しばりやトーマスの斜陽産業・続 -29ページ目

殺しのピタゴラスイッチ『KILLERS/キラーズ 〜10人の殺し屋たち〜』

 

 最初にミレニアム・フィルムズのロゴが出てくるのでゲッとなる。

 80年代にB級アクション映画で猛威を奮ったメナヘム・ゴーランとヨーラム・グローバスのキャノン・フィルムズで制作補だったアヴィ・ラーナーが立ち上げたミレニアム・フィルムズはキャノンでの経験を存分に生かした作品群を送り出す。今回の主役でありニコラス・ケイジともよく組んでおり、そのラインナップは『ウィッカーマン』(2006)『バッド・ルーテナント』(2009)『ドライブ・アングリー3Ⅾ』(2011)『ブレイクアウト』(2011)・・・

 そして『KILLERS/キラーズ~10人の殺し屋たち~』だ。原題はKill Chain。殺しの連鎖ってところか。チェーン・コンボのチェーンだ。

※以下ほぼネタバレになっています


 ここは場末のホテル、デル・フランコ。スラム街に立つこのホテルはひっそりと寂れている。ホテルに現れたのは黒人とラテン系の二人組。フロントで二人組を迎えたのはホテルの支配人兼フロントマン兼バーテン兼オーナーのジョン(ニコラス・ケイジ)。テーブルでは男が一人目を見開いて息絶えていたがジョンは「気にするな」と(するよ!)。二人組はショットガンとリボルバーでジョンを脅すように話しかける。ジョンは友人のフランコからホテルを譲り受けた、全く儲けが出ないとぼやく。3人のそのやり取りを二階から血まみれの女レナータ(アナベル・アコスタ)が覗いている。ジョンは昔話を始める。俺とフランコは一年前に・・・

 

 

 一年前。デル・フランコの一室から老殺し屋マーカス(エンリコ・コラントーニ)が標的をスナイプしようとしている。長年疎遠になっている娘と携帯で通話するマーカスは5年も会っていないことをひたすら詫び、仕事があるからと通話を切る。マーカスは自分もまた狙われていることに気づき、通りをうろつく娼婦を使ってスナイパーのところに行かせる。自分を狙っているのは仲間のサンチェス(エディ・マルティネス)だった。組織が古株を処分することになったと告げたサンチェスはマーカスを始末、組織に連絡すると通りに止めてある廃車から報酬のダイヤを回収するが、途端にパトカーが通りかかり、警邏中の警官ランス(ライアン・クワンテン)とミゲル(ジョン・ベドヤ)にホールドアップされダイヤは奪われる。

 護送中の車内で二人がろくでもない不良警官だと悟ったサンチェスは二人にどちらかを裏切って金を持ち逃げしようと仲たがいをさせようとする。後部座席で隣にいるランスを煽るがその態度に短気なランスはブチ切れ、射殺されるサンチェス。それをきっかけに二人は言い争いをはじめ、ミゲルは殺される。ランスは隠れ家にいる恋人レナータと会いダイヤを売って逃げようといい、逃亡のためのパスポートはデル・フランコにいるアラニヤ(蜘蛛)という男が用意してくれると。

 殺しと殺しが連鎖する序盤の展開はそれなりに凝っていますが、それぞれの関係性がよくわからない。まあ後になればすべてわかるようになってるんでしょう。

 すると隠れ家にレナータのクレイジーサイコレズな恋人、役名は「めっちゃ悪い女」(笑)がやってきて手下のオソ(ユスフ・タンガリフェ)とともに逃げようとする二人を銃撃。ランスは連中を引き付けてレナータを逃がす。ダイヤとともに無事デル・フランコまで逃れたレナータはフロントで居眠りしているジョンを叩き起こし、ホテルでアラニヤを待つことに。

 なんだかんだあってベッドインした(なんでよ)二人だが、めっちゃ悪い女とオソがレナータを追って姿を見せる。ジョンは一計を案じてめっちゃ悪い女をレナータが泊っている部屋まで案内し、別室にいるレナータに「裏口から出て正面からホテルに入ってこい」と指示。

 言われた通りに戻って来たレナータをめっちゃ悪い女が待つ部屋に行く間、オソに毒入りの酒を飲ませて殺害。二人の女の争いに割って入り、隙を見てレナータは女を刺し殺す。ここまで来たらアラニヤはジョンのことだと誰でもわかるんだけど(もっと早く気づけ)、フロントに黒人とラテン系の男がやってきて・・・冒頭の話に戻るわけ。二人は組織の殺し屋で裏切者のフランコとアラニヤを始末するためにやってきたのだった。


 これ、どういう話かというとフランコとジョンはある組織の兵士で、人身売買にも関わっていた組織は捜査の手が伸びたために商品だった未成年の少女たちを消せと命令されたがフランコとジョンは情が移り、密かに少女たちを逃がすことにしたがそれを知った組織はサンチェスに命じて逃亡した少女たちを焼き殺した。

 だがたった一人だけ助け出すことに成功し、フランコはその少女を自分の娘として育てた。デル・フランコで。フランコとジョンは娘の成長を見守ったが反抗期の娘はチンピラと付き合ったことでヤクの売人にされた挙句、不良警官のランスとミゲルの食い物にされ、最後は暴行された上、身体をバラバラにされて遺棄された。復讐を誓ったフランコだがランスらに返り討ちに。一人残されたジョンはランスとミゲルサンチェス組織のボス「めっちゃ悪い女」を殺すことに・・・ってそういう話だったのか・・・

 伏線の張り方が雑なので全然わからなかったよ!「殺しの連鎖」はすべてケイジが巧妙に仕掛けたピタゴラスイッチだったとわかるんですが、ランス・ミゲルとサンチェスが殺し合いになるところは予測が難しいんじゃない?生き残ったのがミゲルだったらどうするのか、そもそもサンチェスが二人を抱き込むのに成功したら?めっちゃ悪い女がレナータを殺してたら?ケイジの計画は割と雑!

 一見、誰が主人公なのかわかりにくい構成(裏のメインであるフランコはすでに死んでるし)で、すべてケイジの手のひらで動かされてるというあたりはケイジの会社サターン・フィルムズで制作されてるだけはあるわな。いつものケイジによるケイジの映画ってわけ!(ケイジの吹き替えは予算の都合からかフィックスの大塚明夫じゃなくて速水奨なのは拾い物)

 

 最後にはもうひとひねりあって、最初に出てきた老殺し屋マーカスがまだ生きていた!彼はサンチェスが少女らを焼き殺すのを黙ってみていた(積極的に止めなかった)、ショックで実娘をまともに見ることができず5年も顔を会わせなかった・・・って、あんたも組織の一員かよ!冒頭に出てきたあんたのことはすっかり忘れてたよ!

 

 よくあるどんでん返しのためのどんでん返し映画本当に意味ないですねって感じ。少女の死にショック受けてた人が殺しのために娼婦の少女をほぼ道具として扱って見殺しにしてるの、理解できないんだが。

 

 

2024年7月告知

7月予定

 

7月15日(月)

『マンデーナイトアワーズ』

場所:アワーズルーム

開演:20:00  料金:¥1500(1d別)

出演:竹内義和 オートリーヌ しばりやトーマス

 

7月16日(火)

『旧シネマパラダイス』
会場:アワーズルーム 
開演:20:00  料金:¥500+1d別
解説:しばりやトーマス

カルトを研究する若人の会。

ラップで夢を掴む若者の映画。

 

7月20日(土)

『アイドル十戒 キングダム3』

場所:アワーズルーム

開演:19:00  料金:¥1500(1d別)

出演:竹内義和 しばりやトーマス

 

アイドルとか声優の希望についての話

モテないやつらの慟哭

 

7月23日(火)

『スーパーヒーロートーク』

場所:なんば紅鶴 

開場:21:15

料金:¥1500(1d別)

出演:にしね・ザ・タイガー ソエジマ隊員 しばりやトーマス

 

ニチアサ系のイベントの報告会。

 

7月25日(木)

『僕の宗教へようこそ だいすき!アニメ』

場所:なんば白鯨

開演:19:00 料金:¥1000+1D別

出演:しばりやトーマス アシスタント・トモ

 

ぼざろ総集編、春・夏アニメの話。リバイバルブームについて物申す会

 

7月30日(火)

『キネマサロン肥後橋』

会場:アワーズルーム

開演:19:30 ¥500+1d別

解説:しばりやトーマス

※終了後にYouTube収録アリ

 

深夜の映画番組風の映画研究会。狂気のバイオレンス復讐劇を大研究。

ブルアカサークル法令違反騒動

 ソシャゲの『ブルーアーカイブ』(アニメにもなった)の同人即売会でコスプレROMを買うとレイヤーとオ〇パコできるような仄めかし投稿をしたサークルが大炎上!なななな、なっ、なんですってーーーーーー!!!???

 

 

 

 即売会とオ〇パコは切っても切れない関係(嘘)さすが『原神』とエロさでタメ張ると言っても過言ではない『ブルアカ』。オ〇パコ券までついてるとはやるなあ。

 まあ、実際は「デートシチュエーションを想定したチェキ」を引けるガチャ一回分がつくだけらしい。ただそこに

(全6種大当たりオ〇パコチケット付き)とやったもんだから準備会激怒。当の本人が全く反省しておらず煽るようなコメントを出したのでさらなる大炎上を呼ぶハメに。

こんな書き方したら勘違いするやろ

 

 ユーザーのこういうところがウマ娘と違ってブルアカのアカンところか。こうなったら便利屋69、じゃなかった68の出番だ!

 

 

 

 

 

子供は小さな怪獣だ『ULTRAMAN:RISING』

 円谷プロが世界に誇る巨大特撮ヒーロー、ウルトラマンを『スター・ウォーズ』でおなじみインダストリアル・ライト&マジック(ILM)が制作したCGアニメのアメリカン・ウルトラマンが『ULTRAMAN:RISING』だ(ネットフリックスで配信中)。

 アメリカ製ウルトラマンというと『ウルトラマンUSA』やら『ウルトラマンパワード』やら、あまりいい思い出がないのだけど、今回のライジングは中々の傑作なのだった。なにしろ、怪獣を倒す話ではないのだから。

 

 メジャーリーガーとして大活躍中の日本人選手サトウ・ケンはとある事情で日本に帰国しなければならなくなったため、日本のプロ野球団である読売ジャイアンツに移籍する。何でジャイアンツなのかというとケンの正体はウルトラマンで、つまり「巨人」ってワケ。

 日本に現れた怪獣を退治しなくてはならないためにかつてウルトラマンだった(!)父親のサトウ教授によって呼び戻されたのだ。

 ケンと父親は母親・エミコの失踪事件をきっかけに仲たがいしたこともあり、帰国しても顔すら会わせない。普段は豪邸に身の回りを世話するAI、ミナと暮らしているケンは入団するなり「俺がチームを優勝させますよ!」とぶち上げて、だから好きなようにやらせろと落合も真っ青のオレ流宣言。

 

 帰国したケンを待っていたのは翼竜タイプの巨大怪獣ジャイガントロン。なんとかジャイガントロンを倒すものの、怪獣は一個の卵を抱えていた。そこからジャイガントロンの子供が誕生する。刷り込みによって最初に目にしたウルトラマン=ケンのことを母親と勘違いする。こうしてケンはウルトラマンとして怪獣を倒しつつ、プロ野球選手、さらに怪獣の子供エミの子育てをする三重生活を押し付けられる。

 

 そしてケンは三重生活のすべてを破綻させる。慣れない子育てはまったくうまくいかず、ウルトラマンとしてはドジばかり踏み、疲労と怪我のせいで野球の成績も下降し、ついには監督からトレードを示唆されぶち切れ。

 

「俺をトレードするだって!タイガースに?タイガースにだぞ!俺を誰だと思ってる!」

 

 おいおい、聞き捨てならねえな(怒)ちなみにこの世界のタイガースはドラゴンズとゲーム差なしの最下位です(泣)。

スワローズが一位はねえだろ

 

 にっちもさっちもいかなくなったケンは取材で出会ったシングルマザーのジャーナリスト、アミに相談する。アミは「子供を小さな怪獣のようなもの」としながら「気づきも与えてくれる」存在だと。野球ではスーパースターでウルトラマンとして人類のヒーローだったケンははじめて自分が何もできないちっぽけな存在だと気づき、疎遠になっていた父親と再会を果たし、若手の指導に熱心になりチームに溶け込んでいく。子育ても上手くいくようになり、チームの成績も上昇。すべてがうまくいき初めていたころ、死んだと思っていたジャイガントロンが生きていたことがわかり、怪獣防衛隊の科学者、オンダ博士はエミの回収に目論む。オンダ博士の目的が怪獣たちが暮らす幻の島「怪獣島」の発見と怪獣たちの撲滅にあると知り、ケンはエミと怪獣たちを守ろうとする。

 

 ストップ・モーションアニメの『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』で原案を担当したデザイナーのシャノン・ティンドルとジョン・アオシマの共同監督で二人ともガチガチのウルトラ・ファンなのでエミのデザインがベムラーの初期案に近かったり、今回のウルトラマンはエヴァンゲリオンみたいな細身のスタイルだが、目の色はアメリカンウルトラマンのパワードと同じ青色だったりと過去作から心憎いオマージュが散りばめられてる。

 

 戦わずに怪獣を守ろうとするコンセプトは『ウルトラマンコスモス』風で、子育てとヒーローの二面を持つ主役は『ウルトラマンブレーザー』っぽくもある。アメリカらしさを感じるのはブレーザーがほぼ子育ては母親にまかせっきりみたいだったのに、こっちはシングルファーザーなので子育ては一人なのだ。

 子供だったケンは父親の葛藤や苦しみを知ろうとしなかったが、子育てを経験して父親になることで教授の事が理解できるようになり、人間としてヒーローとして成長する。

対立するオンダ博士はウルトラマンと怪獣の戦いによって被害を受け、妻と子供を失う。そのことで怪獣を憎むようになる。怪獣によって家庭が破壊されたのは博士もケンも同じで。二人は表裏一体。オンダ博士の不幸は怪獣にもまた親と子の関係があることを理解しなかったということだ。

 メインの登場人物がすべて「親と子の関係」の中にいる設定は秀逸で、クライマックスの「共演」もファンは盛り上がること間違いなし。

 山田裕貴、早見あかり、小日向文世、恒松あゆみらの声の演技も素晴らしく、本職の立木文彦は圧倒的。ウルトラファンには嬉しい桜井浩子、青柳尊哉のゲスト出演も。

 

 どの世代が見ても盛り上がれる内容として完璧なウルトラマンで、もうアニメだとか特撮だとか一切気にしないで観られる傑作。きっと続編もあるので期待。

 続編ではタイガースを優勝させて欲しい。

 

 

 

 

 

恋の都は大惨事『セーヌ川の水面の下に』

 ハードゴアなバイオレンスアクション『FARANG ファラン』(公開中)で一世を風靡しているザビエ・ジャン監督によるネットフリックス配信映画『セーヌ川の水面の下に』はサメ映画のジャンルに一石を投じる野心作だ。

 

 海洋学者のソフィア(『キャメラを止めるな!』のメイク役をやってたベレニス・ベジョが熱演)は今は水族館で働いているが、かつては太平洋でサメに追跡用ビーコンをつけて生体を調査していたが、不幸な事故で恋人と仲間を失ったことがトラウマになっていた。

 事故から3年後、過激な環境保護活動家のミカ(レア・レヴィアン)からソフィアがビーコンをつけたアオザメのリリスがなんとセーヌ川に迷い込んでいると指摘にやってくる。プラスチックの投棄など、環境破壊が行われた海で進化を遂げたリリスは淡水で生息できるように進化したのだ(バカな)。

 パリ警察とソフィアはリリス捜索を始めるがリリスを守ろうとするミカはビーコンの電波を切るなどして妨害工作に着手、リリスを太平洋へ誘導しようとする。

 おりしも2024パリオリンピック開催間近のセーヌ川では世界中から参加者が集まり、トライアスロン大会が行われようとしていた!セーヌ川を封鎖しサメ排除しようとする警察だが、事態を深刻に捉えていないパリ市長(アンヌ・マリヴァン)は大会の成功しか頭にないためソフィアの警告を無視する。

 セーヌ川のカタコンベ(地下納骨堂)に集ったミカら環境保護活動家はビーコンの電波でリリスを誘導できることを証明しようとするがそこにサメの大群が現れ惨事勃発!なんとメスザメのリリスは単為生殖できるまでに進化しており、このままでは世界中の水域に人食いサメが現れてしまう!

 ソフィアとパリ警察のアディル(ナシム・リエス)らはサメ退治を試みるのだが・・・

 

 という話はまんまサメ映画の古典『ジョーズ』のフランス版だ。過去にトラウマを持つ者たちがサメ退治に挑み、観光地の収入しか頭にない権力者がサメを甘く見積もって被害が拡大するという点などかなりの影響が見受けられる。ただ多くのサメ映画が『ジョーズ』のフォロワーから抜け出せないでいるところ、「パリのセーヌ川にサメが現れる」という無茶苦茶なプロットを落とし込んだ本作は秀逸すぎる。カタコンベという名所を使ったのも上手いし、淡水で泳げたり、雌だけで子どもを産んだりとか、トンデモだと鼻で笑われそうな設定が唯一無二の魅力にもなっている。そもそもパリオリンピック開催前の時期に配信されているの、中々いい根性をしている。やっぱり「オリンピックは無駄だからやめろ」っていう環境保護のメッセージなのかな?

 

 なによりこの映画、クライマックス30分のぶっ飛びぶりは常軌を逸している。ジョーズだけに。詳しくは言えないがこんなどうかしているラストは見たことがなく、この点だけでも『ジョーズ』に匹敵する一本だ。思いつくまでは誰でも思いつきそうだが作るまでにはいかない。この世界やったもん勝ちなのだ。