ホドロフスキーのDUNE/リアリティのダンス 初回生産限定版 Blu-ray BOX
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チリの映画監督にして芸術家であるアレハンドロ・ホドロフスキーは『エル・トポ』(1970)『ホーリー・マウンテン』(1973)の二本がスペイン圏、フランスで大ヒットし「カルトの巨匠」として名声を得る。
『ホーリー・マウンテン』で知り合ったプロデューサー、ミシェル・セドゥと意気投合した二人は未曽有の企画に挑戦する。フランク・ハーバートの長大なSF小説を原作にした『デューン』の実写映画化だ。時は1975年。まだSF映画というものに多くの人が「子供向け」のイメージを強く抱いていた時代だ。
『ホドロフスキーのDUNE』は映画製作に関するドキュメントだ。ただし、「つくられなかった映画」の。
二本の映画をヒットさせながらも「芸術家」であることを至上の喜びとするホドロフスキーはヒットよりも一生残る魂の作品をつくることを求めている。『デューン』は彼にとって唯一無二の魂となる作品だ。ホドロフスキーは『デューン』を完成させるための同士、「魂の戦士」たちを探し求める。
まずはバンド・デシネの大家、ジャン・ジロー=メビウスに依頼。彼とともに描き上げた絵コンテを元に壮大な銀河を映像にできる特撮スタッフを探す。最初の候補者はダグラス・トランブル!SF映画を大人の鑑賞に堪えうる作品に仕立てた功労者である当時のSFX界の第一人者である。
トランブルと会見したホドロフスキーだが、南米からやってきた映画監督にトランブルは冷酷だった。彼の話をまともに聴かず会話中に40回も電話に出た。
「彼は魂の戦士ではない」
トランブルと組むのをやめたホドロフスキーは代わりの人間を探すことに。ふらりと入った映画館で一本のSF映画を見た。ジョン・カーペンターの長編デビュー作『ダーク・スター』。そのVFXを担当した男、ダン・オバノンに注目する。「彼こそ魂の戦士だ」
魂の戦士とはともにマリファナを決め合って覚醒した。
金も仕事もなかったオバノンは『デューン』にほれ込み、映画のためにオフィスがあるパリに引っ越す!この調子でホドロフスキーは次から次へと「魂の戦士たち」を見つけては口説き落とす。
宇宙船デザイナーにクリス・フォス(SFノベルのイラストレーター。後にスター・ウォーズ、フラッシュ・ゴードンなどのSF映画に関わる)
音楽担当にフランスのプログレ、マグマ。
皇帝役にサルバドール・ダリ。1日10万ドルのギャランティを要求する奇人にホドロフスキーは仰天のアイデアを出す。皇帝の出番はせいぜい5分ぐらいしかない。じゃあ登場時間でギャラを設定しよう。1分につき10万ドルでどう?トンチかよ!
ダリの紹介でまだ無名だったH・R・ギーガーを紹介されてこちらも採用!ファイド・ラウサ役になんとミック・ジャガー!ミックとパーティで出会ったホドロフスキー、どうやって依頼しよう?と考えているとミックの方からやってきて映画に出てくれることに!
さらにハルコンネン男爵役にはオーソン・ウェルズ!すでにハリウッドから追い出されていたウェルズはパリで暮らしていて、クジラみたいな体を揺らしながらレストランで美食に舌つづみを打つ日々。しかしあの図体はハルコンネンにピッタリだ!
ウェルズお気に入りのレストランに足を向けたホドロフスキー、『市民ケーン』の巨匠に出演を乞うも
「もう映画には出たくないんだよ」
とつれない返事。そこでホドロフスキー、一計を案じる。
「映画に出てくれたら、このレストランのシェフを現場に連れてくるので、毎日彼の料理を食べてもらいます」
ウェルズは出演を快諾した(ちょろすぎだろ!)
終始こんな感じでとんとん拍子に話が進み、他に例を見ない豪華メンバーが集結する。
ホドロフスキーは映画『デューン』の結末を原作から逸脱させる。救世主となるべく主人公、ポール・アトレイデスは最後に惨殺される。しかしポールの意思はあらゆる人々に受け継がれ誰もが皆ポールとなる。革命が起き、砂の惑星だったアラキスの大地は緑で覆われる。アラキスから採掘されるメランジによって人々の意思は覚醒する。救世主の惑星となったアラキスは宇宙のすべての星を目覚めさせるため、旅立ってゆく…
人類の進化と発展を貴ぶ美しすぎるラストシーン!完成すればさぞ映画史に残る傑作になったであろう。完成すれば…
ホドロフスキー版『デューン』が完成しなかったのは制作に途方もない金(必要になる予算を1500万ドルと見積もっていた)が必要だったということと、1500万ドルの予算をチリのカルト映画監督には任せられないというスタジオの判断であった。『2001年宇宙の旅』ぐらいしかSF映画のヒット作がなかった時代である。
映画のビジョン、特撮、撮影に関する問題をすべて解決していた電話帳よりも分厚い完璧な絵コンテを見せても、それらの問題をクリアすることはできなかった。こうして『ホドロフスキーのデューン』は制作中止となり、企画は大物プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスに持っていかれ、デヴィッド・リンチ監督の『デューン/砂の惑星』(1984)として完成する。『イレイザー・ヘッド』『エレファント・マン』の!
これを聞いたホドロフスキーはショックを受ける。リンチならこの壮大な企画を成功させてしまうだろうと。ショックを受けるから見ないでおこうとしたが、息子から
「本物の戦士なら見に行くべきだ」
確かに!思い直したホドロフスキーはよれよれの心身を引きずって映画館へ行った。そして元気になった。あまりにひどかったから(笑)リンチに才能がなかったわけじゃない。制作者(ラウレンティス)のせいだとホドロフスキーは語る。
作られなかった映画『デューン』の絵コンテは残され、映画会社の手元に残った。その結果、独創的な絵コンテのアイデアはあらゆるSF映画に流用された。『デューン』が『スター・ウォーズ』『フレッシュ・ゴードン』に影響を与えたことはよく知られており、ホドロフスキーの『デューン』が無ければ現在のSF映画のほとんどは誕生しなかったか、ひどくつまらないものになったのかもしれない。
ホドロフスキーは確かにSF映画に対する製作者、観客の意識をLSDのごとく覚醒させたのだろう。作られなかったことで伝説になる作品もあるのだ。
※以下はEI VISION2024年1月末に掲載したものを一部加筆修正しています。
アメリカ現地時間1月23日に第96回アカデミー賞のノミネートが発表された。受賞が有力視される『オッペンハイマー』、『キラーズ・オブ・ザ・ムーン』などが多数ノミネートに上る中、視覚効果賞部門に日本の『ゴジラ-1.0』がノミネートしたのだ。
長い歴史を持つアカデミー賞の視覚効果部門に邦画作品がノミネートしたのは史上初の快挙である。
1929年の第1回アカデミー賞では「技術効果賞」の名で存在した同賞は、1939年から62年の間は視覚効果、音響効果と合わせて「特殊効果賞」とされ、1963年から「特殊効果賞」、64年から「特殊視覚効果賞」、70年から現在の「視覚効果賞」という呼び名になった。
63年の受賞は当時映画史上最大の予算を投じた『クレオパトラ』が受賞し(ただし制作に金がかかりすぎ、大ヒットしても焼け石に水となり、20世紀FOXは倒産しかけた)、以降は
1968年『2001年宇宙の旅』
1970年『スター・ウォーズ』
1979年『エイリアン』
1991年『ターミネーター2』
1993年『ジュラシック・パーク』
1999年『マトリックス』
2001年『ロード・オブ・ザ・リング』
2009年『アバター』
と、その時代を象徴する映像を見せつけた作品群が並んでおり、その中に『ゴジラ-1.0』が肩を並べる可能性が出てきたのだ。
アカデミー賞ノミネートの勢いを裏付けるかのように『ゴジラ-1.0』はアメリカで大旋風を巻き起こしている。全米での邦画歴代No.1興行記録を樹立し、公開から2か月目の現在も北米600館以上で公開中。映画評論サイトのロッテントマトでも評論家、観客ともに満足度98%という空前絶後の支持率!
今、アメリカで『ゴジラ』がなぜこんなにバカ受けしているのか?そしてなぜ大ヒットしているのか?

時代をさかのぼること1984年。ゴジラシリーズを久しぶりにリバイバルした『ゴジラ』が日本で公開。これはゴジラ生誕30周年を記念した大イベントだった。
70年代のゴジラは映画産業が斜陽になっていく中、興行不審に陥ったことから「低予算ならやってもいい」という条件の元で制作される。アニメ映画と同時上映する「東宝チャンピオン祭り」のプログラムに組み込まれたゴジラは低予算からビル群のセットを組めず、「日本のどこにこんなところが?」と疑問に思う離島や荒野でゴジラは怪獣と戦い、内容は(ゴジラ=正義の味方、戦う怪獣=悪)と勧善懲悪が意識され、どんどん子供向きになり大人が納得できるようなものではなかった(大きいお友達は興奮していたけど・・・)
1984年のゴジラは子供向け路線をリセットし、かつて東宝に未曾有の大ヒットをもたらした『日本沈没』(1973)のようなSFパニック路線を目指した。結果、年間ランキング2位を達成、観客360万人を動員することに成功。
そしてアメリカでも上映した!『Godzilla 1985』として。米国で1070万ドルのヒットとなり、当時の邦画歴代史上最高記録を達成。約40年前の時点でゴジラは全米の観客の度肝を抜いていた・・・違う形で。
『Godzilla 1985』はアメリカ向けに再編集されていた。シーンのいくつかは削除され、新規撮影されたシーンがつぎ足された。当時のアメリカではみんな邦画なんかバカにしていたから(一部のマニアを除く)、いいかげんな編集がまかり通っていた。ローカライズだ。追加されたシーンはアメリカ国防総省で軍人や各国政府関係者が延々と無駄な会議をやり、背後ではドクターペッパーの自販機が鎮座していた。当時はコカ・コーラとペプシによるコーラ戦争の真っただ中で、3番手以下のドクターペッパーはマイケル・ジャクソンをCMに使ってヒットを飛ばしていたペプシに対抗してゴジラに賭けた。向こうがキング・オブ・ポップスならこっちはキング・オブ・モンスターってこと!
ゴジラなんか核で吹っ飛ばせばいいんだ、と初代ゴジラを冒涜するようなことを言い出す米軍人にレイモンド・バー(初代ゴジラのアメリカ編集版『怪獣王ゴジラ』に登場した新聞記者役の人)演じる記者が
「ゴジラは怪獣や津波みたいなものですから、大自然の驚異に対するようにゴジラを扱うべきです。理解し、交渉し、コミュニケートしては」
怪獣とコミュニケート!どうやって?(って似たようなシーン、70年代のゴジラにいっぱいあったわ)バカバカしさに振り切った『Godzilla 1985』の評価はさんざんで、最低映画賞のラジー賞とスティンカーズ最悪映画賞にノミネート。その後、『ゴジラ2000 ミレニアム』まで邦画ゴジラがアメリカで公開されることはなかった・・・
そんな感じで邦画ゴジラとはアメリカでは物笑いの種だった。1998年のローランド・エメリッヒ監督による『GODZILLA』は初のハリウッド製ゴジラだったが、やはり酷評された(もちろん一部のマニアだけは大喜びした)。
ゴジラがまともな映画として再び評価されるようになったのは2014年のレジェンダリー・ピクチャーズ制作「モンスター・ヴァース」シリーズの第1作『GODZILLA ゴジラ』からだ。
今『ゴジラ-1.0』が全米の大好評の背景には「モンスター・ヴァース」の影響があることは間違いない。『Godzilla 1985』よりもシリアスで、『GODZILLA』よりも凶悪な怪獣王の登場に全米が震撼した。
アメリカはシリーズ最新作『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の公開日を目前に控え(3月29日公開)ゴジラブームが盛り上がっており、ゴジラに飢えたアメリカ国民に前菜として十二分に満足できるものが提供されたというところ。
ちなみに2024年はゴジラ生誕70周年で、それを記念しての公開だ。「70周年記念作品がなんでハリウッドなの?」というのは、東宝とレジェンダリーが結んだ契約で「ハリウッドで最新作が公開される年に日本の最新作を公開してはいけない」とされているから!なんで東宝のゴジラが海外の契約の方を優先するんだ、と釈然としないものがあるんだが・・・
アメリカでヒットした第二の理由はゴジラの誕生の理由であるビキニ環礁の核実験、ひいては日本に投下された核爆弾による虐殺という負のテーマに『ゴジラ-1.0』が踏み込まなかったからだろう。
初代ゴジラには米軍がビキニ環礁で行った水爆実験により遠洋マグロ漁船の第五福竜丸の船員が被ばくした「第五福竜丸事件」の影響を受け、「反核」のテーマが盛り込まれた。ゴジラを退治するオキシジェン・デストロイヤーを開発する科学者・芹沢博士は太平洋戦争で片目を失った後は世捨て人のような生活を送り研究だけに没頭する。偶然オキシジェン・デストロイヤーをつくったものの、水爆に匹敵する兵器になる可能性がある以上公表できないとするが、ゴジラによって破壊された街の被災民たちの平和の祈りを聴いて「一度きり」だとして、研究資料をすべて破棄する。
科学の発展が平和のためにではなく、限りない死と破壊を招くことを批判しているのだが、初代ゴジラのリブートである『ゴジラ-1.0』からはそれらのテーマや批判はかなり薄められている。
ゴジラが街を破壊しても進駐軍は対立しているソ連を刺激したくないという理由で大規模な軍事行動を控える。アメリカといえば自分たちが関係していない他国の戦争にまで首をつっこみ、ミサイルや戦闘機を売りつけているのだから、日本政府が何も言わなくてもゴジラにミサイルを撃ち込み、爆弾を大量投下しまくってもおかしくないのだが。
あえて描かなかっただけなのかもしれないが、『GODZILLA ゴジラ』には渡辺謙演じる芹沢猪四郎博士の父親は広島に投下された原爆の影響で被爆しており、ゴジラを核兵器で殲滅しようとする米海軍提督に父親が広島の経験した地獄を語って聞かせるというシーンが当初の脚本には存在していた。
ところが映画の制作に協力していた米国防総省はこのシーンが原爆の投下に対する謝罪や疑問視であるなら、映画に協力しないとして修正を求めた。映画でゴジラと戦う米軍の戦闘機や艦船の撮影許可を米国防総省から得ていた制作サイドはこの「圧力」に屈して完成版では渡辺謙が原爆投下時刻の8時15分で止まった時計を見せるだけに止まっていた(これはこれで印象的なシーンではあるが)。
もし『ゴジラ-1.0』にこれら「原爆批判」「広島、長崎に関連する反核のメッセージ」が必要以上に込められていたら、果たして全米の観客はこの映画に熱狂しただろうか。なにしろ初代ゴジラのアメリカ編集版『怪獣王ゴジラ』も長崎の原爆、ビキニ環礁の被ばくなどの要素は全部カットされていたのだから。
『ゴジラ-1.0』は神木隆之介演じる復員兵がトラウマを乗り越えるためにゴジラに立ち向かう物語だ。「トラウマに苛まれる帰還兵の物語」はハリウッドでは定番のテーマだから受け入れられやすかったともいえる。
アメリカにとってゴジラは「強さ」の象徴だ。デカくて強いやつが街をぶっ壊す!極端な言い方をするとそれだけでいいのだろう(もちろんそれだけの理由で観てもいいんだけど)科学批判はしても米軍批判はしない!
このアメリカでの大ヒット、手放しで喜んでいいのか、筆者にはわからない。
唯一誇らしいところは大金をかけなくたって凄い映像は作れるってことだ。ハリウッドではマーベルやDCのアメコミ映画に大予算が突っ込まれ、最新のCGによる映像が当たり前のように出てくるが、そのCGを作っている会社は仕事を受けるために最低金額で入札を勝ち取り、休む暇もなく仕事をし、公開直前までCGの修正を求められ技術者は青息吐息。一部のハリウッドCG会社は「もうマーベルやDCの仕事なんかしたくない!」と抗議の声をあげている。で、それらの声に対してスタジオは「安い外国に発注しよう」とかいってるらしい。日本のアニメ業界と同じじゃないか!
アカデミー視覚効果賞部門にノミネートした作品は製作費2億5000万ドル(375億円)の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』に2億9100万ドル(436億円)の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』・・・それらの超大作に製作費15億円と言われている『ゴジラ-1.0』が入っているのはまさしく快挙だ。CG会社は「ゴジラが理不尽な現場を踏みつぶしてくれないかなあ」って思ってたりして。
このまま『ゴジラ-1.0』が受賞したら「CGに大金使うなんてコスパが悪い!」と倍速で映画を見る若者みたいなこと言いだしたりして・・・ってそれじゃ逆効果だよ!
何にせよ、邦画作品が全米で大ヒットしていることは喜ばしいこと。一方、国内での興行成績は思ったほど伸びておらず、公開87日間で約56億円。公開40日で60億に近い数字を出し、最終的な数字は75.9億円と最終82.5億円の『シン・ゴジラ』の後塵を拝する結果に終わってしまった。
アメリカでは限定公開されるに止まった『シン・ゴジラ』と比較して逆転現象が起こっているのはなぜか。
考えられる理由として二つの作品のクライマックスの違いがある。『シン・ゴジラ』のクライマックスは在日米軍がゴジラ掃討のため出撃するが、米軍の攻撃をものともしないゴジラは米軍機を全滅、都内を破壊しその影響で日本政府の閣僚は全員死亡。代理の総理大臣が立てられ各省庁のはぐれ者集団が民間と協力してゴジラを凍結する「ヤシオリ作戦」を実施する。
この展開は強大な敵に挑むスーパーヒーローもののようなカタルシスが存在し、民間人が協力して行う作戦には観客が自分自身を投影できるようになっている。だから観客は「自分たちの映画」として『シン・ゴジラ』を観ることができる。実際公開時には発声していい「応援上映」が行われリピーターがこぞって映画館に訪れていた。
それに比べ『ゴジラ-1.0』のクライマックスは元軍人と民間の共同の元行われた作戦が失敗し、神木隆之介が特攻覚悟の突入を決行する、爽快感よりも悲壮感が漂う展開なので、『シン・ゴジラ』のような応援上映もしにくいだろう(後にGWの時期などに応援上映企画は行われた)。気軽に見に行って「応援しよう」というテンションになりにくいのだ。そもそも特攻するクライマックスをどうやって応援するのか。
もうひとつは同時期に競合する人気作品に観客を持っていかれたことだ。一作目が人気を博したコメディ『翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて』、漫画家水木しげる生誕100年を記念した新作アニメ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』、太平洋戦争時にタイムスリップした女子高生と特攻隊員の恋を描いた『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』、ディズニーの新作『ウィッシュ』、人気漫画原作の『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』『ゴールデンカムイ』と軒並み全国300館を超える大規模公開作品が目白押しで、熱心な映画ファンはともかく、年に映画を2,3本しか見ない一般観客の興味が『ゴジラ-1.0』に向いていない。また、国内の映画産業がやせ衰えていて、かつては5,60億はかせいでいた作品が10億円がいいところに終わっているような現状からは国内の映画産業がやせ衰えている気がしてならない。
邦画というものは日本国内だけである程度ペイできると言われていて、邦画(特に実写)の多くは海外市場をほとんど意識していなかった(アニメは海外でも数字を稼げる唯一のコンテンツ)。だが稼げるはずの作品が国内で稼げないのなら、海外に目を向けるしかない。
そういう意味で『ゴジラ-1.0』のアメリカでの大ヒットは邦画が海外市場に目を向けるまたとない機会だ。
『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を受賞するかどうかは邦画の今後を大きく左右することになる・・・かもしれない。
そして3月10日に発表されたアカデミー賞では下馬評通り『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を受賞。アジア映画初の視覚効果賞受賞であり、監督(山崎貴)が視覚効果賞に輝いたのは『2001年宇宙の旅』のスタンリー・キューブリック以来というオマケもついた。
異例に次ぐ異例を可能にしたのは山崎貴がVFX技術のこともわかっている監督だってことだろう。世の中にはCGのレベルを理解できていない監督というのがいて、「CGなんてパパっとできるだろう」ぐらいの人がリテイクにどれだけの時間がかかるか分からずに無意味なリテイクを繰り返し、それらに対するギャランティは「固定」のままでボーナスも出ず、CG制作会社が映画公開前に倒産した『ライフ・オブ・パイ』事件のようなことは山崎貴の白組では起きないだろう。
『ゴジラ-1.0』と山崎貴の快挙は将来必ずハリウッドのVFX映画に対する姿勢を変えてくれると信じたい。そんなロクでもない会社と人間たちはゴジラが踏みつぶしてくれるから!
2024年11月予定
11月9日(土)
『アイドル十戒 キングダム7』
場所:アワーズルーム
開演:19:00 料金:¥1500(1d別)
出演:竹内義和 しばりやトーマス
アイドルさえいなければ悩まなかった人たちの慟哭を聞け
11月10日(日)
『大阪おもしろマップ』
開場:なんば白鯨
開場 / 18:45 開演 / 19:00
料金 / 2000(D別)
出演 / 射導送水、縛りやトーマス、B・カシワギ
11月13日(水)
『旧シネマパラダイス』
会場:アワーズルーム
開演:20:00 料金:¥500+1d別
解説:しばりやトーマス
カルトを研究する若人の会。
フィンランド発メタル珍道中。漏らす前に吐け!
11月19日(火)
『スーパーヒーロートーク』
場所:なんば紅鶴
開場:20:45
料金:¥1500(1d別)
出演:にしね・ザ・タイガー ソエジマ隊員 しばりやトーマス
ニチアサ系ヒーロートークショー
11月20日(水)
『キネマサロン肥後橋』
会場:アワーズルーム
開演:19:30 ¥500+1d別
解説:しばりやトーマス
※終了後にYouTube収録アリ
深夜の映画番組風の映画研究会。
笑って泣いて踊れるファンキー映画を大研究!
11月24日(日)
『アニつるVol.30』
場所:なんば紅鶴
開演:12:30
料金:\3000(1Drink別)
40過ぎた奴らの原曲アニソンDJ会。
30回目にして味園ラスト、店から店へと俺たちの船出だ!
http://benitsuru.net/archives/date/2024/11/24?ec3_listing=events
11月28日(木)
『僕の宗教へようこそ 地下ニュースグランプリ番外編』
場所:なんば白鯨
開演:19:00 料金:¥1000+1D別
出演:しばりやトーマス アシスタント・トモ
世間のトレンドからズレ過ぎた話題を取り上げる地下ニュースグランプリ、年末開催に向けてのウォーミングアップ回です。
今は亡き映画館、大井武蔵野館。品川区の名画座として90年代に「ここじゃなきゃ見られない」カルト作品の発掘に勤しんでいた。ここが当時封印扱いだった『恐怖奇形人間』を発掘したことで石井輝男の再評価につながったことは間違いない。
だが大井武蔵野館はシネコンブームの波にのまれ1999年に閉館。2000年代を生き抜くことは叶わなかったが、「大井武蔵野館的な」企画は東京の各名画座に受け継がれた。
閉館から25年を迎えた現代、「大井武蔵野館的な映画を集めてソフトリリース」するという企画を東映がぶち上げた!しかも大井武蔵野館の元支配人、細谷隆広(シベ超2をプロデュースした男!)、小野善太郎監修によるリーフレットを封入したThe 大井武蔵野館セレクションが来年1月から4月にかけてDVDリリース(ブルーレイじゃないあたりが東映らしいというか…)
初DVDの作品も多く、タランティーノのも愛した『ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ〜血まみれの天使〜』のクリスチーナ・リンドバーグ主演『ポルノの女王 にっぽんSEX旅行』、ポルノ男優、ハリー・リームスが他人のイチモツを移植して巨根になったことで起きる大騒動を描いた『生贄の女たち』、梶原一騎の劇画を実写化した志穂美悦子主演のアクション『若い貴族たち 13階段のマキ』は初のソフト化!
そして個人的にやったぜ!と喝采を送りたいのが少年マガジンに連載されていた漫画を実写化した鈴木則文監督の『コータローまかりとおる!』の初DVD化だ。
千葉真一がアクション監督を務め、黒崎輝、志穂美悦子、大葉健二、真田広之をはじめとするJACメンバー総出演!漫画チックなアクションならお任せのソクブン監督の手腕が奮っている。原作者の蛭田達也本人が出演して「蛭田だ!」と叫ぶと黒崎輝が「原作者様!?へへえ~!」と恐れおののくダダ滑りシーンが見ものだ!
他にも『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』、『D坂の殺人事件』(真田広之が気合の入り過ぎた女装を披露する)、『ビッグ・マグナム 黒岩先生』(このマグナムの炸裂音は、霧に彷徨う者を導く霧笛や! そして弾丸は祈りや! 生徒を信じる、切なる祈りや!)などがプライスオフで再リリースされる。
『生贄の女たち』はアマプラの有料チャンネル「東映オンデマンド」でも配信されてない幻なので見る価値大!こういう試みはガンガンやってほしいね。
3~4月のリリースはまだシークレットだが、『伊賀のカバ丸』とか『ザ・サムライ』とかやってくれないかな?期待です!
ネットフリックスで配信再開したジョニー・トー作品のうちひとつで初期(1992)の作品『チャウ・シンチーの熱血弁護士』を見た。この映画、92年の香港映画No.1ヒットでシンチーの代表作となった一本とのこと。この年シンチーは大暴れで6本の映画に主演している。
清の時代、腕利きの弁護士として鳴らした宋世傑(シンチー)は巧みな弁舌をもって煙に巻く戦術で法廷では連戦連勝。悪人の弁護であっても引き受けてしまう。今日も喧嘩の相手が後日、死んでしまったという事件の加害者を弁護して無罪を勝ち取り、大量の金塊を手に入れる。しかし根っこは正義感の人なので負かした相手の遺族が落ち込む様子を見て涙を流すのだった。
金はあっても家庭人としての幸せは得られない。夫人の宋世治(アニタ・ムイ)との間に生まれた12人の子は全て若くして亡くなっており、「あんたのやってることで罰が当たった」と夫の尻を蹴り飛ばす肝っ玉母さん。
シンチーよりも身長が高いアニタ・ムイはカンフーの達人で、二人の「ノミの夫婦」ぶりが笑える。
それでも妻を愛しているシンチーは弁護士を引退する誓いを立て宿の経営者として暮らす道を選ぶ。そんなある日、山西省の田舎からやってきた身重の女が宋夫婦に助けを求める。夫が兄夫婦に毒殺され、仇を討ってほしいとのこと。もう弁護士はやめたと依頼を断るシンチーだが、「あんたそれでも人間なの」とアニタに激怒され、彼女は裁判所に殴り込む。ところが字が書けないアニタは嘆願書をまともに書けず、伏字の猥談みたいな手紙になってしまう。
助けに入ったシンチーだが元々キザな彼が気に入らない判事にあざ笑われてしまい、怒りのシンチーは弁護士として復職し身重の女を弁護することに。それを聞いた黒幕の兄夫婦は関係者らを賄賂で抱き込む戦略を取る。兄夫婦が送った密書を手に入れたシンチーだが、肝心の密書を家に置いてきてしまい法廷で惨敗。
市中引きずり回しの上(『羊たちの沈黙』のレクター博士みたいに拘束されるのがおかしい)、牢に放り込まれてしまうシンチーだが、常に逆立ちをして歩き続けるなどの奇行に走り、「宋弁護士は狂ってしまった」と塀の外で出されることに。しかしそれはシンチーの戦略で外に出た彼は再び密書を手にさらに上の裁判長にかけあい、黒幕と判官たちの買収劇を白日の下に晒そうとする。
50年代に大ヒットした映画のリメイクで、今回歌姫アニタ・ムイと芸達者のシンチーが組んだことで歌い踊るミュージカルパートとカンフーアクションがミックスされたコメディになっている。シンチーの突拍子もない言動やリアクションが言語の理解を越えて笑いを誘い、歌姫アニタ・ムイが歌にカンフーにギャグと八面六臂の大活躍なのだった。
母乳のギャグとか笑っていいのか反応に困るところもあるけれど、これはもう何も考えずに笑った方が勝ちでしょう。ジョニー・トーは香港ノワールからコメディまで何でもできる人だということをこの時すでに証明していた。アクション指導は『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』『狼 男たちの挽歌・最終章』、のちに『少林サッカー』でシンチーと組むことになるチン・シウトンでカンフー場面も見どころ満載!
よく考えたらジョニー・トー、チャウ・シンチー、チン・シウトンってすごい組み合わせだな。国内DVDとかが出ていないのでこの機会にぜひ!