著者は明治学院大学教授の巌谷国士である。先生には失礼であるが、政治学でも歴史学でもないため、リラックスせずに読むことができた。私はロシア革命との関連からロシア・アヴァンギャルドや19世紀末から20世紀初頭のある種のデカダンス的雰囲気やそのあとの前衛的な芸術にこれまで関心を持ってきたが、今回のシュルレアリスムはより広い新たな世界観を提供してくれた。ユーラシアの西と東のフランスとソヴィエトでかくも離れているにも関わらず、当時の人間が感じ取っていたものの共通性はただただ驚くばかりである。

 ちなみに2月9日より国立新美術館で開催されるシュルレアリスム展も楽しみにしているのは言うまでもない。

 本書は民主化研究で著名なJ・リンス編集のもとに出版された。サルトーリ、レイプハルトなどの欧米の比較政治学者による民主化研究には欠かせない著書といえるであろう。

 民主主義への移行過程において大統領制を政体として選択したケースを対象として大統領制が制度的に抱える硬直性やゼロ・サム関係、多数決代表的な側面に着目し、民主主義が崩壊する蓋然性が比較的高いことを実証している。サルトーリなどの『比較政治』なども加味して考えると、大統領制民主主義が崩壊した際、議院内閣制よりも、半大統領制の採用を評価していると全体的に言えるだろう。彼の言葉を借りれば『ゆれ』、毛先生の言葉を借りれば『カメレオン』、つまり二元代表制を大きな要因とする行政府と立法府の対立に半大統領制がより柔軟に対処できるという主張である。

 ただ半大統領制においても行政・立法関係の支持母体が異なる場合、首相選任の段階で大統領はある程度の妥協を迫られるわけだが、より本質的なのは任命時の妥協にあるのではなく、日常の運営面にあるのではないかという疑念を私は払拭しきれなかった。といっても制度それ自体が民主主義に及ぼす影響は絶対というものは存在しない事も含めると十分評価に値すると言えよう。

 本書は北欧政治、政党政治が専門である岡沢 憲芙 元早稲田大学教授の著書である。競合的協同をテーマに政党政治の観点から橋本政権くらいまでを考察している。政権交代がすでに起こった今日においてコンセプト自体は必ずしも新しいものではないのだが、政党政治の先行研究を加味したうえで、分かりやすい言葉で競合的協同のメカニズムを説明している。

政党政治においては日本の55年体制は稀有な存在であったため健全かつ建設的な政党政治は現在においても機能しているとは完全には言えないのではないかと感じる事がある。本当の意味での政治に腕の見せどころが期待される現代を捉える上でも一読してみるべきだろう。