とある17
母親の死に対し、なにを感じ、何をすべきか、幼い光太には解らなかった
そして、黒いコートを身にまとい幽霊の様に突然現れた、死んだはずの父親
黒いコートを着た男がゆっくりと母親の死体に近づき、その股間に刺さっていたペンを引き抜く
まるで彼にしかそれが引き抜けない聖剣の様に
ペンを抜き終わった瞬間、
彼は一瞬目を閉じた
一瞬だったのか、何時間だったのか光太には解らない
時間が全て止まったかのように
全ての物の動きはこの部屋の空間の中で始まり、終わる
黒いコートの男が光太に話かける
何があった?
光太は黙ったままうつむいている
男が光太に覆いかぶさるように、光太を抱きしめる
その瞬間、光太の膝が折れ、意識が遠のいた
薄れる意識の中で、このリビングで家族三人 仲良く母親の作ったタラコスパゲティーを分け合って
食べていた頃を、光太はうっすらと思い出していた
お母さん
お父さん
光太は 久しぶりにそう、心でつぶやく
安心感と恐ろしさの狭間で、光太の意識は途絶えた
とある16
俺が自分の目を潰そうとカッターを自分の目に当てた瞬間 体が動かなくなった
そして俺はまたあの夢の中の森にいた
やっとあの女神に会えると
最近の俺の悩みを突き止める事が出来るのだと
心底喜び勇んで夢を迎えた
しかし どうだろう
誰かを探している事に変わりはないし
心の底が不安感でいっぱいで
歩く度に何かから遠ざかっている気がする
夢にも夢なりのルールがあるのか
俺はまたいつものように森林を走りながら何かを探している
ある意味いつもと変わらぬ光景
目を潰そうとした俺は
視覚を無くす事で何か新たな感覚が俺を開き
何らかの奇跡が起こり
世界を
俺が平和に導ける気がした
しかし俺は失敗したのか
今夢の中では両目を見開き森林の霧の奥に女神を探している
すると
森の中から透き通った女性の声が俺に語りかける
目をそらしてはいけない
全ての悲しみから目を背けてはいけない
見る事につかれてはいけない
見たくないモノを見ることに絶望してはいけない
見ることで悲しみ
その悲しみを忘れはいけない
悲しむことを美しい事とおもってはいけない
悲しむことを偽ってはいけない
悲しみ事に酔ってはいけない
悲しむ事に慣れてはいけない
悲しむ事に奇跡を感じてはならない
悲しむ事で心を洗ってはいけない
悲しみがいつまでも心を苦しめるようにしなければならない
悲しむ事であきらめてはならい
悲しみが希望を救ってはならない
悲しみが立ち止まるいいわけになってはならない
森が語りかけてくる
森のざわめきが消えそうな俺の心を励ます
自分で自分につく嘘はまやかしの真実
自分の自分への評価は言い訳の真実
自分の自分への理解は自分の希望の残りかす
自分を捨て去ったとき
本当の自分が自分を冷静に見ている
今の自分をつくっているのは
今の自分の環境
本当の自分は
思い込みと他人の無知の結晶
悲しみきりなさい
死ぬほど思い悩みなさい
木々が俺に語る
生きること
それは悲しむこと
楽しさで忘れるのをやめなさい
悲しみは世界のエンジン
絶望し孤独の内に自分を見出し
他人の意味を知りなさい
あなたは
一人の
たったひとりの
赤子
森全体がきらびやかに、しかし、純粋な白色の光を放つ
森の中で
一人の少年がたっていた
とある15
光太が母親の体の真ん中にしまわれていたボールペンを
まるで母親が命がけで創造した宝物のようだと思った瞬間
リビングのドアが開いた
黒いコートに白髪混じりの短髪
顔にはシワが断崖絶壁のように走っていたが
どこか 見覚えのある顔だった
まさか
五年前に殺されたはずの父親が立ったいた
とある14
俺は家に着いても一向に落ち着かない
今度夢の中で またあの女神にあった時に問いただしてやろうと心に決めたのに
あの日以来俺は夢をみていない
ただ ただ
誰かの不幸が気になり夜も満足に眠れない
らしくない
し
なんか気持ち悪い
何も出来ないくせにただ誰かの事が気になる
あんな夢をみたせいで余計な事ばかり考え 感情がそれらで一喜一憂しては
精神が疲れ果てる
最近はテレビすら見れない
苦労してテレビに出る人間
コネだけでテレビ業界を渡りあるく人間
どちらにしても誰かに 彼らの知らない所で彼等の価値を他人が無意識に無慈悲に面白半分で決定していく
ニュースで一分間だけ世界を驚かす為に生まれた命
ニュースにもならない悲しみ
話題性が命や人間の価値をさらっていく
自分のベッドに仰向けになり一人
俺は考える
求めていないのに一方的に与えられる情報
知りたくもないのに耳に詰め込まれる情報など
吸いたくない時に吸うタバコ以上に体に毒だ
意味なく聞かされる言葉
意味なく見る人々
主張しないことで主張しあう 世上
全てが嘘の塊に見えてきた
ふと俺は目の前にあったカッターで
自分の目を刺そうとしてみた
とある13
光太が家に入ると真っ暗な玄関が彼を迎えた
父親が頭の狂った精神病の青年に殺されてから五年になる
母親はいつも知らない二十歳前後の男を家に連れ込んでは
あなたのお兄さんみたいな人と紹介した
この日も母親の鳴き声にもにた 何かに耐え忍ぶ声がリビングから聞こえてくると思ったが
家の中は 人の気配を残し ただ静まり返っている
暗い玄関の明かりをつけた
母親の年甲斐もなく派手な紫色のハイヒールが家の方を向いて置いてあった
彼の心に何かがおかしいという不安感と 期待感がよぎった
自分の母親が無残に殺され自分が運命の被害者になる事を誇らしい気持ちで
待ち構える子供
彼の予感は的中した
彼の母親は股をふしだらに開き
白目を向いて
リビングのテレビに向かって置かれているソファーのうえで動かなくなっていた
開け放たれた母親の股関からは
見たことも無いほど豪華なペンが飛び出していた
ペンの周りを飾る数え切れないダイヤモンドだけが
この部屋で唯一光を反射していた
光太がリビングで立ち尽くしていると誰が乱暴に玄関のドアを開けた
とある12
工場からの帰宅途中 自宅近くのコンビニによった
無機質に華やいでいる店内
薄いおでんの汁の香りだけが現実でありつづけていた
いつも通り缶ビールを一本 レジでタバコ一箱 と フライドチキンを頼み
財布から小銭をだす。
目元を前髪で隠した茶髪の青年が死人のような顔でレジを打つ
今までなら当たり前だった光景
しかし 俺は何故だか 彼に話しかけた
お疲れ様
彼は隠れている目を丸くして 驚き
は はい
と 怯えた声を出した
それ以外に何かを言える様な空気ではなかったので
釣銭を受け取り店をでた
何故か心の下の方が熱い
その頃 光太は
真っ暗な自宅のドアを開けた
SINGER wanted
ちょっと一息いれよう。
思わず自分が入れ世界が分からなくなるところだった。
で、
YINGYANG PRODUCTIONでは現在俺達のNEW ALBUMにFUTIREしてくれる
悪いLADYを募集中
ELECTRO HYPER HIPHOPの新作
TRACK等完成済み
後はあんたのやばいVOICEとSOULを注入するだけだ
腕の覚えのあるSINGER
性格不問 年齢不問 経験不問
見た目2割で色気8割
とにかくまってるよ。
MP3音源を
興味ある方はプロフィール(無い場合は主な活動)、オリジナルまたは
コピーの声入り楽曲(MP3で構いません)を添付して下記のアドレスに送って下さい。
ish@yingyangproduction.com
へ送ってくれ。
審査結果は採用者のみ連絡するよ。
宜しく!
で
久々いつもの電車の中
確実にドにーとで秋葉系の巨漢
体重150KG 身長180CM
油分500%
塩分180%
の にいちゃん
普段はきっと温厚で静かなはずだが、どうやら今日の彼の心の居場所はファンタジーの中の様だ
転職雑誌をいきなり電車の中で振りかざし
なんで、
なんでなの
なんで
あああーー
といきり立ち立ちだした
この時期職安通りはダーマ神殿と化す
彼もピチピチギャルに転職できなかったのがくやしかったのか
わがままBOYが実家で切れるような甲高い声をだしている
しかし、やつは巨漢
暴れたらそれなりにめんどくさい
が
面白い
向かいの席に座りながら俺は彼をじっと凝視
彼の横に座っているやせ細った老人が苦しそうに咳払いをした
が
彼は自分に向けられたと勘違いをしてじいさんを睨みつける
殺す
彼の視線がほざく
じいさんは下を向く
俺はまだ、彼を見ている
普段なら交わることの無い運命の糸
俺は何系でも人を嫌いはしないがじいさんにそんなことしたら
いかんだろ
彼は白目をむきながら
ふがふがいっている
手に持った転職雑誌をばんばん、彼の汗まみれのももにたたきつける
あ
やばい
いらってしてきた
俺は彼をじっと睨む
俺の視線気付く彼
今日は神にも負けないという顔をしている
そして、俺は怪しさ満点のピエロの様な笑みで答える
彼の顔に一瞬不安がよぎった
俺はおもむろに右手を左のうちポケットに差し込んだ
まるで銃でも抜くように
まるでナイフでも抜くように
そして、そのまま、彼の視線を凝視する
落ち着きがなくなる彼
徐々に静間になる彼
彼が俺の降りる駅で降りようと席を立つ
同じタイミングで俺も席を立つ
終電間近でかなり空いている電車内で俺は彼の真後ろにぴったりと立つ
手は内ポケットにいれたままだ、
そして、電車を降りてもずっと彼の後ろをついていく
俺はパーカーのフードをかぶる
そして、30CMほどの距離を保ちついていく
彼が早歩きになる
それでもぴったりついていく
彼が駅のトイレに入る
入り口でまっている俺
彼は駅員のところへ走っていった
俺はさらっと姿を消した
ONE
とある11
トラック内のスピーカーともひび割れとも解らなぬ隙間から いつものごとくニュースが聞こえてくる
高速自動車道 上り線 玉突き事故の為10キロ渋滞
渋滞の長さを伝えるだけのニュースに疑問を感じる
怪我人はいないのか
最近 俺はどうかしている 自分とは全く関係ない人間の生死が気になり 本気で事故の被害者達の心配をしている
あの夢を見た後からだ
絶望と恐怖が混ざり合い 生に対し一瞬無関心になったあの夢
街中に溢れているホームレスに対してさえ
今日は元気だろうか
凍えてないだろうか
訳も解らず気を揉んでいる
なにかがおかしい
相変わらず同じ仕事を終え 工場に戻る
疲れ果てた中年男が無表情にマシンを操作している
と
まただ 脱ぎ捨てられた制服がいくつもハンガーにつるされている
誰が吊しているのだろう
自分達の仕事で体力と細やかな心使いを使い果たした工場の人間の仕業とは思えない
洗濯係が運び易くなるくらいだ
いや 固めて袋に突っ込まれていた方が運び易いかもしれない
なんて無駄に整理されているのか
と
鼻がワシのように下に伸び、白髪混じりの頭髪を延ばしたい放題にしている
老婆
掃除係の老婆が赤らんだ目で 俺を威嚇するような視線でロッカーの陰から俺を睨んだ
会釈をし その場を立ち去ろうとしたが
ふと老婆が何かを囁いているのに気づいた
希望
整理
絶望
絶望
俺は夢の続きかと思い目をこする
すると 老婆はいつもの優しい笑顔で会釈してくる
今のは何だったのか
やはり俺は少しおかしくなったのか
金属音のはざまで肉声がJAZZ ベースのように不規則に一定のリズムで 工場の中をさまよっていた
何かが俺をくるしめている
他人などどうでもいい
言い聞かす自分は
自分の無力を 勝手に自覚していた
とある10
今年 12歳になる光太は いつものようにナイロン製の黒い肩掛けバッグを頭に載せて家をでた
いつからだろう
ランドセルを背負わなくなったのは
ランドセルのおかけで守られていた
後頭部や背中
巷の小学生の転倒死亡事故は確実に増していた
通学路に立つ 嫌々 小学生を安全に導いている初老の酔っ払いに いつも通り軽く会釈し これ見よがしに信号を無視して横断歩道を渡る
酔っ払いは何も言わない
ただ 若さを呪うような視線を浴びせてくる
学校に着く
時代遅れの灰色の校門 がドクロのあばら骨の様に北風を吹き付けてくる
最近 光太の友達が逮捕された
と いっても刑務所に入る訳でもなく
親の権力で事なきを得たが まだ学校には来ていない
集団レイプで一人の小学生女子を妊娠させたが 卵にたどり着いた精子が誰のものかなんて 誰にも解らない
まあ どうでもいい事だ
光太はいつもの席にいつものように座ると PC機能付き携帯電話でお気に入りのイギリス人ラッパーの最新PVを見やる
ほぼ裸同然の白人美女が股を広げて視線を吸い込む
無表情にまだ若い女の担任が教壇に付きため息混じりにホームルームをはじめる
女の子
よく聞くように
最近 小学生女子を狙った殺人事件が発生してるから
なるべくみんなで帰るように
誰も返事などしない
ある男子はエロサイトに夢中で
ある女子はアイドルの動画に夢中
光太は美女の太ももの筋肉のラインが黒ずむのに夢中だ
気づけば学校は終わっている
誰もが個人の世界を個人的に楽しみ学校は終わる
その頃光太の母親の太ももの筋肉のラインに誰かの汗が溜まっていた
とある9
歌うように女神はそう言うと、再び白い光の中に消えていった
ただ、
俺は夢から覚めなかった
忘れていた絶望が腹のそこからよみがえり
嗚咽がせりあがってくる
そして、何かを探さなければという使命感にも似た思いが俺の体を突き動かす
無我夢中で霧の中を
ただただ俺はがむしゃらに走っていた、、
俺もそのまま光の中へと消えていった
ふと目を覚ますと
俺は泣いていた
涙を流したことなんて一体何年ぶりだろう
映画やテレビ番組で一瞬、ファストフードを食べた後の余韻くらいには泣くこともあったが、
そんな自分の心の余裕の隙間に流れる涙などとは違った涙
泣くことでどうにか自分を保っていられる、泣かなければ胸が、頭が破裂してしまうんではないかと思うほどの
感情の流れが、
俺に涙を流させていた
またテレビをつけっぱなしで寝ていたようだ
行方不明だった女性の顎の部分と思わしき骨が見つかり
近隣からは胴体部分も発見された様です。
普段聞き慣れた感情の無いニュースキャスターの淡々とした事故報告に
普段は感じない違和感を覚えた
乾燥注意報
昼間、民家で火事、4人の遺体が発見された模様、現在この家に住んでいる次女のNちゃん、
三男K君が行方知れずとなっております。
まただ、
なんだ、この違和感は
なんて
なんて
悲しいことがすぐそこの、同じ世界で起きているのだ。
なぜ、
誰も彼もが冷静にそんな話を口にし、
次の瞬間には笑顔でお天気注意報などど、いえるのか
どうしたのだ
演技の様に眉間にしわ寄せれば、悲しんでいるとでもいいたげなアイドルまがいのキャスターが
自分の婚約会見の話を、幼い女の子が笑うような顔で、火事のニュースを読んだ直後に語った
小学生女子殺害事件の犯人 小学校六年生の男の子の指紋と毛髪が
死体から発見されました
俺は不思議とこのニュースには心が揺さぶられなかった
涙も止まった
体の中に自分ではない何かが入った様な感覚だけがずっと残っていた