医師や家族から医療情報を得るイギリスの人々
私は英国で「家庭医(General Practitioner)」として長年働いていました。
家庭医と聞くと聞きなれない方もいらっしゃると思います。
英国では、地域で患者を総合的に診る専門医を養成していて、約4割の医師が家庭医になります。
この家庭医が臓器に関わらず患者を診ており、同じ主治医が継続的に患者をみる制度になっています。
結果、気軽に医師から医療情報を得る環境が整っており、英国の国民は、医療情報の大部分を医師又は家族などから得る傾向が強いです。
英国の国民にとって家庭医は正に
「健康の柱」といっても過言ではありません。
自己表現ではなく調和を重んじる日本の患者文化
医療の中で、日本の人々は英国と比べ、質問や意見が少ないことに驚きました。
「日本の患者さんはなんて素直で従順なんだろう…」と思いましたが、その反面、患者さんが医療情報をきちんと噛み砕いて理解しているのか疑問がありました。
コンサルテーションも医師主導で成立してしまうため、患者さんが医師から充分に医療情報を得ていないことが多いと感じました。
ちなみに、イギリスでは日本のように「患者が空気を読む」と言った配慮はあまりなく、質問や意見を直球でバシバシぶつけてきます。(正直医師はその分大変…)
テレビから医療情報を得る日本の人々
では、日本人は医療者以外にどこから医療情報を得ているのでしょうか?
実は「テレビ」だそうです。
信じられない方もいらっしゃると思いますが、
2017年東京都の『健康と保険医療に関する世論調査』によると、78%の方が「テレビから医療情報を得ている」と回答しています。
「テレビは良い情報を流してるし…」と思うかもしれませんが、意外にそうでもありません。
日本では多くの健康番組が放送されていますが、残念ながら科学的に根拠が乏しい情報が多く見受けられます。
例えば、ここ数年紅茶や緑茶がインフルエンザを「無効化」する説が話題になっています。
しかし、研究自体はそれほど質の高いものではなく、結論をいえば、大したデータではありません。
インフルエンザを予防するのであれば、圧倒的にワクチンが効果的なことが科学的に証明されています。
テレビ側からすれば「害がない情報だから良いでしょ」と思うかもしれません。
しかし、日本ではテレビで「医療情報過多」になってしまい、逆に有用な医療情報は薄まってしまっています。
つまり、本来医療者から伝えられるべき有用な医療情報が、優先的に国民に届いていないのです。
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