風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」 -68ページ目

帰りの中の電車で読み終わった。

うん、面白かった。
なかなか切ない小説だった。

スタートは、ひどく軽いタッチにやっぱりラノベの人だなあと、少し失望したけれど、後半との対比を考えて書いていたと考えたなら、納得がいく。



な……なんだこれ? 失敗作を買ってしまったか?
などと思い読み進めて、徐々にシリアスになってゆく。

その設定のゆえに、何度も考えながら読み進めなければならなかったけど、全体を通せばよくできた小説だった。
いや、よく書けた小説というべきだろうか。

ストン、ではなく余韻を残して終わっていった。

裏表紙の解説に書いてある。

奇跡の運命で結ばれた二人を描く、甘くせつない恋愛小説。彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる。

確かにそうだった。
だって僕は、電車の中ですぐさま最初から読んでみたから。とはいえ、時間はわずか15分ほど。

これは間違いなく、全部読み返すに違いない。全く違った読み方ができるだろう。

切ない。
この小説を一言で表現するなら、こうなるだろう。

設定に無理はあったとしても、僕はこんなタイプの小説が嫌いではない。
いや、好きだ。

なるほど、このタイトルもよくできていると納得する。

いつか、オマージュを書いてみたい。
違う設定さえ浮かべばだけどね。

小泉今日子/あなたに会えてよかった



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僕の母方の祖母は女学校の先生をしていた。
僕の幼いころに死んでしまったので、あまり長い付き合いはなかったけれど、瓜実顔でそれはきれいな人だった。

おじいちゃんはというと、でっぷり太って、団子っ鼻をしていて、大酒飲みだった。
でも、柔和な顔をしたおじいちゃんだった。

僕の母は、不幸なことに、おじいちゃんに似てしまった。
おばあちゃんに似ていれば、きれいだったろうに(笑)

僕の父はお酒が飲めなかった。いわゆる下戸だ。
母はもちろん、お酒など飲まなかった。

隔世遺伝。僕の酒飲みはおじいちゃんから受け継いだようだ。

食糧難の頃、そのおばあちゃんがお芋を背中に背負って家まで届けてくれたそうだ。
母は一俵といったけれど、小柄で華奢なおばあちゃんに、それは絶対無理なんじゃないかと思う。でも、真実はわからない。

届けて早々、ゆっくりする間もなく帰っていくのだという。でないと、夜になってしまうから。
信号もなにもない道を、どんどん飛ばすバスで2時間はかかる距離だ。僕なんて手ぶらで歩いてもめげてしまいそうになる長さだ。

バスで往復4時間……。
めげるというより、歩けないだろう。



重いお芋を背負って朝早くに家を出て、届けたらすぐさま引き返す。なんてことなんだろう。

これを、愛と呼ばずに、何と呼ぼう。

日本の母たちよ、強くあれ。とてつもなく優しくあれ。
子供たちの記憶に強烈に残り続けるように。


泣きたい時に観る CM 3選



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降り積む雪が、遠く白く大地を埋め尽くす。
流した涙が、知らず知らずに道を塞ぎ思いを狭くする。
僕たちは、思わず立ちすくむ。

悲しみを笑うように、心を錆びさせてきたもの。
叶わぬ夢を笑うように、その足を縛ってきたもの。

溢れる涙を見られぬように、苦しむ姿を悟られぬように、君も僕も生きてきた。

悲しむ時を越えたら、肩や背を重くするものは遠くに投げ捨てて、笑ってみようか。

そしてこれからも、どうしようもない悲しみを抱えながら生きていく、そう、覚悟を決めてみようか……。

悲しむ人は幸いである、
その人は慰められるであろう(マタイの福音書 5・4)


悲しいだろう みんな同じさ
おんなじ夜を 迎えてる
風の中を 一人歩けば
枯れ葉が肩で ささやくよ

どうしてだろう このむなしさは
誰かに 逢えば 静まるかい
こうして空を 見上げていると
生きてることさえ むなしいヨ

これが自由というものかしら
自由になると淋しいのかい
やっと一人になれたからって
涙が出たんじゃ困るのサ
やっぱり僕は人にもまれて
みんなの中で生きるのサ

人の心は 温かいのサ
明日は も一度触れたいな
独り言です 気に留めないで
時には こんなに思うけど
あしたになると いつもの様に
心を閉ざしている僕サ


吉田拓郎/どうしてこんなに悲しいんだろう


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世の中で一倍怖いのは人間だ。

中学の頃に聞いた、友人の父親が言ったという言葉だ。
もう何十年も過ぎたというのに、心の隅に残っている。

それは一面当たっているのかもしれない。
同族を私利私欲で殺す生き物、陥れる生き物、裏切る生き物を、人間以外に見つけることが僕にはできないから。

それでも、と思う。
それは一部の人間の話なのではないだろうかと。

けれど、とも思う。
けれど、もしも人の心が読めたなら、人は傷つき打ちのめされて、生きていくことが困難になるだろうと。

疑いは不安を生む。不安はさらなる疑念を呼び、心を窒息させる。
信じられるものが、この世にあるのだろうか。
もしもあるとしたならば、それは心の安らぎ、無上の喜びに違いない。

これこそはと信じれるものが
この世にあるだろうか
信じるものがあったとしても
信じないそぶり



イメージの詩/吉田拓郎



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急流は木の葉を飲み込み、渦を巻いて駆け下る。
そそり立つ岩肌も、遠い山並みも目に新しく、迫る岩場も勢いで乗り切る。
流れの先には大海原があると、信じて進む。

それはあたかも、若さというものが永続すると信じて疑わないさまに似ている。

時に柔らかく、時に激しく、心を揺らし惑わせ、暖めたものが、この世に無数にあると信じてやまなかったころ。

若さという名の眩暈。恋という名の波紋、錐もみの渦。
それはまるでお祭り騒ぎ。

けれど時は訪れる。やがて屋台が店じまいを始め、三々五々人々は家路につく。

一条の光が雲間から差すときを待ちながら、祭りの後に生じた空白のページに、人は何を書き込むのだろう。

祭りのあと/吉田拓郎



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「行ってきます」ふわりと正座した娘は、ゆっくりと腰を折った。

何か聞こえたのか、ふっと懐かし気に笑い、目を閉じた。

「父さん、寂しくなるかな」ちょっと眉をしかめて、ひとつ鼻をすすった。

「さ、行こうね」何かを吹っ切るように、娘はこくこくと頷いて、写真の中で笑う母親に手を合わせ、その写真立てを胸に抱いた。

「生んでくれてありがとうね。あたしも、お母さんに負けないような母になります」



春は桜、夏はひまわり、秋はコスモス、冬には水仙。

すべての花たちが、風に翻弄されながら日差しを受けるように、寒さに震え、道に迷う日は、愛してくれた人がいたことを忘れぬように。

愛しているよと口にはしなくとも、心砕いた人がいることを忘れぬように。


さだまさし/秋桜


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最近あまり遭遇しないけど、鎖につながれた犬が庭先でウォンウォン吠えることがある。
突然吠えられると、肩がビクッとしてしまう。

前妻がこんなことを言った。
「あそこの道に犬がいるのよ」
「うん?」
「そこの道を右に行ったところ」リビングで壁を指差す。
「うん」
「それがすごい吠えて、○○が怖がっちゃってその道通りたがらないの。前って言っても、道のこっち側も嫌がるの」
○○とは、そのころ、どうだろう3歳ぐらいかな。娘だ。

「うん」
*うんばかり言っているけど、興味がないわけではない。
「○○がさあ、犬嫌いになっても困るし、何とかなる?」
「ああ、分かった」

お休みだった僕は、自転車でその犬のところまで行った。
何かの工場だろうか、閉まったシャッターの前に犬小屋があって、その前で吠えること吠えること。

自転車を降りた僕は、鎖の長さを確かめてから犬の前に向かった。

「な~んだ、なに吠えてんだ、ああ?」
バウバウと吠える犬。
「な~んだ、んん? なぁに吠えてんだ、おぉ?」
さらにバウバウと吠える犬。

「寒いのか? おぉ? 寒いか? あぁ?」
威嚇することなく、怯えることなく、堂々と尋ね続ける。

「な~んだ、なに吠えてんだ。腹減ったか? おぉ?」
自分の頭も動かしながら、強弱をつけながら、堂々と言葉をかけ続ける。
そう、攻防が続くのだ。

すると、バウ! がバフになって、最後には、声にもならない空気だけのプフッになる。
それで勝負がつく。
上下関係を見極める犬には、上に立つことが何より大事。

「お腹が空いてんのか? ん?」今度は優しく問いかける。
ぷふっ
「ちょっと待ってろ」

自転車にまたがって部屋へと戻る。

「どうだった?」
「うん、大丈夫。なんか犬のえさになりそうなもんある?」
僕はビスケットみたいなものを持って、娘を自転車の前に乗せて再び犬のところへ向かった。

「ワンちゃん怖いか?」
「うん」
「大丈夫だから。お父さんがいるから大丈夫だからね」

娘は怖かったろう。通りのこっち側も嫌がったのに、犬の目の前に自転車を止めたのだから。
「大丈夫だから」
娘は気づいていたはずだ。犬が全く吠えなかったのに。

「ほら、えさをあげようか」僕はビスケットをひとつ投げた。
犬は大喜びでむさぼり食べた。

「ほら、○○も投げてごらん」
不器用な手つきで娘が投げる。それも犬は喜んで食べた。

「犬が食べてるときに、手を出しちゃダメだよ。えさと間違えてパクッて食べられちゃったら大変だからね」自転車の前椅子の上で娘はうんうんとうなずいている。
「ほら、しっぽを振ってるだろ。あれはね、喜んでるんだよ。でもね、手を出しちゃダメだよ」

「ワンちゃんにえさを上げた!」部屋に帰った娘は嬉しそうに母親に報告した。
「お父さんはすごいねえ」前妻は娘の頭を撫でて、僕を見た。

前妻は知っていた、吠える犬を僕がおとなしくさせてきたところを、何度も目の前で見てきたのだから。

「お父さんと、ワンちゃんのところに行く!」次のお休みの日、期待通りの娘の要望に応えて、僕は自転車を走らせた。

その犬は僕たちを見つけてパッと立ち上がり、しっぽを振った。
「喜んでるねえ」
「うん、○○ちゃんとお父さんが来たって、喜んでるよ」

犬が鼻にしわを寄せて歯をむき出しているときがある。あれは多分に恐怖に支配されているはずだから、近づかない方がいい。窮鼠は猫をかむ。

噛まれた時の対処法をひとつ。
絶対に引いてはいけない。
怖くたって、ぐわっと犬の体を捕まえて、噛まれたところをグッと押し込むこと。

犬が反吐を吐きそうになって歯を離しても、二度とやらないように押し込み続けること。
もう、口も避けんばかりにぐぐぐっと押し込むこと。

中途半端にやると、再び噛まれる恐れがある。

誰かに教わったわけでもなく、犬の行動学も心理学も知らないけれど、僕が実体験でつかみ取ったことかな。

僕は横丁の犬使い。

犬と猫、どっちになりたいかと訊かれたら、僕は猫になりたい。

久しぶりに聴いたけど、やっぱりこの歌は変だ。面白い。

さだまさし/私は犬になりたい




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「あらぁ、また太っちゃったのかしら」
「またって、ダイエットしてたんじゃないのか」
「してるわよ」
「誰が? いつ?」

「体重計が壊れたのかしら」
「どうしてそこに持ってく? 俺、いつもと同じだったよ」
「じゃあ、あんた痩せたわ、きっと」

「壊れてないって言ったつもりだけど、なんでそんなに強引? ……あのさ、片足上げたって一緒だと思うんだけど。カロリー消費? それを日本語でさ、焼け石に水っていうな」

「それよりあんた、明日どうする」
「何が?」
「おべんと」
「お弁当?」
「いる?」

「い、いるよぉ! お……俺にダイエットしろってか? なんかの仕返し? 俺が痩せても、お前には反映しないって、分かってるよね?」

「いるのね」
「はい……ぜひ、お願いします」

頑張れ、日本のとうちゃんたち。
それでも、縁あっての家族。

関白失脚/さだまさし


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今は使われ方が変わってしまったけれど、こだわりというのは、本来は良いものではなく「つまらぬこと」を指すのだと、ずいぶん以前のブログに書いた。

その声はこう言った。
「こだわらなくていいんだよ」

これはこうだ。これはこうだね。これはこうだろう。
ほら、こだわるから大変になるってわかるかな。
こだわらなかったとしたら、どうなる?

ひとつひとつ例を挙げて教えてくれた。
僕はそれを、一つ一つ考えた。こだわらないように考えた。そして、なるほどそうだなあと、かなり納得していた。

そう、私生活は別にして、僕は仕事に関してはかなりこだわるたちだ。そして、疲れ切ってしまうところがある。なぜなら、僕のやり方は至極当たり前であるから。
当たり前ができない人たちに囲まれて、僕は日々疲弊していく。

目が覚めてみれば、どんな例を挙げてくれたのかなどすっかり頭に残ってはいなかったけれど、「こだわらなくていいんだよ」の言葉だけは残った。

僕に何かを教えてくれるような声を、僕は初めて聞いた。
そのせいではないだろうけれど、少し寝過ごした。

また聞けるといいな。
質問したいことがたくさんあるんだ。

まず第一の質問はきっとこうだ。
僕は、何のために生まれてきたんだ?

生きるために仕事をして、お腹が空いたら何かを食べて、明日の仕事のために眠る。

そんな意味のない人生を、僕は選んできたのかいって。

春来れば 花自ずから咲くように
秋くれば 葉は自ずから散るように
しあわせになるために 誰もが生まれてきたんだよ
悲しみの花の後からは 喜びの実が実るように

いのちの理由/さだまさし



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おんぼろアパートを出て、大家さんちの駐車場を抜けて左に行く。十字路を右に曲がってすぐ左に古びた団地があった。

そう、僕が銭湯へ向かう道の途中にその団地はある。その入り口近くに公衆電話があった。

外はもう暗くなっていた。もう、お金がない。学校に行く電車賃もない。



「もしもし」僕は受話器を握りしめた。

「○○?」姉の声が返ってくる。
「かあちゃんは?」
残り少ない十円玉は、無情にも早いペースで吸い込まれてゆく。
それで何か食べられただろうけれど、残した十円玉は、電話を掛けるための僕の命綱だった。

「掛けなおすから、番号は」母の声。
電話ボックスの中で番号らしきものを必死で探す。もう投入する十円玉がない。

「○○○って書いてある」僕は振り絞るような声を上げた。
「掛けなおすから」
間に合った。電話は切れた。

受話器を戻した僕は、夜の電話ボックスで、かかってくるはずもない電話を、待ち続けた。


案山子/さだまさし



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