メサ・オブ・ロスト・ウーマン(字幕版)
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低予算SFモンスター映画でよくあるのが、トカゲとか虫を巨大化させて人を襲う、というやつだ。大抵はマッドサイエンティストが人里離れた研究所で通りすがりの人間をさらって(若者、美女であれば尚いい)人体実験をする。最後には怪物が暴れまわって博士が食われて因果応報的なオチを迎えるか、主人公ないし博士にこき使われている小男が美女に恋をして彼女を助けるために施設をドカンと爆破してジ・エンド。
それらすべてが混じっているのが『メサ・オブ・ロストウーマン』(1953)だ。日本未公開作。
長い爪をもつ女が男を誘惑する場面から開幕。
「こんな風に女にキスされたことはありますか?」と男性観客を扇情させるナレーションが挟まる。
メキシコのムエルト砂漠を測量している石油会社の社員タッカー(アラン・ニクソン)と地元の案内人ペペ(クリス=ピン・マーティン)は砂漠をふらふらと放浪している二人の男女を見つけ、倒れた二人を助け出す。
助けられた男グラント・フィリップス(ロバート・ナップ)は自分は富豪ジャン・ヴァン・クロフト(ニコ・レック)にやとわれたパイロットで、彼が挙式を挙げるためにメキシコに向かっていたが、飛行機の故障で不時着し、そこでとんでもない目に遭ったのだという。
ここが石油会社のオフィスだと聞くと、「石油を貸してくれ!跡形も残らぬよう爆破しなければならない」と暴れだす。止めようとするタッカーらに「あいつらを焼き払わないと、とても大きな虫なんだ!」と叫ぶ。ようやく目覚めたもう一人の女、ドリーン・カルバートソン(メアリー・ヒル)とともに自分たちの身に起きたことを打ち明ける。それと同時に一年前にザルパ・メサで起きたある事件がフラッシュバックする。
科学者マスターソン博士(ハーモン・スティーブンス)は高名な科学者、アラニヤ博士(ジャッキー・クーガン)の招待を受け、人里離れた彼の研究所で、彼の実験の完成を見る。それは人間の成長ホルモンをコントロールする特定の物質を分離させる研究で、人間の脳下垂体を他の生物に移植すると常人以上の能力を持った不死の生命が誕生するという。アラニヤ博士は様々な動物で研究した結果、タランチュラから生まれたミュータント、タランテラ(タンドラ・クイン)を完成させる。
タランテラは不老不死で、手足をもがれてもまた生えてくる。研究所には物言わぬ美女たちと小男たちが働いており(なぜ美女ばかりかというと、昆虫の世界では男はちっぽけな役目しか果たさないから、雄はみな失敗作にしかならなかった)、みな一様に聾唖であった。
やがては改良されたスーパーメス蜘蛛軍団が世界を支配すると自信満々なアラニヤ博士(アラニヤはスペイン語で蜘蛛の意)はマスターソンにも協力するようにいうのだが、
「これは神の領域を侵害する冒涜だ。わたしはあなたを止めなければならない」
と、説得を試みるも、美女に薬物を打たれ昏倒。アラニヤ博士によって狂人に変えられてしまうのだった。脱走したマスターソンは精神病院に放り込まれてオレンジジュースを飲まされるが、ここも脱走する。
この冒頭の時点ですでにつまんなささが漂っている。フラメンコギターにピアノの固定されたリズムのBGMが延々と繰り返され(『魔の巣』もそうだけど、なぜ低予算映画は単純なメロディの曲を延々と繰り返すのか)気が狂いそうになる。学校の退屈な授業みたいだ。
アラニヤ博士役のジャッキー・クーガンはチャップリンの映画『キッド』に出演して人気となった子役スターで(大金を稼いだが母親と義父によって金の大半を使い込まれた。クーガンは二人を訴え、結果、収益の15%を口座に積み立て、子供の労働時間と休暇を指定する「クーガン法」が成立した)晩年は『アダムス・ファミリー』のテレビ版にスキンヘッドの狂人フェスターおじさん役で人気を博したことが信じられないぐらいの安直なダメ演技で悪役であり黒幕なのに、緊張感をひたすら削いでいる。ナレーションを務めたライル・タルボットは30年代から60年代にかけて映画、テレビで活躍した舞台出身俳優だがエド・ウッドの『グレンかグレンダか』『プラン9・フロム・アウタースペース』にも出てたから、仕事を選ばない人なんだろう。
二日後、国境沿いにある薄汚れたバーに富豪クロフトと婚約者ドリーンが姿を見せる。二人はメキシコで式を挙げる予定が、飛行機の故障のためこの店に立ち寄ったのだ。二人の席に近付いたのは精神病院を脱走したマスターソンであった。呆けたような口調でニヤついているマスターソンはドリーンに色目を使い、クロフトの機嫌を損なう。店でダンサーのショー(ダンサーはタランテラ)が始まる。ここは『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のダンスシーンみたいで、タランティーノもこの映画、見てたのかもしれない。
マスターソンを追ってきた病院のスタッフ、ジョージ(ジョン・マーティン)がやってきて連れ戻そうとするが、突如銃を抜き放ち、タランテラを銃殺するとクロフトらを連れて不時着している飛行機まで連れていくように命令する。その後、死んだはずのタランテラは甦るのであった。
飛行機の元にたどり着くと、マスターソンはパイロットのフィリップスを銃で脅して飛行させる。富豪のカップル、小間使いのウー(サミュエル・ウー)、ジョージの計6名を乗せた飛行機は飛ぶが、ジャイロコンパスの不調でエンジンが停止、不時着。そこはアラニヤ博士の研究所の近く、ザルパ・メサ山の頂上付近だ。6人は食料もなく、一本の酒瓶を回し飲みして救助を待つが、アラニヤ博士の美女と小男たちによってジョージが死んでしまう。
マスターソンが銃を取り出してから一行は逆らいもせずに従い続けるが、奪う機会何度もあったのになぜ?ぼさっと突っ立って銃を持っているだけだし、酒瓶を回し飲みしてるときにドリーンのそばに座ったりもするから、頭を酒瓶で殴ったら一発でしょ!
フィリップスが「彼はなぜダンサーを殺した?なぜ銃を持っている?」
と至極当然の質問をするがジョージは
「わからない。彼はただそうしたいと思っているだけだ」
わけわからないよ!銃をどこで手に入れたのかという疑問も「どっかで買ったんだろう」それが説明かよ!
真夜中に二人きりで話しているフィリップスとドリーン。どうやらこいつら両想いなのだが、ドリーンが金のために結婚したと思い込んでおり、「そこまで惚れてるわけじゃないんだけど、女は安心したいのよ」とか言い出して、雇われてるだけのフィリップスでは安心できないのか、となんだかいい関係になるのだった。観客はそれどころじゃねえだろ!って感じなんですが。
薪で寒さをしのぐ途中で富豪クロフトはドリーンが落とした櫛を
「あれは家宝だぞ!君のためにあげたんだから、拾ってこい」
と金持ちらしい傲慢ぶりでウーを暗闇の中、取りに行かせるのだった。この一件でフィリップスは富豪に愛想をつかすことに。
ウーがたどり着いたのはアラニヤ博士の研究所。こいつ、博士の手下だったのだ!(この映画で唯一驚くところ。ジャイロコンパスを不調にさせたのもこいつの仕業)早くマスターソンを連れてこいと命令されるウー。しかし彼が乗り気でないのを見た博士は美女蜘蛛軍団にウーを始末させる。
ウーの死体から櫛と銃を回収したフィリップスは「あんたのところはもう辞めた」とドリーンと手を取り合う。発狂して飛び出したクロフトはワイヤーで動かす巨大蜘蛛に食われて死亡。ワイヤー制御の巨大蜘蛛といえば『月のキャットウーマン』(1953)だけど、あっちはそこそこ必死に動いていたけど、こちらの巨大蜘蛛はえいやぁっとジャンプするだけだった。
小男・美女軍団によって生き残った3人は捕らえられる。アラニヤはマスターソンの状態をもとに戻し、改めて自分の研究に協力するよう要請するが、正気に戻ったマスターソンはその場で即席の爆薬をつくり、フィリップスとドリーンを逃がして自分ごと研究所を破壊するのだった・・・
監督のロン・オーモンドはドライブインシアターに映画を提供し続けたB級映画専門家で、ハーバート・テボスも数々の映画を手掛けたが、知られているのは今作ぐらい。
美女軍団のひとりがエド・ウッドの彼女、ドロレス・フラーというどこまでいってもZ級映画なのだった。画面は暗すぎてよくわからず、支離滅裂すぎるストーリーは理解の範疇を超えていた。聾唖の蜘蛛女たちは演技がつけられていないので、ただ黙っているだけにしか見えない!
一番金がかかっていると思われる蜘蛛が一番しょぼく、『魔の巣』よりはマシかもしれないが、あちらに比べると狂気が足りないといった具合で何もかも中途半端なのだった。
ラストは美女軍団が実は滅んでいないのでは?と言いたげなTo Be Continued?なオチで、当然だが続編はない。
最近ではすっかりそんなこともなくなってしまったが、かつてのSF映画といえば宇宙からやってきた侵略宇宙人の話ばかりであった。たまに『地球の制止する日』(1951)、『スターマン/愛・宇宙はるかに』(1984)のような友好的な宇宙人がいた。スピルバーグが『未知との遭遇』(1977)『E.T.』(1982)を撮って以降はそういう宇宙人も多く観られたが、宇宙人ってのは恐ろしい侵略者として描かれた。
今回ご紹介する『宇宙からの暗殺者』(原題:Killers from Space)もその類。1954年制作。「宇宙人は侵略者」時代の映画。監督はW・リー・ワイルダー。名前を聞いておっと思う人もいるかもしれない。この人は『麗しのサブリナ』『七年目の浮気』『お熱いのがお好き』の巨匠ビリー・ワイルダーの兄。兄弟がいたなんて初めて知った。
今でも名前が残っている弟と違って、兄の仕事はほぼ忘れ去られていて、一部の好事家が研究しているぐらい。この作品を観れば納得の話。
ネバダ州(エリア51でおなじみのUFOの聖地)で米軍の核実験が行われる。関係者が椅子に座って実験を眺めてるんだけど、みんな耐光ゴーグルをしているぐらい。みんな被爆しちゃうね。さすがアメリカだ。
実験による放射能のデータを収集するためジェット戦闘機で飛んでいる科学者のマーティン博士は地上で点滅する怪しげな光を確認。パイロットは意識を失って垂直落下。機体は爆発し現場から遺体が回収されるが、博士は行方不明。同僚のクルーガー博士と計画責任者のバンクス大佐のいるオフィスにマーティン博士の妻、エレンが呼ばれ生存の可能性はほぼないと聞かされ嘆き悲しむ。
しかし、マーティン博士は極度に疲労した状態で基地に帰ってくる。事故の記憶は一切ないという博士をクルーガーやバンクスは訝しがる。なにしろ博士の胸には異様な十字傷があるのだから。手術痕に見えるがマーティンは手術の記憶もないといい、FBIのブリッグスは「博士は替え玉かもしれない」と疑う。クリフト医師による調査の結果、マーティンは本物であると判明。博士はすぐにでも核実験の調査を再開したいというが、バンクス大佐は慎重な態度を示し、マーティンを計画から外そうとする。
納得できないマーティンはなんとか計画に戻ろうとし、核実験の日程を聞き出そうと電話するが、「関係者以外に教えられない」と言われて激昂。翌日の新聞に実験計画が載ると「俺に教えないのに新聞には教えるのか」と大激怒。
マーティンは用もないはずのオフィスに行き、秘書を帰らせた後、部屋にこもる。様子を見に来たクルーガーを隠れてやり過ごすと彼が帰ったのを確認し、クルーガーのオフィスの金庫を開けて中の機密書類を素早くメモすると立ち去る。
巡回警備が開けられたままの金庫を発見し、クルーガーの所在を正門警備に確認、「博士はもう帰った」という正門警備。その頃マーティンは何食わぬ顔で正門警備の出す入退出書類にサインをしていた。
FBIのブリッグスは帰宅していたクルーガーに会い、オフィスに戻らせる。金庫を確認するが紛失した書類はない。金庫の鍵を開けられるのはクルーガー、バンクス、そしてマーティン。部屋にはたばこの灰が落ちており、クルーガーはたばこを吸わないので、マーティンに疑惑の目が向けられる。それとは別にマーティンは彼を監視するような怪しげな目に悩まされ続ける。
逃げ出したマーティンは自分が墜落した現場の岩下にさっきのメモ書きを隠す。それを見ていたブリッグスはメモの中身を聞き出そうとする。マーティンはブリッグスを殴打し、気絶した彼を放置してさらに車で逃亡。まだ怪しげな目が俺を見ている!錯乱したマーティンは路肩の樹にぶつかって病院に運ばれる。
「俺を放せ!みんな殺されるぞ!」
と訳の分からないことを言い出すマーティンに自白剤が投与される。朦朧とするマーティンは事故の後、何が起きたのかを語り始める。
彼は気を失った後、手術台に乗せられていた。周囲を宇宙人に取り囲まれ、死んでいた博士を手術で蘇らせたのだった(胸の傷はその痕)。
その宇宙人というのが、異様に目玉のデカい連中。目玉がピンポン玉の半魚人が出てくる『恐怖の洞窟』(1968)の元ネタといってもいい、安物映画の宇宙人と怪物はなぜに目玉がピンポン玉なのか??
この西川きよし顔の宇宙人はアストロン・デルタ星人(名前だけは立派)と名乗り、彼らの天体にある太陽が異常な活動を始めたため、冷却させた。その代わりに星が暗闇で覆われたため、対応するためこの目玉に進化したという。どちらかというと退化じゃない?
移住先を地球と定めた彼らは露頭に迷う10億人を救うため、地球を侵略することに。彼らは核実験のエネルギーを利用してトカゲやクモ、虫を巨大化させており(本物を安っぽい合成で巨大に見せかける、50年代SF映画の定番!)、こいつを放って人類を滅亡させようとしていた。
ここは目玉人が潜んでいる洞窟(目玉人は暗闇でも見えるから、という雑な理由で)で、核実験によるエネルギーを貯め込むプラントがあった。なるほど、米軍の核実験そのものが侵略宇宙人の肥やしになっていた、という反核のメッセージなわけね。
そのため次回核実験の日程が必要ということで目玉人のボス、裁定者(容姿は他の目玉人と同じ。ボスなんだからせめて固有の衣装を用意すればいいのに)によって催眠術をかけられ、マーティンは地上に戻されたのだった。「いつでもお前を監視している」と告げて(劇中、幻覚のように現れる目玉は裁定者の目玉だった)・・・
目玉人の侵略を止めなければならない、と必死に訴えるマーティンだがクルーガーらも半信半疑。洞窟に行けばわかると言われてもその洞窟は見つけられない。とりあえずマーティンは病室で静養することに。
一心不乱に何かを書き続けているマーティンは目玉人に見せられた設備から彼らを全滅させる方法を見つけ出す。発電所からエネルギーを得ているようだから、発電所の稼働を10秒だけ止めればやっつけられると(どういう理屈?)。
命がけで脱出した博士は発電所の電力を止めて、洞窟を大爆発させる。無事地球は宇宙からの暗殺者の魔の手から救われたのであった・・・
低予算映画のダメっぷりが余すところなく観られるケツ作(製作者のケツを蹴り飛ばしたくなる作品)。何よりピンポン玉に全身黒タイツに腹巻(笑)の宇宙人がマヌケすぎ!
毎回言ってるけど物凄い科学力を持っている宇宙人の地球侵略方法が迂遠すぎ。死人を蘇らせる(という方法は『プラン9・フロム・アウタースペース』を想起させる。つまりダメ映画ってことだね)ような力があるのに、エネルギーを発電所や核実験から得ているというのもなんだかなあ。
凄い能力で洗脳させながら、自白剤であっさり口を割ってるのも・・・それ、人類の発明に負けてるってことじゃないか!監視しているぐらいなら遠隔操作で操れよ!
このダメ映画にひとりで緊張感を保っているのが主役のマーティン博士で、役者がピーター・グレイブスなの。グレイブスはその後『金星人地球を征服』(1956)『世界終末の序曲』(1957)といったトンデモ映画に出続け、『スパイ大作戦』(1967~)のフェルプス君として世に名前を残した。今思えば達成困難なミッションに挑む様子は『スパイ大作戦』の先駆けと言えなくもない(バカな)。
W・リー・ワイルダー監督は別の意味で映画ファンの記憶に残ることでしょう。人生の貴重な時間をドブに捨てさせた侵略者として…
1997年2月28日。カリフォルニア州ロサンゼルス、バンク・オブ・アメリカ・ノースハリウッド支店に二人組の銀行強盗が押し入った。二人の名はラリー・ユージン・フィリップスJr.とエミール・デクバル・マタサレヌ。詐欺や窃盗の犯罪歴があるフィリップスと粗暴な性格で知られたマタサレヌは意気投合し、つるんで悪事を働くようになる。
93年に現金輸送車を襲い、3か月後に逮捕されるが服役100日、保護観察3年という激甘処分で済んだ二人はまったく反省することなく銀行強盗を繰り返す。指名手配犯となった二人はそれでも満足せず、その稼ぎで得た金で大量の銃器と弾丸を揃え、次のターゲットをノースハリウッド銀行に定めた。この支店を選んだのは、ハイウェイが近く逃走しやすいこと、この位置なら銀行から通報があっても警察が駆けつけるまで8分かかることなどだ。8分以内に金を奪って逃げる完璧な作戦を立てた二人は当日、堂々と正面玄関から入店し、自動小銃を天井に向けて撃った。あとは金を奪って逃げるだけだ。
完璧なはずの作戦にほころびが生じはじめた。給料日前の28日なら金庫にたっぷり金があるはずだと踏んだが、金庫の中には予想額の半分以下である30万ドルしかなかった。現金輸送車のスケジュールが変更され、まだ届いていなかったのだ。予想外の事態ってやつだ。
仕方なく30万ドルをバッグに詰め、人質らを金庫室に放り込んで二人は予定通り8分で店を出た。しかし彼らが目にしたのは数十台のパトカーと警官らがぐるり、周囲を取り囲み拳銃を向けている光景だった。運悪く、周囲を警邏中のパトカーが銀行に入るふたりを見ていたのだ。またまた予想外の事態!覆面で自動小銃を抱える人間が銀行の客に見えるわけがない。フィリップスは警官に向けて自動小銃をぶっ放した。
その後、銀行に籠城した二人と警官隊の銃撃戦は44分にわたり続き、犯人は1000発以上の弾丸をバラまいた。犯人の銃器は75発入りドラムマガジンを装備した56式、100発入りマガジン装備のブッシュマスター、さらにベレッタやS&W。ミシンを縫って自製の防弾ベストで全身を覆い、防御も完璧。いくら何十人もの警官で取り囲もうとも、火力が違いすぎた。犯人らが放つフルメタル・ジャケットの弾丸が警官をぶち抜いても、警官の銃弾は拳銃や命中精度の低い散弾銃なので防弾に阻まれてダメージすら与えられない。
最終的にSWATまで登場してようやく事態は解決したが警官12名、巻き込まれた民間人8名が負傷した「ノースハリウッド銀行強盗事件」はのちに警察が所有する銃火器の見直しが行われるきっかけになった。そしてあらゆる映画、ドラマなど大衆文化に影響を与えた。
その同事件をモチーフにしたのがニコラス・ケイジ主演の『コード211』(2018)だ。コード211とは進行中の強盗事件を表す隠語。ケイジは引退間近で一人娘と仲たがい中の老刑事の役。
数年前の映画だが、10月2日、ジャニーズ事務所が事務所改名に関わる所属タレントの扱いなどについて緊急記者会見を行い、テレビ各局が生中継をする中、我が道を行くテレビ東京だけは平日午後の映画放送枠『午後のロードショー』で『コード211』を放送していた。思えば9月7日の最初の会見の時も、素知らぬ顔で『リーサル・ウェポン2』をやっていたテレ東。さすがテレビ局の最終兵器なだけはある。
さて、『コード211』がどういう映画なのかというと・・・
アフガニスタンで建設会社のCEOがドノヴァンという男が率いる傭兵部隊に襲われる。CEOは裏では武器を輸出したり、闇業者の資金洗浄で財を成している戦争成金だが、傭兵たちに払う金を惜しんだことで反撃を食らう。CEOはマサチューセッツの銀行に口座があることを明かし、許しを乞うが容赦なく射殺される。
インターポールの捜査官ロッシ(アレクサンドラ・ディヌ)は惨劇の現場を訪れ、本部からドノヴァンの捜査をするよう命じられる。
2週間後。マサチューセッツの警官マイク(ケイジ)は相棒で娘婿のスティーブ(ドウェイン・キャメロン)とパトロールに向かう。マイクは一年前に病気で妻を亡くしており、妻の病気と向き合わなかったことで娘のリサ(ソフィー・スケルトン)とは疎遠になっている。もうすぐ孫が生まれるので、スティーブは親子の仲を取り持とうとするが、うまくいかない。
2人のパトカーには「乗車体験」の名目で黒人の少年ケニー(マイケル・レイニー・jr)を乗せることになっていた。ケニーは学校でいじめっ子に反撃したところ「暴力をふるった」と見なされ、罰則としてパトカーの乗車体験をさせられることに。
ケニーを乗せたパトカーがパトロールをしている最中、銀行の前に不審な車が路駐しているのを見かけ、マイクとスティーブは注意しようと近づく。その車は傭兵部隊のもので、銀行内ではドノヴァンら3人が強盗の真っ最中。車で見張りをしている仲間はパトカーの接近を告げ、ドノヴァンは「注意をそらせ」と命令。
彼らは警察の目を銀行から逸らすために数ブロック離れたレストランに爆弾を仕掛けていた。見張りがリモコンで爆弾を起動、パトカーの無線には爆破事件の現場に急行せよというコールが入るがマイクは「高校生が乗ってるんだ。違法駐車を注意するのが先だ」と無線を相手にせず車に近づく。見張りは仕方なくパトカーに向けて自動小銃をぶっ放す。
「コード211!相手は銃火器を装備している!応援を送ってくれ!」
見張りとの銃撃戦でスティーブは足を打たれ出血多量で意識が遠のく。ケニーにスマホで俺を取ってくれと頼み、妻リサに最後のメッセージを残す。応援が駆けつけ、スティーブは病院に運ばれるが重体で命の危険が迫る。リサは病院に駆けつけるが医師から治療の邪魔なのでどけと言われる。最後の力を振り絞ってスティーブは高校生が現場にいるのでマイクに彼を救えといってくれとリサに告げる。
「高校生?ケニーのこと?」
と医師。なんと医師はケニーの母親だった!そんな偶然あるか!!
そんな都合のいい展開が起きているころ、ロッシ捜査官はドノヴァンのアジトでC4爆薬が用意された形跡を発見し、レストラン爆破はドノヴァンによるものと推理。現場でさらに強盗事件を聞きつけ、二つの事件のつながりを感じ銀行へ駆けつける。
警察の応援が現場に到着し、取り囲むことに成功するが火力が違いすぎて手も足も出ない。マイクは応援と合流できたが、ケニーとはぐれてしまう。彼は車の中に取り残されたのだ。
SWATがようやく到着するが、指揮官は上層部や市長の顔色を窺ってばかりの無能で、ケニーを助けろというマイクの意見も相手にしない。
「お前らがもっと早く来ていればこんなことにならなかった。俺は相棒を殺されたんだ!もうすぐ子供が生まれるんだぞ!」
激昂するマイク、そこにかけつけたロッシが相手は傭兵なので常識が通用しない、こちらの攻撃の隙をついて逃げ出すに違いないとアドバイスするが、これもSWAT側によって無視されるのであった。
夜になり、犯人も警官隊も疲労が色濃くなる中、ドノヴァンらは脱出の準備を始める。それは人質を解放するように見せかけ、その隙に脱出するというロッシの読み通りであった。
マイクもSWAT突入の混乱に乗じてケニーを救おうとし、車に残された彼を確認すると警官仲間を伴って救出に向かう。ドノヴァンは人質のポケットに時限爆弾を放り込んで解放。SWATの一人が「ポケットに何かを入れられた」と人質に言われ慌てて爆弾を放り投げようとして爆死。傭兵らは混乱の隙を見て徒歩で逃げだすも、次々仕留められる。
犯人たちはこれまで完璧な計画を立てた知能犯のように扱われてたのに、最後は歩いて逃げるだけ、ってそりゃないよ!!ちなみに傭兵のひとりはケイジの息子、ウェストン・コッポラ・ケイジですが、特に見せ場はないです。
無事ケニーを助けるマイク、しかしドノヴァンが偶然にもそばを通って逃げようとしたため銃撃戦に。偶然が多いなこの映画。仲間もやられ、マイクは一対一でドノヴァンとやり合う羽目に。ケニーを守りながらの戦いは圧倒的に不利で、大ピンチに。その時、いじめられっ子のケニーは死んだ警官の銃を手に取った!発砲音が鳴り響く。
一年後。妻の死で引退を決意していたマイクは事件をきっかけに立ち直り、今も警官としてバリバリの現役だ。ある日リサの家に行くと、サプライズパーティーということでマイクの誕生日を祝うことに。そこにいるのは、事件をきっかけに仲良くなったケニーとその母親、リサと生まれた娘、そしてスティーブ…
ってお前、死んだんとちゃうんかい!!!
スティーブは心肺停止したものの、助かったらしい。マイクも「相棒が死んだんだ」って言ってたよ!このネタ、ラストまで引っ張る必要があったのか。とんだサプライズだよ!
…と、このように『コード211』はノースハリウッド銀行強盗事件との関係は銀行襲撃の部分以外、無関係のアクション映画でした。上映時間が87分なのでコンパクトにまとめられており、テンポもいいので話がサクサク進みます。娘リサとの確執とか、ロッシ捜査官とかいくらでも脇のドラマを盛り上げる機会があったのに、途中から全く触れられなくなり、何のために出してきたんだよ!
アクションシーンの迫力は大したもんで(ドラマ部分がすべてを台無しにしているけど)一説によるとケイジがノースタントで演じた部分もあって、力の入れすぎで足首を怪我した、とのこと。無駄なところでテンション上げすぎるケイジ、最高です。
IMDBの評価は、4.4!ジャニーズの記者会見代わりに観るのにちょうどいい。
80年代末から90年代初頭にかけて日本でもアニメが放送され、ゲーム化もしたアメコミ『ティーンエイジ・ミュータント・タートルズ』の最新アニメ『ミュータント・タートルズ: ミュータント・パニック!』は90年代にカンフー映画の殿堂ゴールデン・ハーベストによって実写化され、カメ忍者がトンボを切ったりして香港カンフーアクションの底力を見せつけてくれた。2010年代に入り爆発大将マイケル・ベイの手によってハードなアクション映画として生まれ変わった。アニメでも劇場版が二本あるが、どちらかというと、実写の方に魅力的な作品が多かった。今回は新たに最新CGを駆使したアニメーション映画として復活。
科学者バクスターがつくった液体「ミュータンジェン」は動物を新種の生物「ミュータント」に変えてしまう。それが地下水道に漏れ、偶然それを浴びてしまった四匹のカメは同じくミュータンジェンの力で変異したネズミのミュータント、スプリンターによって育てられ、レオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ドナテロと名前をつけられ、育てられる。
15年後、成長したレオナルドらは時折住処の地下水道を出ては食料をくすねたり、野外映画館を遠くから眺めたりする。彼らの夢は同年代の少年少女とのように友達をつくってバカ騒ぎしたい、普通のティーンエイジャーになること。しかしミュータントである彼らにはかなわない夢・・・父親代わりのスプリンターも「外に出たら人間たちに迫害されるぞ。お前たちは地下で暮らすのが一番安全だ」と4匹を地下に縛り付ける。
ある日、人間の女子高生、エイプリルと知り合うことになるタートルズ。エイプリルはカメたちを見ても迫害せずに普通に接してくれるのです。タートルズが人間の社会に受け入れられたいと語ると、彼女も同意してくれる。エイプリルはジャーナリスト目指して学校の放送に出るも、極度のあがり症のため、盛大にゲロを吐いてしまう。ついたあだなが「リバース・ガール」。この辺が下品ギャグがお得意のセス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグらしい演出。
みんなを見返したいエイプリルは街を騒がす謎の強盗「スーパーフライ」の正体を突き止め、スクープしようとする。タートルズは父から学んだ空手と忍術でスーパーフライをやっつけ、ヒーローになればみんなに受け入れられるはず!と両者は人間の社会からつま弾きにされているという部分で同じなのだ。
こうして街のチンピラを夜な夜な退治して回り、ついにスーパーフライにたどり着く。しかしてその正体はミュータンジェンの力で変異したハエのミュータントだった!
ミュータントというだけで人間社会から迫害されているスーパーフライとその仲間たちの嘆きにタートルズは同情する。仲間入りを望むスーパーフライだが、連中の目的は人間社会の破壊であることを知ったタートルズは袂を分かつ。力を暴走させたスーパーフライは巨大なゴジラ・サイズの怪物となり、ニューヨークを破壊する。人間たちはタートルズも彼らの仲間の化け物なのだと石を投げつけるのだった・・・
タートルズはタイトルにもあるように「ティーンエイジ」の部分が強調されたヒーローだ。年は15歳だから物の考えは中高生と何も変わらない。流行りの音楽を聴き、ピザを食らい、はしゃいで遊びまわる。そういう意味では『スパイダーマン』あたりと近いヒーローだといえる。
そんなカメのヒーローを描いたCGはグラフィティアートのように荒っぽく殴り書きされ、それでいて洗練されている。クレイアニメのような質感のキャラが縦横無尽に動き回る様は単なるスタイリッシュさよりもポップを強調したテイストで、マイケル・ベイのやつよりは90年代の香港映画風だ。ちなみにカメの父親であるスプリンターの声を演じるのはジャッキー・チェン!香港映画界最大のスターであるジャッキーが出演していることから、スタッフが目指す方向性がわかろうというもの。
物語はミュータント同士の激突になる。タートルズもスーパーフライも人間社会に迫害されているという部分では同じだが、以降のアプローチがまるで違う。これって『X-MEN』風でもあるんだよな。「僕たちは復讐したいんじゃない。受け入れられたいんだ」と叫ぶタートルズはプロフェッサーXらの「恵まれし子らの学園」であり、スーパーフライとその一党はマグニートーのブラザーフッドだ。
互いに人間社会に絶望させられたミュータントたちだが、クライマックスで追い詰められたタートルズと、彼らの側についたスーパーフライの手下たちにニューヨークの市民たちが手を伸ばし、助け合って勝利する展開は『スパイダーマン2』ばりの感動エピソード!
斬新すぎるアニメーションと壮絶なアクション、どの世代の心も打つ感動的な物語と、いいところしかない傑作『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』日本では興行的に苦しんでいるという。勿体ない!すぐに観に行ってくれ!他のアメコミと違って他の実写作品を観ないでいきなりこいつを見ても大丈夫です。さあみんなでカワバンガ!
10月予定
10月6日(金)
『スーパーヒーロートーク』
場所:なんば紅鶴
開場:21:00
料金:¥1000(1d別)
出演:にしね・ザ・タイガー ソエジマ隊員 しばりやトーマス
真夏の特撮ヒーローに関するトーク
10月12日(木)
『旧シネマパラダイス』
会場:アワーズルーム
開演:20:00
料金:¥500+1d別
解説:しばりやトーマス
カルトを研究する若人の会。今回のテーマは当日発表です。
10月14日(土)
『アイドル十戒 デッドレコニング其の四』
場所:アワーズルーム 開演:19:00
料金:¥1500(1d別)
出演:竹内義和 しばりやトーマス
新世代アイドル考現学の新章。すべてが今、繋がっていく。
10月22日(日)
『僕の宗教へようこそ第一六七教義~地下ニュースグランプリ11月号』
場所:アワーズルーム 開演:19:00 料金:¥1000+1D別
出演:しばりやトーマス アシスタント・トモ
世間から相手にされていない話題を取り上げる地下ニュースグランプリの11月号分です
10月24日(火)
『キネマサロン肥後橋』
会場:アワーズルーム
開演:19:30 ¥500+1d別
解説:しばりやトーマス
※終了後にYouTube収録アリ
深夜の映画番組風の映画研究会。今月のテーマは当日発表です。