少し話をさかのぼる…。






俺が妻の実家のある町に会社の寮を借りて、


引っ越してきた日のことだった。






有り難いことに、


妻の両親や妻の姉夫婦が、


引越しの手伝いに来てくれていた。




そのお陰で、予想より早く引越しが終わった。





俺は、引っ越してきた初日は、


妻と子どもだけで過ごしたかったから、


妻の両親や妻の姉夫婦にお礼を言って、


お引き取り願おうとしたら……。





妻の両親が、


夕食は一緒に外で食べようとか言い始めた…。





でも、まあ、手伝ってもらったお陰で、


引越しの片付けも早く終わったし、


そのくらいなら良いか………。





そして、その日の夕食は、


妻の両親と、妻の姉家族と一緒に、


近くのファミレスで外食することになった。






しかし、そのままカラオケに行こうって


話が盛り上がられてしまい……。



結局カラオケへ行くことになってしまった……。






妻の父親は、


ファミレスでかなり酒をを飲んでいるのにもかかわらず、


強引に俺と妻と子どもを乗せて……、出発……。






カラオケ店でもガンガン酒を飲んでいたし、


まだ小さい子どもたちがいるのに、


22時を過ぎても歌っていた…。







さすがに帰りはタクシーを頼もうとしたら、


またもや強引に妻の父親の車へ乗せられてしまい、


そのまま家まで送られてしまった…。







そうして、引っ越してきた初日は、


結局、家族水入らずの時間は全くなかった…。







それから、飲酒運転の車に乗せられるって、


今であれば、俺まで捕まってしまう…。






子どもや孫を乗せて飲酒運転できる


妻の父親の神経が理解できなかった……。






そういえば………。



結婚前の両家の顔合わせの時も、


妻の父親は、


平然と飲酒運転して帰って行ったんだった……。






そう、妻の家族は、


かなり一般的な感覚とずれているんだ。







だから、娘が二人ともシングルマザーなんだ。



だから、二人とも子どもを産んだ直後に離婚しているんだ。



だから、夫婦喧嘩したら、乗り込んでくるんだ。



だから、夫婦喧嘩で家を出てきた娘を簡単に受け入れるんだ。



だから、自らの立場を理解していないんだ。






言い方は悪いけど、


離婚して子どものいる娘と結婚する男に対して、


妻の両親は、感謝の意を表していないとしか思えなかった。



これは、俺の両親も俺の友人も言っていたことだった…。






むしろ、何とか自分たちのペースに持ち込んで、


都合の良いようにしてやろうって、


考えているとしか思えなかった。






俺は、マスオさんじゃない。



俺は、婿養子じゃない。






絶対、お前らの思い通りにはさせないからな!







思い描いた引っ越し初日と違い過ぎたショックと、


またもや飲酒運転した妻の父に対する嫌悪感と、


深夜まで子どもを連れ回す無神経さと、


引越しの疲れにお酒が入ったことで…、


俺は、マイナスの考えになりかけていた……。

自宅近くのファミレスで、


妻と話し合うことになった。





案の定、妻は、



「あなたが悪い。」



と喚いていた。



そして、



「手を上げたことを謝って。」



と言ってきた。





俺は、



「手を上げたことは悪かったけど、

 

 その原因を考えなさい。」



と返した。




すると、妻は、



「あなたが手を上げたことを謝ったんだから、


私は何も悪くない。」



と言ってきた…。





………。


全く話にならない……。





ご都合主義も甚だしい。



そんな訳の分からない話が、


まかり通ると思っているんだろうか?





階段から蹴り落とそうとした妻の行為は、


妻曰く、何も悪くないということらしい…。




あのまま被害届でも出しておけば良かったんだろうか…?






まだ離婚届は、出していないってことだった。





離婚届については、


確かに、俺も感情的になっていた。



だから、



「離婚届けを持ってこいとか、

 

 とにかく離婚だと言ったことは、悪かった。」



と素直に認めた。




でも、わざわざ役所まで出向いて、


本当に持ってきた妻にも問題があるはずだ。




ところが、妻は、



「持ってこいと言われて持ってきただけだから、


 私は何も悪くない。」



と、言い放ってきた。





もはや、話は噛み合わない。


噛み合うはずがない。





俺は、俺の非を認めた上で、


話し合いをしようと思っていたけど、

妻が妻の非を全く認めないのであれば、


話し合いは打ち切るしかない。






「もう無理だ。離婚しよう。


 お前の実家の近くに引っ越してきてから、


 全てが、おかしくなった。


 もう限界だ…。」





妻は、平然としていた……。




俺たちは、ファミレスを出て、


話し合いは、もの別れで終わった…。






何となくだけど、


妻がシングルマザーになった理由が、


分かった気がした……。

離婚届を見た俺は、


そのまま署名捺印をした。




そして、妻に連絡をして、


「書いたから提出しておけ。」


と言って、


そのまま出張へ出掛けて行った。






完全に感情に流された行為だった……。






ただ、結婚前からの疑念や結婚後、

特に、妻の実家のある町へ引っ越してからの、


妻や妻の両親の豹変ぶりに、


俺が、


「そう長くはもたない」


と感じていたことは、


まぎれもない事実だった…。






出張中に、妻からの連絡はなく、


そのまま提出したのだろうと思っていた。





3日後、出張から帰ってくると、


離婚届はテーブルの上になかった。






しばらくすると、また妻の姉の夫が会いにきた。



妻の姉の夫によると、


妻も離婚を承諾しているとのことだった。





俺も感情的になっていたけど、


妻の結婚や離婚に対する考え方には、


ただただ、呆れるばかりだった…。





妻の姉の夫は、


離婚に反対というか、賛成していなかった。





結局、妻の姉の夫が、


俺と妻の仲を取り持とうとするので、

一度だけ妻の姉の家で、


話し合いに応じることにした。







ところが、妻はもちろん、妻の姉は、


鬼のような形相で俺を睨んでいた。






なるほど…。



「私は何も悪くない。

 

 全部、あんたが悪いのよ!」



ってつもりか…。





上等だ。


徹底的にやってやろう。





もはや、話し合いをする気は失せていた…。




妻だけじゃなく、


妻の姉もゴチャゴチャと言い始めたので、



「貴女は関係ないでしょ。

 

 夫婦の問題なんだから。

 

 俺は、こんな場所で話す気はない。

 明日、近くのファミレスで話そう。」


と言って、さっさと俺は帰った。





なるほど、あの家族、


あの考え方だから、


姉妹揃ってバツイチなんだろう…。



それも、出産後、すぐに離婚するわけだ…。





もちろん、俺も手を上げたことだけは、


確かに悪かっただろうけど…。



でも、それだけを取り上げられて、

一方的に悪者にされる筋合いはない!





謝るならお互い様だ。



それができないなら、


もはや、結論は一つしかない……。

ある日、ささいな理由で口論となった。





妻は、いつもどおり、逆ギレ…。



それ以上、話しても意味がないので、


俺は、1階へ降りようとした。




すると、階段を降りようとしたら、


突然、妻が俺の背中をおもいっきり


蹴り飛ばしてきた。



俺は、必死に手すりをつかんだから、


数段落ちただけで、


たまたま大きな怪我をしないで済んだ。





ある意味、これって殺人未遂じゃないか…?





あまりのことに、身の危険を感じた俺は、


さすがに怒った。





すかさず妻のところへ行って、


妻の頬を平手打ちした。





すると、妻は、ますます逆上して、


そのまま子どもを連れて実家へ帰ってしまった……。






俺は、どう考えても悪くない。



どう考えても妻が悪い。





ところが、妻は、さっぱり謝ってくる気配もない…。









そのときの妻の家出は、


1ヵ月以上にもわたった……。





その間、妻の姉の夫が


俺に会いに来たこともあった。





やはりというか、当然のように、


俺が悪人扱いされていた。



妻は、俺が手を上げたことだけを的にして、


あることないこと吹き込んでいたようだ…。



俺は、妻の姉の夫に対して、


「俺は、階段から蹴り落とされたんだ。


 だから手を上げた。

 それなのに、俺が謝るのは、絶対に納得できない。」


と伝えた。






俺は、感情に流されていたから、



妻に対して、


「もう無理だ。離婚しよう。」


と伝えた。



さらに、


「離婚届を持って来てくれ。


 ハンコを押しておくから、出しておいてくれ。」


と、感情に流されて、


離婚へまっしぐらだった…。







ある日、家に帰ると、


離婚届けがテーブルの上に置いてあった…。

新婚早々、俺と妻は、何度か夫婦喧嘩をしていた。




ケンカの原因は、いつも些細なことだった。




ただ、俺が問題に感じたことは、


夫婦喧嘩のたびに、妻は子どもを連れて、

すぐに実家へ帰ってしまうことだった…。




そして、その都度、妻の両親が安易に受け入れて、


しかも、俺に文句を言いに来ることだ。




俺が妻の実家の近くに社宅を借りたのは、


そんな理由のためじゃない。




きっと、同じ町内で、


すぐ近くにあるから、


簡単に実家へ帰るんだろうな。





社宅の場所…、



完全に失敗したな……。






夫婦ってのは、


それぞれ、全く違った環境で生まれ育ってきて、


全く違った価値観を持っている。




結婚したら、その日から家族になるけども、


それは、戸籍上の話であって、


一緒に生活をすることで、

一緒に同じ時間を共にしながら、


やがて本当の家族になっていく。





そんなもんじゃないだろうか…。






それには、ケンカのたびに、


安易に家を出て行くんじゃなくって、

その都度、その原因を消化していくことが、


必要なことじゃないんだろうか…。





ましてや、妻は、シングルマザーだったんだ。




一度、失敗している。



何で失敗したのか?


それをよく考える必要があったんじゃないだろうか…。




それにも関わらず、


親がしゃしゃり出てきて、


一方的に文句を言いに来るなんて、


論外なことだと思う……。




そんなんだから、失敗したんじゃないか?



そんな親だから、


娘が二人とも離婚してるんじゃないか?





そうして、俺は、妻の実家に対して、


嫌悪感を抱くようになっていった……。





そんなことが何度かあった。






そして、転職を決めた直後に、


大きな夫婦喧嘩が起こったんだ………。