「先生はなぜCTを撮らなかったのですか?」。
そう指摘したのはある病院の紹介先の呼吸器の先生で、一呼吸おいた彼は、「肺炎の入院患者は基本全例CTが必要です」と言いました。
私は長年英国で診療をしてきましたが、入院を想定する肺炎患者全例に対してCT検査を行っていたわけではなかったため、最初は正直戸惑いがありました。この患者さんは単純レントゲン写真で典型的な肺炎像を認めたため臨床的に診断し、英国であればCTなしでも十分入院は承諾してくれるような患者さんでした。けっして重症な肺炎ではなかったのですが、高齢や独り暮らしであることを考慮し入院適応と考え紹介した症例でした。結局その医師に言われるがまま、CT検査を行いました。
日本のCTに対する「意識の違い」
私が以前勤務していた英国の病院では、「念のために」とCTを撮ると上級医から逆に「なぜCTが必要だったのか」と問い質されることが少なくありませんでした。その検査の妥当性をエビデンスやガイドラインと照らし合わせて説明できないと、「患者に不利益だ」と叱れたこともありました。臨床的に診断がついている場合はなおさらでした。
そのため、帰国したばかりの私は「念のために」CT検査をオーダーすることに葛藤がありました。
ではこ何故日本では他国と比較し、「過剰」と言われる程のCTが撮られているのでしょうか。