「サエコは将来、
ピアノの先生になるんだよ」
わたしは小さい頃から、
親に、そう言われ続けながら
育ちました。
うちの親は、
「子どもの将来は親が決めるもの」
と本気で信じていましたし、
私も中学生になるまでは
「そういうものか」
と思っていました。
・・・けれど、
だんだん周りを見て、
気づくようになります。
「あれ？
もしかして、
自分の将来って、
自分で決めてもいいの？」
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脳の病気ですべての言葉を失った1歳の息子が、
中学受験塾から特待生のオファーが来るまでに成長した軌跡
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9/9追記：無事出版しました
ベストセラー３冠ありがとうございます!!
こんにちは
「保育士×心理アドバイザー」の
秋月サエコです。
これから数回にわたって、
「本を書こうと思ったきっかけ」
を綴っていきたいと思います。
夢を叶えられなかった母
わたしの母は、
子どもの頃、
ピアノの先生に憧れていました。
けれど、
当時、ピアノは
一般家庭には高価なもの。
母は、ピアノを買ってもらえず、
習わせてもらうことも
できませんでした。
母の人生で
諦めざるを得なかった
「ピアノを弾けるようになりたかった」
という夢。
その夢は、
強い想いとなって、
長女であるわたしに
向かうことになります。
ただ、母に褒められたくて
わたしが4歳のとき、
母はわたしを
ピアノ教室に入れました。
「こんなに小さい子に
習い事はまだ早い」
と、最初は反対していた父も、
上司の家に招かれた際、
小学生の娘さんが
上手にピアノを披露する姿を見て
すっかり魅了され、
母の考えに
賛成するようになります。
そして、
家族ぐるみで、
わたしへのピアノの
英才教育がはじまりました。
４歳と言えば、
ちょうど、
妹が産まれた年。
ふだんは
赤ちゃん（妹）の世話に追われて
忙しそうにしている母が、
わたしがピアノを弾くときだけは、
こちらを見てくれました。
いつもはめったに
褒めてくれない母が、
わたしがピアノを弾くと、
びっくりするほど
褒めてくれる・・・。
わたしは、
母に褒められたい
母に自分を見てほしい
その一心で、
ピアノの練習に励みました。
すべてをピアノに捧げる日々
毎日練習すれば、
それなりにうまくなるもので、
小学４年生のときには、
通っていたピアノ教室の
特待生に認定されました。
父も母も
「この子には音楽の才能がある」
と、有頂天でした。
その頃から、
両親はわたしに、
「ピアノのために」と、
いろいろなことを
我慢させるようになりました。
わたしは休み時間に
ドッジボールをするのが
好きでしたが、
「突き指をするといけないから」
と禁止されました。
また、わたしは
お友だちに誘われて
体操部に入りたかったのですが、
「おまえに体操の才能はない。
ピアノの練習時間が減るからやめなさい」
と、入部は許されませんでした。
他にも、
学校の調理実習が楽しかったので
「家でも料理をしたい」と言っても
「包丁で指を怪我したら大変だから」
と、卵料理しか
作らせてもらえなかったり、
音楽関係の習い事（ソルフェージュや音楽理論など）や
ピアノの練習時間で忙しく、
放課後にお友だちと遊ぶことが
ほとんどできなかったり、、、と、
わたしの子ども時代は
「すべてはピアノのために」
を合言葉に、
窮屈な日々を強いられたのでした。
ロボットのような演奏者
そんな日常を送る一方で、
わたしは
「自分には才能がない」
ということに、
だんだんと
気づきはじめていました。
ピアノの先生たちからは、
「サエコさんの演奏は、
技術的に正確だけれど、
表現力が足りない」
「もっと感情を出して」
などと言われました。
譜面通りに
正確には弾ける。
先生の指示通りに
そつなくは弾ける。
けれど、
わたしの演奏は、
心が伴わない、
ロボットのような
空っぽな演奏だったのでしょう。
そもそも、
ピアノを好きで
はじめたわけではないわたしには、
演奏に込められるだけの
情熱がなかった
のです。
友人の一言にカルチャーショック
わたしは思春期になるにつれて、
「人前で演奏する」
→「評価を受ける」
という流れに
苦痛を感じるように
なりました。
もともと
人前に出るのが
得意ではなかったわたしは
本を読んだり
絵を描いたりするのが
好きな子どもでした。
小学校高学年のときには
少女漫画家に憧れ、
友だちと「交換日記」ならぬ
「交換マンガ」をしたり、
お小遣いを貯めて、
画材屋さんに行くのが
楽しみでした。
けれど、
父や母に
「漫画家になりたい」
と言っても、
まるで
とり合ってくれません。
そんなとき、
同じく少女漫画家に憧れる
クラスメイトが、
「この前、お母さんが
画材屋に連れてってくれた」
と言っているのを聞いて、
衝撃を受けます。
聞けば、
その子のご両親は
その子が興味をもったものは
何でも応援してくれて、
「漫画家になりたい」と言えば
画材屋さんに連れて行ってくれたり、
いろいろなマンガを買ってくれたり
するそうなのです。
・・・それは、
わたしにとって、
大きなカルチャーショックでした。
その友だちのことが、
心の底から
うらやましい
と感じました。
そして、
わたしはうっすらと、
「うちの家庭は他と違うのかもしれない」
と、違和感を
感じはじめたのでした。
～つづく～
つづきはこちら
「作家になろうと思った理由」はこちら
本を書こうと思ったきっかけ①～わたしの将来は親に決められていました～
本を書こうと思ったきっかけ③ ～母の死。そして、すべてなくなった～
本を書こうと思ったきっかけ④～無人島で何をする？～
本を書こうと思ったきっかけ⑤～夢をかたちに～
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