しばりやトーマスの斜陽産業・続 -18ページ目

2025年1月予定告知

2025年1月予定

 

1月11日(土)

『アイドル十戒 キングダムその9』

会場:アワーズルーム

開演:19:00

料金:1500円+1D

出演:竹内義和 しばりやトーマス

 

サイキックをやってた人と聞いてた人のアイドル談義

 

1月14日(火)

『旧シネマパラダイス』

会場:アワーズルーム

開演:20:00

料金:500円+1D

解説:しばりやトーマス

 

カルトを研究する若人の会。働くな!人生ぐうたらが一番!

 

1月24日(金)

『スーパーヒーロートーク』

開演:20:00

料金:1500円

会場:怪獣シアター

出演:にしね・ザ・タイガー ソエジマ隊員 しばりやトーマス

 

ニチアサヒーローを語る会

 

1月28日(火)

『キネマサロン肥後橋』

会場:アワーズルーム

開演:19:30

料金:500円+1D

解説:しばりやトーマス

※終了後YouTuber配信アリ

 

深夜の映画番組みたいな研究会。多勢の鉄砲隊を相手に立ち向かう映画を大研究。

 

1月30日(木)

『地下ニュースグランプリ2024番外編』

会場:アワーズルーム

開演:20:00

料金:1000円+1D

出演:しばりやトーマス

 

世間の話題からズレた話題のさらに余りものを紹介。

誰も知らない話題がここにある。

商業主義を蹴散らせ!『ヘヴィ・トリップⅡ 俺たち北欧メタル危機一発!』

 インペイルド・レクタム(直腸陥没)が帰って来た!2009年公開のフィンランド映画の続編『ヘヴィ・トリップII/俺たち北欧メタル危機一発!』は前作超え、爆笑必至だ。

 

 前作のラストで逮捕され、厚生施設で服役中のバンドメンバーに面会人がやってくる。彼はドイツ最大のメタルフェス、ヴァッケン・オープン・エア(実際に存在するフェス)のプロモーター、フィスト。話題となった彼らにヴァッケン出場へのオファーに来たのだが、アーティスト肌のベーシスト、クシュトラックスは「ヴァッケンは商業主義に染まっている」とオファーを蹴る(ベーシストはこれだから・・・)。

 せっかくのチャンスをフイにしたわけだがギタリスト、ロットヴォネンの実家の食肉工場(前回でトナカイを粉砕していた)が閉鎖の危機に追い込まれ、父親は心労でギブアップしてしまう。工場には彼らが12年間スタジオとして使っていた地下室もある。工場を救うために必要な3万ユーロをねん出するため、4人はヴァッケン出場を目指し脱獄を計画。アホみたいな手口で脱獄した彼らに鬼看守ドッケンの手が再び迫る!バンドはヴァッケン出場を果たし工場の危機を救えるのか?

 

前作は負け犬バンドが戦いを決意するまでの過程に時間をかけていたが、今回は即、勝つための戦いに参戦するので、ハイテンションで進んでいくのが良い。あがり症でステージで必ずゲロを吐いてしまうボーカル、トゥロはすでに過去を振り切って敬愛するメタルバンド、ブラッドモーターのステージを奪い取ってしまう!デスボイスを響かせて会場を沸かせる姿に成長の跡が見える!かくしてフィストに認められたインペイルド・レクタムはメジャーデビューを果たすことに。

 

 ところがフィストは音楽の事なんか好きでもなんでもなく、ビジネスとしか考えていない奴なので演奏一つにこだわるメンバーに「そんなことより大衆に受けるかどうかが大事だ!」と勝手に曲をダッサダサにアレンジしてしまう。抵抗するトゥロにフィストは「ヴァッケンでデビューするか、5万ユーロを受け取って去るか」の選択を迫る。どうしてもフェスのステージに出たいトゥロは仲間を裏切ってヴァッケンを選ぶ。そんな彼に失望したメンバーは背を向けるのであった。

 

 本作のテーマは音楽業界の商業主義で、象徴的なシーンがある。フィストの俗物ぶりや、彼の言いなりになってクソのような音楽を垂れ流しているブラッドモーターにあきれ果てたクシュトラックスはフェスの別会場(螺旋階段状につくられた客席が目を見張る)でライブに熱狂する客を見る。そのステージにいたのはBABYMETAL!曲はギミチョコ!

 

 

 クシュトラックスはブチ切れて「こんなのメタルに対する冒涜だ!」あんな女子供にメタルの何がわかるんだ!と言わんばかり。彼を追って来たオゥラは「いいじゃないか。俺はこういうのも好きだ」と彼に同意せず「イヤなら聴かなきゃいいじゃん」とズバリな一言。さらに「お前もハマってんじゃねえか」とクシュトラックスがつま先でギミチョコ!のリズムを取っているのを指摘!「違う!こんなの好きじゃない!」と言い張っても後の祭り(笑)。

 

 本作ではBABYMETALは悪しき商業主義を象徴する存在として描かれ(いいのか?)ている。クシュトラックスとオゥラの論争はかつて海外で「BABYMETALを認めるかどうか」で起こった論争と同じだ。僕はどこかの掲示板でBABYMETALを批判する勢に対して

 

「彼女らはF1レーサーなんだ。最高のエンジニアとスタッフが作り上げ調整したマシンを乗りこなすのが彼女らの仕事だ。お前が言ってることはミハエル・シューマッハを”ただの自動車乗り”と言っているのと同じだ」

 

 みたいな風に反論しているのを見て目から鱗が落ちたことを覚えている。

 

 もちろんこの映画でもBABYMETALは批判されるために出ているわけではない。結構出番も多くちゃんと英語のセリフまである!彼女らとクシュトラックスが絡む場面は全部爆笑で(パーティで「お前の推しがいるぞ」と言われ「推しなんかじゃない!」)、この論争にしっかりとケリをつけているのも最高だ。

 問題提起をし、それに結論をつけ、あまりにバカバカしすぎるクライマックスに腹が捩れる!2024年の締めくくりは『ヘヴィ・トリップⅡ』で決まりDEATH!

 

 

 

 

 

発表!2024年まんがタイムきらら系列誌読み切り作品ベスト12

 2024年も間もなく終わり。今年も一年間まんがタイムきらら系列誌を楽しんできました。今回は今年一年間読んだ中で読み切り作品に限定した「2024年きらら系読み切りベスト12」を発表です。選考基準は「好きな」「続きが気になった」「連載昇格を期待した」ものです。

 

※2024年度に発行されたきらら、キャラット、MAXに掲載された読み切り作品から選考(フォワードは残念ながら近所の本屋に売っていないので除外)

※連載に昇格した漫画は除外

※順不同

※()内が作者名

※10本に絞れなかったので12本にしました

 

積み上げた3誌一年分

 

・軽い気持ちで悪の花(蚕二号) きらら2024年2月号から3回読み切り
軽い気持ちで闇バイトを請け負った女子高生・陽廻が変態の殺し屋二人組に助けられたことから悪の道に引きずり込まれていく・・・というギャグ漫画。
普通の女子高生が血なまぐさい世界に巻き込まれていく、と思ったら平気でピストルぶっ放したり(殺人)、主人公を車で思いっきり跳ね飛ばしたりする、先が全く読めない。本当に軽い気持ちで悪の道に入っていく主人公の無鉄砲ぶりが清々しい
シンプルな絵の割には車や銃器が丁寧に描き込まれているのもいい。

・あのこのにっき(MOJI) キャラット2024年3月号から3回読み切り
国語(記述)が苦手な女の子が担任から文章を書く練習として日記をつけることを勧められるが、何を書いていいのかわからない。そこで友人と交換日記をすることに。
ゆるふわ系の絵柄がちょい百合気味の漫画にフィットしている。女の子とギャグが可愛らしいので癒された。友達のもあちゃんがやたらとエロいのもポイント高い。

・触手のキミ(おシャケ) キャラット2024年3月号
ある日突然首から下が触手になってしまう奇病に苛まれた女子の苦悩と友情の物語。
カワイイ絵柄に触手の気持ち悪さが凄まじいミスマッチ感を醸していて気になってしょうがない。触手を編み込んで人体に模してしまうところは不覚にも感動した。時代を先取りしすぎたともいえる。

・インベーダーニャンベーダ―(ヤマトバンビーズ)きらら2024年4月号から3回
鉄骨が落下して死んだ女の子が異星人(外見はクロネコ)と同化することになり復活。ただし猫耳としっぽを生やした姿で・・・というウルトラマンみたいな話。地球防衛隊員も出てくるが、彼女もN56星(ニャンコロ星)の異星人と融合しているので猫耳が生えている。この世界の異星人は猫しかいない(笑)
ボディラインがピッタリ出ているスーツに変身する場面もあるぞ!

・アンドロイドのレシピ(なず)キャラット2024年5月号から3回
通販サイトの安価セールで手に入れたのは美少女型アンドロイドでした。
10億円のはずが1円っていう冗談みたいな値段で買ったものなので予想以上にポンコツなところが笑えます。

・げっとあうと!(2222楠)MAX2024年7月号
方向音痴の女子高生が寮生活のため向かった先は廃墟で、そこには少女の霊が居ついていて、お化け屋敷扱いする輩を心霊現象で追い払っていたのだった。
怖がらせるほど逆に出て行かなくなるという逆転の笑いがツボ。作者は来月のMAX誌にも読み切りが載る予定だ。楽しみ。

・べんりやしがれっと(原作原)きらら2024年8月号から3回
きららに年一で短期作品を発表する原作原の新作。
「サンキュー!80!」(2022年)、「1979年地球の危機」(2023年)が個人的に好きだったけど、今回もゆる~い女子二人の友情(愛情?)話。
中古車を部室にして活動する「よろずや同好会」に持ち込まれるさまざまな依頼をヤニカスでギャンブル狂の先輩がさくっと解決!報酬はタバコだ。ちょっとしたミステリーにもなっていて、この作者ミステリー好きなんだろうね。きららではこの手のジャンルが定着しないので頑張って欲しい。

・ウチから何キロメートル?(蚕二号)きらら2024年9月号から3回
ぐうたらな無職の姉の未来を心配した妹が更生させるべく一人暮らしの家にやってくる。アウトドア派の妹は姉を無理やり自転車に乗せて外へ連れ出そうとする。
おそらく作者が結構な自転車マニアのため折り畳み自転車やリカンベントなど多種多彩な自転車がいっぱい出てくるぞ!
『軽い気持ちで~』の時に見せたメカ系の高度なデザイン力がよりアップしていて、数か月前の絵と全然違う!技術の向上って素晴しいな・・・

・きみとボドゲがつくりたい!(赤城ナツイチ)MAX2025年1月号
イマジナリーフレンドとボドゲを遊んでいる(ここがすでに爆笑)ぼっち少女がイラストが上手いギャルと出会い、オリジナルボードゲームをつくろうとする。
既存のゲームじゃなくてオリジナルをテーマにしているのが良い。この「陽キャの中に紛れ込んだ陰キャを探し出すゲーム」は普通に面白いと思う。
絵もカワイイしギャグもわかりやすく連載にならないかなあ。

・異常探偵灰谷まふる(八代涼)きらら2025年1月号
子供の頃から探偵ごっこをしていた女の子はそのうち自分を本物の探偵と思い込むようになり、孤島、豪華客船、大陸横断鉄道に乗り込むが事件は起きなかった(当たりまえ)。それに付き合う助手役の親友も苦笑い。ところが吹雪の山荘で本当に殺人事件がおきてしまった!
探偵が的外れな推理を繰り広げる(まるで金田一シリーズの警部みたいな)のに笑いを誘うが、それらをすべてひっくり返すゾっとするようなオチが待っていて本気で驚いた!
これを描いた作者、載せたきらら、どっちも異常です!

・雷神・あらいじんぐ!(フライドホケキョ)MAX2025年2月号
眉目秀麗・成績優秀・スポーツ万能の主人公。だが彼女は雷が苦手という弱点があった。そんな彼女の元に雷神様の娘がやってきて・・・
絵がくっきりとしていてテンション高めのギャグもわかりやすい。

・メディアミックス*ガールズ(なず)キャラット2025年2月号
有名アニメーターを多数輩出した伝統あるアニメ研究部に入ろうとした主人公、だが部はすでに無くなっていた!一から部を立ち上げようと奮闘するが隣では同じ理由で漫画研究部を復活させようとする者がいた!二人は互いに争うが、最終的に双方の部を吸収した美術部に間借りすることに。
『アンドロイドのレシピ』の作者の新作で絵もギャグセンスも格段に向上しているのがスゴイ
昔読んだ『ハックス!』を思い出す。

 

 

きらら系列誌では人気のある読み切りはすぐに連載になるんだけど、初回のアンケートが良かったので3回の予定が4回になったにも関わらず2回目の数字が悪かったので連載ナシになったりする残酷なケースも・・・

 数か月経ってから連載になるケース(例:ラスボスは逃げ出した、異世界魔王ごっこ)もあるのでこの12本のうちから連載になる作品出てきて欲しいなあ。

 みんな読み切りにも注目しよう!

 

追記:

※蚕二号先生の『ウチから何キロメートル?』はきらら2025年3月号から連載になりました。おめでとうございます。

 

 

 

徒手空拳でシステムに立ち向かえ『レベル・リッジ』

 ネットフリックスで配信中の『レベル・リッジ』は近年需要が高まっているリアリズム溢れるアクションが楽しめるクライムサスペンスだ。

 ルイジアナ州シェルビー・スプリングの街を自転車で疾走する男、テリー(アーロン・ピエール)は突然パトカーに跳ね飛ばされる。赤信号を止まらずに突っ切ったからという理由で。テリーはずっとスマホで音楽を聴いていたのでパトカーのサイレンにも気づかなかった(音楽を聴きながら走るのはやめよう)

 マーストンという警官はテリーの持ち物から現金3万ドルがあるのを確認する。それはテリーが従兄弟のマイクのために用立てた保釈金+従兄弟と新しく人生をやり直すための資金だったのだが、マイクの逮捕容疑が麻薬の不法所持であったことから怪しい金だと判断され、全額没収されてしまう。

 裁判官事務所で善良な職員のサマーからシェルビー・スプリングの警官は腐敗しきっていると聞かされる。ギャングを密告した証言者であるマイクは州刑務所に送られれば命が危ない。移送日までに1万ドルを用意すれば保釈の書類を書くと約束するサマー。

 かつて働いていた中華料理屋のオーナー、リューに1万ドルを借りる相談をした後で、テリーは警察所に行きマーストンら警官に金を取られたと訴えにいく。バーン署長(ドン・ジョンソン)に横柄な態度を取られるが、月曜の9時に来ればマイクに合わせてやると約束を取り付ける。ところが「時間に3分遅れた」と言われすでに移送バスは発車していた。テリーはバスを追いかけマイクに必ず保釈するから目立たないようにしろと伝える。

ここから警察の果てしない嫌がらせが始まる。リューのレストランは取り調べを受けテリーへの1万ドルが送金できなくなり、弁護士事務所のサマーには見張りがつく。我慢ならないテリーは警察署に赴き、バーン署長に警告。彼はあっという間にバーンを制圧し3万ドルのうち保釈金の1万ドルだけを回収。テリーは元海兵隊員で、実戦の経験こそないが(その経歴だけを見て警官たちは彼を侮った)MCMAP(徒手空拳で戦う近接戦闘術)の教官で兵士に柔術を教えていた男だった!

 

 いわゆる「舐めていた相手が殺人マシーンでした」系の作品でテリーは見殺しにされてしまうマイクの仇を討つために腐敗した警官たちと戦う。素手で!

『ランボー』の亜流ともいえるわけだが、80~90年代に幅を利かせた銃撃戦の果てになんでもかんでも銃殺、爆発させるアクションと違い、銃撃戦が存在しない。テリーは撃たれても撃ち返さない。射殺のシーンがなく、すべて己の肉体と精神のみで圧倒するのだ。

 この手の作品では敵はやられるだけの記号扱いが多いが、『レベル・リッジ』の警官たちは『ランボー』の警官の数倍頭が切れる。常にテリーたちの先を行って罠を張る。こちらを追い込むためにサマーが寝ている隙に麻薬を打ったりとかやりたい放題!

 こんな連中さっさとぶち殺してしまえばいいのに、と見ているこっちが怒りを炸裂させたくなるほどで、鍛え抜かれた精神の男、テリーはそれでも「不殺」の信念を貫く。

 彼が戦うのは腐敗警官そのものというより、腐敗するシステムに逆らおうとしない人々の無気力さである。だが最終的にはサマーと仲間たちが勇気を振り絞ってシステムに抗い悪を滅ぼす。精神による抵抗の物語だからこそ、主人公は徒手空拳でなければならない。

 

 しかしサマーの密かな協力者゛”セルピコ”の正体がマーストンだったというのは驚いた。お前、最初にテリーを跳ね飛ばして金を没収した奴やんけ!お前が余計なことしなけりゃこんな大騒ぎにならなかったのに・・・

 

舐めてた相手が殺人マシーンでした系映画の数々

 

 

 

俺だってやればできる『ナポレオン・ダイナマイト』

 来年『マインクラフト ザ・ムービー』という大作映画を任されるジャレッド・ヘス監督の長編デビュー作品がこの『ナポレオン・ダイナマイト』である。

 アメリカの一部のミニシアターから始まり、口コミで話題となりやがて全米に拡大公開され一大センセーショナルを巻き起こしたコメディだが日本では「監督もキャストも無名だから」と言う理由で未公開、DVDスルーにされた挙句、冴えないやつらが主役だからなのか、当時流行っていた『電車男』に便乗した『バス男』というどうしようもない邦題をつけられ、純粋な映画ファンの怒りを買っていた。

 配給会社は後に「ナポレオン・ダイナマイトと言うタイトルでは歴史モノと勘違いされるおそれがあったから」という理由で改題、しかも『電車男』との便乗を認めたのであった。

 

 そんな負の要素満点の本作は都会のおしゃれかつイケてる奴らとは正反対のダサくて冴えない、全く見栄えのしない登場人物の日常を共感を持って描かれた秀逸なコメディだったりする。

 

 アイダホ州(といえばポテトのオレアイダでおなじみ)のド田舎に住む高校生、ナポレオン・ダイナマイト(という名前なのだ)となり近所が数百メートルも離れている辺鄙な街で、自家用車もないので子供が使う通学バスを利用している(ここがすでにダサい)。大してとりえもなく(唯一の才能がイラスト。といってもウマヘタレベル)冴えない奴なのでぼっちで、体育の授業では組む相手もいない。

 家族はオフロードバイクが趣味の祖母ちゃんと30過ぎて無職の兄キップ(一日中チャットで”真実の愛”のパートナーを探し求めている)、やがて居候してくるリコ叔父さんは大学時代にアメフトで将来を有望視されていたが、選手権のレギュラーに選ばれなかったことをいつまでも愚痴って過去ばかり振り返っているダメ中年。

 

 輪を描いてどうしようもない周囲にプラスするようにクラスにはメキシコからの移民、ペドロが転校してくる。高校生なのに堂々とヒゲを生やしている彼と仲良くなるナポレオン。イケてる陽キャの祭典であるダンスパーティに誘う女の子がいない(当然)二人だが、ペドロはクラス一の美少女サマーを誘おうとする(無謀にもほどがある)。もちろん大失敗。そこで二人同様浮いている写真屋の少女デビ―を誘って無事OKをもらう。

 ナポレオンには誰も相手がおらず、当たって砕けろでサマーの友人トリシャに似顔絵(ウマヘタの)を送り、大変嫌がられるがリコ叔父さんが怪しげな商品を売りつけているお得意様がトリシャの母親で、叔父さんが吹き込んだ悲惨なデタラメを信じ切った母親に同情から「付き合ってあげなさい」と無理やりパーティに行かされる。

 

 パーティでイケてる陽キャどもの群れに明らかに見劣りするナポレオンのそばにいるのが嫌なトリシャは彼女をほっぽってトイレに行く(最低)ナポレオンを放り出して友人のサマーと一緒にパーティ会場を抜け出すのだった。

 

 陰キャぼっちの冴えなさ、情けなさをこれでもかと見せられ気が滅入ってくるところで、ペドロは突然生徒会長選に立候補したいと言い出すのだった。陽キャのイベント、生徒会長選に!?本気?

 かなりの本気な様子(には見えないが多分本気)のペドロをナポレオンは応援する。ところがライバルは陽キャの女王、サマーである。勝負は火を見るより明らかなで、ペドロ支持は全く広がらない。

 怪しげな訪問販売に手を出し、周囲に迷惑をかけまくるリコ叔父さんのせいで密かに行為を寄せていたデビ―にも嫌われ、どんづまりの日々に嫌気が差すナポレオン。こんな田舎の街で何もないまま終わるのか!?

 

 そんなどうしようもない日々に一筋の光明が差す。叔父さんの訪問販売に付き合わされヘトヘトの兄キップはデトロイトに住むモデルのような黒人女性、ラフォーンダとチャットを通じて知り合い、ソウルメイトの関係に!ダッサダサのナードでしかなかったキップは彼女のおかげで自信満々のイケてる男に大変身!あまりの激変ぶりに「俺だってやればできる」ハートに火をつけられたナポレオンはペドロを生徒会長にするため「君の夢はかなう」作戦を展開、学校で同じように冴えないいじめられっ子をペドロの従兄弟(ギャングにしか見えない)を使って助けたりする。

 

 投票日。立候補者のサマーとペドロは最後の演説をし、それぞれの支援者によるショーが繰り広げられる。この辺がアメリカっぽいんだけど、サマーの友人たちは手話チアリーディングダンスというパフォーマンスをするのだが、これが見るに堪えない陽キャ特有のノリで、サマーの彼氏(以下にもアホそうな体育会系のジョックス)とかには受けているけど、うすら寒い空気が漂ってるのがわかる。本当はみんなあのノリがイヤでイヤでたまらないんだけど、そこから外されたらナポレオンたちのようにナード(オタク)の烙印を押されるだけなのでみんな渋々付き合ってるのが一瞬でわかる場面だ。

 

そしてペドロの番になり、ナポレオンはショーのことなど何も考えていないが、ラフォーンダからもらったカセットテープをスタッフに渡す。流れてくるのはJamiroquaiの『Canned Heat』だ。

 

 俺には踊ることしかできないんだ、さあ踊れ!

 

 って歌詞(雑)で閉塞しきった田舎町、退屈な日常からの脱出を唄っているようにも聴けるし、ナポレオンを演じたジョン・ヘダーのキレ過ぎてるダンス(ジェイ・ケイも真っ青だ)をあり、劇中屈指のブチ上がる場面なのだが、カセットテープが途中で切れちゃうマヌケさ。

 だけどペラペラの手話チアリーディングパフォーマンスよりみんなの心をつかんだのは「俺だってやればできる」というナポレオンの情熱だった。

 

 本作はダサくて冴えない、パッとしない連中が最後に救われる物語だ。ナポレオンはデビ―と仲直りし、キップはラフォーンダと結ばれ、リコ叔父さんも別れていた彼女が帰ってくる。ダメなやつがダメなままで終わらない。観客の大半を占めるであろうダサくて冴えないパッとしない日常を送っている人々も救われた気持ちになったからこそ、大ヒットしたに違いない。トレンディドラマ的な陽キャの世界では決して描かれない世界の現実がここにはあった。