とある25
光太はゆっくり目を開ける
黒いコートの男から貰った味噌汁を飲み干した後、また再び眠っていたようだ
どこからか懐かしい声が聞こえてくる
「ああ、さっきだ、 まさかとは思ったが、元妻が、、、そうだ、、悪いな」
「分かっている、無事だ。 だが、俺には、、そうだな、 もう昔に捨て去ってしまった。」
「どうする? 奴は息子を必死にさがすだろう。 ただ、これで証拠ははっきりした。」
「ただ、奴が簡単に口を簡単に割るとは思えない。」
「警察はだめだ、奴の息がかかっている。」
「ただ、方法はある、、、じゃ また後でな。」
光太は彼の「息子」という言葉が自分に向けられている言葉であると感じた。
理由は分からない、ただ
解っただけだ。
寝たふりをしたまま光太は心の中から暖かいものがあふれ出しているのを感じた
それは居場所を探すかの要に、光太の体中を駆け巡った
気付くと涙がでていた
でも
うれしくて、楽しい涙
母親の死を乗り越えるために神様がくれた大切な言葉を、光太はその耳に、心に刻んだ
いますぐ彼に抱きつき、思いっきり涙を流しながら、わがままを言いたい衝動に駆られた
しかし、彼が自ら、自分の父であると名乗るまで、それは出来ない事だとも思った
もう離れたくない
でも、
今は離れることが出来る距離が、二人の間にあることを光太は感じていた
音を立てる事すら暴力である様な、
息遣いですら優しい男は
ドアの前でソファーに座りながら、下を向き眠ったようだった
彼の心
光太の心はこの薄暗い部屋で確実に同じ夢を見ていた
その頃
あの政治家は不測の事態にいらつき、若い30台後半の秘書の顔面に、灰皿を投げつけていた
女王
朝帰り後
大した睡眠もとれずに本日も街へくり出す
最近 肉をやめた
ニューヨーク時代にもあったが
肉食わない方が
案外タフに動ける
体も軽い
と
いつもの電車
俺の向かいに座る
三人のおばさん
左から
メガネ
青いスウェット
ジーンズパンツ
なかわけヘアー
真ん中
灰色ダウン
灰色スカート
黒いローファー
黒髪 肩まで
最後
赤いベロアのコート金のティアラ
ヒョウ柄マフラー
ゴールドのロングブーツ
髪型
はしのえみの姫ヘアー
同じリアクションではしゃぐおばさん二人に女王
女王は目を細めながら俺を見た
使える配下とみたのか
ふーん
と上から見下ろしてくる
女王はおもむろにに紙袋を開けられた
まさか
褒美か
いや マンジュウだ
他二人のおばさんに分け与えていらっしゃる
おお 自らも 一口でお召し上がりになった
なんと 凛々しき事
その姿に見入っていると
配下の二人のおばさんが イラついた視線を浴びせてきた
身分の低い
街の音楽家のオレなど 見ることすら
おこがましい様だ
女王は 一人電車をお出になった
残った配下のおばさんは 女王がいなくなった為に
宮殿使用人たちが噂好きなように
女王のティアラについて黒く語っていた
女王とはつらき道
誰かチョコくれ
とある24
俺はまたおの夢の中にいた
髪を肩まで伸ばした少年が一人うずくまっていた
声をかけようとするも声が出ない
少年が顔を上げた
泣いているのか笑っているのかわからない顔をしていた
すべてを無くした様な、
それでいて安心している様な
不思議な表情
俺は少年をじっとみつめている
そして、少年がうなずき
俺もうなずく
少年の後ろに さらに同じ歳くらいの少年と少女が立っていた
その間から、いつもの女神が現れる
何かを希望とする時、何かがその裏で絶望している
白いものは白いままでいなければならない
ただそれを許すものはいない
守るものがいなくなった時
それは支配されてしまう
黒いものは黒くいなければならない
ただそれも同じように誰も許さない
あなたは見えているでしょう
あなたは 目を背けずにみているでしょう
感覚を
感情を
殺してはいけない
殺されてはならない
黒いマントを翻した男が女神の裏から現れた
そして、子供達と白い光の中へ消えていった
とある23
世界は誰の事も気にしない
貧困でしにゆくもの 糖尿病でしにゆくもの
全ての死にゆく者は平等だ
誰しも砂時計の一粒の砂に怯えている
未来は期待という架空の箱の中にある
片親で殺人犯のレッテルを張られた者に生きる道はない
片親が悪いわけじゃない
残りの親まで自殺した時
彼の良心を受けとめる箱は
この世界を探してもどこにもない
黒い大人が囁く
君がいなくなれば世界はよろこぶ
君が檻の中に入れば誰しもが傷つかづに済む
君を守ってくれる人はいない
君が凍えそうなとき君は檻の中でぬくぬく生きている
君は選ばれた人間
親の力を借りずに生きていける 希望
甘えきったガキ共をみよ
糞みたいな友情をひけらかし 生きる下らない馬鹿共に何を感じる
選ばれた勇者よ
君は世界の真ん中で正義を貫く
檻の中は法を超えし超人の群れ
媚びるな
騙されるな
自己を嘲るな
お前は世界の希望だ
ピッコロ
冷たい夜空に冷たい雨
右曲がりな思想が街を我が物顔で伸し歩いた今日
昭和風なスピーカーの鳴りに嫌気とノルタルジーを同時に感じた
人もまばらないつもの電車
俺の横に座る細身ストライプスーツが一人
IPODからクラシカルミュージックが爆音で音漏れ
なんか 視界に入る
奴の指先だ
ピアノを弾いている様に
指先をピロピロする
しかも若干ドヤ顔で周りをチラ見
バッハもMP3の音漏れで聞かす事までは考えてないだろう
背筋ピーン
指先ピロピロ
ドヤ顔
ちょっとホモっぽいヒゲ
俺が本読んでるのに
視界にピロピロが入る
んー
ウザイ
で 横目で奴を見る
ドヤ顔
あ
ダメだ
いらってする
で
DJ MAKINO の
BLUE IN GREEN
聞きながら
俺もピロピロ
ピロピロ勝負
奴が俺を見る
俺 ドヤ顔
奴
下手くそが と本気をだし さらに複雑にピロピロ
俺はゆったりピロピロ
奴 頭まで振りかぶりリアルピロピロ
俺
緩急つけて 間を大事にピロピロ
奴
我慢出来ず 両手でピロピロ
奴が変態に見えだしたとたん
クイットピロピロ
向いのおばさん
今どこかわからずキョロキョロ
どこどこ
斜め向かいのニートがおどおど
誰かのおもひで
ポロポロ
奴はドヤ顔
癖毛がアーティストを気取りだし
俺の肌の黒さが
繊細に霞む
死んだ目した奴がゴソゴソ
ONE
とある22
俺は勇者なんかじゃない
ただ名前が勇者というだけだ
が
ある夢を見てから 俺は変わった
今まで下らないと聞き流していた
不幸の棒読み
ニュースが気になり
誰ともしらない被害者の為に涙を流し続ける日々
俺は誰なのだ
誰か教えてくれ
あなたは今
幸せですか
あなた今 何を思って生きていますか
俺はあなたを助けたい
とある21
光太は空腹を感じていた
確かに感じていた
母親が殺され 訳の分からない場所に自分がいるにも関わらず
確かに 安心していた
毎日知ら ない男を家に連れ込む母親との生活より
薄暗い裸電球が照らすこの無機質な 地下室のような部屋の方が落ち着いた
黒いコートの男がゆっくり近づいてくる
顔は暗くてはっきり見えないが
優しい動きだった
光太を怯えそないように すごく目に見えない線を踏まぬ様 ゆっくり 優しく近づいてくる
光太と男の距離がゆっくり縮まる
光太はずっと忘れていた何かをゆっくり思いだす
男の顔が見えた
鳴きそうな それでいて 厳しいような
本人もどういう顔をしていいのか分からないようだった
でも
光太にはわかっていた
この人は絶対に自分を傷つけない
男は無言で光太に味噌汁の入ったコップを渡した
とある20
八王子の山林で見つかった七人の少女の死体
今まで 5人 6人と同じ手口の事件が起こっている
警察が捜査を進めていく内に 殺された少女達には一つの共通点が有ることがわかった
それは
皆 片親で有ること
しかも両親のどちらかが 過去に殺されていた
事件との関係性は以前不明だが
この事実が事件解決への確かな一歩であると警察は信じていた
しかし 今回は犯人が自首してきていない
過去二回の事件では それぞれ小学生男子が自首していたが何故か今回の事件には犯人が現れない
しかも 過去二回の事件で自首してきた犯人達も片親で事件直後に 親達は息子の犯行に責任を感じてか 一人は自殺し もう一人は失踪し行方をくらませた
全てのチャンネルのニュース番組がこぞって この連続女児殺害事件を取り立てている
未来への不安を楽しむ小学生のように
俺は工場に体調不良の為に休むと 嘘の報告をした
工場長は
まあ 首になってもいいって事だよな
わかってるな
体調不良ぐらいで休む馬鹿はいらない
勝手にしろ
と 明日仕事にいってもいいのか 首になったのか よく分からないセリフを涙を流している俺に浴びせた
テレビから流れるニュースを見て 俺の中の誰かが 目を覚ました
とある19
光太が目を覚ます
一瞬自分の部屋のベッドの上に寝ている様な気がする
しかし 天井から頼りなく垂れ下がった裸電球の安いが何故か安心する光を見て 自分の部屋ではないことに気づく
蛍光灯は冷たかった
何故そんな事を考えたのかは分からない
ただ 裸電球の周りに飛んでいた蠅の飛ぶ音が気になる
と
頭の後ろ辺りでやかんがせわしなく泣き出した
おもむろに光太は起きだし 後ろを見やる
黒いコートを着た男の背中が見える
男はやかんを素手で持ち上げ 湯をコーヒーカップに注ぐ
味噌汁の匂いだと光太は分かる
光太の小さな腹が鳴きだす。
男はゆっくりと振り向く
とある18
俺が夢の中でみたあの少年は誰だったのだろう
夢から覚めると、またいつもの様に、セットした時間より3分遅れで目覚まし時計が鳴っていた
目覚まし時計
時間を知らせるために物
能動的に時間を押し付ける物
そろそろ変え時か
日に日に、目覚ましのアラームがなる時間が狂ってきている
鳴るお音もなんだか、変ってきている
また、つけっぱなしだったテレビから女性が強姦され自宅で殺されていたというニュースが流れている
父親は5年前に殺され、母親も殺されたというその被害者の息子も行方不明らしい
これからその子はどうやって生きていくのだろう
ふと考えると涙が出てきた
俺には何もできないのに
また、町のホームレス達の映像がテレビに映った
皆が何かを燃やしている
最近当選したあの政治家の写真だった
政治を整理します 大沢 金蔵
大沢が打ち立てた雇用確保の政策に期待を寄せていた若いホームレス達
実際には人気取りだけの為に、そんな政策を打ち立てただけで、己の立場を守ることしか頭にない
政治家だと、今更に気付いて、皆、怒り狂っていた
いつの時代も政治家なんてそんな物だろう
いつの時代、政治家が民衆を助けたことがある?
俺はくだらなすぎて、先ほどの涙も止まった
その頃、八王子の森の中で7人の小学生女子の死体が発見された
そして、警察は被害者の少女達にある共通点がある事を見つけた