しばりやトーマスの斜陽産業・続
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特撮・この一話がすごい!魔人ハンターミツルギ「地獄の狛犬コマンガー!」

特撮番組の忘れがたい1話をチョイスする「特撮・この一話がすごい!」の第二回はあまり知られていない作品ながら唯一無二の作風が忘れがたい魅力を放っている時代劇ヒーロー『魔人ハンターミツルギ』から第11話『地獄の狛犬 コマンガー!』を紹介します。

魔人ハンターミツルギ 第11話「地獄の狛犬コマンガー!」

 

『ミツルギ』が放送された1973年は60年代末の『ウルトラQ』『ウルトラマン』から火が点いた怪獣ブームが終息を見せ始め、71年の『仮面ライダー』からはじまる「変身ブーム」にとって代わられた頃、特撮ヒーローは人気の絶頂期にあり73年には『ファイヤーマン』『恐怖劇場アンバランス』『仮面ライダーV3』『ジャンボーグA』『イナズマン』『鉄人タイガーセブン』『ダイヤモンド・アイ』など18本もの番組が放送されており、特撮番組なんてニチアサとウルトラマンぐらいしかない現代とは大違いです。

 

 物語は徳川家康が起こした徳川幕府の時代。宇宙のさそり座から飛来した魔人サソリと彼が率いる宇宙忍者サソリ軍団が討幕を狙い暗躍。いち早くそのたくらみに気づいた正義の忍者、ミツルギ一族の長、道半は銀河・彗星・月光のミツルギ三兄弟に智・仁・愛の三本の刀を託し、その刀によって変身する巨大神ミツルギの力を持ってサソリ軍団と連中の操る宇宙怪獣を倒すように命じ、三兄弟はサソリ魔人討伐の旅にでるのであった。

魔人サソリ:ミツルギの宿敵

どう見ても即身仏の魔人サソリ。これが宇宙人とは・・・

 

 王道の物語と言えるが、本作が他の番組とは違う異彩を放っているのは巨大神ミツルギと宇宙怪獣の戦いだ。同じ忍者モノ時代劇の『仮面の忍者 赤影』にも巨大怪獣が出たりしていたけど、普通は着ぐるみの怪獣がミニチュアセットの上で暴れたりするところ、『ミツルギ』はアニクリエーションという手法を用いた。それは人形をコマ撮りで動いているように見せるストップ・モーション、ウィリス・オブライエンの『キング・コング』とかレイ・ハリーハウゼンの『シンバッド七回目の航海』みたいなやつである。

 毎週放送されるテレビ番組でそれをやろうとしたのだから挑戦的にも程がある。それがために撮影スケジュールは逼迫し、後半になるほど完全なストップ・モーションではなくカメラを寄せてアップにしたり、人形自体を手で動かしたりする苦肉の策を用いられた。

 それでも人形アニメだからこそできる、着ぐるみでは再現できない奇妙な動きや不気味な怪獣たちとの戦いは他のどの作品とも似ていない輝きを放っていた。ミツルギは剣と円盾を持って戦うが、必殺技は胸から放つ火炎弾というのもすごいインパクトだ。撃って命中すればほぼ終わりという威力は『スパイダーマン』のソードビッカーに匹敵する。

 

 作品を取り巻くドラマ部分も70年代という情け容赦ない時代を反映しているともいえる。ミツルギ三兄弟は毎回旅先で出会った、サソリ軍団の魔の手に平和を脅かされる人々を救うのだが、毎回のように犠牲者が出る。しかも子供や恋人、家族を守って死んだりする。ミツルギ三兄弟がいても犠牲を止められないのだ。こんなに人が死ぬのは今時の特撮ドラマでもありえないだろう。

 

 そんな情け無用の作風が最も振り切っているのが今回取り上げる第11話です。

 

 ミツルギ三兄弟は立ち寄った村では夜な夜な寺にある狛犬の像が怪獣コマンガーになって暴れまわるという不思議な事件が起きていた。村人は「犬が俺たちを苦しめている」となぜか普通の犬を叩きのめして憂さ晴らし。村には目の見えないお千代さんという娘がおり、その盲導犬代わりの飼い犬、五郎も棒で殴打されているところ、ミツルギ三兄弟が助けてやる。

 三兄弟はお千代さんの家で粥を振舞われるのだが、長兄の銀河はお千代さんに不審の目を向け、「あの粥には毒が入っているかも知れない」と毒消しを渡し自分はお千代さんを見張ることに。

 

 銀河の予感は的中し、お千代さんは魔人サソリと通じておりミツルギ三兄弟を葬れば代わりに目が見えるようにしてやると約束されていた。そして犬の五郎こそがコマンガーの正体だったのだ。

 その頃、彗星と月光は兄のいうことを信じずに毒消しをその辺に捨てていた。(捨てるな)案の定、痺れ薬の効果が出始めたところをサソリ軍団に襲われ絶体絶命。駆け付けた銀河によって救われた二人は改めて毒消しを与えられて復活。

 

 「五郎!ミツルギを倒しわたしに目を授けておくれ!」

 魔人ハンターミツルギ:お千代さんの顔

鬼のような形相になるお千代さん

 

召喚されたコマンガーはミツルギの火炎弾によって絶命。五郎の亡骸に縋りつくお千代さんは「よくも五郎を殺したな!」と自ら刀を抜いて「お前たちを殺せばわたしの目は見えるようになる!」と向かってくる。

 

「魔人サソリがそんな約束を守ると思うのか?」「あなたは騙されているのよ!」

 銀河たちの叫びも虚しくお千代さんは(目も見えないのに)刀を振り下ろすが、あっさりかわされた上、地面に突き刺さった自分の刀にお千代さんは勢い余って突っ込んでいき、首が切れてしまうのだった!

魔人ハンターミツルギ、お千代の悲劇

いくらなんでも無理があるような

 

「青い空、白い雲、緑の森・・・一度でいいから、見たかった」

と言い残しお千代さんは命を引き取る。

 こうしてまた、ミツルギ三兄弟は魔人サソリによって苦しめられる人の命を救えないのであった。

 

 毎回誰も救えないまま残酷に幕を引く話が多い『魔人ハンターミツルギ』の中でもこの回は一番酷い。これが最終回のひとつ前なんだからもう!

 

 ちなみに本作は「低視聴率故に打ち切り」と語られることが多いけど、前番組が短縮されたため、空いた1クールのスケジュールを埋めるために用意された番組なので初めから12回予定なんですよね。でも高視聴率だったら続いたはずなので予定を覆すほどの人気は取れなかったのでしょう。アニクリエーションという手間のかかる撮影だったのも影響を及ぼしたといえます。とはいえ視聴者の記憶に残る作品になったわけで、カルトな人気を持つこの番組は90年代から何度となくソフト化の機会に恵まれ、普通に見られるのはありがたい。世の中には絶対に見られない『突撃!ヒューマン』とか素材があるのに見せてくれない『メガロマン』『サンダ―マスク』よりは恵まれてます。

 

 

 

 

シン・ヒーマン『マスターズ・オブ・ユニバース』

マスターズ・オブ・ユニバース ヒーマン誕生 ポスター

 この夏、最大のダークホース映画、それが『マスターズ・オブ・ユニバース』だ!

 

 バービー人形やミニカーのホットウィールで知られるおもちゃ会社のマテルが80年代に展開、販売したアクション・フィギュアシリーズ(日本でも『魔界伝説 ヒーマンの闘い』というタイトルで展開された)実写映像作品で、1987年に肉体派スター、ドルフ・ラングレンの初主演作品として『マスターズ/超空の覇者』のタイトルで映画化されている。今回は39年ぶりのリブートってわけ。

 87年版は筋肉ムッキムキのヒーローがデカい剣を振り回して故郷を侵略した悪人どもをやっつける単純明快にして王道のヒロイック・ファンタジーだ。世の中が複雑化した2020年代にそんなカビの生えたような物語で興奮することができるのか?とお思いの諸兄、それができちゃうんだからスゴイのだ。

 

 自然に囲まれた惑星エターニアの王国に暮らす王子アダムは王になるべく「英才教育を受けながらも優しい性格が災いして中々成長しなかった。そのさなか、エターニアを侵略しようとする邪悪な魔術師スケルター率いる一団によってエターニアは崩壊、アダムも命を狙われるが守護者である魔女ソーサラスによって王女マルレーナの故郷である地球へと送り込まれるが、手にしたものに強大な力を与える“力の剣”パワー・ソードを地球に向かう途中で落としてしまう。

 無事地球に逃れ、みなしごとして暮らしてきたアダムは故郷のエターニアを取り戻すためにパワー・ソードを手に入れ戦いに赴こうとする。

 

 生まれ故郷の国を追われた王子が使命に目覚め、国を取り戻すために長い旅に出るという貴種流離譚の王道であり、正統派の冒険劇と思いきや、『マスターズ~』はド直球の中に多才な変化球を織り交ぜてくるクセの強い物語でもある。

 まず、地球にやってきたアダム王子は突然15年後の世界におり、インターネットで「僕の失くした剣、知りませんか?」とメッセージを投稿し続けている(笑)子供のころの記憶にあるエターニアでの人々との暮らしを漫画風のイラストにし、「昔エターニアって星で暮らしていてね・・・」と女の子に口走って中二病と勘違いされる。仕事は会社の人事課で上司にも小馬鹿にされ、マジメに相手してくれるのはルームメイト(も「やれやれ、しょうがねえなあ・・・」とやや呆れ気味の対応)だけ。

 何コレ??

 

 だがネットの書き込み「君の剣、知ってるよ!」との書き込みがあり向かった先はおもちゃ屋。そこにあったのはヒーマン等身大人形が手にしたおもちゃの剣。アダムは店員が咎めるのも構わず、「これ、僕の剣だから!」と人形の剣を引っこ抜いて全力ダッシュ!それ、泥棒だよ!!

 当然のように警察に逮捕されたアダムを地球にやってきたスケルターの副官ビーストマンが襲う!おもちゃの剣は本物だったのだ(そんなバカな)!大ピンチの彼を救ったのはエターニアの幼馴染の少女ティーラだった。ティーラは町のど真ん中に違法駐車した宇宙船(当然一般人の目につきまくるんだけど、アダムは「ほら、僕の云ったことはウソじゃなかったんだ!」と大はしゃぎ)にアダムを乗せ一路エターニアへ・・・

 

 『マスターズ・オブ・ユニバース』という作品をメタフィクションとして再構成するという展開は『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』を連想してもらうとわかりやすい。一瞬、庵野秀明がハリウッドに進出して監督したのかと思った。トラヴィス・ナイト監督はアメリカの庵野秀明だった!んなアホな。

 

 国を受け継ぐ王子でありながら周囲からも期待されてなかったアダムは帰ってきても地下活動を続けるレジスタンスたちに認めてもらえず、彼についてくるのが幼馴染のティーラ、彼の義父で酔っ払いの戦士ダンカン、メイドロボットのロボトという、なんとも締まらない仲間たち。

 敵対する勢力も敵役スケルターは骸骨面の魔術師で、「オレはワルだ。なぜなら・・・悪役だからだ!」みたいなことを平気で宣っているので、正気を疑った。彼はパワー・ソードさえ手に入れれば本当の悪役になれると思い込んでいる(今は「本当」じゃないんかい!)。そんな悪役を支える第一の部下、魔術師イーヴィル・リン(「悪いリン」ってどういうネーミングだよ!)は「さ、さすがスケルター様!悪役の中の悪役ですよ!」とヨイショに余念がない。この二人のコントはほとんど『トランスフォーマー』のメガトロンとスタースクリームだ。

 

 味方も敵も憎めない、愛すべき馬鹿野郎たちのコメディリリーフぶりが頼もしい。『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』を思わせる、クセの強い登場人物たちが軽いノリの笑いを提供しつつ、時には熱く、時には泣ける、エモーショナルな物語を展開していくのだ。

 人を選ぶことは間違いないけど、ハマる人は抜け出せないほどにハマってしまう、そんな愉快な映画だ。

 

とにかく小ネタの拾い方が半端なく、87年版のヒーマン役、ドルフ・ラングレンがアダムに助言を与える男として出てきたり、エンドロール後にスピンオフの主役だったアダムの妹、プリンセス・シーラが出てきて続編(というかスピンオフ)を匂わせたりとやりたい放題か!最高やろ!

 最近の娯楽映画にありがちな現代の社会情勢における影響とか、歴史のある作品の再映画化なのでいちいち最低限の事前情報がないと理解できないといったこともない、初見勢に優しい作りなのもよい。元々が玩具の映画なので玩具が欲しくなってしまう魅力に溢れている。君もいますぐ玩具屋にいって等身大ヒーマン人形からパワー・ソードを奪ってくるんだ!

「これ、僕のなんで!」

 

 

 

 

 

珠玉の映像体験 これが80年代だ『ムーンウォーカー』

マイケル・ジャクソン『ムーンウォーカー』ポスター

 日本でマイケル・ジャクソンの伝記映画『Michael/マイケル』が大ヒット中なので久しぶりにマイケル見るか!と思って過去作を引っ張り出してきた。

 

1987年、マイケル・ジャクソンが発表したアルバム『BAD』は世界No.1売り上げの記録を持つ前作『スリラー』に次ぐ4000万枚近い売り上げを叩き出し、マイケルは人気の絶頂期にあった。この年初めてのワールドツアー“ Bad World Tour”をスタート。その際のライブ映像、ナンバー・ワン・ヒットを記録した名曲のPVを組み合わせ、後半にドラマパートを加えたミュージカル映画が『ムーンウォーカー』だ。

 

監督のコリン・シルバース、脚本デイヴィット・ニューマンは『スーパーマン』シリーズの二人。SFXはスピルバーグ、ジェームズ・キャメロン作品やディズニーアニメを手掛けたドリーム・クエスト・イメージズ他。製作は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデニス・ジョーンズという当時の一流スタッフが結集した前代未聞、唯一無二の映像体験を提供する。

 主演はもちろんマイケル、脇を固めるのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『ホームアローン』などで知られる悪役俳優ジョー・ペシ、子役として登場するひとりはジョン・レノンの息子ショーン・レノン。世界のスーパースターと世界に名を遺すミュージシャンの息子の共演!

 

 ここまで豪華な面子が揃ったのだから、さぞすごい作品が出来上がったのだと想像するが、そうはうまくいかないのが映画の世界である。

 

 後半に展開する物語はまず、子供たちを攫って中毒者にしてしまおうとするギャング、ミスター・ビッグ(ジョー・ペシ)の陰謀が描かれる。てっきり犯人がマイケルなのかと思ったらそんなことはなく、マイケルは子供を助ける側なのだ。

 ギャングに銃弾を撃ち込まれたり、犬に追い掛け回されたりされながらマイケルは子供たちを救うために車になったりロボットになったり宇宙船に変身したりして、最後は宇宙に飛び立っていく。そう、マイケルは宇宙人だったのだ!

 

 あまりにスーパースターすぎるマイケルは確かに宇宙人にしか見えない。映画『MIB2』に出た時は「僕もエージェントにしてよ!」っていう役だったけど、あんたは取りしまられる側でしょ!

 

 というわけでまあ、話としては雑なんだけど、そのヒストリーの中で「いい仕事」をするためにスタッフらと意思疎通を図り、良いものをつくるために努力を惜しまない、色んな人に楽しんでもらい、驚かせたいというクリエイター魂の残滓はフィルムのあちこちに見え隠れしている。普通は車になったりロボットになったりしないよ!

 そんな人間だからこそスーパースターになりえたということは確実にこの映画を見て理解できるってことだ。君もクライマックスで空に飛び立つマイケルの姿に涙し、ビートルズの『カム・トゥゲザー』のカバーに興奮しないか?

 

 

セガとマイケルのアツい関係

1億枚(!)売れたという

これもバカ売れ

今やってる映画

失ってこそ手に入る力『ハヌ・マン』

ハヌ・マン:インド映画ポスター

 ヒンドゥー教の神様、ハヌマーンをタイトルロールにしたテルグ語映画。ハヌマーンといえば『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』なわけだがあちらは対映画、こちらはインドだ。どちらも超常的な力を持つヒーローについて語られている。

 

 正義感の強い少年マイケルはアメコミが大好きでヒーローに憧れている。喘息に悩むいじめられっ子のシリを助け、二人は親友になる。ある日スーパーヒーローのように空を飛ぼうとしたが大失敗(当たり前)。父親には「バカな漫画に影響されるな」と叱られ母親にも漫画と現実は違うことを諭される。夢を否定されたマイケルは深く傷つく。

 

「スパイダーマンは親がいない。バットマンがヒーローになるのは両親を失ってからだ」

 

 というわけでマイケルは自宅に火を放ち両親を焼き殺す。やがて大人になったマイケルは科学者となったシリの開発した特殊スーツを身にまとうスーパーヒーロー、メガマンとして世の悪党どもに裁きを下すようになる。一切の容赦なく悪党どもを抹殺するメガマンは貧しいものたちから絶賛されるが彼はさらなる力を欲していた。

 

 同じころ、田舎村で暮らすチンケなコソ泥のハヌマントゥは小学校の校長の孫娘、ミーナクシに恋をしていたが家の仕事も手伝わず、だらけているハヌマントゥは相手にもされない。村は強欲な権力者である王、ガジャパティに支配され誰も逆らえない。王のやり方を批判するミーナクシを煙たがるガジャパティは彼女を密かに殺そうとする。それを察したハヌマントゥは彼女を殺し屋の手から助けるが重症を負い海に沈む。海の底で英雄ハヌマーンの宝石を手に入れたハヌマントゥは無敵のヒーローとなり、ガジャパティの支配を打ち破って村を平和に導く。だがハヌマントゥの噂を聞きつけたマイケルとシリがその力を奪い取ろうとする。

 

 ヒーローになることを願いながら歪んだ正義感故に暴走していくマイケル、ヒーローとは縁遠い生き方のボンクラ青年ハヌマントゥは神様の力を手に入れたことで真のヒーローに目覚めていく。二人の存在はポジとネガである。

 マイケルはメガマンというバットマンそのまんまなヴィジランテとして悪を制裁する。ハイテクスーツと武器で装備したヒーローではあるが「内から湧き出る力が欲しい!」と借り物の力に満足できない。

 一方、本物の力を神から与えられたハヌマントゥだが、宝石の力は太陽の光を浴びていないと使えないという欠点がある。すごい力があっても憧れのミーナクシには相手にもされないっていうのが悲しい。ヒーローやってても女にモテるわけではないというのはとても悲しい。

 完璧ではない二人にはそれぞれ、欠点を補う相棒、家族がいる。マイケルには親友シリ、ハヌマントゥには強気な姉のアンジャンマ。アンジャンマ姉ちゃんは婚期を逃しているのだが、男勝りなs性格のせいだと決めつけていたハヌマントゥ。実は結婚の条件に「弟の面倒を見てくれること」を出していて、自分がいつまでもだらけているせいで結婚できないのだと知った彼はマジメになろうとする。一人前の男になろうとしたハヌマントゥを悲劇が襲い、マイケルも彼の夢を邪魔しようとするシリを切り捨てようとする。スパイダーマンがベン叔父さんを失う様に、二人は真のヒーローとして目覚めるために大切なものを喪失する

 

 神話の世界と現代的なハイテクヒーローが融合した『ハヌ・マン』はインド映画のコクの強さが上手くブレンドされている。ハヌマントゥのヒーローらしくなさが最初気になるんだけど、彼が力だけではない、一人前の男として目覚めていく過程は泣けるねえ。僕が気に入っているのはアンジャンマ姉さんがココナッツで野郎どもをボコボコにするところ。気風のいい姉さんの血をしっかり受け継いだハヌマントゥが真のヒーロー足り得るのも納得!

 狂気を背負ったもう一人のヒーロー、マイケルが歪んでいくにしたがってどんどんダメになっていくのも悲しいんだよな。最後にバージョンアップしたスーツが搭乗するんだけど酷く安物のパチモンスーツで情けない。最初のバットマン丸出しのスーツの方がよかったよ!ヒーローとして大事なものを失っていったことがよくわかる。ハヌマントゥと対立していた人々が最後に結集するクライマックスは激熱です!

 

 この映画、ユニバース方式で続編をめっちゃ匂わせて終わり、続編とスピンオフの3部作構想らしいので次回『ハヌマーンVS怪獣軍団』(嘘)に期待してます!

 

 

インドのヒーロー映画

マスク・オブ・ゾロみたいなやつ

過去は過ぎ去り 未来はまだ来ない『機動警察パトレイバーEZY』

機動警察パトレイバーEZ 登場人物紹介

 80年代末から90年代初頭にかけて展開されたメディアミックスプロジェクト『機動警察パトレイバー』の新作シリーズ。


 パトレイバーは製作された時代から「10年ぐらい先の未来」を想定してつくられた。人型産業用機械として誕生した<レイバー>は主に土木作業の分野で活躍し、やがて軍用機械に転用され、「レイバー犯罪」と呼ばれる社会的脅威を生み出す。警察はこれらに対抗すべく特殊車両二課、パトレイバーを誕生させる。
『EZY』の舞台は2030年代。AI技術により自動化が進んだ現代ではかつて最先端だったレイバーは社会基盤を支える技術として定着はしたが、人が操縦するロボットの多くはAIによって自動化され、レイバーは時代遅れの産物となりつつあった。2030年代の特車二課の面々は時代遅れの産物に乗りながら、人と街の平和を守ろうとする。
これは中々に痛烈な設定である。つまり『パトレイバー』という作品自体が「昔の」作品で「そんなものもあったね」ぐらいの扱いで、劇中もそういうことにされている。なにしろ30年以上前の作品なんだから、20代~30代の人たちは見たこともないって具合じゃないのかな。
 

 ということは僕みたいな学生時代にリアルタイムでパトレイバーを楽しんだ世代が「昔を懐かしむ」ためのプロジェクトか?というとそうではない。だって登場するキャラクターは見たこともない新顔たちだから。出てくるキャラクターたちはなんとなく、かつての特車二課のメンバーを思わせる人々でいて、実はまったく違う別人だ(中には老けてしまった前作までのキャラも出てくる)。別人の新顔たちがパトレイバーっぽいことをしている様を見せつけられるのは中々キツイ
 

 観客が新顔たちにまったく馴染んでないので、最初の3話分は誰が誰なのか、どんなキャラクターなのかを把握する前に話がどんどん進んでいく。これ、TVシリーズの序盤数話ならともかく劇場版なのでそもそもリスキーな企画な気がする。


 中身の話について、エピソード1は商店街のクリスマスイベントにおけるレンタルレイバーの暴走事件。犯人は老人で時代に取り残されていく世代の遺物たちがひと花咲かせようとする。それはまるで「パトレイバー世代」の観客や作り手を見ているかのようだ。
 エピソード2は出動がなく待機状態の特車二課で、隊員たちが日誌に自分たちは「ありえない事件」を華々しく解決する妄想をそれぞれリレー形式で書き綴っていく。
これが良くできていて、パトレイバーというのは実はロボット・アクションものではなく、警察官の日常を綴った作品だ。だがそれでは売れないので便宜上ロボットバトルものの皮をかぶっている。なのでハードなアクションと前作に登場した零式を登場させ、劇場版一作目もかくやな激しいバトルシーンを展開させている。退院の妄想として!リレー形式で綴られるのでこいつらみんな仲いいな!って笑えてしまう。
 エピソード3は映画撮影現場に駆り出された特車二課のドタバタ回。樋口真嗣絵コンテによる「どっかで見たような」巨大ロボットが暴れ回る時代劇で、漫画版のエピソードを彷彿とさせる。オチは今回のスタッフとして不参加の押井守監督の某作品を思わせる予告編でどっちらけ!


作品のテイストとしてはアーリーデイズと呼ばれる初期OVAシリーズのテイストに近い。ということは本来のパトレイバーの持つ魅力を30数年後の世界にそのまま持ってきてといえる。
アーリーデイズが最後の二部作『二課の一番長い日』で到達点に達し、劇場版The Movieで時代を象徴する名作にまで突き抜けたように今後公開されるFile2、File3で右肩上がりのクライマックスが期待できるのではないか。

 

 ところでタイトルの『EZY』って何のことなの?と思ってたら最近になってデータ量の単位「エクサ・ゼタ・ヨタ」を並べた、キロやメガの先、「まだ来ていない次世代の未来」を示している、とのこと。それはまだ来ていない未来を描いたパトレイバー最初のコンセプトと同じだ。僕らの時代の90年代に「パトレイバーな未来」は来なかったが、今度は・・・どうかな?

 

 

 

 

 

 

 

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