メイクがおちにくいマスクから、femaleを考える | 特許翻訳 A to Z

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1992年5月から、フリーランスで特許翻訳者をしています。

興和株式会社が9月1日に発表した、「メイクがおちにくいマスク」のリニューアル。
 (→プレスリリース (PDF形式)


特許出願中の表示がありますので公報を調べたところ、関連していそうな出願が最低でも3件あることがわかりました。

 

  特開2012-148200 女性用マスク
  特開2014-155876 女性用マスク
  特開2016-053237 女性用マスクの製造方法


そしてesp@cenetで英文抄録を確認したところ、上の2つは発明の名称が「mask for female」、3つ目は「manufacturing method of mask for female」となっています。

英語のmaskは違うものを想起させるからか、日常英語ではflu mask、gauze mask、surgical maskなど複合語で使うことが多いように感じますが、特許翻訳では、安易にこれらの訳を使うことはできません。
だから、そこはひとまず脇によけておきます。
 

 

問題は、female。

日本語の「女性」という語は、それだけで通常は「人間」の前提で理解しますよね。
ところが英語のfemaleは、人間の女性はもとより、動物のメス、さらには植物の雌株にも使われます。

どう考えても、日本語と英語で語義の範囲が違います。
 

何の予備知識もなく「mask for female」とだけ言われたら、私ならたぶん、考えてしまうだろうなと。
少なくとも、上にあげた商品のようなマスクを瞬時にイメージは・・・・できないですね。


もちろん明細書全体を読めば、文脈から一意に理解できる可能性は高いでしょう。
でも、それはそれ。これはこれ。
 

別案としてwomanなら人間だけになりますが、これだと子どもを含まず、girlは大人を含まず・・・。
そうすると、日本語の「女性」に最も近い訳は?
 

新聞などの海外メディアで、「female person」という表現を、ときどき見かけます。

文の内容にもよりますが、これならわりと使えそうです。
男性しかりで、「女性」「男性」という語は、簡単なようで意外と訳が難しいのかもしれませんね。

 

 

 


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