以前、私はウィルスやガンには心身の免疫力向上が重要だと述べ、免疫力向上には「笑い」が有用で、プロの噺家や芸人の力を借りる方法として寄席の効用を推奨した。そして私自身も新宿「末廣亭」の会員にもなって四半期に1度は行くと記したが、末廣亭以外で必ず毎年観に行くのが「座・高円寺寄席」だ。
何故この催しだけは毎年観に行くかといえば、都内の落語4団体(*1)の噺家が集う唯一の落語会だからである。通常、落語会に出演する複数の噺家は同門だし、寄席の定席もその日の主催は一つの団体で他の団体所属の噺家が同じ高座に上がることは滅多にない。しかしこの催しだけは意図的に「四派でドカン」なのだ。
この落語会の出順は楽屋に入った順番らしいが、今日のトップバッターは“立川流”の立川談笑師匠。古典を現代風にアレンジしたり意欲的な師匠、マクラ(*2)は杉並界隈の街角人間ウオッチングで大いに笑わせた後、飼い猫を女に化けさせて女衒に売るという噺。本題の前に猫がいろんな人物に化ける様が斬新だった。
2番手は“円楽党”から私の大好きな三遊亭兼好師匠。マクラではレストランでの私的な落語会でのウェイターの(落語をするには)邪魔な態度がメッチャおかしくて、もう爆笑。この人の場合、ちょっとした間や仕草だけでいくらでも笑いが取れるから凄い。もう本題の落語がなんだったか思い出せないくらい面白かった。
3番手は“落協”から林家彦いち師匠。彼も杉並界隈に居住しているらしい。マクラは、出身校(国士館大学)をネタにして体育会系エピソードで、新幹線の「自由席」はグリーン車でも指定席でもどこでも自由に座れると思い込んでいた人の実話(?)。本題はボクシングのセコンドを務めるタイ人の騒動記。これは新作噺だろう。
最後は“芸協”から桂文治師匠。他の3派は昨年と同じ人だが“芸協”は毎年違う人が出演している。鶴瓶も駆けつけた彼の10年前の襲名披露公演を私は末廣亭で生で観た。桂文治は名跡で11代目だ。この日の彼は名跡に相応しく「ラーメン屋」という人情噺を達者に演じて、笑わせるのではなくタップリ泣かせてくれた。
今回も各派を代表する名人達が四者四様で楽しませてくれた。来年も是非、行こうっと!
*1:東京落語界の4派は以下の通り。
●落語協会(通称:落協)…最も古く大きな落語家団体。大正時代から統廃合を繰り返し1956年に新発足。現在約400人の落語家、講談師、演芸家等が所属。会長:三遊亭市馬。
●落語芸術協会(通称:芸協)…1930(昭和5)年設立。現在約250人の落語家、講談師、演芸家等が所属。金語楼や米丸など新作噺の名手が幹部となっている。会長:春風亭昇太。
●落語立川流(通称:立川流)…1983年に故・立川談志が落語協会から一門を率いて独立し家元となる。現在約50人の落語家が所属。談志亡き後は総領弟子・土橋亭里う馬が代表を務める。
●五代目円楽一門会(通称:円楽党)…1980年に先代三遊亭圓生が落語協会から独立し前身団体を設立。1985年に先代(五代目)故・三遊亭円楽の一門が残り、現在約40人の落語家が所属。
*2;落語の本題(噺)に入る前の導入トーク。本題の導入部になる場合もあれば、その日の客層をマクラで見極めて本題を決めることもあるようだ。寄席だと持ち時間が15分くらいしかないので本題に入らずマクラだけということも。
Saigottimo
