以前はNPB(日本のプロ野球)を球場で観戦したり中継で観る事が多かったが、ここ数年は大谷翔平とNHKのお蔭でMLB(米・メジャーリーグ野球)中継を観る機会が増え、一昨年秋には直接、現地でも観戦した(*1)。その結果、日米の野球の違いや観戦文化の違いなども少しずつ判ってきた(*2)。
まずレベルについては、以前はNPBは米国のAAA(トリプルA:マイナーリーグのトップ)クラスだとも言われていたが、野茂、イチロー、松井を経て大谷や山本、今永、誠也、吉田、村上、岡本等の活躍を見ていると、現時点ではもう殆どメジャーリーグと差がないと言ってもいいかも知れない。
野球は米国発祥のスポーツだが日本では戦前から学生野球(甲子園大会や東京六大学野球など)が盛んだったし、戦後はプロ野球も隆盛し子供から大人まで競技人口もファンも多く国技の様に最もメジャーなスポーツとなっている(*3)。今回はまず、MLBと日本野球の攻撃面の違いとして感じた事を記す。
1.MLBは打率よりもOPSを重視(*4)
日本では打者の評価基準は打率が一番だがMLBでは打率ではなくOPS(出塁率+長打率)である。この理由はMLB中継を観ているとよく分かるが得点シーンは殆ど本塁打を含む長打だからだ。単打で得点になるのは走者が3塁に居る場合くらいだが「長打」なら1塁走者も生還できる可能性が高い(*5)。
毎時100マイル超の速球投手が居並ぶMLBではそうそう安打は打てないので1安打でも得点に繋がる「長打」が求められるし、四死球でも安打でも走者が居ればよいのだから打率より「出塁率」が重要になる。従って出塁率と長打率の合成指標のOPSが打者の一番の評価基準になるのだろう(*6)。

【2022年から両リーグに跨り3年連続首位打者のアラエスの年俸はMLBのトップ50以下/画像はMLB公式Webより】
「打率」は安打を打てる好打者像を示しているのは確かだが、打率が重視されなくなったもう一つの要因は、MLBではコンタクト率やハードヒット率などのデータも残るので、当たり損ねやポテンヒットなど運の要素が含まれた打率で打者の巧拙を評価しなくて済むという環境の変化も大きい。
2.MLBは最強打者を4番に置かない
日本では「エースで4番」という言葉があるように最強打者の打順は4番だが、MLBでは大谷もジャッジもシュワーバーも1番か2番を打つ。先頭の1番打者が出塁し2番打者が進塁させ3~5番打者で得点するという理想像が描けるのは初回だけで2回以降はイニング先頭が1番打者とは限らないからだ。
であれば最強打者を可能な限り多く打席が回せる打順(1番や2番)に置いた方が得点する確率が高くなるという実に合理的でシンプルな考え方である。そして走者を置いて最強打者が打席に立つためには「出塁率」の高い打者をその前の打順(9番や1番)に置くのがMLBの打順に関する基本的な考え方だ。

【大谷翔平は出塁率.426、OPS.979でともにリーグTOP(6/13時点)/写真はNHK公式Webより】
3.MLBは全打者が本塁打を打てる
山本由伸がサンフランシスコの中軸を抑えながら8番9番打者に本塁打を3本浴びて負けた試合があった(*7)が、日本では本塁打を警戒すべきは3~6番打者くらいで、あとは好打者でも「まず本塁打はない」と考えて投球できる。しかしMLBでは8番9番打者でも甘い球がツボにハマると本塁打になる。
MLBでは各マイナーリーグでもOPSで評価されるため、長打力が無くて本塁打が全く打てないような打者はどんなに好打者でもメジャーまで上がれない。従ってメジャーの打者は、全員本塁打を警戒しなければならない。こんなチームは日本ではソフトバンクホークスくらいではないだろうか。
4.MLBでは犠打や盗塁は奇策になる
攻撃面において日米の最も大きな違いは「犠打(送りバント)」だろう。先述の通りMLBは長打で1塁走者も生還させようとするので失敗のリスクを犯してまで走者を2塁に進める必要はない。盗塁も同様だ。特に犠打は成功してもアウトが1つ増える。作戦としてはアリだがどちらも奇策の部類だろう。
また個人主義の米国では契約との関係もある。「犠打」は打者の年俸査定に関わるOPSを上げる機会を失わせるのでベンチからサインを出し難い(*8)。とはいえレギュラーシーズン終盤でポストシーズンへの進出がかかってくるとMLBでも(チーム勝利が最優先となるので)犠打が頻出する傾向はある。
以上、攻撃面でのMLBと日本野球の違いについて所感を述べたが、次回は防御面での違いについて記したい。
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*1:本件については下記ブログご参照。
・ナマの大谷翔平を観に来ました | Saigottimoのブログ
*2:本件については下記ブログご参照。
・MLB球場のオルガン演奏に注目 | Saigottimoのブログ
*3:本件については下記ブログご参照。
・大谷翔平は長嶋茂雄を超えたか | Saigottimoのブログ
*4:打率は安打しか反映されないが、OPS(On-base Plus Slugging)は出塁率(On-base)+長打率(Slugging)なので四死球等による出塁も含まれ、0.700前後が平均値。
*5:長打率は安打に占める長打の比率ではなく、塁打数÷打数であり単打も1塁打として加算される。打率は単打も本塁打も同じ1安打だが、長打率では1塁打と4塁打で4倍違う。
*6:出塁率には安打以外に四死球による出塁も反映される。
*7:山本は5/13のSF戦6回1/3を93球5失点で敗戦投手。また6/13のCWS戦でノーヒットノーランまであと3人の9回先頭で本塁打(唯一の安打)を打たれた相手(ピーターズ)も8番打者。
*8:犠打(送りバント)は成功しても打率や出塁率は良くならず(従ってOPSも良くならず)、失敗すると悪くなる。
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まずレベルについては、以前はNPBは米国のAAA(トリプルA:マイナーリーグのトップ)クラスだとも言われていたが、野茂、イチロー、松井を経て大谷や山本、今永、誠也、吉田、村上、岡本等の活躍を見ていると、現時点ではもう殆どメジャーリーグと差がないと言ってもいいかも知れない。
野球は米国発祥のスポーツだが日本では戦前から学生野球(甲子園大会や東京六大学野球など)が盛んだったし、戦後はプロ野球も隆盛し子供から大人まで競技人口もファンも多く国技の様に最もメジャーなスポーツとなっている(*3)。今回はまず、MLBと日本野球の攻撃面の違いとして感じた事を記す。
1.MLBは打率よりもOPSを重視(*4)
日本では打者の評価基準は打率が一番だがMLBでは打率ではなくOPS(出塁率+長打率)である。この理由はMLB中継を観ているとよく分かるが得点シーンは殆ど本塁打を含む長打だからだ。単打で得点になるのは走者が3塁に居る場合くらいだが「長打」なら1塁走者も生還できる可能性が高い(*5)。
毎時100マイル超の速球投手が居並ぶMLBではそうそう安打は打てないので1安打でも得点に繋がる「長打」が求められるし、四死球でも安打でも走者が居ればよいのだから打率より「出塁率」が重要になる。従って出塁率と長打率の合成指標のOPSが打者の一番の評価基準になるのだろう(*6)。

【2022年から両リーグに跨り3年連続首位打者のアラエスの年俸はMLBのトップ50以下/画像はMLB公式Webより】
「打率」は安打を打てる好打者像を示しているのは確かだが、打率が重視されなくなったもう一つの要因は、MLBではコンタクト率やハードヒット率などのデータも残るので、当たり損ねやポテンヒットなど運の要素が含まれた打率で打者の巧拙を評価しなくて済むという環境の変化も大きい。
2.MLBは最強打者を4番に置かない
日本では「エースで4番」という言葉があるように最強打者の打順は4番だが、MLBでは大谷もジャッジもシュワーバーも1番か2番を打つ。先頭の1番打者が出塁し2番打者が進塁させ3~5番打者で得点するという理想像が描けるのは初回だけで2回以降はイニング先頭が1番打者とは限らないからだ。
であれば最強打者を可能な限り多く打席が回せる打順(1番や2番)に置いた方が得点する確率が高くなるという実に合理的でシンプルな考え方である。そして走者を置いて最強打者が打席に立つためには「出塁率」の高い打者をその前の打順(9番や1番)に置くのがMLBの打順に関する基本的な考え方だ。

【大谷翔平は出塁率.426、OPS.979でともにリーグTOP(6/13時点)/写真はNHK公式Webより】
3.MLBは全打者が本塁打を打てる
山本由伸がサンフランシスコの中軸を抑えながら8番9番打者に本塁打を3本浴びて負けた試合があった(*7)が、日本では本塁打を警戒すべきは3~6番打者くらいで、あとは好打者でも「まず本塁打はない」と考えて投球できる。しかしMLBでは8番9番打者でも甘い球がツボにハマると本塁打になる。
MLBでは各マイナーリーグでもOPSで評価されるため、長打力が無くて本塁打が全く打てないような打者はどんなに好打者でもメジャーまで上がれない。従ってメジャーの打者は、全員本塁打を警戒しなければならない。こんなチームは日本ではソフトバンクホークスくらいではないだろうか。
4.MLBでは犠打や盗塁は奇策になる
攻撃面において日米の最も大きな違いは「犠打(送りバント)」だろう。先述の通りMLBは長打で1塁走者も生還させようとするので失敗のリスクを犯してまで走者を2塁に進める必要はない。盗塁も同様だ。特に犠打は成功してもアウトが1つ増える。作戦としてはアリだがどちらも奇策の部類だろう。
また個人主義の米国では契約との関係もある。「犠打」は打者の年俸査定に関わるOPSを上げる機会を失わせるのでベンチからサインを出し難い(*8)。とはいえレギュラーシーズン終盤でポストシーズンへの進出がかかってくるとMLBでも(チーム勝利が最優先となるので)犠打が頻出する傾向はある。
以上、攻撃面でのMLBと日本野球の違いについて所感を述べたが、次回は防御面での違いについて記したい。
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*1:本件については下記ブログご参照。
・ナマの大谷翔平を観に来ました | Saigottimoのブログ
*2:本件については下記ブログご参照。
・MLB球場のオルガン演奏に注目 | Saigottimoのブログ
*3:本件については下記ブログご参照。
・大谷翔平は長嶋茂雄を超えたか | Saigottimoのブログ
*4:打率は安打しか反映されないが、OPS(On-base Plus Slugging)は出塁率(On-base)+長打率(Slugging)なので四死球等による出塁も含まれ、0.700前後が平均値。
*5:長打率は安打に占める長打の比率ではなく、塁打数÷打数であり単打も1塁打として加算される。打率は単打も本塁打も同じ1安打だが、長打率では1塁打と4塁打で4倍違う。
*6:出塁率には安打以外に四死球による出塁も反映される。
*7:山本は5/13のSF戦6回1/3を93球5失点で敗戦投手。また6/13のCWS戦でノーヒットノーランまであと3人の9回先頭で本塁打(唯一の安打)を打たれた相手(ピーターズ)も8番打者。
*8:犠打(送りバント)は成功しても打率や出塁率は良くならず(従ってOPSも良くならず)、失敗すると悪くなる。
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