ロシア革命100年にあたる2017年に出版されたシリーズの5巻目。革命からソ連崩壊後までを射程におさめ、民族問題のダイナミズムを明らかにしている。
宇山は、タタール人を中心とした文化的自治論者の内戦期の各政権との交渉の困難さを描き出した。そこには、帝政期から連続するタタール人に対するパン・チュルク主義が警戒されていた。革命でじり貧になる過程でも、タタール人に訴求力のある文化的自治に冷淡な態度をとる様子には失望しら感じる。
憲法制定会議を待った上で、未来の統治制度が話し合われるのは当然だが、マイノリティーの自治論を客観的に判断できる人材はもちろん帝国軍人、政治家にはいなかっただろう。
長縄の論文は、ソ連がいかに帝国期にムスリムが国家との間で作り上げたインフラを利用したかが解明されていた。
ソ連初期のムスリム統治は未解明な点もあり、その点でも挑戦的な試み。