おしらせ・・・
すみません・・・私事ではありますが、
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ブログページ管理者より
明日を見つめて~野上 薫の告白⑲
・・・・・・・・・・・・・・・・・・長い夢だった。
深い眠りから覚めるとそこは自分の部屋のベッドの上で、私は涙を流しながら右腕を天井に伸ばしていた。涙は幾筋も枕に滴り落ち、それが小さなシミになっている。
いつバーを出て自分の部屋に戻ったのか全く記憶がない。それに部屋は薄暗く、まだ夜も明けてないようで、どうやらそれほど時間が経っている訳でもないようだ。
私は半身を起してそばに置いてある時計に視線を向ける・・・・・・時計はまだ夜中の1:53を示していた。
酔いは完全に醒めてはいたものの、口の中に僅かながらアルコールによる痺れのような感触が残っていて、それを確かめるように少し舌先で自分の口の中を探ってみた。
それから掛けていた物をよけてゆっくりとベッドから立ち上がると、私は部屋の窓へ向かい、しっかりと締められたカーテンを開ける・・・・・・すると真正面から欠けた月の明かりが私に向かって一直線に差し込み、私と部屋を明るく照らし出した。
窓の向こうにはあの頃とは違う別の街の景色が広がっている。
窓越しにその夜景と光の屈折によって自分の姿がうっすらと映し出され、私は瞼の下に残る微かな涙の滴を拭い、その拭った手をじっと見つめた。
目が覚めた時、私はまっすぐに腕を伸ばしていた・・・・それは一体何を掴みたかったのだろうか?失った征ちゃんとの未来だったのか?それともそれ以外の今とはまた違うさらに違った未来だったのだろうか?はたまた全く違う見当違いの何かだったのだろうか?自問自答の先に答えはなく、窓越しに広がる夜景とうっすらと映し出された自分の姿が変わりなく目の前にあるだけだった。
・・・・・・・・・あの新宿での一件の後、何度か征ちゃんと会ったけど結局お互いの離れた距離を縮める事ができなくてそのまま自然と終わってしまった。その頃の私はもう高円寺の部屋を引き払い、キャバクラのバイトと専門学校も辞め、一度実家に戻ってレコード会社の方の立会いのもと、芸能という世界にデビューする事を両親と話し合い、それと並行してレッスンも時間/内容ともより長く・ハードになって更に加速度的に過ぎ去るような毎日の連続だった。
あの時引き返せていたらどんな未来が待っていたのだろう?今でもそう考える瞬間があるけど、私にはあれから先の未来は何も見えなかった・・・・そういった意味ではやっぱりあの時に感じた限界は間違いではなかったんだと思う。それに今が幸せではないか?と聞かれたらそんな事はないと答える。それを踏まえても人生の岐路・運命の流れは正しい方向に向かっているんだと思う。
私は静かに窓の戸を開けた・・・・・・・心地よい夜風が私の身体を包み、籠っていた熱とアルコールの酔いを和らげてくれて、その気持ち良さに身を任せるように大きく深呼吸を一つする。そうする事によって今まで見ていた夢の苦みも甘さも全てが中和され、クリアな気持ちへと切り変わった。
素足のままバルコニーに立つとひんやりとした感触が足の裏からせり上がって、その冷たさがより一層私のクリアになった気持ちに透明感を与えてくれる。
『やっぱりもうあの頃に返ることは出来ないんだ』
その事実に悲しくなる訳ではないけど、失った可能性の一つに置行堀を食らった様な何とも言えない空白感に再び涙が流れてひとすじの線をつくり、一滴・・・一滴・・・と足元に落ちていく。その涙を私は拭おうとはせず自然のままにし、それからゆっくりと目を閉じて小さく『ありがとう・・・・・さよなら。』と言った。
=サヨナラ (歌詞抜粋)=
流れる季節に 君だけ足りない はぐれた心の 足跡を探す
カバンにつめた 悲しい幸せ 遠くへ行くほど 君を思い出す
星だけが時を数えて 戻れない夜を飛び越え 逢いたい
手のひらから伝わる愛 心をとかした
名前のない時間の中で 二人夢を抱きしめてた
何も失さないと 信じていた あの頃に
明日を見つめて~野上 薫の告白
≪完≫
明日を見つめて~野上 薫の告白⑱
ホームは多くの人でごった返していて、OL・サラリーマン・旅行者・学生などそれぞれが目的地へアクセスする為の電車を待っている。少し上を見上げると駅ビルのネオンや電燈の点った大きな看板が目に入ってきて、いつも疑問に思うのだけれど・・・・こういった看板の効果って本当にあるのだろうか?そんな事を今もまた実際に目に入ってくる情報と併せては疑いの目で見ている。
ラッシュ時のせいか?電車が遅れているようで、遅延のアナウンスが流れてはあちこちで時計を見つめたり携帯電話で相手と約束や時間の事などでやり取りをしている姿が目に付く。
隣に寄り添う征ちゃんは何か言いたげな表情のままずっと黙ったままでいる。時折遠くを見つめては【電車が到着しないか】を探っている風に見せているけどその仕草がワザとらしい。
知らないフリをするのは簡単だけれど、そのままと言うのも息苦しいし、一緒にいる事が自体が苦痛になってくる・・・・・・・・徐々にだけれど、私の中の我慢のスイッチが切れそうになっていたのは確かだった。
電車はまだ来ない。
あの時間は今思い返すと、今まで生きてきた中のベスト3に入る苦痛だった。もちろんその後のことがあったから余計そう感じるのかも知れないけど、それを差し引いてももう二度と味わいたくないし、そういった場にもう一度巡り合いたいなんて口が裂けても言いたくない。
私は視界に映るあらゆる(征ちゃんのあの表情も含めた)情報をシャットアウトしようと目を閉じた・・・・それでも耳からはホームにごった返す人々の喧騒が否応なしに入ってきたけれど、それも出来るだけ意識をしないように努め、自分の中の感情だけに集中した。瞼の裏に映ったのは征ちゃんの優しい顔と紫光嵐関の真剣な目をした顔だった。
別に2人を天秤にかける気なんて毛頭なかったし、例え天秤にかけたとしても征ちゃんに傾くに決まっている。
2人の顔は何を言うでもないけど、何か私の中で強く訴えるモノを感じずにいられなかった。その訴えに駆り立てられるように徐々に意識して消していた喧騒がよみがえってきて、その力に弾かれるように瞼を開けると同時に征ちゃんが口を開いて私にこういった・・・・・・・・。
『変わらないものはない・・・・・変わっていくものに俺は置いて行かれるだけなのかな?』
瞬時に言っている言葉の意味が分かった私は征ちゃんの頬目掛けて平手を張った。
その衝撃による痛みと言葉の意味から噴き出した感情が溢れ出す涙になって、大きな粒が幾度も頬を伝って落ちる。
『どうしてそんな事言うの!!!』 と何度も征ちゃんに言ってやりたかった。でも私の言葉はすべてううううううう・・・・・・という涙を堪える嗚咽となって消え、届くことは無かった。
唇を強く噛みしめて涙を堪えようとしたけれど、堪えようとすればするほど余計に溢れてきて歯止めが利かない。征ちゃんはジッと私の方を見つめ、何もしないし何も言わない・・・・・それが余計に寂しくて悔しくて私はもう一度征ちゃんの頬を張った。
すれ違う誰もが私たちを見ていく・・・・だけど感情の歯止めが利かない私にはそんなのお構いなしだった。2度も頬を張られた征ちゃんが今度は黙っている訳無いと思っていたけれど、期待ハズレな反応しか返ってこなかった。俯いて黙ったまま何もしてこない・・・・・・私は溢れる涙を溜めた瞳で征ちゃんを睨むように見つめ、そのどうしようもない心の距離に限界という文字がよぎる。そうして黙ったままの征ちゃんを両手で突き飛ばすとそのまま私は背を向けて走り出した。
嫌いとかそんな簡単な言葉では言い表せない自分の心が完全に征ちゃんを拒絶してしまった瞬間だった。走って、走って、走り続けて、それでも走って・・・・・・・・とうとう息が切れ掛かった限界の一歩手前でようやく膝を抱えて止まり、激しい呼吸を何度も繰り返した。涙はもう止まっていたけれど、自分の感情が暴れ続けている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どのくらい時間をかけただろうか?
ようやく息が整い、激しく暴れ続けていた感情も落ち着き、私は顔を上げた。そこは新宿南口を出た反対側のサザンテラスのど真ん中で、見上げた先にやわらかな明かりの点ったタカシマヤ・タイムズ・スクエアが見え、その右方向の延長線にはエンパイアステートビルにも似たペンシルの先のように尖ったビルが天に向かって高く高くそびえている。私はその場で呆然と・・・・ただ呆然とその景色を見つめ続けたが結局のところ、何の答えや未来を見出せなかった。
この場を離れる前に一度だけ目を閉じて、心の中で 『ごめんね』と『ありがとう』を言って目を開き、それから精一杯の気持ちを込めて笑みを作ってみた・・・・一瞬だけ涙が溢れそうになったのをグッと堪え、そうして前を向き直って私は歩き出した。周りに目を向けてみたけれど、もうどこを見ても征ちゃんの姿は見当たらず、【これで全てが終わったんだ】と自分に強く言い聞かせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼が言ったように私は変わったのかもしれない。
この日を境に私の【征ちゃんがいない未来】が始まった。
≪続く≫
明日を見つめて~野上 薫の告白⑰
皇居での紫光嵐関の一件以降、私の生活に 「レッスン」 という項目が加わった。
それ以外は特に変わった事は無く、相変わらず専門学校でメディア関係(出版・映像など)について学んでいたし、生活の事もあったのでキャバクラのアルバイトも続けていた。そこに週3日のレッスンが付け足され、特に曜日の指定は無くて都合の良い時に連絡を入れて練習スタジオに足を運び、1回3時間から4時間ほどの訓練(主に基礎的な内容)を受けていた。
毎日が走り抜けていくようで、あっという間に時間が過ぎていき、気が付けばクタクタになって部屋に辿り着いては死んだように深い眠りに落ちる・・・・・そんな連続の日々。
征ちゃんとの時間も少なくなっていったのは言うまでもないが、元々動機というかきっかけが人伝の紹介だっただけに私が芸能の世界に入るのをあまり良く思っていない感じだったから、それで私と過ごす時間が割かれている現状に少なくとも苛立ちはあっただろう。
それでも何も言わないで一緒の時は優しく、私の身体や心を労わってくれる征ちゃんに私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
だけどどちらかが無理をすればその歪は時間と共に徐々に大きくなり、やがては皹が入って裂け、そしてそこから深くて暗い・・・・底の見えない暗黒が私たち二人の未来を飲み込もうとしていた。
月日は流れ、レッスンを始めてから4ヵ月・・・・・・・
日々の生活は相変わらずな中にビックリする様な知らせをレッスンの先生から聞かされた。それは歌手として一応のデビューを飾るという内容の事で、驚く私を先生がきつく抱きしめて何度も『おめでとう』を繰り返して言ってくれた・・・・・・だけど自分の心の中では嬉しいと同時に、言い知れない不安と頭の上を覆う黒々とした暗雲が立ち込めていて、あの時は本当に心から喜ばしいと感じられない自分を今もハッキリと覚えている。
デビューについてのプランは思った以上にスピーディに事が運び、デビュー曲もある有名アーティストからの提供曲に決まり、同時にそれに合わせたイメージ作りの為にとビジュアル・アーティストのチームが結成され、私の顔をはじめ、身体のあらゆる部分を「普通の身体」から<魅せる身体>へと改造し、同時に今まで馴染んでいたレッスンの先生からプロで現在も第一線で活躍している有名なアーティストへと指導者も変わり、より本格的でスパルタなヴォーカル&ダンスレッスンのプログラムが私に課せられて、正直な気持ちを言ってしまえば・・・・・・・・・『逃げたかった』
そしてついに・・・・・征ちゃんとの幸せな日々の全てが大きな暗闇に飲み込まれる日がやってきてしまった。あの日の事は今でも鮮明に覚えているし、思い出せば自然と涙が出てしまう。そのくらい私の心に焼き付いてしまっている。
レコード会社の方から映画のチケットを2枚頂いていて(←征ちゃんには内緒)、それで2人で観に行こうと新宿へ・・・・映画は当時、携帯やブログで書かれた素人小説が話題となって映像作品になったもので、≪shu-i -シュイ-
≫ というタイトルだった。
内容は・・・・主人公:渡辺修一郎は芸術大学の音楽科専攻の学生で、ピアノの腕前はコンクールに出るほどの腕前。しかしある事件をきっかけに課題以外でのピアノ演奏を止めてしまったというミステリアスな面を持っていた。そんな彼はヒロイン:天野弥生という同じ芸術大学の美術専攻の女学生と出会い、やがて2人は恋に落ちていく。2人の恋物語を中心にストーリーは進んでいく中で、それぞれの思いや人々との繋がりによってお互いに成長していき、不確かな未来だけど確かな存在を認め合いながらも不幸な事故によって歯車が狂い、2人は永遠の別れを迎えてしまう。
今考えると 「観た映画が悪かったのかも知れない」 やはりあんなストーリーのものを観たあとでは気持ちがナーバスになるのも分からないでもなかったし、ただでさえそれまでの行き違いのような事も重なっていた。私たちは映画の感想やあの俳優の良い悪いといった映画を観ての感想などには一切触れず、静かに映画館を後にして近くの喫茶店に入り遅いティータイムを取った。
私は映画の後半から泣き出してしまい、終わってからもその涙がなかなか止まらずにいて、それをジッと何も言わないで私が泣き止むのを待っていてくれた征ちゃん。
出されたロイヤルミルクティーを鼻水を啜りながら飲んでいる私と黙ってジッとしている征ちゃんのツーショットを周りからはどう映っていたのだろう?・・・・・おそらく 「別れ際のカップル」 に見間違われていたのだろうという想像はつく。
でもあの時の征ちゃんの顔は、明らかに何か言いたげな感じの表情をしていた・・・・それが余計に私たちを見る周りの目もそういうの風な目に見えたのかもしれない。
結局・・・・映画の話題に触れることも無く喫茶店を出た頃には日がだいぶ落ちていて、時折吹く初秋の涼やかな風が街路樹の枝先を揺らし、確かな季節の移り変わりを感じる中に2人並んで駅への道を歩いた。そして駅のホームで電車を待つ数分で私の運命の方向は全く別の方向へと進みだしてしまった。
≪続く≫
明日を見つめて~野上 薫の告白⑯
紫光嵐関の言葉を受けて和田倉噴水公園から桜田門に向かってゆっくりと歩いた。広い敷地を囲むように堀が形成され、城壁から道路までの距離が異様に遠い・・・・その周りに黒松が至るところに生え、芝生と見事に調和して美しい景観を見せてくれている。
この美しい外苑を歩いている間、彼は一言も言葉を発しなかった・・・・・そっと覗き込むと真剣でまっすぐな目をした横顔が見え、変に声を掛けるのも申し訳なくなってただじっと黙ったまま、一緒に並んで歩いていると、楠木正成像と見学の観光者らしき人々の姿が見え、なにやら順番に記念撮影をしているようだった。
それから更に歩くこと10分弱・・・・・ようやく桜田門の前にたどり着くと紫光嵐関の足がピタッと止まって私の方を向き 『休みましょう』 と短く言葉を切り、淵に並んで座って休み始めると彼は今までじっと黙って何も言わなかった重たい口を開いてゆっくりと話し始めた。
『何からお話ししていいか分かりませんが、まずは本当にありがとうございました。正直な話をしますと・・・・先ほども言ったように、私は相撲取りであって歌う柄ではないと本当に思っていました。でも相撲もそれなりに楽しいし、あのような形でもTV番組を通じて相撲を知り、興味を持ってくれればと考えると悪くないかなぁ?と考えることもありました。でもあなたの歌を聴いて、私の中でそれらの考えが全て弾け散ったんです。』
最初・・・・私は彼が一体何を言っているのかが分からなかった。それでも私の反応には応えずにそのまま彼は言葉を続ける。
『あなたの歌を・・・・その――いつしか二人互いに響く 時に激しく 時に切なく 響くは遠く 遥か彼方へ やさしい歌は世界を変える♪ほぉら あなたにとって大事な人ほど すぐそばにいるよ♪♪――って・・・・全然意味は違いますがその言葉(歌詞)を聴いた瞬間、自分の中で何が一番大事なのか?何をしていたいのか?それがハッキリ見えたんです。自分には相撲しかない。相撲をもっと真剣に取り組もう。やってみようと、そう心が決まったんです。本当は荒い相撲ばかりしていて怪我が続き、そういった中でTVの番組に声を掛けてくださって自分でも気分転換が出来てよかった。それでも現実はそんなに甘いモノではなく、TVに出てチヤホヤされているとか在る事無い事を言われもしました。それでも構いませんでした・・・・いつか自分の限界が見えた時は引退をして、次の人生を考えなければいけないんですから。その時のことを考えれば、少しくらいTVに出ておけば相撲が出来なくなった後も声を掛けてもらえるだろうし、その次の人生に繋がるきっかけにも出会えるかもしれない。だけど・・・・あなたの歌を聴いてそれじゃいけないと自分の心が叫ぶ声が聞こえたんです。だからそれに気付かせて下さったあなたに自分の目の前にあった道を代わりに進んでもらおうと思ったんです。だからあの時、あなたに声を掛けたんです・・・・そういう意味では本当に申し訳ありませんでした。』
紫光嵐関の長い告白を聞いてようやく自分の中で不可解だと感じていた部分がきちんと繋がった。きっと長い間迷い続けていたんだろうと、あの真剣な眼差しが全てを語っていたような気がした。きっと誰もが一度くらいはあんな些細な事が人生を大きく変えるようなきっかけになったというのがあるんじゃないだろうか?私はじっと黙ったまま最後まで彼の話に耳を傾け、聞き終わった後に1つだけ質問をした・・・・それは 『真剣に相撲に取り組んで、あなたは何になるんですか?』 今考えてもとても幼稚な質問だと思うけど、私に道を譲っても行こうとするその道の先を私は素直に知りたかったし、それを知る権利があると思った。
その先の言葉を私は今でも忘れていないし、この先一生忘れる事はないと思う。
『横綱になります・・・・単なる横綱ではなく、[大横綱]・・・・人々の印象に残るこの時代の象徴的で立派な横綱になります。これが私の相撲道の先にある自分の目指す姿です。』
心が決まるとはこんな心境を指すんだろう・・・・彼の言葉を受けて私の心の中にも漠然とした、何か見えない大きな力や気配を感じると同時に、今の自分ならその先にあるであろう未知なる恐れにも立ち向かっていける。そんな根拠の無い自信が私の奥底から沸き起こるのを感じつつ、私は紫光嵐関と別れた。
≪続く≫
追記
紫光嵐関は粗い取り組みから当時怪我の多い力士で、怪我(主に脱臼癖)予防の為にと筋力トレーニングを強化し、肉体改造を試みる・・・・すると徐々に怪我の頻度が減り、同時に成績も安定。三役の地位(当時は関脇)も安泰~大関を狙えるまでになり、その頃に横綱への道を確信。
大好きだった娯楽のほとんどを捨てて、相撲に専心して見事横綱の地位に上り詰め、その後も相撲道に邁進。本当に一時代の象徴的な大横綱となりました。
