皮膚科対策ダイジェスト版
授業プリント以外の内容です。
ダイジェストとか言ってもめちゃめちゃ長いんで、PCからの閲覧をお薦めします。
旧版は授業プリントと矛盾する記載が多かったので削除しました。
12/13追加編集(有棘細胞癌好発部位、MED測定方法)
【内臓悪性腫瘍を効率に合併する皮膚疾患】
① 皮膚筋炎
② 黒色表皮腫
③ Sweet病
④ Leser-Trelat徴候
⑤ 自己免疫性水疱症
・ 腫瘍随伴性天疱瘡
・ 水疱性類天疱瘡
⑥角化性病変
・ 後天性禦鱗癬
・ Bazex症候群
⑦環状紅斑
・ 葡行性迂回状紅斑
・ 壊死性遊走性紅斑
・ 遠心性環状紅斑
⑧後天性毳毛性多毛症
⑨血栓性静脈炎
⑩汎発性帯状疱疹
【黒色表皮腫】
乳房下部、腋窩、項部、頸部、肘窩、膝窩、肛囲などに皮膚の色素沈着(黒褐色のことが多い)、角質の増殖をきたし、皮疹が先行する場合と、同時に発生する場合の両方がある。
【Sweet病】
・ 好中球浸潤性紅斑
・ 上気道感染を起こした後に四肢、顔面に暗赤色の隆起局面が単発、多発
【Leser-Trelat徴候】
老人性疣贅や脂漏性角化症が数ヵ月以内に急速にその数と大きさを増すもの
【腫瘍随伴性天疱瘡】paraneoplastic pemphigus
・ 悪性腫瘍に伴って生じる自己免疫性水疱症、血液系悪性腫瘍の合併が多い。
・ 尋常性天疱瘡と同様に難治性びらん、潰瘍病変などの口腔を主とする粘膜疹と水疱、びらんなどの皮疹を主症状
・ 皮疹は多形滲出性紅斑様ないし扁平苔癬様皮疹を呈することもある。
・ 掌蹠にも皮疹が存在することが多く、尋常性天疱瘡との鑑別に役立つ。
・ 水疱性類天疱瘡にも悪性腫瘍の合併が多いという報告がある。
【後天性魚鱗癬】
・ 魚のうろこ様の鱗屑を主症状とし、四肢伸側に特に強く現れる。
・ 先天性魚鱗癬と異なり遺伝性がなく、中年以降に発症する。
・ リンパ球性悪性増殖疾患の合併が多いが、甲状腺機能低下症、Hansen病や慢性腎不全などの非腫瘍性疾患でも起こりうる。
【Bazex症候群】
・ 鼻、耳、指趾の角化性紅斑と爪の変化で発症し、頬部、肘、膝、さらに体幹に拡大する。
・ 呼吸器の扁平上皮癌を高率に合併し、その多くは頸部リンパ節転移例。
【葡行性迂回状紅斑】erthema gyratum repens
・ 浸潤性紅斑が遠心性に拡大し、環状紅斑を形成しつつ木目状の外観を呈す。
・ ほぼ全例で悪性腫瘍を合併し、その中でも肺癌が多いといわれている。
【壊死性遊走性紅斑】necrolytic migratory erythema
・ 皮疹は顔面、会陰部、外陰部、頚骨部や足の容易に破れる小水疱や膿疱からなり、環状を呈することが多く、舌炎、口唇炎も伴う。
・ グルカゴン酸性腫瘍などで血中グルカゴンが増加した状態のほか、アミノ酸摂取不良でも生じる。
【遠心性環状紅斑】erythema annulare centrifugum
・悪性腫瘍合併の報告があるが、頻度は高くない。
【後天性毳毛性多毛症】hypertrichosis lanuginosa acquisita,malignant dwon
・ 胎生期毛(いわゆるうぶ毛)様の毛が多発する状態で、顔面、特に耳から始まり全身に拡大する。
・ 有痛性の舌炎を伴い、肺癌の合併の報告が多い。
【表在静脈の血栓性静脈炎】
・ 発赤を伴った有痛性皮下硬結で、しばしば索状となる。
・ Behcet病、Buerger病、妊娠や経口避妊薬内服など種々の原因により生じるが、悪性腫瘍に伴う場合は膵癌が多く、遊走性、再発性のことが多い。
【汎発性帯状疱疹】
・ 通常の帯状疱疹と異なり、全身に小水疱が散布される。
・ 悪性リンパ腫や白血病の合併頻度が高く、特にその末期に多い。
・ その他に難治性の皮膚瘙痒症が消化器腫瘍、悪性リンパ腫、骨髄腫、多血症などに、紅皮症が悪性リンパ腫に伴って現れることがあると報告されている。
【デルマドローム】
全身疾患の部分症として現れる皮膚病変の中で、内臓病変に伴って現れるものをデルマドロームdermadromeという。内臓病変に特異的な病変を直接デルマドローム、非特異的なものを間接デルマドロームという。これらの皮膚病変から特定の内臓病変の存在を推察でき、それらを発見するための重要な情報となる。さらに、その中には内臓病変の病勢の指標として利用可能なものもある。
●種類
・ 肝臓胆嚢疾患
・ 膵臓疾患
・ 消化管疾患
・ 腎疾患
・ 栄養障害
・ 膠原病:全身性強皮症、シェーグレン症候群、ベーチェット病、皮膚筋炎
・ 腫瘍随伴性:黒色表皮腫 acanthosis nigricans、Leser-Trelat徴候
【糖尿病の皮膚病変】
●種類
・ 糖尿病性浮腫性硬化症
・ 糖尿病性黄色腫:重症、コントロール不良DM
・ 糖尿病性壊疸 diabetic gangrene:糖尿病患者に見られる虚血性壊疽・難治性潰瘍であり、しばしば外傷を契機として足に好発する
・ 糖尿病性リポイド壊死症
【マラセチア毛包炎】
●検査と診断
・ パーカーインクKOH法:多数の円形の胞子が認められる。
・ 上記法+臨床所見で診断
●治療
・ イミダゾール系外用薬
・ 治りにくい場合にはイトラコナゾール内服
・ 清潔、洗浄、乾燥などのスキンケア
【湿疹】
① アトピー性皮膚炎:激しい掻痒、特徴的な皮疹・分布、慢性反復性経過
② 脂漏性皮膚炎:紅斑・落屑、掻痒は無いか軽度
③ 接触性皮膚炎:原因物質の接触部位に発現する掻痒を伴う水疱・紅斑・丘疹
④ 貨幣状湿疹:強い掻痒を伴う、四肢伸側・臀部・腰部の類円状湿疹。アトピー性のものが多い
⑤ 皮脂欠乏性湿疹:掻痒を伴う皮膚乾燥。冬に発症する。
⑥ うっ滞性皮膚炎:静脈瘤、掻痒あり
⑦ 手湿疹:掻痒なし、乾燥、皮剥け、水仕事で発症
⑧ 自家感作性皮膚炎:接触皮膚炎の悪化で全身に丘疹や点状紅斑・小水疱・小膿疱が散在
⑨ vidal苔癬:頸部・項部・腋窩・陰部に好発し、強い掻痒を伴う。掻痒が先行し、掻破によって苔癬化・色素脱失するが、掻破痕が見えない。
【熱傷初療】
① 意識状態の確認
② 気道確保
③ 重症度判定(年齢・熱傷範囲・熱傷深度・気道熱傷の有無)
④ 輸液と時間尿量計測
⑤ 破傷風予防と水疱などの処置
【皮膚非定型抗酸菌症】
● 病理所見:化膿性炎症と類上皮細胞性肉芽腫との混在した所見を得る.抗酸菌の検出は病理組織からは困難である
● 検査:培養
【移植皮膚の生着】
1~2日目は移植床の創面より漏出した血漿により栄養・湿潤状態が保持され、3~4日目で移植片と移植床の毛細血管が直接吻合、5~8日目に血行が再開することで生着する。
【シェーグレン症候群】
● 皮膚症状:線外症状のほうが多く認められる。
・ 最も特徴的なものは1~3cmくらいの環状紅斑。
・ 凍瘡様紅斑、虫刺症様紅斑、リール黒皮症様皮疹、結節性紅斑、高ガンマグロブリン血症性紫斑、じんま疹様紅斑など。
● 検査
・ シルマー試験、ガム試験涙液:唾液の分泌低下の有無
・ 口唇粘膜生検により小唾液腺を病理学的に調べる。
・ 皮膚病変がある場合は必要に応じて皮膚生検。
・ 血液検査:抗核抗体高値、リウマチ反応陽性、高ガンマグロブリン血症が認められた場合は、本症が強く疑われる。
・ 疾患に特徴的な自己抗体として抗SS―A/SS―B抗体がある。
【紫斑をきたす疾患】
*原因による分類
●血小板異常
・特発性血小板減少性紫斑 ITP
・二次性血小板減少・・・薬剤、放射線、感染、膠原病、骨髄疾患など。
● 凝固因子の異常
・血友病
・DIC
●血流異常
・ 高γグロブリン血症
・ クリオグロブリン血症性紫斑 cryoglobulinemia
●血管異常
a)血管支持組織の脆弱化
・老人性紫斑
・ ステロイド紫斑
b)先天性結合組織異常
・ Ehlers-Danlos症候群
c)血管炎
・ アナフィラクトイド紫斑
・ 多発性結節性動脈炎
d)血管内圧亢進
・機械的な紫斑
e)原因不明
●特発性色素性紫斑 idiopathic pigmentary purpura
・ シャンバーグ病
・ マジョッキー(マヨッキー)病
・ 紫斑性色素性苔癬様皮膚炎
【尋常性乾癬】
●症状
・ 赤い発疹とその上に白色の鱗屑を伴う発疹
・ 病変部は周りの皮膚よりすこし盛り上がった状態へ移行し、大きな紅色局面を形成(ハム様皮疹)
・ 頭皮、膝、肘など外部からの刺激が強い部分に出来やすいが、眼球と口唇以外ならば全身どこにでも発疹が出現する。
・ 爪の表面に発症した場合は変形して凹凸や穿孔、荒れ、爪乾癬と呼ぶ。
・ 強い発疹のわりには、他の皮膚疾患に比べて痒みが少ないことが多いとされている。
●病理検査:不全角化、表皮突起の延長、 Munro の微小膿瘍(角層内の好中球の浸潤が原因)が特徴的。
●治療:副腎皮質ステロイド外用剤・ビタミンD3誘導体外用剤、保湿剤も併用
・ 外用療法が奏効しない場合や関節炎を合併した場合は、内服による治療→ビタミンA誘導体(レチノイド)や免疫抑制剤
・UV(PUVA療法など)
・ ストレスを溜めない、日光浴、できるだけ怪我をしない
【菌状息肉症】
●病期
・紅斑期
淡紅色から紅褐色調の紅斑が多発し、軽度の落屑を伴う
湿疹・皮膚炎に類似する皮疹だが副腎皮質ステロイドに対する反応は不良
数年から十数年以上の年月を経て局面期に進展する
・局面期(扁平浸潤期)
紅色から紅褐色調で扁平に隆起し浸潤を触知する -画像-
不整多環状あるいは馬蹄形状などを呈し多少の落屑を伴う
数年の経過で腫瘤期に進展する
・腫瘤期
紅色から暗紅褐色でドーム状、茸状に隆起する弾性硬の結節 -画像-
進行するとびらん、潰瘍化する
早晩に内臓浸潤期に以降
・内臓浸潤期
リンパ節や肝臓、脾臓などへの浸潤を起こす
●治療
・紅斑期、局面期・・・副腎皮質ステロイド外用、PUVA療法、インターフェロンの全身投与または局所投与
・腫瘤期以降・・・放射線療法、多剤併用化学療法:CHOP療法など
【梅毒】
●第1期
感染後3週間~3ヶ月の状態。トレポネーマが侵入した部位(陰部、口唇部、口腔内)に無痛性の硬結(硬性下疳)。これはすぐ消えるが、稀に潰瘍となる。また、鼠径部のリンパ節が腫れ、これを横痃(おうげん)という。6週間を超えるとワッセルマン反応等の梅毒検査で陽性反応が出るようになる。
●第2期
感染後3ヶ月~3年の状態。全身のリンパ節が腫れる他に、発熱、倦怠感、関節痛などの症状がでる場合がある。
バラ疹と呼ばれる特徴的な全身性発疹が現れることがある。赤い目立つ発疹が手足の裏から全身に広がり、顔面にも現れる。特に手掌、足底に小さい紅斑が多発し、皮がめくれた場合は特徴的である。治療しなくても1か月で消失するが、抗生物質で治療しない限りトレポネーマは体内に残っている
●潜伏期
・前期潜伏期:第2期の症状が消えるとともに始まる。潜伏期が始まってからの2年から3年間は、第2期の症状を再発する場合がある。
・後期潜伏期:不顕感染の期間で数年から数十年経過する場合もあるが、この期間は感染力を持たない。
●第3期
感染後3~10年の状態。ゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生する。また、この状態になってしまうと治癒は不可能である。現在はみることは稀である。
●第4期
感染後10年以降の状態。多くの臓器に腫瘍が発生したり、脳、脊髄、神経を侵され麻痺性痴呆、脊髄瘻を起こし(脳梅)、死亡する。現在は稀である。
【メラノサイト系(神経堤起源細胞系)母斑】
① 扁平母斑 ②先天性 ③後天性(Becker母斑)・・・発毛が生じる。
④母斑細胞母斑 ⑤太田母斑 ⑥蒙古斑 mongolian spot
【太田母斑】
● 臨床所見
・黄色人種の思春期女子に好発する。
・三叉神経第1,2枝領域に片側性に褐青色斑が生じる。
・ 約半数の症例に眼球メラノーシスを伴う。
・ 自然消退しない。
・ 表皮基底細胞層のメラニン沈着と真皮メラノサイトの増加
●病理所見
・ メラニン顆粒のある細長い双極紡錘形の樹枝状メラノサイトが真皮浅層に散在し、表皮と平行に配列する。
・ 多数のメラノファージがある。
【蒙古斑】
● 臨床所見
・先天的に発生する幼児の、主に仙椎の部分の皮膚にでる薄青い灰色の母斑
・ 発疹の様に見え、通常3~5歳で消失。
・ 通常、所々に現れるか、一つの大きなものが、腰椎、仙椎、臀部、脇腹、肩に現れる。
● 病理所見
・メラニン顆粒のある細長い双極紡錘形のメラノサイトが真皮網状層だけでなく皮下脂肪織にもあり、メラノファージは伴わない。
【黄色ブドウ球菌毒素ETAの標的分子】
黄色ブドウ球菌により産生される剥脱性毒素A(ETA)は、膿痂疹における水疱や、全身型である熱傷様皮膚症候群を起こす。ETAがDsg1を分解する。おそらく水疱性膿痂疹では、黄色ブドウ球菌がデスモソームのタンパク質(Dsg1)を分解することにより、表皮の防壁を破壊し、増殖を容易にしている。
【スポロトリコーシス】
● 病態:真菌であるスポロトリックス・シェンキーが皮膚に感染して、慢性の結節や潰瘍性の病変を生じる。
● 原因 :原因菌のスポロトリックス・シェンキーは自然環境中に存在する菌で、日本では南の地方に多くみられる。自然環境中で、外傷により菌が侵入して発症する。したがって、住んでいる場所、年齢(外傷を受けやすい小児に多い)、成人では、職業(農作業に従事するなど)や趣味などが関係する。好発部位は、露出しやすい顔面や手から前腕など。晩秋から冬にかけて多くみられる
● 症状:リンパ管型と固定型。
・ リンパ管・・・手や指などの外傷部位に腫瘍あるいは肉芽腫状に盛り上がり、潰瘍を伴う結節が原発巣として生じ、そのあとリンパ管沿いに結節状の転移巣を示す。
・ 固定型は顔面に多く、リンパ管を介しての転移は認められず、肉芽腫性結節を示す。
● 検査と診断 :真菌学的検査、病理組織学的検査、皮膚反応など
・ 真菌学的検査・・・直接鏡検と培養検査があり、直接鏡検は病変の一部を採取して顕微鏡で調べる。しかし、白癬やカンジダ症に比べて菌は見つけにくい。培養検査では特徴的な菌の集落が生える。
・ 病理組織学的検査・・・一部の組織を培養検査に回すこともでき、最も確実な検査。病変の一部をメスなどで採取し、菌を検出したり、慢性肉芽腫像などで診断。
・ 皮膚反応(スポロトリキン反応)・・・菌の培養液でつくった抗原液を皮内反応させて48時間後に判定。特異性が高く、診断に有用。
● 治療:内服療法、温熱療法、手術療法など
・ 内服療法・・・イトラコナゾール(イトリゾール)、ヨードカリ、テルビナフィン(ラミシール)など。2~3カ月の治療が必要。
・ 温熱療法ではハッキンカイロなどで温める方法が最も多く行われる。
【植皮】
● 分層植皮術:真皮の厚さで3つに分類される。一般的に薄く採るほど生着もよく採皮部の上皮化も早いが、移植部位は外力に弱く、拘縮・色素沈着を起こしやすい。採皮部には面状の跡が残る。
● 全層植皮術:表皮と真皮を全て移植する方法。採皮創は縫縮するか分層植皮をおこなって閉鎖する。移植した皮膚の性質は時間を経過しても、移植部位周囲の皮膚の性質に近づくことはあり得ない。
● 直接縫合or分層植皮で閉鎖の理由
分層植皮片採取後の創面は毛包・汗腺の細胞によって再上皮化する。全層植皮では真皮まですべて剥離するため毛包・汗腺が残存しない。したがって、植皮片採取後は放置しても再上皮化が起こらない。そのため、直接縫合して創面を閉じるか、分層植皮で閉鎖する必要が有る。
<皮膚の上皮性悪性腫瘍>
①有棘細胞癌 squamous cell carcinoma,SCC
・好発部位:手背や顔面などの露光部
・ 症状:表面が角質や痂皮で覆われた硬い結節で、しばしば壊死・潰瘍化して異臭を放つ。ときに表面はカリフラワー状あるいは肉芽様の外観を呈する。
・ 病理所見:癌真珠形成・個細胞角化
②基底細胞癌 basal cell carcinoma,BCC
・ 症状:ほとんどが顔面正中部に黒褐色の腫瘤を形成し、ロウ様光沢を有する。しばしば中央に浅い潰瘍形成をみる点が色素性母斑との鑑別点となる。黒色を呈するのはメラノサイトの色素伝達障害を伴うのでメラノサイト内に多量のメラニン顆粒が蓄積するためである。なお白人では色素沈着を欠く。
・ pearly border:病巣辺縁部に灰黒色の小結節が病巣を縁どるように配列する。
・ 病理所見:腫瘍細胞は基底細胞に類似し、胞巣や索状構造を形成する。胞巣辺縁部で柵状構造 palisading を示す
③ボーエン病:
・ 類円形の鱗屑や痂皮を付着する紅斑局面のことが多く、びらんや潰瘍を伴うこともある。
・ 表皮内に限局して癌が生じたもので、進行すると有棘細胞癌になる。
・ 治療は手術、放射線など。
・ 症状:典型的な場合は徐々に拡大する、境界鮮明な、形は不整型の紅斑で、皮がめくれたり(鱗屑、scales)、かさぶた(crusts)を伴う。
・ 白人の場合は紅斑であるが、有色民族の場合は褐色である。
・ 大人に発生し、とくに60歳以上の老人に発生する。
・ 日光による場合は露出部に発生するが、ヒ素やその他による場合は露出部もあるが、服に覆われている場所も好発部位である。
・ 症状は放置すれば不変の場合もあるが、通常拡大する。単発の場合もあるが、慢性ヒ素中毒の場合は広範囲の場合もある。
・ 病理組織:表皮にとどまった有棘細胞癌である。組織学的に不規則な有棘細胞が表皮全層にみられる。表皮を超えての不規則の細胞の進行はない。表皮突起の幅の拡大、細胞配列の乱れ、核の大小不同があり、特に多核巨細胞(clumping cell)や異角化細胞が混在する。基底膜は乱れない、外陰・下腹に好発。単発、横に広がる。多彩な局面。
・ 組織=lyn↑↑。基底層付近で↑。『こん棒状表皮肥厚』示す。表面は角化↑↑。異型細胞増加
④乳房Paget病 ⑤乳房外Paget病
・ 乳房や外陰部に生じる腺組織の癌。はじめは紅斑や色素斑で始まり、びらんを伴うこともある。
・ 湿疹や他の皮膚疾患と間違われることがあり要注意。
・ 初期は癌組織は表皮内に留まりパージェット病と呼ばれる。進行すると真皮に浸潤しパージェット癌となる。
・ 治療は手術が中心。
・ 外陰部の皮膚にできた場合は、乳房外パジェット病、乳房、主に乳首など乳頭部にできた場合は乳房パジェット病、骨にできる場合は骨パジェット病
・ 乳房外の場合、ほとんどは外陰に発生するので、外陰パジェット病(外陰ページェット病)とも呼ばれる
・ 体臭の元であるアポクリン汗腺の多い皮膚に出来るのが特徴的で、日本では女性よりも、男性の方が多く、欧米とは逆。
・ 原因は不明だが、体臭の元であるアポクリン汗腺の細胞が悪性化したものであるという説が有力。
・ 乳腺ももとは、アポクリン腺なので、乳房にもできる。
・ 乳房外パジェット病は、外陰部やわきの下などにできる。
・ 老人にできることがほとんどで、痛くもかゆくもない紅斑で始まり、何年もかけて少しずつ広がり、湿疹やカンジダ症とまちがえて放置してしまいがち。
・ 湿疹やカンジダの薬が効かない場合は、パジェット病の疑いがある。骨に出来ることは、日本では少ない。
・ 骨パジェット病では、骨の腫大・変形、疼痛などの症状がでるが、悪性化して骨肉腫になってしまうこともある。
・ 骨が変形すると、腰痛などの症状が出る。
・ 病理組織:Paget細胞の存在-Paget細胞はムコ多糖を含有し、alcian blue染色やPAS染色で細胞質が陽性所見を示す
・ 乳房: 乳腺の排出管細胞由来CA。PAS(+)。 表皮内に明るくでかいcell。CEA(+)。表皮内に浸潤性増殖。経過長い。境界明瞭。横にはって浸潤、op面積大きい。
・ 乳房外: アポクリン腺、肛門粘膜杯細胞。 表皮cellより前CA状態。
● 乳房Paget病
・ 乳房、主に乳首など乳頭部にできる。はじめは紅斑や色素斑で始まり、びらんを伴う
・ 初期は癌組織は表皮内に留まり進行すると真皮に浸潤
・ 病理組織:Paget細胞の存在-Paget細胞はムコ多糖を含有し、alcian blue染色やPAS染色で細胞質が陽性所見を示す
・ 乳腺の排出管細胞由来CA。PAS(+)。 表皮内に明るくでかいcell。CEA(+)。表皮内に浸潤性増殖。経過長い。境界明瞭。横にはって浸潤、op面積大きい。
●乳房外Paget病
・ 外陰部や腋窩などにできる
・ 皮膚症状は乳房Pagetと同じ
・ アポクリン腺、肛門粘膜杯細胞。 表皮cellより前CA状態。
<皮膚筋炎の皮膚症状>
① 両側あるいは片側の眼瞼部の紫紅色の腫れぼったい皮疹(ヘリオトロープ疹)
② 手指関節背面の皮が剥けた紫紅色の皮疹(ゴットロン徴候)
③ 肘や膝などの関節の背面の少し隆起した紫紅色の皮疹
④ 前頚部~上胸部(V徴候)、肩・上背部(ショール徴候)に紅斑
⑤ 手足の伸側の多形皮膚萎縮症poikiloderma(色素沈着、脱失、萎縮が混在した局面)
⑥ 爪郭の血管拡張・点状出血 ⑦湿疹様、じん麻疹様発疹など ⑧レイノー現象(軽度)
<水疱性膿痂疹>
・ 黄色ブドウ球菌が原因:ブドウ球菌性膿痂疹=水疱性膿痂疹、標的分子はDsg1
・ 病態:皮膚の浅い部分に感染し、菌がつくる表皮剥脱素という毒素によって水疱あるいは膿疱をつくる化膿性の病気
・ 虫刺され、湿疹などの引っかき傷、あるいは小さいけがなどのところに膜の薄い水疱ができる。
・ 水疱内の液は次第にうみのように濁って、簡単にびらんとなり、すぐに痂皮ができて手でかいているうちに周辺だけでなく他の部分にも広がり、“飛び火”する。軽いかゆみがあるが、熱は出ない。
・ 黄色ブドウ球菌によく効く抗菌薬を3~4日間内服。痂皮が取れるまで抗生剤、ステロイド軟膏
・ 治るまでは、シャワー浴がよく、痂皮や分泌物をよく洗い落とし、そのあとで軟膏療法を繰り返す。
・ 病理組織像:角層下ないし顆粒層レベルに単房性水疱を形成し、中に棘融解細胞、多核白血球、細菌が混在する。表皮内・真皮浅層血管周囲にも多核白血球の軽度の浸潤をみる。
<葉状魚鱗癬>
・ 常染色体劣性遺伝形式をとり、生まれたときより発症する。
・ 生まれたとき、菱形にめくれた皮膚が道化師風であるため、「道化師様胎児(collodion baby、Harlequin disease)」と呼ばれることがある。
・ 原因遺伝子: transglutaminase 1、その他
・ 病態: transglutaminase 1活性低下により辺縁帯形成が障害される。
・ 臨床像: コロジオン児として出生し、その後全身が鱗屑で覆われる。眼瞼や口唇の外反を伴うことがある。またはハロキン児(落葉性魚鱗癬、葉状魚鱗癬)
・ 概念=非水泡型先天性魚鱗様紅皮症 のひとつで、角質の異常はない
・ 細胞同士を接着する分子の異常で剥離遅延し、角膜混濁、 精神異常・骨変化伴う。
・ 臨床所見:潮紅,細かい鱗屑∼暗褐色,大きな鱗屑(葉状魚鱗癬)
・ 病理組織:角質肥厚(不全角化を伴うものと伴わないものがある。)
・ およそ半数の症例はトランスグルタミナーゼの欠損により発症するが,活性が正常な症例もあり病因的にも多様な疾患である.
・ 非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症と比べると臨床的に著しく粗大,暗褐色,板状,葉状の大きな鱗屑がみられる点が異なっている.しかし,両者の中間型もみられる.
・ 臨床症状に加え,トランスグルタミナーゼ活性の欠損を同定できれば確定診断される
・ 葉状魚鱗癬では,レチノイド外用(0.1%トレチノインクリーム)または内服(イソトレチノイン)が効果的なこともある。
・ イソトレチノインの内服で長期に(1年)治療すると,一部の患者で外骨腫を来し,それ以外にも長期使用による副作用の生じることがある。(注意:レチノイドの内服は催奇形性のため妊娠時は禁忌であり,アシトレチンは催奇形性があり半減期が長いため,妊娠の可能性がある女性での使用を避けるべきである。)
・ どの魚鱗癬でも,入浴またはシャワーを最小限にとどめることが有用である。セッケンは,間擦部位の使用のみにとどめるべきである。吸収と毒性が増加するので,ヘキサクロロフェン製剤は使用すべきでない。皮膚軟化剤―ワセリン単独,鉱物油,尿素またはα-ヒドロキシ酸(例,乳酸,グリコール酸,ピルビン酸)を含むローションが望ましい―を1日2回,特に入浴後まだ皮膚が湿っている間に塗布する。
<カポジ水痘様発疹症>
・単純疱疹が経皮的に拡大し広範囲に病変を引き起こす疾患。
● 原因
・ 単純ヘルペスウイルスI型による。疲労やストレスが遠因となることがある。
・ 掻くことによって広がるためアトピー性皮膚炎の患者などに多くみられる。
● 症状
・通常は発熱、有痛性リンパ節腫脹と疼痛を伴う水疱が形成される。
・ 早期に治療をすれば、発疹の範囲が広がらずに済むことがある
・ 広範囲にわたる発疹が見られた場合は、入院治療が適切となる。痒みは個人差あり
・ 痒みよりも疼痛の症状が強い。 発疹が沈静して痂皮が出来てくると、痒みが生じる場合がある。
・ 痂皮が自然に剥がれて快癒に向かうと、顔面に発疹が出た場合は、傷跡の一時的な色素沈着により、そばかすのようになるが、徐々に消えていく。顔面以外も同様である。
●検査
・ Tzank試験: 水疱液をギムザ染色し、ウイルス性巨細胞が検出する検査
・ 血清抗体の検出: EIA法など
・ ウイルス抗原の検出: モノクローナル抗体を使用
・ PCR法: HSV-DNAの検出
・ ウイルス分離: 水疱内容液からVero細胞などに接種して分離する方法
●治療
・ アシクロビルまたはバラシクロビルを投与する。
・ 入院治療の場合は、水痘に罹患していない患者からは隔離されることが多い。
・ 家庭内で水痘に罹患していない家族がいる場合は、ワクチンを接種するなどの措置をとるべき。
・ ただし、一歳未満の乳児に関してはワクチン接種は禁止されているので、一時的に患者から隔離する必要がある。
● 病理組織学的所見
・ 弱拡大像では表皮の肥厚、表皮突起の不規則な延長と痂皮
・ 強拡大像では真皮浅層にリンパ球と好中球の浸潤。
<多型滲出紅斑>
● 所見
・ やや隆起する 10 mm 大ほどの特徴的な環状浮腫性紅斑が手背や関節部伸側などに,左右対称性に多発.
・ 若年女性に多い.
・ 感染症(とくに単純ヘルペスウイルス,肺炎マイコプラズマ)や薬剤に対する免疫アレルギーが主な病因.
・ ステロイド外用および内服により改善するが再発も多い
●病理組織
・ リンパ球の浸潤や表皮細胞の HLA-DR 抗原や ICAM-1 の発現がみられる
・ 表皮型,真皮型,混合型の 3 型に分類されるが生検部位による差異ともいわれている.
・ 真皮型は存在しないという考え方もある.
・ 表皮型では表皮細胞の個細胞壊死や表皮下水疱などを呈する
●診断:皮疹の性状および分布
<Stevens-Johnson(スティーブンス・ジョンソン)症候群 Stevens-Johnson syndrome>
・ 多形紅斑に加え,粘膜,眼病変を有し,発熱や関節痛など全身症状を伴う.
・ 中毒性表皮壊死症(TEN)に発展する場合がある.
・ 治療としてステロイドの全身投与,ときにステロイドパルス.症状に応じた全身管理を行う
・ 表皮を中心とする変性壊死を認め,基底部の液状変性や真皮浮腫も観察される
● 診断:皮膚粘膜移行部の重篤な粘膜病変、全身の紅斑,水疱,びらん,全身症状に加え,皮膚の迅速病理検査にて表皮の壊死性変化が認められれば Stevens-Johnson 症候群の診断は可能
● 症状
・主に口の中、眼、腟などの粘膜に水疱が生じ、発疹が集まった部分ができる。
・ 中毒性表皮壊死症でも粘膜に同様の水疱ができるが、スティーブンス‐ジョンソン症候群ではさらに、皮膚の最も外側に位置する表皮が、体の広い範囲で大きくはがれる。
・ スティーブンス-ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死剥離症(TEN)は分布を除けば臨床的に類似している。広く承認されている定義によれば,変化が体表面積の10%未満ならSJSで,30%を超えればTENである;体表面積の15~30%が罹患していればSJS-TENのオーバーラップと考える。
<KOH法>
本法は、15~20%苛性カリ(KOH)溶液で角層など、生体の蛋白質を水解し、その中に増殖している真菌の菌要素、虫体、虫卵、細菌の塊状物、さらにはそれらの破壊物など(これらの物質は原則として水解を受けない)を検出する方法である。本法は、感染症の証明法としては、Kochの第一条件に過ぎないが、日常の皮膚科診療
ではこれのみで診断学的に十分な疾患が多い。いずれにせよ、本法は迅速(5分以内)かつ簡単を身上としており、皮膚科の診療には1日たりとも欠かすことができない検査法である。
<Tzanck試験>:出現した水疱の水疱液を抽出し発疹の塗抹標本をアセトンで固定後ギムザ染色を行い、細胞診により、巨細胞を検出する検査
・天疱瘡:水疱底の細胞をギムザ染色で検鏡すると棘融解細胞がみられる(Tzanck細胞)
・ウイルス性皮膚疾患:水疱の細胞診でウイルス性球状変性表皮細胞の証明
<パッチテスト>:主に背中か上腕で行い、パッチテストユニットは2日間貼ったままにする.その間に検査試薬が皮膚にしみ込み、2日後にパッチテストユニットをはがし、 皮膚の反応を判定する。パッチテストによりアレルギーの原因(アレルゲン)を見つけ出す。
<SLE診断基準>
1.顔面(頬部)紅斑
2.円板状皮疹(ディスコイド疹)
3.光線過敏症
4.口腔潰瘍(無痛性で口腔あるいは鼻咽喉に出現)
5.非びらん性関節炎(2関節以上)
6.漿膜炎 :a)胸膜炎、または、b)心膜炎
7.腎障害:a)0.5g/日以上または+++以上の持続性蛋白尿、または、b)細胞性円柱
8.神経障害 :a)けいれん、または、b)精神障害
9.血液異常:a)溶血性貧血、b)白血球減少症(<4000/μl)
c)リンパ球減少症(<1500/μl)、または、d)血小板減少症(<100,000/μl)
10.免疫異常:a)抗二本鎖DNA抗体陽性、b)抗Sm抗体陽性、または、c)抗リン脂質抗体陽性
1)IgGまたはIgM抗カルジオリピン抗体の異常値、
2)ループス抗凝固因子陽性、
3)梅毒血清反応生物学的偽陽性、のいずれかによる
11.抗核抗体陽性
上記項目4項目以上を満たす場合全身性エリテマトーデスと診断する
<ブドウ球菌性熱傷性様皮膚症候群SSSS>
●機序・定義
・標的分子:デスモグレイン1
・ 病態ブドウ球菌の外毒素 exfoliative toxin が血流に侵入して生じる全身性反応で、皮膚顆粒層の細胞解離、壊死による皮膚の水疱性、びらん性疾患
● 症状
・感冒症状・微熱後に、目・鼻・口の発赤・びらん・痂皮。眼脂。口周囲の痂皮に放射状亀裂。
・ 頚部、腋窩、肘窩、鼠径部、膝窩に猩紅熱様の紅斑が出現し、接触痛を伴うため身体に触れられるのを嫌がる。
・ 半数弱はニコルスキー現象陽性。ニコルスキー現象は年少者ほど著明で、軽症では認められない。
・ 生後1ヵ月以内の新生児が発症したときにはリッター新生児剥脱性皮膚炎と呼ばれ、重症である。
・ 約10日後に全身の紅斑は消失、頚部より手足に向かって皮膚がむけはじめ(こぬか様落屑)、3~4週で治癒する。
・ 経過中に脱水、食欲不振など全身症状もみられる。
●皮膚細菌培養
・小児では,皮膚の培養が陽性になることはまれ。成人では,陽性であることが多い。
●治療
1.年齢が幼いほど重篤である。原則として入院、全身管理、輸液を行う。
2.抗生物質の全身投与:抗生物質の感受性を知るため初期に原因菌の培養を眼脂、皮膚、咽頭などから行い、黄色ブドウ球菌に感受性のある薬剤を点滴静注する。有名なメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA、後述)が起因菌の場合には注意が必要。
3. 熱傷処置と同様の局所処置を行う。
4. 解熱したらシャワー、入浴などで皮膚を清潔にする。
<最小紅斑量 MED>:UVB照射24時間後に紅斑を来たすのに必要な最小の光線量。低下は光線過敏症を示唆する。UVA,UVBを照射する。
ダイジェストとか言ってもめちゃめちゃ長いんで、PCからの閲覧をお薦めします。
旧版は授業プリントと矛盾する記載が多かったので削除しました。
12/13追加編集(有棘細胞癌好発部位、MED測定方法)
【内臓悪性腫瘍を効率に合併する皮膚疾患】
① 皮膚筋炎
② 黒色表皮腫
③ Sweet病
④ Leser-Trelat徴候
⑤ 自己免疫性水疱症
・ 腫瘍随伴性天疱瘡
・ 水疱性類天疱瘡
⑥角化性病変
・ 後天性禦鱗癬
・ Bazex症候群
⑦環状紅斑
・ 葡行性迂回状紅斑
・ 壊死性遊走性紅斑
・ 遠心性環状紅斑
⑧後天性毳毛性多毛症
⑨血栓性静脈炎
⑩汎発性帯状疱疹
【黒色表皮腫】
乳房下部、腋窩、項部、頸部、肘窩、膝窩、肛囲などに皮膚の色素沈着(黒褐色のことが多い)、角質の増殖をきたし、皮疹が先行する場合と、同時に発生する場合の両方がある。
【Sweet病】
・ 好中球浸潤性紅斑
・ 上気道感染を起こした後に四肢、顔面に暗赤色の隆起局面が単発、多発
【Leser-Trelat徴候】
老人性疣贅や脂漏性角化症が数ヵ月以内に急速にその数と大きさを増すもの
【腫瘍随伴性天疱瘡】paraneoplastic pemphigus
・ 悪性腫瘍に伴って生じる自己免疫性水疱症、血液系悪性腫瘍の合併が多い。
・ 尋常性天疱瘡と同様に難治性びらん、潰瘍病変などの口腔を主とする粘膜疹と水疱、びらんなどの皮疹を主症状
・ 皮疹は多形滲出性紅斑様ないし扁平苔癬様皮疹を呈することもある。
・ 掌蹠にも皮疹が存在することが多く、尋常性天疱瘡との鑑別に役立つ。
・ 水疱性類天疱瘡にも悪性腫瘍の合併が多いという報告がある。
【後天性魚鱗癬】
・ 魚のうろこ様の鱗屑を主症状とし、四肢伸側に特に強く現れる。
・ 先天性魚鱗癬と異なり遺伝性がなく、中年以降に発症する。
・ リンパ球性悪性増殖疾患の合併が多いが、甲状腺機能低下症、Hansen病や慢性腎不全などの非腫瘍性疾患でも起こりうる。
【Bazex症候群】
・ 鼻、耳、指趾の角化性紅斑と爪の変化で発症し、頬部、肘、膝、さらに体幹に拡大する。
・ 呼吸器の扁平上皮癌を高率に合併し、その多くは頸部リンパ節転移例。
【葡行性迂回状紅斑】erthema gyratum repens
・ 浸潤性紅斑が遠心性に拡大し、環状紅斑を形成しつつ木目状の外観を呈す。
・ ほぼ全例で悪性腫瘍を合併し、その中でも肺癌が多いといわれている。
【壊死性遊走性紅斑】necrolytic migratory erythema
・ 皮疹は顔面、会陰部、外陰部、頚骨部や足の容易に破れる小水疱や膿疱からなり、環状を呈することが多く、舌炎、口唇炎も伴う。
・ グルカゴン酸性腫瘍などで血中グルカゴンが増加した状態のほか、アミノ酸摂取不良でも生じる。
【遠心性環状紅斑】erythema annulare centrifugum
・悪性腫瘍合併の報告があるが、頻度は高くない。
【後天性毳毛性多毛症】hypertrichosis lanuginosa acquisita,malignant dwon
・ 胎生期毛(いわゆるうぶ毛)様の毛が多発する状態で、顔面、特に耳から始まり全身に拡大する。
・ 有痛性の舌炎を伴い、肺癌の合併の報告が多い。
【表在静脈の血栓性静脈炎】
・ 発赤を伴った有痛性皮下硬結で、しばしば索状となる。
・ Behcet病、Buerger病、妊娠や経口避妊薬内服など種々の原因により生じるが、悪性腫瘍に伴う場合は膵癌が多く、遊走性、再発性のことが多い。
【汎発性帯状疱疹】
・ 通常の帯状疱疹と異なり、全身に小水疱が散布される。
・ 悪性リンパ腫や白血病の合併頻度が高く、特にその末期に多い。
・ その他に難治性の皮膚瘙痒症が消化器腫瘍、悪性リンパ腫、骨髄腫、多血症などに、紅皮症が悪性リンパ腫に伴って現れることがあると報告されている。
【デルマドローム】
全身疾患の部分症として現れる皮膚病変の中で、内臓病変に伴って現れるものをデルマドロームdermadromeという。内臓病変に特異的な病変を直接デルマドローム、非特異的なものを間接デルマドロームという。これらの皮膚病変から特定の内臓病変の存在を推察でき、それらを発見するための重要な情報となる。さらに、その中には内臓病変の病勢の指標として利用可能なものもある。
●種類
・ 肝臓胆嚢疾患
・ 膵臓疾患
・ 消化管疾患
・ 腎疾患
・ 栄養障害
・ 膠原病:全身性強皮症、シェーグレン症候群、ベーチェット病、皮膚筋炎
・ 腫瘍随伴性:黒色表皮腫 acanthosis nigricans、Leser-Trelat徴候
【糖尿病の皮膚病変】
●種類
・ 糖尿病性浮腫性硬化症
・ 糖尿病性黄色腫:重症、コントロール不良DM
・ 糖尿病性壊疸 diabetic gangrene:糖尿病患者に見られる虚血性壊疽・難治性潰瘍であり、しばしば外傷を契機として足に好発する
・ 糖尿病性リポイド壊死症
【マラセチア毛包炎】
●検査と診断
・ パーカーインクKOH法:多数の円形の胞子が認められる。
・ 上記法+臨床所見で診断
●治療
・ イミダゾール系外用薬
・ 治りにくい場合にはイトラコナゾール内服
・ 清潔、洗浄、乾燥などのスキンケア
【湿疹】
① アトピー性皮膚炎:激しい掻痒、特徴的な皮疹・分布、慢性反復性経過
② 脂漏性皮膚炎:紅斑・落屑、掻痒は無いか軽度
③ 接触性皮膚炎:原因物質の接触部位に発現する掻痒を伴う水疱・紅斑・丘疹
④ 貨幣状湿疹:強い掻痒を伴う、四肢伸側・臀部・腰部の類円状湿疹。アトピー性のものが多い
⑤ 皮脂欠乏性湿疹:掻痒を伴う皮膚乾燥。冬に発症する。
⑥ うっ滞性皮膚炎:静脈瘤、掻痒あり
⑦ 手湿疹:掻痒なし、乾燥、皮剥け、水仕事で発症
⑧ 自家感作性皮膚炎:接触皮膚炎の悪化で全身に丘疹や点状紅斑・小水疱・小膿疱が散在
⑨ vidal苔癬:頸部・項部・腋窩・陰部に好発し、強い掻痒を伴う。掻痒が先行し、掻破によって苔癬化・色素脱失するが、掻破痕が見えない。
【熱傷初療】
① 意識状態の確認
② 気道確保
③ 重症度判定(年齢・熱傷範囲・熱傷深度・気道熱傷の有無)
④ 輸液と時間尿量計測
⑤ 破傷風予防と水疱などの処置
【皮膚非定型抗酸菌症】
● 病理所見:化膿性炎症と類上皮細胞性肉芽腫との混在した所見を得る.抗酸菌の検出は病理組織からは困難である
● 検査:培養
【移植皮膚の生着】
1~2日目は移植床の創面より漏出した血漿により栄養・湿潤状態が保持され、3~4日目で移植片と移植床の毛細血管が直接吻合、5~8日目に血行が再開することで生着する。
【シェーグレン症候群】
● 皮膚症状:線外症状のほうが多く認められる。
・ 最も特徴的なものは1~3cmくらいの環状紅斑。
・ 凍瘡様紅斑、虫刺症様紅斑、リール黒皮症様皮疹、結節性紅斑、高ガンマグロブリン血症性紫斑、じんま疹様紅斑など。
● 検査
・ シルマー試験、ガム試験涙液:唾液の分泌低下の有無
・ 口唇粘膜生検により小唾液腺を病理学的に調べる。
・ 皮膚病変がある場合は必要に応じて皮膚生検。
・ 血液検査:抗核抗体高値、リウマチ反応陽性、高ガンマグロブリン血症が認められた場合は、本症が強く疑われる。
・ 疾患に特徴的な自己抗体として抗SS―A/SS―B抗体がある。
【紫斑をきたす疾患】
*原因による分類
●血小板異常
・特発性血小板減少性紫斑 ITP
・二次性血小板減少・・・薬剤、放射線、感染、膠原病、骨髄疾患など。
● 凝固因子の異常
・血友病
・DIC
●血流異常
・ 高γグロブリン血症
・ クリオグロブリン血症性紫斑 cryoglobulinemia
●血管異常
a)血管支持組織の脆弱化
・老人性紫斑
・ ステロイド紫斑
b)先天性結合組織異常
・ Ehlers-Danlos症候群
c)血管炎
・ アナフィラクトイド紫斑
・ 多発性結節性動脈炎
d)血管内圧亢進
・機械的な紫斑
e)原因不明
●特発性色素性紫斑 idiopathic pigmentary purpura
・ シャンバーグ病
・ マジョッキー(マヨッキー)病
・ 紫斑性色素性苔癬様皮膚炎
【尋常性乾癬】
●症状
・ 赤い発疹とその上に白色の鱗屑を伴う発疹
・ 病変部は周りの皮膚よりすこし盛り上がった状態へ移行し、大きな紅色局面を形成(ハム様皮疹)
・ 頭皮、膝、肘など外部からの刺激が強い部分に出来やすいが、眼球と口唇以外ならば全身どこにでも発疹が出現する。
・ 爪の表面に発症した場合は変形して凹凸や穿孔、荒れ、爪乾癬と呼ぶ。
・ 強い発疹のわりには、他の皮膚疾患に比べて痒みが少ないことが多いとされている。
●病理検査:不全角化、表皮突起の延長、 Munro の微小膿瘍(角層内の好中球の浸潤が原因)が特徴的。
●治療:副腎皮質ステロイド外用剤・ビタミンD3誘導体外用剤、保湿剤も併用
・ 外用療法が奏効しない場合や関節炎を合併した場合は、内服による治療→ビタミンA誘導体(レチノイド)や免疫抑制剤
・UV(PUVA療法など)
・ ストレスを溜めない、日光浴、できるだけ怪我をしない
【菌状息肉症】
●病期
・紅斑期
淡紅色から紅褐色調の紅斑が多発し、軽度の落屑を伴う
湿疹・皮膚炎に類似する皮疹だが副腎皮質ステロイドに対する反応は不良
数年から十数年以上の年月を経て局面期に進展する
・局面期(扁平浸潤期)
紅色から紅褐色調で扁平に隆起し浸潤を触知する -画像-
不整多環状あるいは馬蹄形状などを呈し多少の落屑を伴う
数年の経過で腫瘤期に進展する
・腫瘤期
紅色から暗紅褐色でドーム状、茸状に隆起する弾性硬の結節 -画像-
進行するとびらん、潰瘍化する
早晩に内臓浸潤期に以降
・内臓浸潤期
リンパ節や肝臓、脾臓などへの浸潤を起こす
●治療
・紅斑期、局面期・・・副腎皮質ステロイド外用、PUVA療法、インターフェロンの全身投与または局所投与
・腫瘤期以降・・・放射線療法、多剤併用化学療法:CHOP療法など
【梅毒】
●第1期
感染後3週間~3ヶ月の状態。トレポネーマが侵入した部位(陰部、口唇部、口腔内)に無痛性の硬結(硬性下疳)。これはすぐ消えるが、稀に潰瘍となる。また、鼠径部のリンパ節が腫れ、これを横痃(おうげん)という。6週間を超えるとワッセルマン反応等の梅毒検査で陽性反応が出るようになる。
●第2期
感染後3ヶ月~3年の状態。全身のリンパ節が腫れる他に、発熱、倦怠感、関節痛などの症状がでる場合がある。
バラ疹と呼ばれる特徴的な全身性発疹が現れることがある。赤い目立つ発疹が手足の裏から全身に広がり、顔面にも現れる。特に手掌、足底に小さい紅斑が多発し、皮がめくれた場合は特徴的である。治療しなくても1か月で消失するが、抗生物質で治療しない限りトレポネーマは体内に残っている
●潜伏期
・前期潜伏期:第2期の症状が消えるとともに始まる。潜伏期が始まってからの2年から3年間は、第2期の症状を再発する場合がある。
・後期潜伏期:不顕感染の期間で数年から数十年経過する場合もあるが、この期間は感染力を持たない。
●第3期
感染後3~10年の状態。ゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生する。また、この状態になってしまうと治癒は不可能である。現在はみることは稀である。
●第4期
感染後10年以降の状態。多くの臓器に腫瘍が発生したり、脳、脊髄、神経を侵され麻痺性痴呆、脊髄瘻を起こし(脳梅)、死亡する。現在は稀である。
【メラノサイト系(神経堤起源細胞系)母斑】
① 扁平母斑 ②先天性 ③後天性(Becker母斑)・・・発毛が生じる。
④母斑細胞母斑 ⑤太田母斑 ⑥蒙古斑 mongolian spot
【太田母斑】
● 臨床所見
・黄色人種の思春期女子に好発する。
・三叉神経第1,2枝領域に片側性に褐青色斑が生じる。
・ 約半数の症例に眼球メラノーシスを伴う。
・ 自然消退しない。
・ 表皮基底細胞層のメラニン沈着と真皮メラノサイトの増加
●病理所見
・ メラニン顆粒のある細長い双極紡錘形の樹枝状メラノサイトが真皮浅層に散在し、表皮と平行に配列する。
・ 多数のメラノファージがある。
【蒙古斑】
● 臨床所見
・先天的に発生する幼児の、主に仙椎の部分の皮膚にでる薄青い灰色の母斑
・ 発疹の様に見え、通常3~5歳で消失。
・ 通常、所々に現れるか、一つの大きなものが、腰椎、仙椎、臀部、脇腹、肩に現れる。
● 病理所見
・メラニン顆粒のある細長い双極紡錘形のメラノサイトが真皮網状層だけでなく皮下脂肪織にもあり、メラノファージは伴わない。
【黄色ブドウ球菌毒素ETAの標的分子】
黄色ブドウ球菌により産生される剥脱性毒素A(ETA)は、膿痂疹における水疱や、全身型である熱傷様皮膚症候群を起こす。ETAがDsg1を分解する。おそらく水疱性膿痂疹では、黄色ブドウ球菌がデスモソームのタンパク質(Dsg1)を分解することにより、表皮の防壁を破壊し、増殖を容易にしている。
【スポロトリコーシス】
● 病態:真菌であるスポロトリックス・シェンキーが皮膚に感染して、慢性の結節や潰瘍性の病変を生じる。
● 原因 :原因菌のスポロトリックス・シェンキーは自然環境中に存在する菌で、日本では南の地方に多くみられる。自然環境中で、外傷により菌が侵入して発症する。したがって、住んでいる場所、年齢(外傷を受けやすい小児に多い)、成人では、職業(農作業に従事するなど)や趣味などが関係する。好発部位は、露出しやすい顔面や手から前腕など。晩秋から冬にかけて多くみられる
● 症状:リンパ管型と固定型。
・ リンパ管・・・手や指などの外傷部位に腫瘍あるいは肉芽腫状に盛り上がり、潰瘍を伴う結節が原発巣として生じ、そのあとリンパ管沿いに結節状の転移巣を示す。
・ 固定型は顔面に多く、リンパ管を介しての転移は認められず、肉芽腫性結節を示す。
● 検査と診断 :真菌学的検査、病理組織学的検査、皮膚反応など
・ 真菌学的検査・・・直接鏡検と培養検査があり、直接鏡検は病変の一部を採取して顕微鏡で調べる。しかし、白癬やカンジダ症に比べて菌は見つけにくい。培養検査では特徴的な菌の集落が生える。
・ 病理組織学的検査・・・一部の組織を培養検査に回すこともでき、最も確実な検査。病変の一部をメスなどで採取し、菌を検出したり、慢性肉芽腫像などで診断。
・ 皮膚反応(スポロトリキン反応)・・・菌の培養液でつくった抗原液を皮内反応させて48時間後に判定。特異性が高く、診断に有用。
● 治療:内服療法、温熱療法、手術療法など
・ 内服療法・・・イトラコナゾール(イトリゾール)、ヨードカリ、テルビナフィン(ラミシール)など。2~3カ月の治療が必要。
・ 温熱療法ではハッキンカイロなどで温める方法が最も多く行われる。
【植皮】
● 分層植皮術:真皮の厚さで3つに分類される。一般的に薄く採るほど生着もよく採皮部の上皮化も早いが、移植部位は外力に弱く、拘縮・色素沈着を起こしやすい。採皮部には面状の跡が残る。
● 全層植皮術:表皮と真皮を全て移植する方法。採皮創は縫縮するか分層植皮をおこなって閉鎖する。移植した皮膚の性質は時間を経過しても、移植部位周囲の皮膚の性質に近づくことはあり得ない。
● 直接縫合or分層植皮で閉鎖の理由
分層植皮片採取後の創面は毛包・汗腺の細胞によって再上皮化する。全層植皮では真皮まですべて剥離するため毛包・汗腺が残存しない。したがって、植皮片採取後は放置しても再上皮化が起こらない。そのため、直接縫合して創面を閉じるか、分層植皮で閉鎖する必要が有る。
<皮膚の上皮性悪性腫瘍>
①有棘細胞癌 squamous cell carcinoma,SCC
・好発部位:手背や顔面などの露光部
・ 症状:表面が角質や痂皮で覆われた硬い結節で、しばしば壊死・潰瘍化して異臭を放つ。ときに表面はカリフラワー状あるいは肉芽様の外観を呈する。
・ 病理所見:癌真珠形成・個細胞角化
②基底細胞癌 basal cell carcinoma,BCC
・ 症状:ほとんどが顔面正中部に黒褐色の腫瘤を形成し、ロウ様光沢を有する。しばしば中央に浅い潰瘍形成をみる点が色素性母斑との鑑別点となる。黒色を呈するのはメラノサイトの色素伝達障害を伴うのでメラノサイト内に多量のメラニン顆粒が蓄積するためである。なお白人では色素沈着を欠く。
・ pearly border:病巣辺縁部に灰黒色の小結節が病巣を縁どるように配列する。
・ 病理所見:腫瘍細胞は基底細胞に類似し、胞巣や索状構造を形成する。胞巣辺縁部で柵状構造 palisading を示す
③ボーエン病:
・ 類円形の鱗屑や痂皮を付着する紅斑局面のことが多く、びらんや潰瘍を伴うこともある。
・ 表皮内に限局して癌が生じたもので、進行すると有棘細胞癌になる。
・ 治療は手術、放射線など。
・ 症状:典型的な場合は徐々に拡大する、境界鮮明な、形は不整型の紅斑で、皮がめくれたり(鱗屑、scales)、かさぶた(crusts)を伴う。
・ 白人の場合は紅斑であるが、有色民族の場合は褐色である。
・ 大人に発生し、とくに60歳以上の老人に発生する。
・ 日光による場合は露出部に発生するが、ヒ素やその他による場合は露出部もあるが、服に覆われている場所も好発部位である。
・ 症状は放置すれば不変の場合もあるが、通常拡大する。単発の場合もあるが、慢性ヒ素中毒の場合は広範囲の場合もある。
・ 病理組織:表皮にとどまった有棘細胞癌である。組織学的に不規則な有棘細胞が表皮全層にみられる。表皮を超えての不規則の細胞の進行はない。表皮突起の幅の拡大、細胞配列の乱れ、核の大小不同があり、特に多核巨細胞(clumping cell)や異角化細胞が混在する。基底膜は乱れない、外陰・下腹に好発。単発、横に広がる。多彩な局面。
・ 組織=lyn↑↑。基底層付近で↑。『こん棒状表皮肥厚』示す。表面は角化↑↑。異型細胞増加
④乳房Paget病 ⑤乳房外Paget病
・ 乳房や外陰部に生じる腺組織の癌。はじめは紅斑や色素斑で始まり、びらんを伴うこともある。
・ 湿疹や他の皮膚疾患と間違われることがあり要注意。
・ 初期は癌組織は表皮内に留まりパージェット病と呼ばれる。進行すると真皮に浸潤しパージェット癌となる。
・ 治療は手術が中心。
・ 外陰部の皮膚にできた場合は、乳房外パジェット病、乳房、主に乳首など乳頭部にできた場合は乳房パジェット病、骨にできる場合は骨パジェット病
・ 乳房外の場合、ほとんどは外陰に発生するので、外陰パジェット病(外陰ページェット病)とも呼ばれる
・ 体臭の元であるアポクリン汗腺の多い皮膚に出来るのが特徴的で、日本では女性よりも、男性の方が多く、欧米とは逆。
・ 原因は不明だが、体臭の元であるアポクリン汗腺の細胞が悪性化したものであるという説が有力。
・ 乳腺ももとは、アポクリン腺なので、乳房にもできる。
・ 乳房外パジェット病は、外陰部やわきの下などにできる。
・ 老人にできることがほとんどで、痛くもかゆくもない紅斑で始まり、何年もかけて少しずつ広がり、湿疹やカンジダ症とまちがえて放置してしまいがち。
・ 湿疹やカンジダの薬が効かない場合は、パジェット病の疑いがある。骨に出来ることは、日本では少ない。
・ 骨パジェット病では、骨の腫大・変形、疼痛などの症状がでるが、悪性化して骨肉腫になってしまうこともある。
・ 骨が変形すると、腰痛などの症状が出る。
・ 病理組織:Paget細胞の存在-Paget細胞はムコ多糖を含有し、alcian blue染色やPAS染色で細胞質が陽性所見を示す
・ 乳房: 乳腺の排出管細胞由来CA。PAS(+)。 表皮内に明るくでかいcell。CEA(+)。表皮内に浸潤性増殖。経過長い。境界明瞭。横にはって浸潤、op面積大きい。
・ 乳房外: アポクリン腺、肛門粘膜杯細胞。 表皮cellより前CA状態。
● 乳房Paget病
・ 乳房、主に乳首など乳頭部にできる。はじめは紅斑や色素斑で始まり、びらんを伴う
・ 初期は癌組織は表皮内に留まり進行すると真皮に浸潤
・ 病理組織:Paget細胞の存在-Paget細胞はムコ多糖を含有し、alcian blue染色やPAS染色で細胞質が陽性所見を示す
・ 乳腺の排出管細胞由来CA。PAS(+)。 表皮内に明るくでかいcell。CEA(+)。表皮内に浸潤性増殖。経過長い。境界明瞭。横にはって浸潤、op面積大きい。
●乳房外Paget病
・ 外陰部や腋窩などにできる
・ 皮膚症状は乳房Pagetと同じ
・ アポクリン腺、肛門粘膜杯細胞。 表皮cellより前CA状態。
<皮膚筋炎の皮膚症状>
① 両側あるいは片側の眼瞼部の紫紅色の腫れぼったい皮疹(ヘリオトロープ疹)
② 手指関節背面の皮が剥けた紫紅色の皮疹(ゴットロン徴候)
③ 肘や膝などの関節の背面の少し隆起した紫紅色の皮疹
④ 前頚部~上胸部(V徴候)、肩・上背部(ショール徴候)に紅斑
⑤ 手足の伸側の多形皮膚萎縮症poikiloderma(色素沈着、脱失、萎縮が混在した局面)
⑥ 爪郭の血管拡張・点状出血 ⑦湿疹様、じん麻疹様発疹など ⑧レイノー現象(軽度)
<水疱性膿痂疹>
・ 黄色ブドウ球菌が原因:ブドウ球菌性膿痂疹=水疱性膿痂疹、標的分子はDsg1
・ 病態:皮膚の浅い部分に感染し、菌がつくる表皮剥脱素という毒素によって水疱あるいは膿疱をつくる化膿性の病気
・ 虫刺され、湿疹などの引っかき傷、あるいは小さいけがなどのところに膜の薄い水疱ができる。
・ 水疱内の液は次第にうみのように濁って、簡単にびらんとなり、すぐに痂皮ができて手でかいているうちに周辺だけでなく他の部分にも広がり、“飛び火”する。軽いかゆみがあるが、熱は出ない。
・ 黄色ブドウ球菌によく効く抗菌薬を3~4日間内服。痂皮が取れるまで抗生剤、ステロイド軟膏
・ 治るまでは、シャワー浴がよく、痂皮や分泌物をよく洗い落とし、そのあとで軟膏療法を繰り返す。
・ 病理組織像:角層下ないし顆粒層レベルに単房性水疱を形成し、中に棘融解細胞、多核白血球、細菌が混在する。表皮内・真皮浅層血管周囲にも多核白血球の軽度の浸潤をみる。
<葉状魚鱗癬>
・ 常染色体劣性遺伝形式をとり、生まれたときより発症する。
・ 生まれたとき、菱形にめくれた皮膚が道化師風であるため、「道化師様胎児(collodion baby、Harlequin disease)」と呼ばれることがある。
・ 原因遺伝子: transglutaminase 1、その他
・ 病態: transglutaminase 1活性低下により辺縁帯形成が障害される。
・ 臨床像: コロジオン児として出生し、その後全身が鱗屑で覆われる。眼瞼や口唇の外反を伴うことがある。またはハロキン児(落葉性魚鱗癬、葉状魚鱗癬)
・ 概念=非水泡型先天性魚鱗様紅皮症 のひとつで、角質の異常はない
・ 細胞同士を接着する分子の異常で剥離遅延し、角膜混濁、 精神異常・骨変化伴う。
・ 臨床所見:潮紅,細かい鱗屑∼暗褐色,大きな鱗屑(葉状魚鱗癬)
・ 病理組織:角質肥厚(不全角化を伴うものと伴わないものがある。)
・ およそ半数の症例はトランスグルタミナーゼの欠損により発症するが,活性が正常な症例もあり病因的にも多様な疾患である.
・ 非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症と比べると臨床的に著しく粗大,暗褐色,板状,葉状の大きな鱗屑がみられる点が異なっている.しかし,両者の中間型もみられる.
・ 臨床症状に加え,トランスグルタミナーゼ活性の欠損を同定できれば確定診断される
・ 葉状魚鱗癬では,レチノイド外用(0.1%トレチノインクリーム)または内服(イソトレチノイン)が効果的なこともある。
・ イソトレチノインの内服で長期に(1年)治療すると,一部の患者で外骨腫を来し,それ以外にも長期使用による副作用の生じることがある。(注意:レチノイドの内服は催奇形性のため妊娠時は禁忌であり,アシトレチンは催奇形性があり半減期が長いため,妊娠の可能性がある女性での使用を避けるべきである。)
・ どの魚鱗癬でも,入浴またはシャワーを最小限にとどめることが有用である。セッケンは,間擦部位の使用のみにとどめるべきである。吸収と毒性が増加するので,ヘキサクロロフェン製剤は使用すべきでない。皮膚軟化剤―ワセリン単独,鉱物油,尿素またはα-ヒドロキシ酸(例,乳酸,グリコール酸,ピルビン酸)を含むローションが望ましい―を1日2回,特に入浴後まだ皮膚が湿っている間に塗布する。
<カポジ水痘様発疹症>
・単純疱疹が経皮的に拡大し広範囲に病変を引き起こす疾患。
● 原因
・ 単純ヘルペスウイルスI型による。疲労やストレスが遠因となることがある。
・ 掻くことによって広がるためアトピー性皮膚炎の患者などに多くみられる。
● 症状
・通常は発熱、有痛性リンパ節腫脹と疼痛を伴う水疱が形成される。
・ 早期に治療をすれば、発疹の範囲が広がらずに済むことがある
・ 広範囲にわたる発疹が見られた場合は、入院治療が適切となる。痒みは個人差あり
・ 痒みよりも疼痛の症状が強い。 発疹が沈静して痂皮が出来てくると、痒みが生じる場合がある。
・ 痂皮が自然に剥がれて快癒に向かうと、顔面に発疹が出た場合は、傷跡の一時的な色素沈着により、そばかすのようになるが、徐々に消えていく。顔面以外も同様である。
●検査
・ Tzank試験: 水疱液をギムザ染色し、ウイルス性巨細胞が検出する検査
・ 血清抗体の検出: EIA法など
・ ウイルス抗原の検出: モノクローナル抗体を使用
・ PCR法: HSV-DNAの検出
・ ウイルス分離: 水疱内容液からVero細胞などに接種して分離する方法
●治療
・ アシクロビルまたはバラシクロビルを投与する。
・ 入院治療の場合は、水痘に罹患していない患者からは隔離されることが多い。
・ 家庭内で水痘に罹患していない家族がいる場合は、ワクチンを接種するなどの措置をとるべき。
・ ただし、一歳未満の乳児に関してはワクチン接種は禁止されているので、一時的に患者から隔離する必要がある。
● 病理組織学的所見
・ 弱拡大像では表皮の肥厚、表皮突起の不規則な延長と痂皮
・ 強拡大像では真皮浅層にリンパ球と好中球の浸潤。
<多型滲出紅斑>
● 所見
・ やや隆起する 10 mm 大ほどの特徴的な環状浮腫性紅斑が手背や関節部伸側などに,左右対称性に多発.
・ 若年女性に多い.
・ 感染症(とくに単純ヘルペスウイルス,肺炎マイコプラズマ)や薬剤に対する免疫アレルギーが主な病因.
・ ステロイド外用および内服により改善するが再発も多い
●病理組織
・ リンパ球の浸潤や表皮細胞の HLA-DR 抗原や ICAM-1 の発現がみられる
・ 表皮型,真皮型,混合型の 3 型に分類されるが生検部位による差異ともいわれている.
・ 真皮型は存在しないという考え方もある.
・ 表皮型では表皮細胞の個細胞壊死や表皮下水疱などを呈する
●診断:皮疹の性状および分布
<Stevens-Johnson(スティーブンス・ジョンソン)症候群 Stevens-Johnson syndrome>
・ 多形紅斑に加え,粘膜,眼病変を有し,発熱や関節痛など全身症状を伴う.
・ 中毒性表皮壊死症(TEN)に発展する場合がある.
・ 治療としてステロイドの全身投与,ときにステロイドパルス.症状に応じた全身管理を行う
・ 表皮を中心とする変性壊死を認め,基底部の液状変性や真皮浮腫も観察される
● 診断:皮膚粘膜移行部の重篤な粘膜病変、全身の紅斑,水疱,びらん,全身症状に加え,皮膚の迅速病理検査にて表皮の壊死性変化が認められれば Stevens-Johnson 症候群の診断は可能
● 症状
・主に口の中、眼、腟などの粘膜に水疱が生じ、発疹が集まった部分ができる。
・ 中毒性表皮壊死症でも粘膜に同様の水疱ができるが、スティーブンス‐ジョンソン症候群ではさらに、皮膚の最も外側に位置する表皮が、体の広い範囲で大きくはがれる。
・ スティーブンス-ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死剥離症(TEN)は分布を除けば臨床的に類似している。広く承認されている定義によれば,変化が体表面積の10%未満ならSJSで,30%を超えればTENである;体表面積の15~30%が罹患していればSJS-TENのオーバーラップと考える。
<KOH法>
本法は、15~20%苛性カリ(KOH)溶液で角層など、生体の蛋白質を水解し、その中に増殖している真菌の菌要素、虫体、虫卵、細菌の塊状物、さらにはそれらの破壊物など(これらの物質は原則として水解を受けない)を検出する方法である。本法は、感染症の証明法としては、Kochの第一条件に過ぎないが、日常の皮膚科診療
ではこれのみで診断学的に十分な疾患が多い。いずれにせよ、本法は迅速(5分以内)かつ簡単を身上としており、皮膚科の診療には1日たりとも欠かすことができない検査法である。
<Tzanck試験>:出現した水疱の水疱液を抽出し発疹の塗抹標本をアセトンで固定後ギムザ染色を行い、細胞診により、巨細胞を検出する検査
・天疱瘡:水疱底の細胞をギムザ染色で検鏡すると棘融解細胞がみられる(Tzanck細胞)
・ウイルス性皮膚疾患:水疱の細胞診でウイルス性球状変性表皮細胞の証明
<パッチテスト>:主に背中か上腕で行い、パッチテストユニットは2日間貼ったままにする.その間に検査試薬が皮膚にしみ込み、2日後にパッチテストユニットをはがし、 皮膚の反応を判定する。パッチテストによりアレルギーの原因(アレルゲン)を見つけ出す。
<SLE診断基準>
1.顔面(頬部)紅斑
2.円板状皮疹(ディスコイド疹)
3.光線過敏症
4.口腔潰瘍(無痛性で口腔あるいは鼻咽喉に出現)
5.非びらん性関節炎(2関節以上)
6.漿膜炎 :a)胸膜炎、または、b)心膜炎
7.腎障害:a)0.5g/日以上または+++以上の持続性蛋白尿、または、b)細胞性円柱
8.神経障害 :a)けいれん、または、b)精神障害
9.血液異常:a)溶血性貧血、b)白血球減少症(<4000/μl)
c)リンパ球減少症(<1500/μl)、または、d)血小板減少症(<100,000/μl)
10.免疫異常:a)抗二本鎖DNA抗体陽性、b)抗Sm抗体陽性、または、c)抗リン脂質抗体陽性
1)IgGまたはIgM抗カルジオリピン抗体の異常値、
2)ループス抗凝固因子陽性、
3)梅毒血清反応生物学的偽陽性、のいずれかによる
11.抗核抗体陽性
上記項目4項目以上を満たす場合全身性エリテマトーデスと診断する
<ブドウ球菌性熱傷性様皮膚症候群SSSS>
●機序・定義
・標的分子:デスモグレイン1
・ 病態ブドウ球菌の外毒素 exfoliative toxin が血流に侵入して生じる全身性反応で、皮膚顆粒層の細胞解離、壊死による皮膚の水疱性、びらん性疾患
● 症状
・感冒症状・微熱後に、目・鼻・口の発赤・びらん・痂皮。眼脂。口周囲の痂皮に放射状亀裂。
・ 頚部、腋窩、肘窩、鼠径部、膝窩に猩紅熱様の紅斑が出現し、接触痛を伴うため身体に触れられるのを嫌がる。
・ 半数弱はニコルスキー現象陽性。ニコルスキー現象は年少者ほど著明で、軽症では認められない。
・ 生後1ヵ月以内の新生児が発症したときにはリッター新生児剥脱性皮膚炎と呼ばれ、重症である。
・ 約10日後に全身の紅斑は消失、頚部より手足に向かって皮膚がむけはじめ(こぬか様落屑)、3~4週で治癒する。
・ 経過中に脱水、食欲不振など全身症状もみられる。
●皮膚細菌培養
・小児では,皮膚の培養が陽性になることはまれ。成人では,陽性であることが多い。
●治療
1.年齢が幼いほど重篤である。原則として入院、全身管理、輸液を行う。
2.抗生物質の全身投与:抗生物質の感受性を知るため初期に原因菌の培養を眼脂、皮膚、咽頭などから行い、黄色ブドウ球菌に感受性のある薬剤を点滴静注する。有名なメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA、後述)が起因菌の場合には注意が必要。
3. 熱傷処置と同様の局所処置を行う。
4. 解熱したらシャワー、入浴などで皮膚を清潔にする。
<最小紅斑量 MED>:UVB照射24時間後に紅斑を来たすのに必要な最小の光線量。低下は光線過敏症を示唆する。UVA,UVBを照射する。