しばりやトーマスの斜陽産業・続 -64ページ目

これは陰謀か?『大統領暗殺』

 本日は参院選投票日だけど、その直前に安倍元首相が銃撃され死去という凶事が。容疑者は逮捕され動機や背後関係は現在調査中ですが、テレビの報道は追悼ムード一色で元首相の過去の業績(そんなもんあったのか)を取り上げ、あらんかぎりの言葉で持ち上げて英雄視する始末。本当にこの国の報道というものは…

 私は映画に関する文章でお賃金を得ている人なので、こういう時こそ要人暗殺関連の映画の話でもしなきゃ!と思い、今回取り上げる一本はブッシュ大統領が暗殺された!という偽ドキュメンタリーの『大統領暗殺』(2006)です。ブッシュ大統領暗殺事件を関係者の証言と本人の実際の映像と合体させて振り返るという構成。

 

 2007年。イラク戦争は泥沼と化し、国内におけるブッシュ大統領の支持率は下がる一方。支援団体であるシカゴ経済クラブの会合で演説するためやってきたブッシュの車を反大統領デモが取り囲む。

「抗議運動は憲法が認めた国民の権利だ」

と大統領警護を担当していた元FBIがコメントする。与党の人間が「国民に主権があるのはおかしい」とかぬかす日本とは大違いですね。

 会場のホテル、シェラトンにやってきた大統領はそつなく演説を済ませ、ホテルの出入り口付近にいる支援者たちと握手するため出てくる。ところがその一瞬の隙をついて銃声が!大統領は病院に直行、その場で犯人は取り押さえられるがこれは勘違い。大統領は離れたビルから狙撃されたということが判明。周囲の建物は厳しく警戒されていたのに?

 アメリカ国内が騒然とする中、大統領は息を引き取り、副大統領でチェイニーが次の大統領に任命。チェイニーは「シリアのアサド政権を洗え」と命令。「シリアは関係ないのでは?」と注進するFBIの意見も聞かず、新大統領の命令で容疑者の洗い出しが行われ、狙撃者と思しき男が逃亡するのを見たという証言はまったく重要視されず、シリア人のジャマール・アブ・ジクリという男が暗殺の容疑者として逮捕される。

 身に覚えがないとするジャマールの証言は聴取を担当した捜査官の決めつけによって次々と覆される。純朴そうなジャマールの外見を見ても「こいつは人の心がない!」と決めつけ、銃を触ったこともないというジャマールがパキスタンでアルカイダの訓練キャンプに参加したという写真を証拠として提示。しかしそれは旅行中のジャマールがアルカイダと知らず強制的に参加させられただけのものだった…

「まずは犯人を決めてから証拠を集めるのだ」

 というやり方でジャマールの無実を訴える声は誰にも届かず、陪審員裁判によって有罪が確定。「アルカイダに訓練を受けたシリア人エージェントによる国家主導の暗殺である」と断定され、アメリカはシリア沿岸に空母を派遣する。

 ブッシュ暗殺はアメリカと敵対するシリアのアサド政権に介入する理由をこじつけるため、チェイニーらネオコンが仕組んだ陰謀であると受け取れるような内容なのだ。その後真犯人と思しき人間が自殺したことが明らかにされるも、ジャマールは解放されることなく、政府は国民を監視し、FBIやCIAの捜査官の権力を拡大する愛国法を恒久法にして突き進む。単なるフィクションとは言い難い、ぞっとするような嫌なリアリティがあり、賛否を巻き起こしたのもわかる。痛いところを突かれた人がムッとしたんじゃない?

 

 安倍元首相の事件も陰謀大好きな人たちがどうとでも取れる、いいかげんな分析をして悦に浸ってますけど、この映画みたいにフィクションのエンターテイメントとして人を沸かせるぐらいにしときなさい。

 

 

 

 

 

2022年7月予定

2022年7月予定

 

7月9日(土)

アイドル十戒 レザレクションズ其の九

場所:アワーズルーム 開演:19:00  ¥1500(drink代別)

出演:竹内義和 しばりやトーマス

 

アイドルがいなかったら苦しまなかったひとたちの嘆き
 

7月14日(木)

旧シネマパラダイス

会場:アワーズルーム 開演:20:00 ¥1000(1drink込)

 

深夜の映画番組みたいな企画。今月はアメコミオタクのサム・ライミが撮った『ダークマン』

俺は一体誰なんだ!

 

7月15日(金)

大阪おもしろマップ ~おうち対応ver〜襲来、ジェラスガイ坂本

会場:なんば紅鶴

open 19:30 start 20:00 ¥1,500-(1drink別) 

出演:B・カシワギ 射導送水 しばりやトーマス ジェラスガイ坂本

ゲスト:ジェラスガイ坂本

 

7月20日(水)

キネマサロン肥後橋 

会場:アワーズルーム 開演:19:30 ¥1000(1drink込) 

 

カルトを語る若人の会。今月は昭和ゴジラシリーズ末期の徒花、『ゴジラ対メガロ』。

肥後橋でゴジラとジャガーでパンチパンチパンチ!

 

7月28日(木)

スーパーヒーロートーク

場所:なんば紅鶴 料金:¥1000(1drink別) 開場:19:30

出演:にしね・ザ・タイガー ソエジマ隊員 しばりやトーマス

 

7月30日(土)

僕の宗教へようこそ第一五二教義~土曜ロードショー第三五幕

場所:なんば白鯨 開演19:00 料金:¥1500(1drink付)

出演:しばりやトーマス アシスタント・トモ

 

2か月連続の土曜ロードショーはついに公開『映画ゆるキャン△』他夏映画、ハガレンに匹敵する漫画原作映画特集他!

ジャケットがUSO『闇金USA』

 U-NEXTの最新配信作から発掘。ダニー・トレホ主演でこのジャケット、タイトル。極悪非道の取り立て屋のトレホが借りた金を返さないチンピラ、ギャングを相手に二丁拳銃を乱射、地獄の底まで追いかけて命まで取り立てる…という内容を期待したが、作品紹介のところに「ダニー・トレホ主演のヒューマン・コメディ」とあって目を疑った。トレホのヒューマンコメディって…?見るしかないでしょ!

 

 債権回収業者のロレンゾ(ゲイリー・ムーア)は成績トップの稼ぎ頭で社長のお気に入りだが成績を鼻にかけているイヤな奴で、同僚からも嫌われている。そんな折、社長がケイマン諸島に休暇に行っている間、代理社長を任されることに。

 ところがそこに取り立て屋のフランキー(トレホ)が登場!以前自営業の開業資金のためにフランキーから借りた金を返さずにトンズラしていたのだ(その店はつぶれた)。他人の債権を回収している人間が自分の債権からは逃げ回っていたとは…

 5万ドルの借金は利子こみで15万ドルに膨れ上がり、フランキーから3週間以内に返さなけりゃ肉をもらうと脅される。逃げないよう甥っ子のオマール(デヴィット・クルーセン)を見張りにつけられ、返せる宛てのないロレンゾは途方に暮れる。偶然入り込んだ「人生充実センター」(無職やホームレス同然の人々を支援するボランティア)にやってきたロレンゾはいいアイデアを思いつく。会社の同僚を全員クビにしてセンターの人々を回収業者として雇い、「職業訓練だから」という理由で激安でこき使い、回収した金を返済に充てるのだ。それって横領やん!

 でも昨日まで無職の人に回収業なんて出来るの?そこはロレンゾのとんでもないアイデアが炸裂する。

 

「今はサービス期間中なので、今すぐ返済してくれたら10%割引!さらに!直接会社まで持ってきてくれたら、もひとつおまけ、10%割引です!」

 

 ハトヤの逆三段スライド方式ばりの割引で次々回収を成功させる、ってそれじゃあ債権分回収できてないよ!でもロレンゾはフランキーに返済ができればそれでいいのでなりふり構っていられない。

 強面の見張りオマールは意外にもピアノや料理の才能があるのだが、叔父フランキーに7歳のころから面倒を見てもらってるので逆らえない。開業してもうまくいかなかったロレンゾと本当にやりたいことをさせてもらえないオマール。二人の間には奇妙な友情が芽生え始める。

 しかし結局は見張り見張られの関係。期限内に15万ドルをつくったロレンゾは返済しようとするのだが、取引現場でフランキーは対立するギャングに撃ち殺される。トレホの出番はこれを含めて3シーンだけで出演時間10分ぐらい。このジャケット、詐欺じゃねえか!(クレジットを見たら「and」(友情出演、特別出演の意)で記されていたので気付くべきだった)USAならぬUSOだよコレ!

 

 横領はバレてしまうのだが社長の計らいによってセンターの無職たちは引き続き会社に残れるようになり、彼らをこき使ってただけのロレンゾになぜかみんな感謝する(強引すぎだよ)。これまでの人生を反省したロレンゾは元同僚たちに謝罪し、横領の罪を償った後で叔父の元から離れ堅気になったオマールとレストランを共同経営するのだった。

 

 いくらなんでも都合良すぎだよ!監督のクリストバル・クルーセンは無職の一人、元大学教授役で出演もしています。それにしてもこれをトレホ主演のハードアクションのように宣伝した日本の配給会社は大したタマだ。観客の怒りの銃弾が炸裂!

 

 

 

 

 

 

俺たちゃ地獄のならず者『地獄のバスターズ』

 U-NEXTが突然「新作」と称してカルト、マニアック映画を配信し始めた。ジャズミュージシャン、サン・ラーのカルトSF『サン・ラーのスペース・イズ・ザ・ブレイス』、ダニー・トレホのヒューマンコメディ(なにそれ)『闇金USA』、コーマンの『デスレース2000』…一体何があったんだU-NEXT!

 

 そんな中目を引いたのが『地獄のバスターズ』。78年のイタリア製戦争映画であのタランティーノの『イングロリアス・バスターズ』の元ネタ。ただし内容は全然違うけど…

 

 第二次大戦下のフランス。連合軍で軍規違反を犯したならず者たちが処刑されるために護送される。上官に逆らった粋な男トニー(ピーター・フートン)、手癖の悪い“よろず屋”ニック(マイケル・ペルゴラーニ)、臆病者のバール(ジャッキー・ベースハート)、英空軍中尉で恋人に会うために3度も前線を抜け出したロバート・イェーガー(ボー・スヴェンソン)、殺人の罪を犯した黒人兵キャンフィールド(フレッド・ウィリアムソン)。いずれも横に並ぶもののないならず者たち。

 彼らは軍法会議にかけられるため護送されるが、途中でドイツ軍の襲撃に遭う。ロバートらは隙を見て武器を奪いドサクサ紛れに脱出に成功する。永世中立国のスイスに逃げ込もうと考えた彼らは途中でドイツの脱走兵アドルフ(ライムンド・ハームストルフ)を仲間に加え、逃亡の旅を続ける。

 移動に使っているトラックを7人組のドイツ兵に見つけられたならず者たち。アドルフは「うまく交渉してやる」と彼らに近づき、話をしたところドイツ兵に偽装したアメリカ兵だとわかり、安心の合図を送るが背後から撃ち殺される!ロバートらは逆襲し成功するが、謎の集団にとらえられ、アジトに連れていかれる。そこは連合軍のパルチザンで、同じ連合軍の特殊部隊(さっき殺した連中)と勘違いされているのがわかるとロバートは口八丁でごまかす。

 やがて特殊部隊を率いるべくやってきたバックナー大佐(イアン・バネン)に素性と特殊部隊の7人を殺したことを告げるロバート。

「俺たちが代わりを務めますよ」

「お前らならず者(バスターズ)に困難な作戦を任せられるか!」

 彼らの実力を疑うバックナーにバスターズらはある提案をする。付近にあるドイツ軍の古城に乗り込み、ナチスを蹴散らすことに成功。実力を認められたバスターズはパルチザンによるドイツ軍のV2ロケット・ジャイロコンパス強奪作戦に参加することに。

 

 この映画、シンプルにワクワクするし、アクションが桁外れで面白い。タランティーノが愛した理由もわかる。男たちはそろいもそろって一癖も二癖もある連中。リーダーシップを発揮するボー・スヴェンソンに、こっそり上官の時計を盗んで踏みつぶした後で返すようなニックは実は戦争を嫌っていたり、トニーはパルチザンのアジトで看護師のニコルに恋をし、作戦から生きて帰ってきたら一緒になろうぜ!と粋なナンパをかます。キャラクターがバチバチに立っていて魅力的だ。

 クライマックスのナチス軍用列車襲撃場面は映画最大の見せ所。中にはロケットを開発・研究するブースがあり、移動する研究室!(当時実際にあったという)バスターズらはバックナー大佐に率いられ作戦を遂行する。ドイツ兵にバックナーとロバートがなりすまし、鉄橋を爆破し止めたあとでジャイロコンパスを奪い脱出。連絡役はニックが務め、彼からの連絡が入らない場合は列車ごと爆破せよという作戦だ。

 無事バックナーとロバートが乗り込み、爆破スタッフにニックが連絡をしようとするがトランシーバーの不調で連絡できない!このままだとロバートらは列車事吹っ飛んでしまう。ニックはバイクを強奪して爆発スタッフのいる場所へ駆けつける。まるで『大脱走』のマックイーンのように。が、道中ドイツ軍に襲われたニックは派手に吹っ飛ぶ。

 命からがらたどり着いたニックは鉄橋だけを爆破するよういい、「ヘマをしちまったぜ」と絶命。犠牲を払って無事鉄橋爆破は成功、しかしたどり着く予定の駅には罠が張られていて、パルチザンに大量の死傷者を出す。そしてバスターズらも一人、また一人と凶弾に倒れてゆく。

 手榴弾で人はド派手に吹っ飛びまくり、イタリア映画らしい、人の命は紙よりも薄く散ってゆく。見事作戦は成功するが、バスターズたちは死にまくり、ロバートも命と引き換えにドイツ兵らを巻き込んで爆死する。

 悲劇のバッドエンドと思いきや、トニーだけはちゃっかり生きていて、ニコルと激しく抱き合った瞬間にジエンド!なんだこれは!

 マカロニウェスタンや戦争、アクション映画を中心に撮り続けたエンツォ・G・カステラッリの演出は女々しいところなんかひとうもなく、痛快で激しい。爆破で人間はド派手に飛びまくって(劇中のアクションをシルエットで表現したオープニング・タイトルにはもう、しびれまくり)、古城のアクションはパチンコで人を気絶させたりと遊び心にも満ち溢れ、ロープを使った滑降場面などあらゆるところにアクションの見せ場が工夫されている。

 最初にタランティーノ版は「内容がまったく違う」といったが同じところはどちらもアクションが凝っていてキャラも立っていいて、とにかく面白いってところだ!78年のイタリア映画なんてと敬遠せずに見て損はなし!

 

 

 

 

 

CGの炎はよく燃える『炎の少女チャーリー』(2022)

 36年前の映画の続編『トップガン マーヴェリック』が大ヒット中だが、こちらは38年前の映画のリメイクだ。『炎の少女チャーリー』はスティーヴン・キングが80年に発表した『ファイアスターター』の映像化。

 大学生のアンディとヴィッキーはロト・シックスという新薬の被験アルバイトで知り合う。なんだか宝くじみたいな名前だが投与された被験者たちの多くは発狂したり、異常な兆候を見せて死んでしまった。が、アンディとヴィッキーは生き残る。宝くじの当たりを引いたように。アンディは相手を操る催眠術、ヴィッキーはサイコキネシスという能力を身に着けた。

 これは政府の極秘機関「ザ・ショップ」によるもので二人は結婚しチャーリーという子供を産むが生活は「ザ・ショップ」の人間によって監視される。チャーリーは火を自在につけられるパイロキネシスの能力を発現させ、しかもアンディのように力を使う度に片頭痛を起こしたりしない。両親はチャーリーがみだりに能力を使わないようトレーニングをほどこすが、怒ったり不安定な状況に置かれると火を放ってしまうせいでチャーリーは母親ヴィッキーにやけどを負わせてしまう。

 新薬の実験で超能力者が誕生するという漫画チックな話だが、この実験は実際にアメリカで行われていたMKウルトラ計画が元である。朝鮮戦争で米軍捕虜が洗脳されているという実態を知った米政府は対抗した。被験者の人権を無視した薬物投与、拷問、マインドコントロールの末に重い障害が残った被験者もおり、現在では当たり前だが中止されている。その計画でスーパーソルジャーが誕生する『エージェント・ウルトラ』という映画もある(脚本はジョン・ランディスの息子マックス・ランディス)。

 

 84年に大物プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスによってつくられた映画は彼らしく大げさなのにチープというチグハグさで記憶に残っている。仕方ないか、マーク・L・レスター監督作品だし。中盤、ザ・ショップに捕まり生活を監視される話がダラダラと続き(キングだからね)、クライマックスの吊り糸で吊った火の玉が炸裂する場面には観客の怒りの炎が炸裂していたが、いかにも80年代といった味わいがありますね。

 

 そのムダに長く、チープな特撮の映画が38年後にどうなったか?ストーリー、展開は84年版とほぼ同じだが上映時間がコンパクトにされてキング原作映画にありがちなダラダラした展開が整理されている!学校でチャーリーがいじめに遭い、ブチ切れて能力を発動するという『キャリー』みたいな展開なの、少し笑える。父親のアンディが催眠術を使うとき、84年版はいかにも「力、使ってます!」みたいなリアクションするのダサかったけど、最低限の描写に変えられている。

 ザ・ショップが放った追手レインバードがチャーリーと一緒に暮らそうとする気持ち悪すぎる描写も全部無くなって、その辺がすっきりと整理されたオチも含め、リブート版の方が面白いんだけど、なぜかIMDBの評価4点台という事実。

 現代版チャーリーを演じたライアン・キエラ・アームストロングはドリュー・バリモアのチャーミングさが足りないが、顔が怖いという部分では勝っている。そしてCGでつくられた炎はよく燃える。

 

 あとこの映画『ハロウィン』風のテーマ曲が流れると思ったら音楽がジョン・カーペンター(と息子のコディ)だった。カーペンターは84年版の監督をするはずが、企画が流れて『クリスティーン』の方にいった。そのカーペンターが38年の時を経てリブート版の音楽をやるとは、粋な配置にプロデューサー、ジェイソン・ブラムの粋なオタクぶりを見た。