本書は民主化研究で著名なJ・リンス編集のもとに出版された。サルトーリ、レイプハルトなどの欧米の比較政治学者による民主化研究には欠かせない著書といえるであろう。
民主主義への移行過程において大統領制を政体として選択したケースを対象として大統領制が制度的に抱える硬直性やゼロ・サム関係、多数決代表的な側面に着目し、民主主義が崩壊する蓋然性が比較的高いことを実証している。サルトーリなどの『比較政治』なども加味して考えると、大統領制民主主義が崩壊した際、議院内閣制よりも、半大統領制の採用を評価していると全体的に言えるだろう。彼の言葉を借りれば『ゆれ』、毛先生の言葉を借りれば『カメレオン』、つまり二元代表制を大きな要因とする行政府と立法府の対立に半大統領制がより柔軟に対処できるという主張である。
ただ半大統領制においても行政・立法関係の支持母体が異なる場合、首相選任の段階で大統領はある程度の妥協を迫られるわけだが、より本質的なのは任命時の妥協にあるのではなく、日常の運営面にあるのではないかという疑念を私は払拭しきれなかった。といっても制度それ自体が民主主義に及ぼす影響は絶対というものは存在しない事も含めると十分評価に値すると言えよう。