しばりやトーマスの斜陽産業・続 -20ページ目

昭和のヒーローは令和のヒーローになれるか ドラマ『ウイングマン』

 10月からテレ東系のドラマチューズ!で『ウイングマン』がスタートしているので毎週楽しみにしている。

 

 

 週刊少年ジャンプで連載していた漫画で、まさか令和の時代に実写映像化されるとは思わなかった。昭和の作品だし。とはいえ単なる懐かし作品の復刻というわけでもなく、今の時代だからこそ実写化する意味のある作品に見える。今回は日本の特撮ヒーローものの歴史とウイングマンのヒーロー作品としての立ち位置について触れてみたい。

 

 『ウイングマン』の主人公、広野健太は特撮ヒーローものに憧れる中学生。彼がその辺の特撮オタクと一味違うところは自作のヒーロー、ウイングマンに変身して学園の平和を守る使命を担っていることだ。変身と言っても自作のスーツ(白いラインをボンドで貼り付けているだけなのですぐに剥がれるという自作ヒーローあるあるが泣けてくる)を着こむだけで、クラスメイトの居眠りを注意したりするぐらいの、こじんまりヒーロー。

 ウイングマンが現れれば授業はめちゃくちゃになるため、勉強嫌いな中学生男子には拍手喝采で迎えられるも担任からは「いいかげんマジメになれ」とお小言をもらう日々。

 健太は中学生になってもヒーロー番組を卒業できないオタク(当時はそんな言葉なかった)であり、筆者をはじめとする同じ趣味の読者の共感を得ていたように思う。

 ところが健太は他のオタクたちとは違う道を歩むことに。帰宅途中、空から降って来たビキニの女の子を家に連れて帰ったことから彼の人生は激変する。

 少女アオイはこの世界とは違う異次元世界ポドリムスからやってきて、彼女が持つドリムノートは書かれたことがすべて現実になる夢のノートだ。

 健太はノートの力で自作のスーツじゃない、本当にウイングマンに変身する能力を手に入れる。そしてポドリムスと三次元世界の支配を目論む悪の帝王リメルの侵略から世界の平和(とアオイさん)を守るための戦うのだ。

 

 

 漫画『ウイングマン』の連載開始は1983年。この時代に『ウイングマン』が誕生したことはヒーローの歴史において大きな意味を持つ。

 1957年に新東宝の『スーパージャイアンツ』が誕生し、翌年に『月光仮面』『遊星王子』が切り開いた特撮ヒーロー作品は1966年の『ウルトラQ』、カラーテレビの普及にともなって誕生した『ウルトラマン』によってブームが生まれる。

 特撮ヒーローものは花盛りとなり、1971年からの第二次怪獣ブーム、『仮面ライダー』によってはじまった「変身ブーム」によってピークに達する。1972年には17作品73年には20作品もの特撮作品がしのぎを削ってテレビ放映されていた。新作が令和仮面ライダー、スーパー戦隊、ウルトラマンの3つぐらいしかない現在とはえらい違いである。

 

しかし74年のオイルショックによって金がかかる特撮番組の制作費は削られ、代わって72年の『マジンガーZ』から始まったロボットアニメブームが子供たちの支持を集めるようになる。74年の『ウルトラマンレオ』75年の『仮面ライダーストロンガー』でシリーズは終結。『秘密戦隊ゴレンジャー』のヒットがあるものの、特撮ヒーロー作品よりもロボットアニメの方が売れるコンテンツとして認知されるようになり、80年代に入ると特撮番組は片手で数えられるぐらいしか新作が作られなくなる冬の時代に突入した。

 

 そんな寒風吹きすさぶ時代の1982年(ウイングマンが誕生する一年前)に前代未聞のニューヒーローが誕生する。東映の『宇宙刑事ギャバン』だ。

 70年代末のSFブームの影響を受けたと思しき銀河の彼方からやってきたギャバンは0.05秒で蒸着(変身)し、銀色のメタリックボディもまばゆいヒーローになり戦う。ダイナミックかつスピーディーなアクションは仮面ライダーにもウルトラマンにもなかった。ギャバンは新世代のヒーローだった。

 ギャバンによって活気づいた特撮ヒーロー界隈。翌年には雑誌企画から生まれた円谷の『アンドロメロス』、その翌年にやはり雑誌企画の『仮面ライダーZX』が放送。特撮ヒーローは再び甦ったのだ。そして『ギャバン』の翌年『宇宙刑事シャリバン』が放送される中『ウイングマン』が登場する。

 

 『ウイングマン』は既存のヒーロー作品のパロディ作品だった。それこそブームに陰りが見えた時に生まれた『俺たちひょうきん族』のタケちゃんマンみたいに。

 しかし『ウイングマン』は他のヒーロー作品のどれにも似ていない。作者の桂正和によって生み出されたオリジナリティがあった。

 専用バイクのウイナルドは仮面ライダーと言う先駆者がありながら車輪のついてないエアロバイク形態でロボットにも変形する!『電人ザボーガー』という既存の作品があったにせよメカニズムは全然別だ。

 必殺技であるデルタエンドは変身時間が残り僅かになった状態で3体に分身、四面体のデプスゾーンに相手を閉じ込めてビームで相手を粉砕する。こんな技、他の作品で見たことない!

 既存作品のパロディのはずが唯一無二のオリジナリティを築き上げた『ウイングマン』は『ギャバン』のように新しいヒーローの姿、さらに普通の特撮ヒーローならありえないラブコメ要素もジャンプ読者のハートを釘付けにした。

 

その『ウイングマン』のドラマ版は健太を元祖ヒーロー、仮面ライダー藤岡弘、の息子、藤岡真威人が演じ制作は東映、仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズでおなじみの坂本浩一が監督というスタッフ、キャストが既存作品のパロディめいたメンバーなのが嬉しいところ。

 しかし昭和の時代の作品を令和にどうやって違和感なく映像するのかと思ったら、健太は今時の学生なのにギャバンやデンジマンといった昭和の特撮ヒーロー作品に価値を見出している筋金入りのオタク少年として描かれている。

 現代ではかつての作品はDVDやブルーレイ、配信でいくらでも観られるのでこんな学生がいてもおかしくはない。10年前だと嘘くさい設定になりそうで今の時代だからできる設定ともいえる。もう一人のヒロイン美紅ちゃんがチンピラに絡まれているところを健太が助ける(というか変な奴だと思われてドン引きされる)と言う展開はいかにも坂本浩一!と言う感じで苦笑するけどね。

 

 東映制作なのでギャバンなどのヒーローも画面に普通に登場しており、以前の東映だったらパロディ作品に全面協力するなんてありえなかったよね。あの『仮面ノリダー』にもイチャモンつけてたぐらいなのに、最近では映画に出したりして随分変わったもんだ。

 もうそういう時代じゃないってことなんだ。ドラマ『ウイングマン』には時代の変化と進化を感じずにいられない。ドラマの残り話数的にパート2までやらなきゃ完結しない気もするけど、かつてのギャバンのように新しいヒーロー作品を切り開く一本になってほしい。

 

 

 

 

 

偽物にこそ輝く本物の魂(ソウル)『ゲロッパ!』

 先月、西田敏行さんが亡くなられたこともあり、久しぶりに主演作の『ゲロッパ!』を見返した。

 公開当時も映画館で爆笑したが、改めて見るとやっぱり爆笑した上にさめざめと泣けてしまった。まだギリギリ20代のころは斜に構えて見ていたはずが、すっかり西田敏行の年齢(公開当時の)に近付いてしまったせいか、ナイトスクープの局長ばりに泣けてしまったのだ。

 

 ヤクザの親分(といっても指定暴力団として登録されてないぐらいの小規模団体)の大介(西田)は明日にお勤めに行かないといけない身分。5年の弁当はこの歳にはキツすぎる。これを機会に組を解散すると宣言。子分の太郎(山本太郎)、晴彦(桐谷健太)らはヤクザ以外にすることあらへんと泣いて縋るも決意は固い。

 親分の心残りは敬愛するミスター・ダイナマイト、ジェームス・ブラウンの来日コンサートを最後に観に行きたかったこと。そこで弟分の金山(岸部一徳)は太郎らに

「JBのガラ、攫ってこい!」

 と命令。JBに遭えばアニキも考えを改めるかも…ということでJBの写真を渡すが、すげえ昔のブロマイド風写真を渡すので色あせている(笑)。しかしJBをロクに知らない太郎らはラゾーナ蒲郡(愛知県の有名なシーサイドリゾート)のものまねショーに出演するJBのそっくりさんを間違えて攫ってしまう。

 

一方、大介はもう一つの心残りである、子供のころ離れ離れになってしまった愛娘のかおりの家を見つけ出し、会いに行こうとしていた。大介は何度目かの収監を食らっている間に妻(奥貫薫)は病気で亡くなり娘は親戚によって施設に預けられ、それから一度も会っていないから。

 大人になったかおりはラゾーナ蒲郡のものまねショーのプロデュースをしているが、出演予定のJBのそっくりさんが金山らに拉致されたため、ショーに穴が開いてしまうと困り果てる。嫌味でスケベなボンボンのホテル支配人(益岡徹)が「出演メンバーがそろわなければ契約不履行でノーギャラ」を宣告してきたからだ。

 さらに「こうなったら偽物でもええ」と金山がJBのそっくりさんを貸せと要求、その上なぜか内閣情報調査室の人間がJBのそっくりさんが日本に持ち込んだ、あるブツを渡せと迫ってくる。

 三者三様のドタバタが巻き起こる中、ついに大介はかおりと再会を果たすが、20年以上もひとりぼっちで暮らしてきて、ようやく一人娘という本当の家族を得たかおりはあなたは偽物の家族(組員らのこと)と暮らしていればいい、と大介を突っぱねる。

 言い返す言葉もない大介は途方に暮れるが、支配人が難癖をつけて金を払わないと聞かされ、娘のためにJB(のそっくりさん)の代役としてステージに立つ。

 

 

 この映画、2003年の公開時には西田敏行はすでに探偵!ナイトスクープの局長として活躍していた時だったので関西での人気が爆発的で、関西地方の映画館にもおっちゃん、おばちゃん世代の客が集まっていた。ただ、おっちゃんおばちゃんは『ゲロッパ!』というタイトルが言えなくて『ケロンパ』とか言ってたらしい。それじゃうつみ宮土理だよ!

 

 そんな感じでタイトルすらうろ覚えの人たちがメインの集客で、そういう人たちでも爆笑できるベタベタでストレートすぎるギャグが連発するため「今時こんなベタな笑いが受けるわけねーだろ!」と文句言ってた人が結構いたけど、ベタな笑い(寺島しのぶ演じるタクシー運転手とのやりとりとか)でも岸部一徳や山本太郎、藤山直美に益岡徹、常盤貴子に根岸季衣、長塚圭史といった芸達者が演じたらベタな笑いでも全然OK!爆笑ですよ!

 

 地方のものまねショーのギャラが400万(そんなに高いわけないだろ!出てくるのもどうしようもないパチモンなのに)とか、小学生の歌の発表会の曲がテンプテーションズの『マイ・ガール』(小学生が歌う曲じゃないよ!)とか、ところどころおかしいんだけど、最後はそんな些細なことが気にならず笑って泣ける。

 

 西田敏行の泣きに持っていく流れが完璧なのと、本当の家族と離れ離れになった男(西田)が

血のつながらない人間と本物にも負けない絆で結ばれた「家族」を作っていた

 という、偽物にも本物の魂(ソウル)があるってことを証明するための物語なのがどうしようもなく泣けちゃうよ。逆に本物ぶってる連中(ホテル支配人や偉そうにしながら官僚にスキャンダルの尻ぬぐいをさせてる総理大臣とか)はみーんなチンケな小物だしね。

 

 立ち上がれ!踊れ!ヤリまくれ!とソウルする西田敏行は最高だ!あの世でもやりまくって、泣きまくってくれ!

 

 

 

 

 

 

非現実的で予定調和。これぞゲームの映画化!『グランツーリスモ』

 ソニー、プレイステーションのリアルドライビングシミュレーターゲーム『グランツーリスモ』のプレイヤーを実際のレーシングドライバーとして育成する「GTアカデミー」によって誕生したプロのレースドライバー、ヤン・マーデンボロー実話を元にした物語。

 

 レースゲームの上手いゲーマーを本物のレーサーにするってそんなバカな!?『ウォー・ゲーム』や『レディ・プレーヤー1』じゃないんだから・・・と思うけど、実際にあった話なのだから驚く

 

 

 ウェールズの首都、カーディフで暮らす青年ヤン(アーチー・マデクウィ。『ミッドサマー』で肺を抜かれて処刑されてた人)はプレステの『グランツーリスモ』に夢中で将来はレーサーを目指しているが大学にも行かず、バイトとゲームがすべてのインドアオタク。プロサッカー選手だった父に小言を言われる日々を送っていた。この辺の描写が日本の家庭でもありそうな親に小言を言われるオタクそのまんまで他人事とは思えません

 

 ところ変わって日本。日産の社員ダニー・ムーア(オーランド・ブルーム)はグランツーリスモのプレイヤーを本物のレーサーにするという企画のプレゼンに挑んでいた。日産は安全を確保できるエンジニアをつけるならOKと言う条件を出す。ダニーはあらゆる人材に声をかけるがみんなから断られる。一番ありえない人材として最後に残ったランボルギーニのチーム・キャパに所属する元レーサーのジャック・ソルター(デヴィット・ハーパー)に声をかけるも一蹴。ジャックはチームのレーサーでオーナーのボンボン息子ニコラスに「まだ未熟だし短気はよくない」とアドバイスしてキレられる。やる気をなくしたジャックはダニーのGTアカデミーに参加するのだった。

 

 ヤンはいきつけのゲーマーカフェでグランツーリスモのランキング1位の記録を出したことから「GTアカデミー」の選抜レースに参加する資格を得たことを知る。夢への第一歩と感じたヤンだが、レース前日に弟のコビーに誘われていったパーティの帰りにパトカーに止められてしまう。捕まったらレースにでられねえ!となったヤンはゲームで培ったドライビングテクニックでパトカーを振り切り帰宅(そんなバカな)。しかし父親に見つかってしまい説教された上、壊れた車の修理のために父の仕事場で働かされる。選抜レース当日なのに!しかも

「ゲームなんかいくらやってもレーサーになれるわけないからマジメになれ」

とズバリなことを言われて仕事場を飛び出すヤンはゲームカフェへ。選抜レースをトップ通過したヤンは世界で10人しかいないGTアカデミーのメンバーに選ばれる。

 

 こうして集められた世界最強のメンバー10人が全員ヒョロヒョロのオタク(女子含む)なので笑っちゃうが、激しい選抜試験の最終メンバー5人に残り、最大のライバルだったマティと競り合ったヤンは鼻先でゴール。

 しかしダニーはオタクでインタビューの受け答えも自信なさげなヤンでは「マーケティングで不利だ」としてイケメンかつ自信満々で口達者なマティの方がいいぞとし(イヤな判断だなあ)、ヤンを推すジャックと衝突するが最終的にヤンがGTアカデミー初の選手として現実のレースに挑戦する。

 

 

 日産と契約を得るために国際ライセンスを取らなければならない。

「6戦する間に最低4位入賞」

 と言う条件を出されたヤンはジャックの元同僚、チームキャパのボンボン、ニコラスに「ゲームオタクはすっこんでろ」と妨害され苦戦するが最終戦で滑り込み4位。晴れて日産との契約にこぎつけ、憧れの日本に渡ったヤンは恋人と日本の街でいちゃついたりして順風満帆。

 

 ところがライセンス獲得後最初のレースで車が一回転してクラッシュする大事故を起こしてしまう。さらに巻き込まれた観客が死亡

 日産は謝罪に追い込まれ、ニコラスらプロのドライバーたちが徒党を組んで「オタクにレースは無理」と排除の動きを見せる。事故のショックから立ち直れないヤンをコースに連れ出したジャックはかつて、ル・マンのサーキットで自分もクラッシュし、事故に巻き込まれたドライバーを死なせたことで引退した過去を語る。俺のようにはなるな、お前は立ち直れる。そのためにはレースに戻るしかない、と。

 

 助言を受けたヤンは復帰を目指すが、他レーサーから排除の動きを見せられた日産はプロジェクトの凍結を検討し始める。ダニーはゲーマーだってやれることを見せつけるため、ル・マン24時間に挑戦して入賞を目論む。

 GTアカデミーの仲間とともに参戦したヤンはかつてジャックがクラッシュしたポルシェを駆って挑戦するがレースが始まってすぐにライバルチームの車がクラッシュして大炎上するのを見て事故のトラウマが蘇ってしまう。果たしてヤンはトラウマを乗り越え入賞を果たせるのか?

 

 

 後半の流れは新谷かおるの『ふたり鷹』みたいで、どっかで見たことある感がすごいんだが。そう、この映画は紋切型の寄せ集め展開を盛り上げるためのドラマは全部予定調和で誰でも先の展開が読める。

 それ自体は問題ないけれど、劇中サーキットで起こる死亡事故で落ち込む主人公に「お前のせいじゃないから気にするな」ってそりゃそうだろうけど、遺族からしたら冗談じゃないって話だね。

 この映画はヤン・マーデンボローの実話を元にした話なので、すべてが実際にあったことではない。ダニーやジャックもモデルになった人物はいるがバックボーンになっているエピソードは実際の事故などを題材にした、フィクションだ。でもストーリーを盛り上げるために人の命を安く扱われちゃあたまんないね。

 

 だから各人物の造形も笑っちゃうほど薄っぺらくて、悪役は悪役で、ライバルはなんだかんだ言って最後に仲間になってくれる。特にヤンの彼女の現実感のなさってすごいよ。記号だけのヒロイン。こんなオタクに理解のある彼女なんか、そうそういないだろ!今時ゲームでももう少しまともに作り込んでると思う。

 

 こんなことやってるから日産の業績も悪化するんだろうなあ。

 

 現実のレースの危険性、サスペンスを訴えながら非現実的で予定調和しかない物語は家でゲームやってる方が安全だよね!と多くの観客に実感させるだろう。これ見てGTアカデミーを僕も目指そう!ってなる?彼女は出来るかもしれないけどさあ・・・

 

 

 

 

 

分断が招く暴力と死『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

 アメリカ大統領(名前はない。役名だけ。演じてるのはニック・オファーマン)は法律で禁じられた任期3年目に入り、FBIの解散などアメリカはファシスト政権と化しつつあった。

 そんな政権に反発するように19の州が分離独立を宣言し、西部勢力(WF=Western Forces)とフロリダ連合は政府軍を撃破しワシントンD.C.に迫っていた。大統領は「私たちは勝利に近付いている」と勝利演説をテレビで垂れ流していたが、ジャーナリストたちは誰も信じていなかった。

 ピューリッツァー賞に輝く戦場カメラマンのリー(キルスティン・ダンスト)と記者仲間のジョエル(ヴァグネル・モウラ)はプロパガンダ以外のメディアインタビューに応じていない大統領に直撃しようとニューヨークを出発する。首都陥落はもうすぐなのだから、急がないと間に合わない、

 リーの師匠であるベテラン記者サミー(スティーヴン・ヘンダーソン)、リーに憧れる若手カメラマンのジェシー(ケイリー・スピーニー)を連れ、1600キロの旅が始まる。長旅の中で彼らが目の当たりにするのは無秩序状態と化し、他人を殺すことに一切躊躇しない人間たちが暴れまわる、誰が敵か味方なのかもわからないアメリカの現実だった。

 

 

『ルーム』『手紙は憶えている』『ロブスター』『パーティで女の子に話しかけるには』などの意欲的かつ尖った作品を制作するインディー系のスタジオ、A24が史上最大の予算を投じて制作した問題作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は内乱状態に陥ったアメリカの姿を描く恐ろしい映画。

 戦争、それも内乱の映画だから恐ろしいのは当たり前かもしれないけど、この映画の恐ろしさは真相が判明されないからだ。なぜ内戦が起きたのか、そもそも誰と誰が争っているのかも示されない。わずかに伝えられる情報は政府軍と争っているのが西部勢力で、それはテキサス州とカリフォルニア州の連合であると伝えられるぐらい。バリバリの右翼で保守派の人間だらけのテキサスと、映画『アイアンマン』で武器商人トニー・スタークが雑誌の記者に「あなたは死の商人と呼ばれてます」と聞かれ「君はバークレー大卒か?」と返すギャグがあるぐらい、リベラルの牙城、カリフォルニアが手を組むってありえないわけで、この映画の中のアメリカは現実ではありえないことが起きている世界の話であることを観客に信じ込ませる。

 

 なぜ起きているかもわからない戦争は、誰が悪いのかもわからない。大統領が暴君であろうことはなんとなく伝わっても、これがはっきりと誰かの揶揄・・・例えばトランプだったりしたらリベラルは大統領を憎めるだろうし、右翼は「これだからヘナチョコのリベラルは」と怒りを露にして大統領を応援するかもしれない。この映画は大統領、西部勢力どちらにも肩入れできないようにし、イデオロギーによる論争を起こさないつくりになっている。ただただ意味もなく人は暴力的になり、意味もなく争い誰かを殺す様子を切り取っているだけで、誰も裏の事情を説明してくれない。

 

 劇中にはこの内戦に無関心な人達が登場する。ある街のブティックで店員は記者たちにも内戦にも興味が無さそうで内戦が起きてるのを知っているかと聞かれ、知っているが関わらないようにしている。テレビを見る限り、それが正しいと思うから、と・・・

 

 リーを始めとするジャーナリストたちは地元の親世代が内戦に興味がないことに憤りを感じていて、危険な戦場に突っ込んでいって真実を報道しようとする。それが正義の行いであると信じるかのように。だが、実際のところ、彼らは危険な状況に身を置いていることにアドレナリンを分泌させて興奮しているイカレた人間たちであり、無秩序状態であるのをいいことに暴力性をむき出しにしている連中と何もかわらないのである。

 

 後半、ワシントンD.C.に雪崩込んだ西部勢力の兵士は記者に「大統領を捕まえるか?」と聞かれ「ぶっ殺すよ!」と威勢よく返答。それって正義なの?

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は内戦に陥った国の現実を突きつける。そこには正義なんかない。分断が招く暴力と人の死だ。アメリカは新しい大統領のもと、分断を加速させそうだけどそれでいいんですか?

 これを大統領選の時期に公開していた日本はなかなかいい根性していると思う。僕が見たのは大統領選の開票日のレイトショーだったけど、結構客が入っていてみんな合衆国最後の日を観に行ってたんだなあ。

 

 

ゆるキャン△4期制作発表 4期の聖域問題

 まんがタイムきらら系アニメ『ゆるキャン△』のSEASON4制作が決定。11月9日に東京・日本工学院アリーナで行われた「『ゆるキャン△ SEASON3』SPイベント ゆるキャンパーの集い」の舞台上で発表された。

その瞬間、全世界に衝撃が走ったという。

 なぜならきらら系アニメにおける「4期」というのはこれまで『ひだまりスケッチ』だけに許された聖域とされていた節がある。

 原作ストックがまだ残されている(そもそも連載中)ひだまりは吉野屋先生を演じた松来未祐さんの急逝に伴い、二度と続編は作られないとも言われており、このままいけばゆるキャン△がひだまり越えを達成するのは時間の問題。

 ひだまりファンの中にはやむを得ない事情があるにせよ、この発表には忸怩たる思いがある人もいるかもしれない。昔少年サンデーで連載していた『B・B』31巻で完結した時に34巻で完結した『うる星やつら』のファンが「うる星を越えなくて安心した」ほっと胸をなでおろした…という話を思い出した(誰も覚えてねえよ!そんなもん!)。

 

 後に34巻越えのサンデー漫画はいっぱい出てきたから昔のオタクはどうでもいいことを気にしていたのだ。
 

 

 話を戻して、ゆるキャン△4期は早くても2026年になるだろうから(僕の勝手な想像だと2026年4月春アニメ枠かな)今から期待が高まるのだけど、世間的にはそうじゃない人々もいて、4期の制作はC-Stationに戻せと喚く空気読めない人達が公式SNSに溢れかえっていた。

 アニメゆるキャン△は3期から1,2期を制作したC-Stationからエイトビットが制作に代わった。そのせいか、一部のキャラデザが変更になって放送開始前はそれを問題視する人もいたけど、始まったら美麗すぎる美術などもあって特に気にならなかったね。

 しかし今回のSNSのリプ欄を見て未だにウジウジと文句付けているやつがいることがわかった。彼らは5分アニメ『へやキャン△』がアニオリ展開だったことに文句つけてアマプラの評価欄に☆一つをつけていた奴と似ている。

 

 僕はエイトビットでも全然構わないし、なにしろ転スラ、ブルーロックとヒット作を連発しているスタジオだぜ!?C-Stationより安定していると思うけどな。

 少なくともみんなが盛り上がってるところにイヤな冷や水をぶっかけてるオタクはとっとと解散してチラシの裏にでもせっせと書いといてください。