ただジイの独り言: 楽しく生きるコツ!
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他人に過度の期待をしない
他人にはのう、あんまり期待せん方がええんじゃ。特に親しい人に過度な期待をするのは危ないわい。
結局のところ、自分のことを一番考えてくれるのは自分だけなんじゃよ。いくら大事な人でも、やっぱり一番は自分のことを考えとるもんじゃ。
期待ばかり大きゅうしとると、後でがっかりしてしもうて、損じゃからのう。ちょっとしたことでもありがたいと思って、感謝するんがええんじゃ。
それとな、他人と比べんことじゃな。わしらは自分のことは全部知っとるが、他人のことなんぞほんの一部しか見えとらん。そんな一部と全部を比べてもしょうがないんじゃ。他人は他人、自分は自分。比べずに、自分の道を歩いていくのが一番なんじゃよ。
他人を認める、怒らない
世の中っちゅうのは、ほんに色んな人がいるもんじゃ。わしらにとっちゃ当たり前のことも、他の人にとっちゃ知らんこともあるし、その逆もある。
経験も知識も、人それぞれ違うんじゃから、自分の物差しだけで人を測っちゃあかんのじゃ。正義だって一つじゃない。他人の正義も認めてやる広い心が大事なんじゃよ。
それとな、誰かのノロノロした動きや、ドジや間抜けな行動にイライラするのは損じゃ。怒りの沸点を高うして、すぐにカッとならんようにせんといかん。そいつも一生懸命やっとるんじゃろうし、怒鳴ったところでええことにはならんからのう。
怒るんは、本当に悪意で攻撃されたとき、実害を受けたときだけでええ。そんときも感情的にならず、淡々と事実に基づいて対応すりゃあええんじゃ。
現実を認める
わしが思うにのう、まずは現実を受け入れることが大事なんじゃ。世の中、自分の思い通りにいかんことばっかりじゃけぇのう。
起こってしもうたことはしゃーない、まずそれを認める。現実逃避しても始まらんし、無いものねだりしてもしょうがないわい。
ほんで次に大事なんは、頭を切り替えることじゃ。「ほんなら、どうするか」とすぐ考えるんじゃ。そしてのう、「こうするぞ」と声に出して明るう言うことじゃ。これが気持ちを前に向けるコツなんじゃ。
嫌なこと言われても、明るう返事する。暗い顔してたら、ええことも寄ってこんもんじゃ。そんで、過去のことや他人を変えようとせんこと。変えられるのは自分だけなんじゃよ。
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6.怒鳴る係長
忠夫が最初に仕事をしたのは、大手アルミ建材メーカーの関連工場だった。ビルや住宅用のサッシやパネルに色をつける、言うなれば、建材に“顔”を与える工場だ。
配属されたのは「検査課」。製品が塗装ラインを通過したあと、その仕上がりをチェックするのが忠夫の仕事だった。
「ツヤ良し」「色むらなし」「塗膜の厚さ、規定内」
そんな具合に、色合い・手触り・反射の具合など、五感を総動員して合格か不合格かを判定する。単純なようでいて、実は神経を使う繊細な作業だった。
だが、当時の現場にはまだ「品質管理」という意識が根づいておらず、多くのベテランたちは“経験と勘”を誇りにしていた。中には、「見りゃわかる」と言って定規すら使わない者もいた。
そんな空気の中で、忠夫は教えられた基準に忠実だった。不合格は不合格。遠慮なく赤ペンで「×」をつけた。
それが、火に油を注いだ。ある日、生産部の係長が真っ赤な顔で検査室に怒鳴り込んできた。
「おいコラ、あれが不良品って、ふざけんな!」
声は荒れ、拳が震えていた。
「新人が何様だ!何も知らないくせに、エラそうに線引いてんじゃねえ!」
怒鳴り声は続き、ついには手に持っていた剥離剤(塗装を溶かす強力な薬剤)を忠夫に向けて振りかざした。鼻を突くあの刺激臭。とっさに後ずさりしながらも、忠夫は黙って立っていた。
もちろん怖かった。けれど、だからといって、検査を甘くするつもりはなかった。
忠夫はこっそり、試作室に通い始めた。そこにいたのは「長老」と呼ばれるベテランの職人だった。誰よりも厳しく、誰よりも塗装に誇りを持った人。その人のもとで、忠夫は一から塗装の技術を学んだ。
毎日仕事終わりに足を運び、道具の持ち方から塗料の配合、温度管理に至るまで叩き込まれた。黙ってやる気を見せれば、長老は教えてくれた。そして、ある日、彼はぽつりと呟いた。
「お前の腕は、もう通用するぞ」
その言葉が、胸の奥に静かに灯をともした。
しばらくして、また例の係長が怒鳴り込んできた。だが今回は、忠夫は静かに、そしてはっきりと答えた。
「じゃあいいですよ。私が全部、良品に直しますから」
そう言って、塗装用の作業着に着替え、塗装ブースに立った。
一本、また一本、不良品とされた製品を、一本ずつ手に取り、塗り直していった。慎重に、確実に、美しく。
係長は黙ったまま見ていた。怒鳴り声も、文句も、ついにひと言も出なかった。
「何もできない若造」だと思っていた新人が、次々と仕上げていく姿に、彼は何かを悟ったのかもしれない。それ以降、係長が忠夫に怒鳴り込んでくることは、二度となかった。
そこで忠夫は、「信念を貫き、実力を身につければ、言葉以上の説得力になる。現場は厳しいが、“本物”は、必ずどこかで認められる。」ということを学んだ。
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5.高校受験失敗
忠夫の家は、県内でも有数のエリート進学校のすぐそばにあった。
朝、校門に吸い込まれていく学生たちの制服姿を、子どものころから何度見ただろう。自転車のベルの音、カバンからはみ出す分厚い参考書。それらは、忠夫にとって当たり前の風景だった。誰もが、忠夫が将来あの高校に進むものだと疑わなかった。両親も、近所の人たちも、そして多分、忠夫自身も。
小学校の低学年までは「神童」なんて呼ばれることもあり、テストで満点を取っては先生に褒められた。それが、当たり前だと思っていた。
ところが、気づけば成績は平均点をさまようようになり、小学校高学年には、すっかり「オール3」が定位置になっていた。中学でも中の上くらいの成績。あの高校は遠くなっていた。
そこで忠夫は、進路を少し下方修正した。世間で「準エリート」と呼ばれる高校に狙いを定めた。
「ひとつ下げたんだから、大丈夫だろう」
どこかで、そう思っていた。たぶん、本気で“落ちる”なんて考えていなかった。
でも、現実は残酷だった。合格発表の日。掲示板に、分の受験番号はなかった。頭が真っ白になった。
次の瞬間、耳に入ってきたのは、慰めの言葉の雨だった。
「まあまあ、気にすんなって」
「きっと、次はうまくいくよ」
「いい経験になったじゃないか」
優しい言葉ばかりだった。なのに、それらが胸にまったく届いてこなかった。むしろ、煩わしかった。悔しさでもなく、恥ずかしさでもなく、ただ「放っておいてくれ」と思った。
そんな中、母だけは違った。台所で静かに食器を洗いながら、忠夫の様子を一べつしたあと、ゆっくりと口を開いた。
「私立に行く?それとも、1年浪人する?」
それだけだった。
その声には、慰めも怒りもなかった。ただ、現実だけがあった。母は食卓に、私立高校と予備校のパンフレットを静かに置いた。
忠夫はそのとき、初めて「これからのこと」を考え始めた。誰にも触れられたくなかった気持ちに、母は土足で踏み込まなかった。ただ、隣に静かに立ち、忠夫が前を向く準備ができるのを待っていてくれた。
結局、忠夫は1年間の浪人生活を選び、翌年、ようやく希望の高校に合格した。あのとき、母があの一言をくれなければ、忠夫はもっと長く迷い、もっと深く沈んでいたかもしれない。
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4.アルファベットが一つ足りない
中学一年の春、忠夫は新しい教科書を前に、胸を高鳴らせていた。それは英語だ。初めて出会う外国語。見慣れないアルファベットの並びに、どこか冒険の匂いを感じた。地図帳を眺めるのが好きだった忠夫は、「言葉」という新しい地図を手に入れたような気がしていた。
初回の授業で、先生は言った。
「明日、小テストをします。アルファベットをAからZまで、順番に覚えてきてください」
たったそれだけの宿題だった。でも忠夫は、真面目だった。
いや、どこかで“英語が得意科目になったらかっこいい”という気持ちもあったのだろう。ノートに何度も繰り返し書き、ひと文字ずつ声に出して読んだ。A・B・C・D……Z。完璧だ。
そして迎えた翌朝。意気揚々と試験用紙を受け取り、一気にペンを走らせた。ところが、最後まで書き終えた瞬間――何かがおかしい。25文字しかない。
目を皿のようにして見直すと、「R」が抜けていた。まさか、よりによって「R」だとは・・・。
パニックになりながらも、忠夫は最後の空白に「R」を書き加え、さらに「QとSの間に入ります」と説明文を書いて丁寧に矢印まで添えた。
「大丈夫。ちゃんと気づいたし、訂正もしてある」
そんな自信さえあった。結果は、〇こそもらえないかもしれないが、少なくとも努力は伝わるはずだと信じていた。
だが、返ってきた答案用紙には、無情にも「×」の赤い印があった。
「先生、ちゃんと“R”が抜けてたのに気づいて、後で書き加えたんです。見てください、ここに……」
忠夫は、必死に訴えた。
けれど、先生は言った。
「最初に書いてなかった時点でダメです。テストは“正確さ”を測るものですから」
その瞬間、心のどこかで「カチン」と音がした。
悔しさ、虚しさ、恥ずかしさ……色んな感情が渦を巻いた。気づいたのに認めてもらえなかった。小さな自信の芽が、摘み取られたような気がした。
それ以来だった。英語の授業が、少しずつつまらなくなったのは。単語を覚えるのも、文法を学ぶのも、どこか“自分には関係のないこと”のように感じてしまった。
英語そのものが嫌いになったというよりも、あの先生との距離感が、そのまま英語との距離になってしまったのだ。