Lennon;
ところで治は何故小説を書き始めたのですか?

治;
多分ジョンが音楽を始めた動機と似てるんじゃないかな?退屈だった。本音を言うと、私は世の中や人との関係に絶望していました。私の若かった時代にはR&Rも無かった…。私は自分自身を持て余していたのです。

Lennon;
なるほど。『退屈だった。面白いことがなかった!』というところでしょうか。鋭敏な若者にはよくあることですね。治から見て今の世界はどうですか?例えばイラク戦争。

治;
文学者のはしくれとして言わせてもらうなら、それは私の小説の中に全部書かれているのです。つまり、世界は急に変わらないということでしょうか。イマジンを100万回歌い続けてもなかなか戦争のない世界は来ない…。人類が進化の途中だとしたら、いつかは戦争のない世界が実現できると信じてはいますが。

Lennon;
世界中の様々なアーティストが今回のイラク戦争を批判しています。ベトナム戦争の時と同じように。強者と弱者という色分けがある限り人は戦争を繰り返すのでしょう。馬鹿げたことだと思うが中々変わらない…。それは強者と弱者という関係を克服することが出来ないからだろうと思います。

治;
現在はインターネットで情報が一瞬で世界中に伝わる時代です。それ自体はいい事だと思う。政治家や一部の権力者にとって嘘のつけない時代だからです。もっと言うと、自分では何もしないで命令するだけの奴らがいる限り戦争はなくならないのです。実際に戦争をするとかじゃなく、会社でも学校でもそういう関係がなくならない限り戦争の種は無くならない。

Lennon;
随分と悲観的な見方ですね。ほぼほんとうのことのような気はしますが。治はこの社会の仕組みが変われば戦争はなくなると思っていますか?

治;
いや、人間自体の問題だと思う。それに社会の仕組みはそう簡単には変わらない…。人間そのものが変わらないと…。ジョンはどう思いますか?

Lennon;
治ほどには悲観的な見方ではないのです。私は歌うことが好きで音楽をやっているだけですが、歌は人間の感情や感覚を変えていくものです。そこは信じているのです。治の言葉で言えば、歌の中にある愛は伝わると信じています。

治;
私には銃の代わりにペンがあるように、ジョンにはギターがあるのですね。その気持ちは、とてもよくわかります。

Lennon;
わかるようなわからないような意見ですね。治は何故そんなに愛に対して疑い深いのですか?この女が愛しいとか、好きだとか…そういう風にシンプルに感じたりすることはないですか?

治;
勿論あります。ただ何故ひとりの女だけに愛を感じるのか?本来そうあるべきか?という風に考えてしまうし、感じてしまうのです。

Lennon;
…。博愛主義ですか?私にはとても信じられませんね!というか、愛にも色々種類があるとしたら、博愛主義で全てを片付けようとすると気狂いになってしまいますよ!もっと素直になれないんですかねぇ???

治;
ジョンが心の中の母を亡くしたのと同じように、私も母を亡くしたんだと思います。だから、貴方の『ジョンの魂』と私の『人間失格』はコインの表と裏のように感じられるのです。つまり、『ジョンの魂』を裏返すと『人間失格』なのです。分かりにくい言い方ですかね???

Lennon;
いや、とても分かりやすいですね。ある意味、『人間失格』はイギリス的な叙情詩のようにも感じられます。治は『ジョンの魂』をどう感じますか?

治;
とても日本人的な歌のように感じます。いや、世界中の誰でもが自分の国の歌のように感じるのではないでしょうか?

Lennon;
それはとても興味深い意見です。それに何よりも嬉しい!私は京都によく行きます。ロンドンのいいところを集約した町のような気がします。教会の代わりにお寺がある!

治;
…。お寺ですか。イギリス人にはオリエンタルな宗教建築は新鮮なのでしょうね。内向的と言うか…。日本人は逆に西洋的なチャペルに憧れるのです。

Lennon;
なるほど…。いや、京都の街のお寺が全部教会だったとしたら、リトルロンドン、東洋のロンドンなのかもしれませんが、いや違うかな…。

治;
街の風景とそこに暮らす人々の眼差しは、少しずつ人を変えていきます。ジョンは京都の1200年の歴史を、その空気を肌で感じているのでしょうね。

Lennon;
治の意見よくわかりました。でも、実際食うに困る人々は第3世界を除いて、現在の日本には少ないのでは?消費に費やされているお金のほうが実際多いでしょう?それでもヨウコと私の愛は特殊なものだと思いますか?

治;
あなたのインタビュー集(ビートルズ革命)で、貴方はこんなことを言ってましたね?!
ヨウコさんと同じ新聞を読むのが気持ち悪いと議論になり、結局二つ新聞を取ることで解決した!と。そもそも、そこが庶民の感覚とずれているのです。ふたりで青空に見えない絵を書かれても、庶民には見えない…。酷い言い方をしてごめんなさい。

Lennon;
…。ヨウコと私がほんとうに言いたいのは…想像力が世界を変えるということです。今すぐには無理かもしれない。でも、イマジンで私が歌ったような気持ち、誰の中にもある人や世界をいとしく思う気持ちは持ち続けなければならないと思うのです。

治;
お気持ちはわかります。ただ、愛が全てだ!とあまりに言われると、現実とのギャップのほうが気になってしまう。私のような弱い人間は特にそうなのです。綿にでも傷つくのです。

Lennon;
治の小説が何故、今でも日本の若者に読まれ続けるのか?すこしその理由がわかりました。あなたはとても純粋な人です。そして人に誠意を尽くしたいといつも思ってきたのでしょう。現実の世界は、私の歌でいうと『※Nobody Loves You When You are down and out』のようなショービジネスの世界です。お互いがお金の為に背中を引っかきあうような…。でも、その中にも愛の可能性はあるのではないでしょうか?

治;
ジョンも純粋な人だと思います。貴方は金儲けの為に音楽を演奏することを自ら拒否しましたよね。貴方にとって歌を歌うこと、演奏することの中にある愛は何にも代えがたいのだと思います。それは、どんな状況でも、たとえ貴方が庶民には理解できないくらいの富と名声を手に入れた今でも変わることはないのでしょう。私はそのことがわかってなんだか安心しました。日本でも中島みゆきさんのような、お金より歌に対する愛情を優先しているアーティストがいます。そういう視点なら貴方の意見はとてもとてもよくわかるのです。

Lennon;
制限つきの愛なら、或いは相手が人間じゃなく音楽のような芸術であれば、私の愛は有効だと?

治;
そうです。音楽には愛される側の論理も儲けなければ生きていけない…などの制限はありませんから。勿論、多くの聞き手に届けるにはお金が必要でしょうがね。


※Nobody Loves You When You are down and out;
ジョンレノン名義のソロアルバム『心の壁愛の橋』に収録されたバラード。ryu的にはジョンのBESTナンバー!


じょんたま


この作品を批評するのはおこがましい気もする。日本の小説で言えば『人間失格』のような作品。毒舌だったジョンライドンもジョンレノンだけは否定しなかったばかりか、彼が死んだとき、『ジョンだけは最後の帝国と戦ったんだ!』みたいなコメントを寄せていた。鐘の音に導かれる『MOTHER』ではじまり、幼い子供が歌っているような『マイ・マミーズ・デス』で終わるこの作品。ロックファンやパンクファンを自認する君。もし聞いてなかったら聞いてみて!
Lennon;
ところで治のほうはどうなの?女と何回も死にかけて、結局自分だけ生き残ったって聞いてるけど…。治にとって女って何?治こそ女に母を求めてるんじゃあ?

治;
…。随分とストレートな質問ですね。仰るとおり、私は女と一緒に死にかけたことがあるし、そして…私だけが生き残りました。しかし、女性に母を求めている訳ではない。私はただ愛を信じられなくて、何度も試しているのです。いや、こういう言い方じゃ伝わらないかな。私は愛が怖いのです。自分勝手に人を愛したり、極端な場合、愛の為に死んでしまう人が怖いのです。初めてお話しましょう。私には戦争も怖かった。兵士を死に追いやったお国への愛が、私には怖かった。それだけなのです。

Lennon;
私のようにヨウコとの愛を人前で歌うのは許せない!と…。

治;
いや…。理解できない。

Lennon;
話を変えましょう。愛すること、愛されることがうまく行かない時、人は戦争をするし、憎みあうのでは???

治;
そういう言い方もできます。貴方の歌で言えば『IMAGINE』は好きです。国境や人種、宗教があるから、戦争はするのだ!そう言ったものが全て取っ払われた世界が理想なのです。

Lennon;
それを実現する為に、愛が必要だと思いませんか?

治;
いや、愛だけでは、愛に注目し期待するやりかたでは無理だと思う。貴方の歌を聞いていると、愛は何か万能のようなものに思っているような気がする。貴方と奥さんとの愛だって、それは十分なお金と名声を手に入れている人の愛であって前提が違うのです。私のような貧乏な小説家や、今日のご飯のおかずを買う時に、牛肉を諦めて鶏肉を買うような普通の庶民の立場からすると。

Lennon;
お金や名声を手に入れても、それなりに不自由はあります。結果として、ヨウコと私は愛し合っていますが、それは結果であって目的ではない。現実のヨウコと現実のジョンレノンが愛し合っているだけです。そこに庶民との愛の違いはない!

治;
明日の食い物を心配するような生活を強いられている庶民には、貴方の意見は決して伝わらないでしょう。だから貴方は歌うのかもしれない!?私が言いたいのは、特別な愛を美化するな!と、ただそれだけです!