第15回 メガドライブとの遭遇
会議室には、ハード制作の佐藤部長と営業担当の鎌田部長がいて、セガはメガドライブという16ビットゲーム機を他社に先んじて発売する、という説明を聞いた。
テーブルの上には黒い色をした新ハードとそのスロットには1メガのROMチップが4個が載ったむき出しの基盤が挿されていた。
スイッチを入れるとモニターに「スペースハリアー」の新作が映し出された。ハードと同時発売の「スペースハリアーⅡ」だという。次に映し出されたのは、アーケードゲームから移植された「獣王記」だった。
新しい16ビットのゲーム機はメガドライブといい、これ見よがしにブラックボディの中央に16と金文字で書かれていた。
メガドライブは、マスターシステムよりはグラフィックが綺麗で、サウンドもグレイドアップしていた。「Beep」は、このハードに賭けよう、と思った。
宣伝部の榊野部長が、「ホテルでメガドライブの発表会をやるから来てくれよ」と言い、
サードパーティーのリストは、編集部にファックスで送ると約束してくれた。
後日「Beep」の特集で、メガドライブを取り上げることになったが、なかなかサードパーティーのリストが送られてこなかった。原稿の締め切りが迫っていたので、セガに電話することにした。
榊野部長からは、とりあえず今のバージョンを送るが、もう1社がなかなか決まらないので、最終版はもう少し待ってくれということだった。その日の夜になって、ようやくサードパーティーの最終リストがファックスで送られて来た。そこには、以前のリストにはなかった会社名、ナムコが書かれていた。
第14回 「Beep」をどうする!?
その頃「ファミコン通信」はゲーム総合誌として、また「ファミリーコンピュータマガジン」「マル勝ファミコン」はファミコン専門誌として地位を確立していた。
私は、セガから16ビット機のメガドライブが近い将来発売されるということを聞いていたので、「Beep」をメガドライブ専門誌にするという提案と同時にいずれ販売されるスーパーファミコンの専門誌発行の提案もした。
会議では、スーパーファミコンの雑誌は、ファミコンの後継機だから売れるだろう、しかし、セガはゲーム業界で知名度も低いしビジネス的にも成功しているとは言いがたいので、メガドライブの雑誌については要検討という声が大勢を占めた。
当時のセガは、認知度も低く、セガのゲーム専門誌を作ろうという人間は、出版業界ではちょっと変わり者に見られていたのではないだろうか。
会議では、1人対多数で「Beep」は累積赤字のためいったん休刊する、ということと休刊のスケジュールが決まった。
その後「Beep」では、メガドライブを積極的に取り上げ、できるだけユーザーに期待してもらうような特集を組んだ。小さなブームでもいいので起ってほしいと願っていた。
もしそれがなかったら「Beep」は、後続誌のないまま廃刊になってしまうからだ。
第13回 「Beep」のゲーム雑誌業界での位置づけ
当時いろいろなゲーム雑誌が刊行されていたが、「Beep」は、「ファミリーコンピュータマガジン」「ファミ通」「マル勝ファミコン」など後発の雑誌に、次々と発行部数で抜かれていた。あの頃、実売部数が十数万部程度だったと記憶している。
雑誌は発行部数と実売部数の差、返本率が低いほどビジネス的に成功とされる。編集長は、だいたい返本率20%以内を目指して雑誌を作っている。
「Beep」は、返本率が30~40%になることもあり、会社では、優等なパソコン雑誌、ダメなゲーム雑誌という雰囲気があった。
編集長になってしばらくした頃、日本コンピュータシステム(NCS)という会社がメサイヤというブランドでゲームビジネスに参入するので、ゲーム雑誌の編集長を集めて披露パーティーを開催するという。
そのパーティーに参加し、形式的な進行が終了し、次にみんなで二次会の飲み屋に行くことになった。
その店に行くと、雑誌ごとに座席が決まっていて、それぞれ座席に案内された。中央の座席は、「ファミリーコンピュータマガジン」「ファミコン通信」「マル勝ファミコン」で、ほかの雑誌の編集長は、その周辺にばらばらに座るようになっていた。
NCSの社長や部長は、みんな中央の座席で売れている雑誌の編集長たちと飲みながら歓談をしていたが、私は、隣に座っていた「マイコンベーシックマガジン」の大橋さんとずっと話し込んでいた。もちろん社長や部長が来るはずもない。とはいえ、そのお陰でその後大橋編集長と親しくさせてもらうことになるのだが。
そこでわかったことは、「Beep」は、ゲーム雑誌業界の序列中で決してメインではないということだった。
「ファミリーコンピュータマガジン」の名物コーナーといえばこれ。
「ノスタルジオの風」をもらったのでプレイしてみたら、予想外にサクサク進むので、すっかりはまってしまった。
RPGが面倒くさいと考えている人には向いているゲームだと思う。