではない。

 

 Tが確認しているのは算定・計上までだという。したがって本稿は、「約10分を30分と記録したから不正請求が確定した」とは書かない。

 

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11 患者は「栄養指導にも費用がかかる」と知っているのか

 ここでTがもう一つ疑問を持ったのが、患者への説明だった。

 レントゲン撮影や採血であれば、多くの患者は「これは検査であり、医療費がかかる」と理解しやすい。しかし栄養指導はどうだろうか。

 

 管理栄養士がベッドサイドへ来て、「普段はどんな食事をしていますか」「塩分を少し減らしましょう」などと話をする。患者によっては、「入院中に管理栄養士が無料で相談に乗ってくれている」くらいに受け止めていても不思議ではないとTは感じていた。

 

 しかし実際には、一定の要件を満たせば診療報酬として算定される医療である。患者自身にも、加入する医療保険や負担割合等に応じた自己負担が生じ得る。診療報酬としてはおよそ2,600円である。

 

 だからTは、栄養指導を始める前に、「これは栄養食事指導という保険診療で、医療費が発生するものです」という趣旨を患者へ伝えた方が誠実ではないかと考えた。

 

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12 Y主任は「説明するな」と言ったわけではない

 ここも事実関係を正確に書く必要がある。

 Tによれば、Y主任から「患者へ費用のことを説明してはいけない」と明確に禁止されたわけではない。

 

 一方で、Tが事前に患者へ知らせる必要性について話した際、Y主任は、そのような事前説明をする必要はないという趣旨の認識だったとTは受け止めている。

 そこでTには素朴な疑問が生じた。説明してはいけないわけではない。それなら、知らせてもよいのではないか。

 

 患者が何を受けるのかを理解した上で、「お願いします」と受ける方が、患者に対して誠実ではないのか。反対に、患者が内容を聞いた上で質問したり、「今回は希望しません」という意思を示したりする機会があってもよいのではないか。

 Tはそう考えた。

 

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13 医療者側に「指示」があることと、患者が理解していることは別問題

 この問題は、次回扱う「包括的な医師の指示」ともつながる。

 法人が、「医師の包括的な指示があるから、この方法で栄養指導を行っている」と説明したとしても、それはまず医療者側の業務運用や算定要件に関する話である。

 

 一方で、患者本人が、なぜ自分に栄養指導が行われるのか、どのような医療なのか、費用が発生するのかを理解しているかどうかは、別の問題である。

 

 Tが危惧したのは、

患者が栄養指導の意味や費用を十分理解していないまま、

医療者側が対象患者を選び、

栄養指導を行い、

診療報酬を算定する運用

になれば、

患者自身が考えたり意思を示したりする機会が減るのではないかということだった。

 

 本稿は、栄養指導を行うたびに具体的な自己負担額を事前に説明しなければ違法であると主張するものではない。

 Tが問うているのは、もっと基本的なことである。

 

患者が何を受けるのかよく分からないまま医療が進むことと、

内容と費用が発生することを理解した上で医療を受けること。

 

患者中心の医療として、どちらがより誠実なのか、という問いである。

 

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14 患者自身も、公的医療保険も費用を負担する

 ここでもTが「患者に申し訳ない」と感じる理由がある。

 診療報酬は、病院内だけで完結する数字ではない。保険診療の費用は、患者側の自己負担と医療保険制度による給付によって支えられる。

 

 つまり、栄養指導1件を算定するということは、単に院内の実績表へ「1件」と数字が増えるだけではない。患者本人と、公的な医療保険制度がその医療費を負担することにつながる。

 だからTにとって、もし算定要件を満たさない行為が診療報酬として処理されていたなら、という疑問は、単に「法人の売上計上が正しいか」という問題ではない。

 

 さらに、患者自身が栄養指導を医療として十分理解していないまま算定されていたのだとすれば、Tにはより強い違和感があった。

 患者と社会が支える公的医療保険制度に対して、自分の仕事は誠実なのか、という問題だからである。

 

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15 調べる方法はある

 法人内部には、栄養指導を行った日時、電子カルテへ入力した日時、入力者、更新履歴、算定日時、会計データ、レセプト請求、取消し、返戻、再請求といった情報が残っているはずである。

 それを時系列に並べれば、実際に何をしたのか、何と記録したのか、何を算定したのか、何を実際に請求したのかを検証できる。

 

 患者への説明方法についても、

法人として統一した説明ルールがあったのか、

患者向け資料は存在したのか、

実際にどのような説明をしていたのか

 

を確認することはできる。

 

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16 2024年8月14日、Tはすでに法人へ知らせていた

 Tは2024年8月14日、栄養指導時間や実施方法、診療報酬算定等に関する改善を旧労働組合と打ち合わせした。

 また同年8月22日に法人との面談、同じく9月13日に回答面談が行われた。

 

 Tは、実際は約10分の栄養指導にも関わらず、

電子カルテには30分と記載、

YA元主任による時間短縮指示、

栄養指導料の算定・計上について説明し、調査を求めたという。

 

 法人は遅くとも2024年の段階で問題提起を受けていたことになる。

 

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17 その後、朝礼で「30分行うように」

 Tの記録では、その後の朝礼で、栄養指導は30分行うようにとの趣旨の指示が出された。今後の運用を適正化すること自体は望ましい。

 

 しかしTの疑問は、

 では、なぜ変更したのか。

 

従来の約10分運用に問題があったのか。

問題があったなら過去を調べたのか。

約10分を30分と記録した症例が他にもなかったか。

算定状況を確認したのか。

実際に請求されていた場合、必要な訂正や返還を検討したのか、

 

ということである。

 

 Tによれば、こうした具体的な調査結果は示されていない。これから正しくする。それは必要である。

 しかし、過去に何があったのかを調べることとは別である。

 

 Tが求めているのは、未来の改善と過去の検証の両方なのである。

 

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18 「患者に申し訳ない」

 患者は、自分のために管理栄養士が専門的な時間を使ってくれていると考えるだろう。管理栄養士は患者の生活に踏み込み、何を食べていますか、どんな生活をしていますか、家族はどうですか、と尋ねる。患者は信頼して答える。

 

 その裏側で、件数を増やすために時間を短縮する。実際とは異なる時間を記録する。患者がそれを費用の発生する医療だと十分に理解しているか分からないまま算定する。

 

 もし、そのような運用になっていたとすれば、Tは、「自分は患者さんに対して誠実な仕事できていると言えるのか」という葛藤を抱く。

 

 Tが事前に知らせたいと考えたのは、患者を怖がらせたいからでも、栄養指導を断らせたいからでもない。

 患者自身に、自分がどのような医療を受けているのか知ってほしい。

 そして理解した上で受けてほしい。それがTの考える患者への誠意だった。

 

 さらに、その医療費は患者自身と公的医療保険制度によって支えられる。Tが「患者さんに申し訳ない」と感じる理由は、ここにある。

 

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19 社会医療法人だからこそ

 「病院は利益を出してはいけない」という話ではない。病院が安定して経営されなければ、医療を継続できない。診療報酬を適切に算定することは必要である。

 しかし、患者に必要な医療を行った。その結果として診療報酬を得ることと、診療報酬の件数を増やす。そのために患者への時間を短縮することは同じではない。

 さらに、患者へ何をするのか十分に知らせ、その理解を得ながら医療を行うことと、医療者側のルールや包括的な指示だけで手続きを進めることも同じではない。

 社会医療法人には、公益性を前提とした制度上の位置づけがある。だからこそ問われるのは、何件算定したかだけではない。

 

その一件一件について、患者に必要な医療だったのか、

実際に必要な時間をかけたのか、

正確に記録したのか、

適切に算定したのか、

そして、患者本人に対して誠実な説明をしていたのか。

 

 そこまで含めて検証する必要があるのではないだろうか。

 

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【エピローグ】

 ここまで見てきたのは、患者に実際に何分栄養指導したのか、電子カルテに何分と記録したのか、診療報酬として何を算定したのか、そして患者自身は、その栄養指導が費用の発生する医療であることを理解していたのか、という問題だった。

 しかし、もう一つ根本的な問いが残る。そもそも、その患者に栄養指導をするという医師の指示は、指導前にどのような形で存在していたのか。

 法人は「包括的な医師の指示」による運用を説明している。しかし、医療者側に「包括指示」が存在することと、患者がその医療の意味を理解し、自分の意思を示せることは別問題である。

 

 そしてTは約3年間、管理栄養士が先に患者を選ぶ。先に栄養指導する。その後に依頼や予約を整える、という運用の中で働いてきたと説明している。

 医師の患者ごとの具体的な指示を先に確認しようとしたTを、「非効率」という趣旨で叱責したのはY主任だった。

 

 最終回では、「医師が指示したことになっている」ことと、「その患者について実際に医師が具体的に指示していたこと」は同じなのか。そして、医療者側の効率と、患者中心の医療のどちらが優先されていたのかを検証する。

 

 

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【公的資料】

  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」
    2024年に起きた栄養指導時間・算定問題を検討する際に、当時適用されていた診療報酬制度を確認するための資料。
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」及び「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」
    現行制度における外来・入院栄養食事指導料の要件確認に使用。
  • 同通知「外来栄養食事指導料」
    通常の外来栄養食事指導について、医師の指示に基づき、初回概ね30分以上、2回目以降概ね20分以上とされている。
  • 同通知「入院栄養食事指導料」
    入院栄養食事指導についても、医師の指示に基づくこと、初回概ね30分以上、2回目概ね20分以上であること等を確認するために使用。
  • 「医療法」第1条の4第2項
    医療の担い手が、医療を提供する際に適切な説明を行い、患者の理解を得るよう努めることを定めている。患者への事前説明をめぐるTの問題提起を考える際の公的な基礎資料。

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【資料について】

 本稿では、法令・制度については厚生労働省、個人情報保護委員会等の公的資料を参照しています。個別の職場内出来事については、Tが保有する文書、写真、電子メール、勤務記録、録音、電子カルテで確認した内容、法人への申入書、法人からの回答書等に基づいています。公的資料から直接確認できない個別の事実については、Tの申告・記録に基づくものであることが分かるよう本文中で区別しています。

 

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【取材・お問い合わせについて】

 本連載は、現時点でTが保有する文書、写真、勤務記録、録音、電子カルテで確認した内容、法人へ提出した申入書、法人からの回答書等に基づいて問題を提起するものです。

 法人側の見解を確認できていない事項については、Tの申告・記録に基づく内容であることが分かるよう記載しています。

 本稿は、Tの傷病と個別の職場上の出来事との医学的因果関係を独自に確定するものではありません。Tが、職場上の出来事とその後の法人・管理職による対応をストレス要因として訴え、心療内科への通院、傷病休暇に至った経緯を記載しています。

 未確認事項について、犯罪、カルテ改竄、不正請求、ハラスメント、隠蔽その他の違法行為が確定したものとして断定するものではありません。

 関係資料については、患者および職員の個人情報、診療情報その他の機微な情報を保護したうえで、必要性と相当性を確認し、可能な範囲で提示します。

当該社会医療法人から具体的な説明、反論または資料の提示があった場合には、その内容を確認し、必要に応じて記事を追記・訂正します。

 本連載の目的は、特定の個人を攻撃することではありません。問題の事実関係を検証し、職員が安心して働き、患者が安心して医療を受けられ、法人自身が公益的な立場にふさわしい、より健全な組織になることを求めるものです。

 メディア関係者、医療・労務・法律関係者からの取材およびお問い合わせを受け付けています。

notohantou2024(アットマーク)gmail.com

社会医療法人の公益性と職場問題【連載第4回】

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第1回 、第2回 、第3回 、第4回 、第5回 、第6回 

 

社会医療法人の公益性と職場問題【連載第4回】

 

<問題を知らせても、なぜ変わらなかったのか>

――「優しさ」「ハラスメントではない」、

そして「殿様の火の用心」――

 

【イントロ】

「確認した」

「注意した」

「周知するよう指示した」

「適切に運用している」

 

 こうした言葉は、一見すると法人が問題へ対応したことを示している。

しかし、少し具体的に聞くとどうなるだろう。

 

誰が確認したのか。

誰に注意したのか。

何を注意したのか。

誰に周知したのか。

いつ終わったのか。

なぜ適切なのか。

その根拠資料は何か。

 

 Tが法人対応に不信を強めたのは、結論は返ってくるが、その結論に至った事実と検証過程が見えないという状態が繰り返されたからである。

 

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1 法人の「管理者へ注意した」

 焼肉事件について法人は、「管理者へ注意した」と回答した。Tは、

 

誰が。

誰に。

何を。

どのように。

注意したのかを尋ねた。

 

 例えば、「焼肉を食べるのはやめてください」とだけ注意したのであれば、管理責任の問題までは扱っていない。

 

 一方、「禁止ルールを徹底できず、自らも喫食した管理責任について注意した」のであれば意味が違う。だからTは具体化を求めた。

 

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2 法人の「確認した」

 大量調理施設衛生管理マニュアルを確認した。喫食しないことを再確認した。

 

しかし、

管理職が自分でマニュアルを読んだだけなのか。

職員へ説明したのか。

実際の区域や動線を点検したのか。

職員が理解したことを確認したのか。

では意味が違う。

 

 Tにとって「確認した」という結論だけでは、実際の改善内容が分からない。

 

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3 法人の「周知するよう指示した」

 法人は、「再度全職員へ周知するよう指示した」とも回答した。では、

 

周知は終わったのか。

誰が実施したのか。

誰を対象にしたのか。

どの文書で行ったのか。

完了を誰が確認したのか。

 

 ここでTが用いた表現が、「殿様の火の用心」である。

 

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4 「殿様の火の用心」とは何か

殿様が、「火事を起こすな。火の用心をせよ」と命令する。

家老も同じ言葉を下へ伝える。

奉行も下へ伝える。

末端の火消しまで、「火の用心するように」と言う。

全員、「指示しました」と報告できる。

 

しかし、

実際に火元を見回ったか。

消火設備は使えるか。

誰が責任者か。

夜間巡回をしたか。

火が消えていることを確認したか。

 

という具体的な行動がなければ火災は防げない。

 

 これがTの言う「殿様の火の用心」である。指示したことと、管理できたことは同じではない。

 

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5 「今後」の前に「なぜ起きたか」

 Tは再発防止に反対しているわけではない。これから正しくすることは当然必要である。しかし、

 

今後気をつけます。

今後給食の残りは食べません。

今後栄養指導は30分行います。

 

と未来だけを変えても、過去に何が起きたのかは消えない。

 

焼肉事件なら、

いつから喫食していたのか。

なぜ禁止ルールが守られなかったのか。

管理者はいつ把握したのか。

なぜ止めなかったのか。

 

未払い賃金なら、

なぜ法人通達が職員へ伝わらなかったのか。

なぜ勤怠管理で発見できなかったのか。

 

 Tが求めているのは、根本原因の検証である。

 

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6 謝罪は何のためなのか

 Tが謝罪を求めることについて、「頭を下げさせたいだけではないか」という見方もあり得る。

 

 しかしTは謝罪をそのように捉えていない。

問題があった。

組織がその問題を認識する。

当事者へ説明する。

必要なら謝罪する。

何を改めるか決める。

同じことを繰り返さない。

 

 謝罪は、その是正過程の一つだという。

 例えばY主任のサービス残業を容認するように受け取れる発言。Tによれば労働組合からも問題性の指摘があった。それでも現在までY主任本人から謝罪はない。

 

 では法人は、あの発言は適切だったと判断しているのか。それとも不適切だったと判断しているのか。

 そこが曖昧なまま同じ管理職の下で働くことは、Tにとって大きな負担だった。

 

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7 ポッキー事件――上司へ相談すると「優しさ」

 法人の問題処理に対するTの不信を象徴するもう一つの例が、ポッキー事件後のH部長代理とのやり取りである。

 

 Tは衛生上疑問のある状態について、まずM課長へ改善を求めた。十分な対応が得られないと感じたため、その上司に当たるH部長代理へ相談した。

 そこでTは、M課長が現場の部下へ強く対応しなかったのは「部下への優しさ」によるものという趣旨の説明を受けたという。

 

 Tには、問題へ対応しないことが「優しさ」なら、改善を求める自分には「優しさがない」と評価されたように感じられた。

 この解釈はT自身の受け止めである。

 しかし、その受け止めによってTが強い精神的負担を感じたことは、この問題を考えるうえで重要である。

 

実際に栄養管理科の事務所に共用机に放置された菓子

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8 ハラスメント委員会の結論で、問題は終わったのか

 Tはこの出来事を法人のハラスメント委員会へ報告した。その後、「ハラスメントには当たらない」との結論を知らされたという。

 ここでもTが求めているのは、「必ずハラスメントと認定してください」という結論だけではない。

 

なぜ衛生上の問題への不対応が「優しさ」と説明されたのか。

問題を指摘した職員が、その結果として自らの人格を否定されたような苦痛を感じる対応になったことをどう評価したのか。

管理職として適切なコミュニケーションだったのか。

Tの精神的負担を踏まえ、職場環境上どのような改善を行ったのか。

という検証である。

 

 「ハラスメントではない」という判定と、「管理上問題がなかった」という判定は同義ではない。仮にハラスメントに該当しないとしても、職場環境改善の必要性まで消えるわけではない。Tがこの件を問題にし続ける理由はそこにある。

 

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9 一次的な問題に「二次的ストレス」が重なる

 Tにとって、

 

未払い賃金。

患者カルテの揶揄。

ポッキー事件。

焼肉事件。

 

などは一次的なストレスだった。

 

 しかし、その後、

 

返事が来ない。

回答が抽象的。

根拠を尋ねても示されない。

何を調査したか分からない。

謝罪がない。

上位管理職へ相談すると、自分自身の人格を否定されたように感じる。

ハラスメント委員会へ訴えても、その苦痛がどのように職場改善へ反映されたのか分からない。

 

という対応が重なる。

 

 Tは、問題そのものによるストレスに、問題処理をめぐる二次的なストレスが重なったと説明している。

 

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10 なぜO部長が相談窓口なのか

 Tは当初、職場環境改善についてS元法人技術部長へ相談していた。その人物が急逝した後、O部長が対応を引き継いだ。

 

 しかしその後、Tが改善を求める問題の中に、

O部長自身の回答内容。

O部長自身の問題評価。

O部長が行った調査や対応。

が含まれるようになった。

 

 そこでTは別の上位者を相談窓口にしてほしいと申し入れた。

 

 Tの主張は、「O部長が自分の希望する答えをくれないから嫌だ」ではない。O部長自身の対応が検証対象になっているのに、その本人が検証の窓口と回答者を兼ねることが適切なのかという中立性の問題である。

 

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11 抗議文への回答で、T自身の落ち度が先に書かれる

 TがO部長への不信を強めた理由の一つに、Y主任への抗議に対する回答書がある。

 Tによれば、回答の冒頭に、その抗議内容とは直接関係しないT側の過去の問題が記載された。その後にTが抗議した内容への回答が続いた。

 

 Tには、「問題を指摘しているT自身にも問題があります」という印象を先に与えることで、Tの問題提起そのものの信用性を下げようとしているように感じられた。

 仮にTに別の問題があるなら、それは別途検証すればよい。

 Tに別の問題があるかどうかと、Y主任の発言が適切だったかどうかは、別問題である。

 

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12 2026年8月12日、「会社の決まりを変えるのは大変です」

 Tは入院患者への栄養指導について、包括的な医師の指示による現在の運用が、診療報酬上本当に適切なのか。その根拠を文書で示してほしい。と法人へ求めている。

 2026年8月12日の面談記録によれば、M課長から、「会社の決まりを変えるのは大変です」との趣旨の返答があった。しかしTが尋ねていたのは、「自分の希望に合わせて会社のルールを変えてほしい」という話ではない。

 現在の会社のルールが、法令や診療報酬上の要件に適合しているのか確認したいという話である。

 

 本来は、

外部の法令・算定要件を確認する。

それに適合する社内ルールを作る。

という順序ではないのか。

適切なら根拠を示せばよい。

 

 適切でないなら、変更が大変かどうかとは別に、是正を検討する必要がある。

 

ChatGTPにて生成したイメージ画像

 

8月12日面談文字起こしと不当労働行為に該当する管理職M課長の発言

【Y主任】
[00:08] そこは私たちが代行でやっているんですね。

【T】
[00:12] おかしくないですか。

【Y主任】
[00:12]一応、代行でやっていることで、その代行をするために、栄養管理の必要性ありていう包括的な指示を最初にもらっているんです。

【T】

[00:20] じゃあ、患者さんは、栄養指導が必要かどうか、別に先生に言われたわけでもないのに、勝手に私たちが栄養指導に行って、栄養指導を受けられて。それによっていったら、費用もかかるじゃないですか。そこに関しては、患者さんに不親切なところはないんですか。

【Y主任】
[00:50] なので、包括的に指示をもらっているということを、私たち勝手にやっているのではなくて、医師が指示をしていて、そして私たちは、その代行で指示を立てたりとか、いろいろして、全部、医師の代行でやっているんです。その代行でするために、包括的な指示をもらっているんです。分かりますか。

【T】
[01:14] 分かりますけど、例えば、もし包括的な医師の指示で、レントゲン撮っていいよってなって、勝手に取るみたいな感じ。

【Y主任】
[01:23] レントゲンの事は言われてもあれですが。

 

 

【T】
[01:27] でも、診療の行為じゃないですか。だから、きちんと先生が「この人は栄養指導が必要です」。でもこの人は、それこそ98歳とかだし、これから退院する先が施設とかだし、家族さんが家で調理するとか、本人が調理するとか、その、98歳で栄養状態は心配だけれども、その本人さんに何か改善が必要ですよ、というところではない」というふうに、こうやって言ってはったとしても、栄養管理の必要性が「あり」になっていたら、私たちは、先生から「そういう患者さんで、栄養指導をさせてもらっていいですよ」というふうな指示をもらっているので、あの栄養指導しました、でも構わないということですか。

【M課長】

[02:23] なんで、さっきも、法人のルールがそういうふうになっているので、それを、あのー、覆すとか、「いや、そうじゃないよ」っていうのであれば、なかなかそれって、すごい労力やと思うんですよね。昔から、どういうふうに決めていって、「こういうやり方でやってください。間違いないです」って言われているのに、「いや、それが違うでしょう」っていうたって、今度どうしましょうってなると思うんですよ。なので、あのー、※我々は法人から雇われて、そういうふうに決められたルールのもとでやっているんで、それに対してどうのこうのって言って、あのー疑問を投げかけるのはまあいいですけど、それに従わないというのは、ちょっと違うんじゃないかなと思うんですよ。

※不当労働行為に該当する管理職M課長の発言

 

【T】
[03:04] 私は従わないとは言っていなくて、すごくその部分が疑問に思っていますし、実際、患者さんに費用の説明を、費用がかかることじゃないですか。それはどういうふうに、なんかこう、説明とか。

【M課長】

[03:24] 患者さんに栄養指導をするということは、いいことやと思うんですよ。やっぱり、すべての患者さんに栄養指導をしてあげるというのが、やっぱ患者さんの健康面も考えて、※退院も早く、早められると思うので。

 

※栄養指導は退院後の食事管理に関するので実施有無で退院が早まることはない。

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13 「適切です」では、なぜ適切なのか分からない

 Tによれば、O部長、M課長、Y主任、M主任らから、現在の入院患者に対する栄養指導は適切であるとの趣旨の説明が繰り返されている。

 しかしTが求めているのは結論ではない。根拠である。

 

厚生労働省のどの通知か。

診療報酬のどの算定要件か。

患者ごとの医師指示はどこに記録されているのか。

法人の正式な運用文書は何か。

 

 Tは、「私が正しいと認めてください」と求めているのではない。客観的資料を示して、自分自身でも確認させてほしいと求めている。

「適切です」と繰り返すだけでは、適切である理由は分からない。

 

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14 これを「不誠実」と感じる理由

 ここまでの出来事を一つずつ見れば、

 

単なる説明不足。

担当者間の行き違い。

言葉の選び方。

と説明できるものもあるかもしれない。しかし、

 

未払い賃金。

患者情報。

衛生管理。

患者給食。

ハラスメント相談。

栄養指導。

医師指示。

と、分野の異なる問題について繰り返し、結論は示されるが、根拠が示されない。

 

今後の対応は語られるが、過去の原因が十分に検証されない。

誰が何を調べたのかが分からない。

問題となった管理職本人からの十分な説明や謝罪がない。

 

という状態が続いているのであれば、Tがこれを単なる説明不足ではなく、組織として不誠実な問題処理が続いていると受け止めるに至った経緯には理由がある。

 

 本稿が「法人は不誠実だ」と一方的に断定するのではない。読者には、ここまでの具体的なやり取りから判断してほしい。

 

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15 現場だけの問題なら、法人が是正できる

もし問題が現場の一部管理職だけにあったとする。

法人本部が調査する。

必要な指導をする。

相談窓口を変更する。

再発防止策を作る。

結果を説明する。

必要なら謝罪する。

 

 そうすれば、「現場で問題は起きたが、法人のガバナンスは機能した」と評価する余地がある。

 

 しかし法人本部まで問題が伝わった後も、

根拠が示されない。

調査内容が分からない。

責任主体が曖昧。

調査対象となり得る人物が窓口を続ける。

という状態なら、問題は栄養管理科だけではなくなる。

 

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16 社会医療法人の公益性は、問題が起きた後に試される

 社会医療法人には制度上、「公的な運営に関する要件」が設けられている。

 ここで重要なのは、「この職場問題があるから、直ちに社会医療法人認定要件への違反が確定する」と短絡することではない。

 

 むしろ問いたいのは組織としての姿勢である。社会医療法人だからミスを起こしてはならないのではない。

 ミスや疑義が生じたとき、公益性を掲げる法人としてどのように向き合うのか。そこが問われる。

 

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【エピローグ】

 Tが法人に求めていることを短く言えば、

 

問題があれば調べてほしい。

間違いがあれば認めてほしい。

必要なら謝ってほしい。

直してほしい。

 そして、なぜそう判断したのか説明してほしい。ということである。

 

 しかし、その「説明されない」という問題は、次に扱う栄養指導ではさらに重大な意味を持つ。

 なぜならそこには、患者に実際に行った医療、電子カルテに残された記録、患者自身の負担、そして公的医療保険から支払われる診療報酬が関わってくるからである。

 

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【公的資料】

  • 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
    相談体制、事実関係の確認、相談者への配慮、再発防止等に関する制度理解の参考に使用。
  • 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
    ハラスメントに該当するか微妙な場合も含め、相談へ適切に対応する必要があることなどを確認するために使用。
  • 厚生労働省「社会医療法人の認定について」
    「公的な運営に関する要件」を含む社会医療法人制度の確認に使用。
  • 厚生労働省「社会医療法人の認定について」(医政局長通知)
    社会医療法人の税制上の位置づけについて確認。

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【資料について】

 本稿では、法令・制度については厚生労働省、個人情報保護委員会等の公的資料を参照しています。個別の職場内出来事については、Tが保有する文書、写真、電子メール、勤務記録、録音、電子カルテで確認した内容、法人への申入書、法人からの回答書等に基づいています。公的資料から直接確認できない個別の事実については、Tの申告・記録に基づくものであることが分かるよう本文中で区別しています。

 

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【取材・お問い合わせについて】

 本連載は、現時点でTが保有する文書、写真、勤務記録、録音、電子カルテで確認した内容、法人へ提出した申入書、法人からの回答書等に基づいて問題を提起するものです。

 法人側の見解を確認できていない事項については、Tの申告・記録に基づく内容であることが分かるよう記載しています。

 本稿は、Tの傷病と個別の職場上の出来事との医学的因果関係を独自に確定するものではありません。Tが、職場上の出来事とその後の法人・管理職による対応をストレス要因として訴え、心療内科への通院、傷病休暇に至った経緯を記載しています。

 未確認事項について、犯罪、カルテ改竄、不正請求、ハラスメント、隠蔽その他の違法行為が確定したものとして断定するものではありません。

 関係資料については、患者および職員の個人情報、診療情報その他の機微な情報を保護したうえで、必要性と相当性を確認し、可能な範囲で提示します。

当該社会医療法人から具体的な説明、反論または資料の提示があった場合には、その内容を確認し、必要に応じて記事を追記・訂正します。

 本連載の目的は、特定の個人を攻撃することではありません。問題の事実関係を検証し、職員が安心して働き、患者が安心して医療を受けられ、法人自身が公益的な立場にふさわしい、より健全な組織になることを求めるものです。

 メディア関係者、医療・労務・法律関係者からの取材およびお問い合わせを受け付けています。

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社会医療法人の公益性と職場問題【連載第3回】

本シリーズへのリンクは以下

第1回 、第2回 、第3回 、第4回 、第5回 、第6回 

 

社会医療法人の公益性と職場問題【連載第3回】

 

<患者の食事は、誰のものだったのか>

――患者負担、法人資産、そして「ポッキー事件」「焼肉事件」――

 

【イントロ】

 2026年6月9日。昼食の献立は焼肉だった。

 

 12時35分ごろ。Tの記録によれば、患者給食の残りとみられる焼肉が職員へ配られた。M主任を含む複数の職員が食べた。

 Tはその日の夕方、O部長へメールと電話で報告した。後に法人は、重要な二つの事実を認める。

 

 一つは、焼肉を含む残食を、検食者以外の職員が喫食していたこと。

 もう一つは、検食者以外は喫食してはならないというルールが、すでに存在していたこと。

 

 しかも法人回答では、そのルールを「徹底できていなかった」とされた。つまり、「ルールがなかったので食べてしまい、今回から禁止しました」という話ではない。

 

 すでに禁止されていた。それでも食べられていた。

 

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1 そもそも「検食」とは何か

 病院や大量調理施設では、患者へ提供する食事について、定められた職員が実際に食べ、味、量、温度、異常の有無などを確認する業務が行われる。これが検食である。

 したがって、患者給食を職員が口にする行為がすべて私的利用という単純な話ではない。

 患者へ安全で適切な食事を提供するため、業務として食べる「検食」と、余った食事を個人的に食べる「私的喫食」は目的が違う。

 法人自身が「検食者以外は喫食してはいけない」というルールを定めている以上、その区別は法人内にも存在していたことになる。

 

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2 患者のために購入した食材

 病院給食の材料は、職員の福利厚生のために購入されるものではない。患者へ必要な食事を提供するために、

 

献立を作る。

必要量を計算する。

食材を購入する。

調理する。

提供する。

という流れで管理される。

 

 O部長はTへの回答の中で、食材料について、「事業所の資産である」との趣旨で説明した。そこでTは問い返した。

 

事業所の資産なら、なぜ職員が自由に私的利用できるのか。

患者のために購入した食材は、余った瞬間に職員が食べてよい物へ変わるのか。

余剰と残食の取扱規程はあるのか。

誰に処分権限があるのか。

法人資産を職員が慣例的に食べていたことについて、法人はどう評価するのか。

 

 Tが問題にしたのは焼肉数切れの値段ではない。患者のための資源をどう扱っていたのかという問題である。

 

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3 患者は「無料でもらった食事」を食べているのではない

 Tが焼肉事件について強い罪悪感を抱いた理由には、もう一つある。入院中の食事は、病院が患者へ無償で提供しているサービスではない。

 医療保険制度では、入院時の食事について費用額が定められ、患者側が所得区分等に応じて一定の標準負担額を負担し、その差分が入院時食事療養費等として保険給付される仕組みになっている。

 

 つまり患者給食は、患者側の費用負担と、公的医療保険制度による給付の中で提供されている食事である。

 もちろん、患者が支払った一食分の金額と、焼肉一切れの購入代金が一対一で対応しているという意味ではない。

 

 それでもTにとって、患者が費用を負担して受けるために用意された食事の残りを、職員が慣例的に食べるという光景は看過し難かった。

「患者さんは食事について負担をしている。その患者さんのために用意されたものを、自分たち職員が当然のように食べてよいのか」

 

 Tが抱いた、「患者さんに申し訳ない」という感情は、この点にも現れている。

 

ChatGTPにて生成したイメージ画像

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4 法人が認めた「禁止ルール」

 法人回答で重要なのは、「検食者以外は喫食してはならない」というルールが既に存在したと認めた点である。

 そしてO部長との面談では、Tの記録によれば、従来から職場で残食の喫食が慣例的に行われていたとの認識も示されたという。

 

 そうであれば、

いつから行われていたのか。

管理者は知っていたのか。

M課長はどう認識していたのか。

Y主任はどうだったのか。

M主任が自ら焼肉を食べたのであれば、主任自身はルールを知らなかったのか。

知っていたのに食べたのか。

 

 部下の行為を止める立場の管理者でもあるM主任が、なぜ喫食する側にいたのかという疑問が生じる。

 

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5 法人回答「管理者へ注意した」

 2026年6月24日付回答には、「管理者へ注意した」との趣旨の記載があった。

そこでTは具体的に尋ねた。

 

注意したのは誰で、注意を受けたのは誰か。

何について注意したのか。

焼肉を食べたことか。

部下が食べているのを止めなかったことか。

既存ルールを周知しなかったことか。

衛生管理上の問題か。

口頭か文書か。記録はあるのか。

なぜここまで尋ねるのか。

 

 「管理者へ注意した」だけでは、法人が何を問題だと認識したのかすら分からないからである。

 

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6 「食べないよう発信した」と「控えてください」

 法人回答には、職場会議で残食を喫食しないことを発信したとの趣旨もあった。

 ところがTの認識では、実際の職場会議では、「検食者以外は食べてはいけません」という明確な禁止というより、残食を食べることを控えるようお願いするという説明だったという。

 

 法人自身が、「禁止ルールは以前から存在した」と認めている。

それなら、「できれば控えてください」と、「禁止されています」では意味が違う。

ChatGTPにて生成したイメージ画像

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7 ポッキー事件との共通点

ポッキーは職員の私物。

焼肉は患者給食。

 

 しかし衛生管理の観点からは共通点がある。

 

 Tによれば問題の事務所は、普通のオフィスと異なり、

入室時に履物を替える。

帽子を交換・着用する。

患者給食関連業務を行う。

検食も行う。

 

 その一方でO部長からは、「事務所は休憩にも使用している場所である」との趣旨の説明がなされたという。

 では、この部屋は食品関連業務を行う区域なのか。休憩区域なのか。両方なら、どこで区分しているのか。という疑問が生じる。

 

実際に栄養管理科の事務所に共用机に放置された菓子

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8 HACCPと区域管理

 HACCPは、食品に関する危害要因を工程ごとに分析し、重要な工程を管理する衛生管理の考え方である。

 また厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、調理過程に応じて汚染作業区域と非汚染作業区域を区分し、非汚染作業区域をさらに準清潔作業区域と清潔作業区域に分けること、休憩室や更衣室を食品取扱場所と隔壁で区分すること、調理作業に不必要な物品を置かないことなどが示されている。

 

 ここで注意が必要なのは、病院内でTが「衛生管理区域」「準清潔区域」「準備室」等と認識している具体的な区域区分が、すべて厚生労働省マニュアルと同じ名称・範囲で設定されていると本稿が断定しているわけではないということである。

 

 確認すべきなのは、法人自身がその場所を衛生管理上どのように位置づけ、どのような区域・動線管理を定めていたかである。

 

 Tがポッキー事件と焼肉事件で共通して問題にしているのは、

所定場所以外での飲食。

食品取扱いに不要な物品の持込み。

衛生管理区域、準清潔区域、準備室等として法人内で設定される場所と衛生動線。

食品関連業務区域と休憩区域との区分。

である。

 

 焼肉事件とポッキー事件は、単に「食べ物を置いた」「食べ物を食べた」というだけではなく、衛生管理上の区域・動線管理が実際に機能していたのかという同じ問いにつながる。

 

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9 「もう焼肉を食べません」だけでは足りない

 焼肉事件だけを切り取れば、「残食を食べないよう注意しました」で終われるように見える。

 しかしポッキー事件と合わせれば、

 

所定場所以外で飲食していなかったか。

不要な食品や私物を衛生管理区域へ持ち込んでいなかったか。

衛生動線が適切に管理されていたか。

休憩区域と食品関連区域が明確に分離されていたか。

 

 法人が「事務所は休憩場所でもある」とするなら、その区分をどのように行っていたかまで確認する必要がある。

 

 Tが求めているのは、焼肉だけを片づける対症療法ではなく、区域管理そのものの検証なのである。

 

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10 法人回答「確認した」「周知した」

法人回答には、

「大量調理施設衛生管理マニュアルで決められていることを確認した」

「検食者以外は喫食しないことを再度確認した」

「再度全職員へ周知するよう指示した」

との趣旨があった。

 

 Tは、

誰が確認したのか。誰に確認したのか。

いつか。

何を確認したのか。

誰が誰に周知したのか。

実施は完了したのか。

記録はあるのか。

と問い返した。

 

 上司が、「みんなに言っておいて」と言った時点と、全員に伝わり、実際の行動が変わった時点は同じではない。

 

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11 「今後も法令遵守」の違和感

 法人回答には、「今後も法令遵守と再発防止に努める」との趣旨も記載された。

 Tはこの「今後も」に疑問を示した。なぜなら同じ回答のなかで、禁止ルールが既にあったにもかかわらず徹底できていなかったと認めているからである。

 

 Tが気にしているのは助詞そのものではない。過去の管理不備を曖昧にしたまま未来の努力だけを語れば、

 

なぜ問題が起きたのか。

誰が是正できなかったのか。

 

が消えてしまうからである。

 

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12 2026年6月25日、保健所へ

 Tの記録では、2026年6月25日に堺市保健所食品衛生課へ情報提供したと記録している。担当者から年1回の監査の際に、今後は喫食の有無を確認する趣旨の応答があったという。

 保健所側の正式文書を確認したものではないため、ここはT側の通報記録に基づく。

 

  ただしTがこの出来事を、「残り物を少し食べただけ」ではなく、患者給食を扱う部署における衛生管理の問題として捉えていたことが分かる。

 

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13 「患者に申し訳ない」という罪悪感

 Tが問題にしているのは焼肉数切れの金額ではない。患者は自分の食事が適切に管理されていると信じている。そして入院時の食事は、患者側の一定の費用負担と医療保険給付の仕組みの中で提供されている。

 

 その職場で、

禁止ルールのある患者給食を職員が食べる。

衛生管理上特別な取扱いをする場所に食べかけの私物食品を何日も置く。

管理職へ改善を求めても、その論点とは異なる説明を受ける。

 

 Tは、「患者さんがこの実態を知ったらどう思うのか」と感じた。

 自分自身がその部署の管理栄養士であることもあり、Tは患者に対する申し訳なさを強く抱いたという。この罪悪感もまた、Tにとっての職場ストレスだった。

 

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【エピローグ】

 この事件で法人は、喫食の事実と、既存ルールを徹底できていなかったことを認めた。

 ならば問われるべきなのは、誰が食べたかだけではない。

 

なぜルールが守られなかったのか。

なぜ管理者が止められなかったのか。

なぜ慣例化したのか。

区域管理は適切だったのか。

誰が調査したのか。

再発防止が本当に実行されたのか。

である。

 

 次回では、法人から繰り返される、

「注意した」

「確認した」

「指示した」

という回答そのものを検証する。

 

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【公的資料】

  • 厚生労働省「食品等事業者の衛生管理に関する情報」
    HACCPに沿った衛生管理と集団給食施設の衛生管理に関する厚生労働省の基本資料。
  • 厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」
    HACCPの概念に基づき、集団給食施設等で食中毒防止のために必要な衛生管理事項を示したマニュアル。
  • 「食品衛生法施行規則」別表第17
    食品を取り扱う場所に不必要な物品を置かないこと、食品等取扱者が所定場所以外で飲食しないこと等を定めている。
  • 厚生労働省「入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の費用の額の算定に関する基準」
    入院時の食事が制度上、一定の費用額を伴う療養であることの確認に使用。
  • 厚生労働省「健康保険及び国民健康保険の食事療養標準負担額及び生活療養標準負担額」
    患者側に食事療養標準負担額が設定されていることの確認に使用。

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【資料について】

 本稿では、法令・制度については厚生労働省、個人情報保護委員会等の公的資料を参照しています。個別の職場内出来事については、Tが保有する文書、写真、電子メール、勤務記録、録音、電子カルテで確認した内容、法人への申入書、法人からの回答書等に基づいています。公的資料から直接確認できない個別の事実については、Tの申告・記録に基づくものであることが分かるよう本文中で区別しています。

 

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【取材・お問い合わせについて】

 本連載は、現時点でTが保有する文書、写真、勤務記録、録音、電子カルテで確認した内容、法人へ提出した申入書、法人からの回答書等に基づいて問題を提起するものです。

 法人側の見解を確認できていない事項については、Tの申告・記録に基づく内容であることが分かるよう記載しています。

 本稿は、Tの傷病と個別の職場上の出来事との医学的因果関係を独自に確定するものではありません。Tが、職場上の出来事とその後の法人・管理職による対応をストレス要因として訴え、心療内科への通院、傷病休暇に至った経緯を記載しています。

 未確認事項について、犯罪、カルテ改竄、不正請求、ハラスメント、隠蔽その他の違法行為が確定したものとして断定するものではありません。

 関係資料については、患者および職員の個人情報、診療情報その他の機微な情報を保護したうえで、必要性と相当性を確認し、可能な範囲で提示します。

当該社会医療法人から具体的な説明、反論または資料の提示があった場合には、その内容を確認し、必要に応じて記事を追記・訂正します。

 本連載の目的は、特定の個人を攻撃することではありません。問題の事実関係を検証し、職員が安心して働き、患者が安心して医療を受けられ、法人自身が公益的な立場にふさわしい、より健全な組織になることを求めるものです。

 メディア関係者、医療・労務・法律関係者からの取材およびお問い合わせを受け付けています。

notohantou2024(アットマーク)gmail.com