風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」 -132ページ目
前世は何だったと思う? ブログネタ:前世は何だったと思う? 参加中



突如炎と黒煙がまわりを包んだ。
押せども引けどもドアは開かない。窓も開かない。車の中は一気に熱くなった。ガソリンの匂いが鼻を突く。息が苦しい。
そして、子供の泣き叫ぶ声。
僕はドアのガラスに肘打ちを噛ました。うなり声を上げながら何度も何度も肘を打ち付けた。やがて骨が砕けた。

今度は頭をぶつけた、幾度も幾度もドアのカラスに向かって頭突きをくり返した。
そんなことで割れるわけはないことは、僕が一番よく知っていた。
子供の泣き叫ぶ声。
僕は絶望感に襲われながら、炎で熱くなったガラスに、流れ出た血でぬるりとする頭で頭突きをくり返した。

無理だと分かったなら、どうして僕は子供を抱きしめてあげなかったのだろう。抱きしめたまま一緒に死んでやらなかったのだろう。いや、それでも僕は、一縷(いちる)の望みに掛けたのだ。


これはもちろん実話ではなく、ましてや微睡(まどろ)みの中の夢でもないのだけれど、現実の僕は曲がり角が怖い。十字路であろうと三叉路であろうと、信号のない見通しの悪い曲がり角が怖い。

あれは下北沢から池の上に向かって歩いていたときだろうか。緩い上り坂、十字路のたびに立ち止まって左右を確認する僕に、同僚が言った。
「○○さん、変ですよ」
そう、確かに変だ。静かな住宅街の昼間、車が走ってきたら音で分かる。夜であるならライトで分かる。それをわざわざ立ち止まって左右を確認するのは明らかに奇妙に映るだろう。
この癖は今はもう大分薄れてきたけれど、いまでも曲がり角は歩くスピードを緩め、前屈みになって左右を確認する。

それから僕は、子供の泣き声が嫌いだ。かといって、子供が嫌いなわけではない。小さい子供の笑い声やはしゃいだ声、それを聞いていると知らず知らずに微笑んでいる自分がいる。
幼い子の笑顔は、まさに心がとろけるようだ。

でも、泣き声は嫌いなのだ。泣いている理由が分かっているのならまだいい。
あぁ、この子は何かを買って欲しくてだだをこねているな。あぁ、この子はこの場所を離れたくないのだな。
あぁ、この子はだっこして欲しいのだな。

でも、理由の分からない泣き声というのがある。もちろん他人様の子供の泣く理由など分かるはずもないのだが、その火の付いたような泣き声を聞くと、僕が気が狂いそうになる。本当に気が狂いそうになる。

一瞬迷子になった幼い子を見ると、心臓がトクンと跳ねる。だから僕は、
「お母さん、いないの?」と声を掛ける。幼い子は、今にも泣きそうな目でこくんと頷く。
親はというと、子供の存在を忘れたかのように買い物かごを下げてのんきに買い物をしていたりする。あの神経が僕には分からない。

この二つの謎を合わせてみると、冒頭の物語が出来上がる。
僕は、助けを求めて泣き叫ぶわが子を、この手で救うことができなかった父親であるのかもしれない。
それが、前世の僕であるような気がする。

僕は車を運転しない。
あの小道から、あの空き地から、今にも子供が走り出てくるのではないか。
今にも、サッカーボールが転げ出て、直後、小さな子が走っているのではないか。
自転車が信号を無視して走ってくるのではないか。
あの公園から、頼りなくも走ることを覚えた幼子と、それを追いかける母親が不用意に出てくるのではないのか。

僕が運転していて安心できたのは、高速道路だけだった。事故が起こっても、死ぬのは自分だけですむだろうから。

教習所で適正テストのようなものをやらされるのだけれど、結果は、「優良なドライバーになるでしょう」的なものだった。
でも、その前に、僕の精神が摩耗すると感じた。だからもう、車は運転しない。
結果、ゴールド免許だ。運転を続けていたとしても、そうだったはずだけれど。

そうだそうだ、車のある時代に生きたということは、輪廻のサイクルが早いはずだ。ということは、僕は修行の足りないポンコツ魂なのかもしれない。
ポンコツだからこそ、迷い苦しむのかも……。







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あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」-燃える車
ときめく歌教えて ブログネタ:ときめく歌教えて 参加中


左の膝が痛いです。右の太ももの上辺りも痛いです。右肩も痛いです。
特に左膝はひどいです。
スーパーから帰って冷蔵庫に物をしまうとき、しゃがみ込んだら激痛が……
思わず、「うっ!」って唸っちゃいました。

何でかって?

痴漢を捕まえ損ねたからです。
12時間の夜勤労働を終えた午前11時前頃、それは起こったのだね。
今からざっと4時間ぐらい前。

僕の労働時間は……今日が12時間、昨日が14時間、一昨日が12時間、一昨昨日が12時間……
かといって、引き継ぎがあるので実際の勤務時間はもっと長い。
多分僕はこの9日間で110時間を軽く超える仕事をした。睡眠時間は50時間あまり、疲労のひどい体には明らかに睡眠不足だ。 
こんな状態の9連発。そしてようやくお休み。
お天気はいまいちだけど、気分はうきうき。

そこで出ましたね、痴漢野郎が……

何で痛めたかって?
「痴漢です! 捕まえてください!」
その女性の声に反応したであろう男に、突然後からタックルされたからです。
そう、血相を変えて全力疾走で駅の構内を走る僕が、痴漢と間違われたのです。

ホームを走り、途中肩から落ちた鞄も気にせず、長い階段をどうやって降りたか分からない状態でこなし、スイカで改札を通り、目指す男の後ろ姿を追いかける、その刹那でしたね。

まあ、もちろん、「違います!」って被害女性が証明してくれたけど、もう後の祭り。

「逃げられたじゃねぇかよ!」
駅の構内に、立ち上がった僕の怒声が響き渡った。
そしてそのまま振り向きもせず、僕はさっき走り出た改札に向かった。
僕は誰とも話したくなかった。

あ、鞄は改札に届いていたよ。

「泥棒ですか?」
「痴漢ですよ」
「あぁ、泥棒って言ってたから」
多分届けてくれた人が、そう言ったのでしょう。感謝です。
「間違われて捕まっちゃいましたよ」
あぁあぁ、駅員さんはねぎらいの目をした。

痴漢に逃げられたのはこれが二度目。
僕の脚力も衰えたもんだ……。
まぁ、夜勤明けでベストコンディションであるはずはなく、フルパワーは望むべくもないのだけれど。

でも、逃がしちゃったら何の意味もない。

もう、こんなことしない。二度としない。金輪際しない。
この無用な正義感が何かの役に立ったことなどない。
今の僕は、くさくさした気分でそう思っている。

他のみんなと同じように、僕はもう知らんぷりで黙っている。
今の自分はたとえようもない気分で、そう思っている。


誰にも話せず、感想をもらうこともなく、僕はブログを書いている。
膝がひどく痛い。仕事に支障が出なければいいけど。
悲しさと悔しさで僕の心は死んでいる。

僕はひとりぼっちだ……。

お休みは、掃除をして洗濯をして、久々の外干しだぁ! なんて、
もう、そんな気力もなく……


ときめく歌でも何でもないけれど、そんな気分の時は、この歌がいい。
短編小説「翳りゆく愛に」でも使った、

saura「キミガタメ」



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君という人がいて、君の両親や兄弟がいて、君の友達がいて、そんな中で、君は君で。その違いは何かといえば、それは視点。
視点はそれぞれにひとつ。わかりやすくいえば君という個人と大勢の他人なのだけれど、その他人は何かといえば、やはり個人なのであって、個人とは何かといえば、その人の物の見方考え方に左右される唯一絶対の存在。

要はそれぞれが個であるからには、それぞれひとつの世界を構築している。そして、それは他の誰にも代わりようがない。
言われなくても分かっているとおり君は生まれてから死ぬまで唯一の君なのです。

そして周りの人たちも皆、ただひとりの存在なのです。
だから人がひとり死ぬごとに、世界がひとつ消滅するのだね。

僕がここで何を言いたかったかというと、「親しき仲にも礼儀あり」ということを忘れてはいけないということだね。不思議な論法だったかな?
親しき仲にも礼儀だからこそ、そこら中の人に礼儀を欠いてはいけないということになるね。

僕は地上に存在する数多(あまた)の人々の中で、無礼な人間を蛇蝎(だかつ)のように嫌う。それはこのことが分かっていない人だから。

だからたとえば、飲食店とか、スーパーとか、デパートとか、まぁどこでもそうなのだけれど、偉そうにしている人間がいると凄く腹が立つ。
電車が事故やら自然災害で運休とかしていると、駅員に噛みつく客の映像が流れたりするけど、その駅員さんに文句を言ったって電車は動かないことは明白。だからあれは腹立ち紛れであることを本人だって分かっている。

いつだったか、スーパーで研修生が何かをやったんだろうね。研修生っていうのは腕章をしてたから分かったのだけど。それが会計操作が遅いとか、数が間違えているとか、そんなことだったかな? それでもって、うだうだ文句を言っている体格のいいというか太ったおじさんがいた。後に並んでいるのは僕、その後にも人が並んでいる。

そのおじさん、ミステイクは改まっただろうし、レジ担当も頭を下げているのだけれど、険を浮かべた顔でいつまでも文句を言っている。研修生のレジ担当の女性は真っ白な顔色でさらに頭を下げている。

そのとき、舌打ちが聞こえた。
こ……これは、やばいぞ……。

絶対やばいと思うなぁ……。
こんなシーンは避けたいなぁ……。

「早くしろ、おらぁ!」唸(うな)り声が聞こえた。
ほらやっぱりぃ……。

レジの女性は自分のせいでまた怒られると驚いて振り向く、その振り向いた先にいた男は、レジの女性ではなく、文句を言っている男をにらみつけている。

「早くしろ。後並んでんだろ」軽くレジ台の下をコンと蹴った。
おじさんは、そそくさとカゴを両手で持ってレジを離れた。

ちなみに蛇蝎って、ヘビとサソリだったかな?

ん? 文句を言ってる客を威嚇をしていた男は誰かって? 
僕ですけど。
僕はそれほど偉そうな奴が嫌いなのです。だからといっていつもこんなことをしているわけではありません。

ご心配なく。あんなもん気にせんでええよ、とレジの女性に声を掛けるのは忘れなかったよ。

だから君も、自信を持って、宇宙でただひとりの君でいなさいね。





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スピッツ 「ロビンソン」
僕たちは出口に向かっているのだろうか。
それとも、どこかの入り口に向けて進んでいるのだろうか。
その入り口は、お風呂のように「男湯」「女湯」と分かれているのだろうか。

ここは通過点なのかもしれないけれど、元へは戻れないネズミ取りの罠なのかもしれない。
空は雲で暗くなった、明るい南が確認できない。

昨日に戻ることはできない。
でも、昨日をキャンセルすることはできないのだろうか。

明日は、何色だろう。
その色を、僕はこの目で見ることは叶わないのだろうか。

君の声が、よく聞き取れなくなってきた。

君が好きだといったこの手、今の君とはきっと関係ない話だけれど、爪が少し伸びたみたいだ。
その爪の先が、ズボンのポケットの中でちょっと引っかかるよ。



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イーグルス「ホテル・カリフォルニア」


マイクの種類もたくさんあって、よく耳にするのは全指向性とか単一指向性とかなんだけど、
人間の耳は何だろう?

まあ、耳たぶの形状から前の音を拾いやすくなっているはずだろうことは分かる。前の人の声が聞き取れなかったときは、はい? と手で大きい耳たぶを作ったりもする。
でも、後の声もよく聞こえる。とても良くできた全指向性の集音器官なのだろうね。

ところで、この耳が、とても鋭い単一性を持っているっていうのは、経験的に君も知っているよね。
そうそう、集中して聴かなければならない人の声にポイントを合わせられるということ。
それが好きな人の声だったりしたら、遠くにいても聞き分けられるってこと。
どんなにザワザワする環境にいても、まさにピンポイントでそれを拾えるんだね。

胎児の頃、目も見えなければ(実は外の景色が見えているという説を僕は信じているのだけれど)、鼻も匂いを嗅げない頃、耳だけは聞こえるんだよね。だから、五感の中で耳が一番長い付き合いになるんだね。

野生の動物が、ものすごい数群れている中で自分の子を見分けるのは、匂いとか声じゃなかったかなぁ。
いい加減男になりそうなので、これは自信がないと言っておきます。


さて、僕が何を言おうとしているかというと、たとえば何かの集まりがあったとしよう。
そのとき、恋する人がその場にいたら、離れた場所から小さい声で呼びかけてごらん。もちろん、自分の名前には誰しも鋭く反応するから、名前なしでね。

ぱっと反応したら、その人は君が好きかもしれない。
でも、反応しなくても落胆はしないように。それは君の声が小さすぎたのかもしれないのだから再びチャレンジだ。

愛の深さを、耳で確かめてみよう。

いい仕事を期待しているよ d(-_^) グッジョブ!!




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水樹奈々 「深愛」

代悲白頭翁(3-2)    <劉廷芝>
だいひはくとうおう          <りゅうていし>

古人復無し 洛城の東         今人還對す 落花の風
こじんまたなし らくじょうのひがし         こんじんまたたいす らっかのかぜ

年年歳歳 花相似たり         歳歳年年 人同じからず
ねんねんさいさい はなあいにたり        さいさいねんねん ひとおなじからず

言を寄す 全盛の 紅顔子      應に憐れむべし 半死 白頭の翁 
げんをよす ぜんせいの こうがんし        まさにあわれむべし はんし はくとうのおきな

此の翁の白頭 眞に憐れむ可し   伊れ昔は紅顔の 美少年
このおうのはくとう しんにあわれむべし      これむかしはこうがんの びしょうねん



ご存じのように、劉廷芝(りゅうていし)は中国初唐の詩人ですけど、確か28歳ぐらいで亡くなっている。殺されちゃったんじゃなかったかなぁ。多分、この詩がらみで。でも、政治的なものではなかったはず。
よう調べんとブログを書く男です。 ヾ(;´▽`A``アセアセ


意味はこんな感じです。

昔の人は洛陽の東の春を再び見ることはないけれど、今の人も昔の人と同じように、花を散らす風に向かい合っている。
毎年毎年花は同じように咲いて同じように見えるけれど、年々それを見る人は同じではない。
だから言いたい。今を盛りの紅顔の美少年達よ、半ば死にかけている白髪の老人を憐れと思いなさい。
この老人の白髪頭は誠に憐れむべきだが、これでも昔は紅顔の美少年であったのだ。



ここに出てくる花は、桃だったと思います。日本でも、花見というと、昔は桜ではなく梅だったと思うなぁ。
また、よう調べもせんと書く男です。 ヾ(;´▽`A``アセアセ


「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同」という一節はあまりにも有名ですね。
劉廷芝は美男子で琵琶の名手だったけど、素行が悪くて官位には就けなかったらしい。どのように素行が悪かったのかは、知りません。 ヾ(;´▽`A``アセアセ


東京の桜も散ります。接ぎ木で作るソメイヨシノの寿命は60年ほどだとか。人間で言うなら一代限りの寿命ですね。


誰かが言ってた。
男はいらぬ物を着込んでいく生き物で、女は脱ぎ捨てていく生き物だと。

きっと男は、同じ学校を進級していく生き物。だから、上級生としての責任や悲哀も滲む。でも、女は年々歳々卒業入学を繰り返しながら生きていくのでしょう。

そんな春、君は何から卒業しただろう。そして、どこへ向かうのだろう。

外は雨。




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稲垣純一「ドラマティックレイン」
流れる時が紡ぎ出す謎と、時が白日に晒す嘘と、時に流されてゆく誠と。
そして、揺らぎ始める足下と……。

揺らぐ心と、真実を求める思いと、静かな夜陰に降り積む雪に埋もれていく、熱と。

でも僕は、君に嘘はついてはいない。
だから無論のこと、口から出ませであるはずがない。

時も、心も、思いも、雪も、払いのけてごらん。
真実はそこに、確かにある。
さぁ、捜し物ゲームだ。

そこに、僕はいる。 

かつて僕が君を捜し出したときは、まさにこんな感じだった。
だからこそ僕は、心打ち振るわせて歓喜したんだ。 
                                          


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井上陽水{いっそセレナーデ}

何線使ってる? ブログネタ:何線使ってる? 参加中


何線を使っているかって?
それは教えられません。秘密です。

でも、都内に乗り入れている線で、もっとも混み合う電車と言えば分かる人も多いでしょう。

東横線渋谷駅、思い出がたくさんあります。
みんなと酒を飲みに行って、渋谷駅から乗り込み、ん? と気がつくとまた渋谷駅だった。
ま、桜木町から折り返してきたんですけどね。

で、あ! 仕事だ! と、改札を出て、し……仕事じゃねぇよ……とまた電車に乗り込む。
単なる酔っぱらいですけどね。

だから僕は、何度も桜木町に行っているけど、その街を知らない男です。駅止まり。

改札を出ると左に階段。その通行表示が変わったのを覚えている人いますか?
どっちだか忘れましたけど、右左が逆になったのです。
あれは良い措置でした。人の流れが乱れるのを防げました。
今頃やっと気がついたのか! と思いました。


あぁそうだ、あと、電車内のことだけど、人と人との間から、
「てめえ! 痴漢してるだろ!」
と、男の頬を叩いたこと。
「し、してないよ! な、何言ってんだよ!」
若い男の反論。

「ちゃんと見えてんだよ!」
まわりの人の注目を浴びて僕は困ったけど、その女の人が半分振り返って僕に頭を下げたことで救われました。
ま、これは渋谷駅の思い出ではないので、ここまで。

あ! これは井の頭線だったかも (@Д@;
嘘つきになりそうです……。


そしてもっとも思い出に残っていることは。

渋谷駅で電車から降りるとき、お母さんに抱かれた幼いお子さんの指が閉まったドアに挟まれていたこと。
若いお母さんは、必死でそれを何とかしようとしていた。
でも僕は、人の流れに押されて、電車を降りて流れに乗ってしまった。

幼いお子さんです。その小さな指がドアの隙間から抜けないはずはないのです。ゴムのパッキンも付いているのだし。

けれど、いくら人が多かったとはいえ、かき分けても戻ることはできたはずなのに、それを見捨ててしまった。
電車を降りたあのときから、僕はずっと、その残像に苦い思いをしています。

そのお子さんも、もう所帯を持っていてもおかしくはないはず。
そんな昔の話です。

でも、後悔する生き方はするべきではない。
何かに接してそう思うとき、僕はいつもあの光景が目に浮かびます。

だって僕は、心底困った母子を見捨てたのですから。
これは多分、僕が命を閉じるまで続くでしょう。
自業自得です。








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東横線渋谷駅
$あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」-東横線渋谷駅


これはぜひとも東横線と歌ってください。


西島三重子「池上線」
ほら、また見えた。

ん? 何がって? 君の天使たちだよ。

君の天使たちはね、君が生まれてからずっと一緒にいたんだよ。
君が嬉しいときも、君が悲しいときも、君が泣いたときも、君が困ったときも、君がふてくされたときも、ずっと一緒にいた。

君が好ましくない方向へ行こうとしたとき、天使たちは慌てふためいた。そして、その背中の羽をばたばたとさせて、君を違う方へ導こうとした。
それはうまくいったときもあれば、うまくいかなかったときもある。

良い方向へ導けたときは、天使たちはその羽を喜びで満たした。でも、力及ばなかったときは、その羽をそよそよと動かし、悲しみに打ちひしがれた。

天使たちは、君が呼んだものではないよ。
君が生まれたとき、君を助けようとしてやってきた天使たちだ。それからずっと君に寄り添っている。

幼い頃は、君の目にその天使たちは映っていた。でも、君が長じていろんな情報に惑わされ始めたとき、君の耳は閉じた。その目は見える物、その手は触れる物しか信じなくなった。

あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」-天使のささやき

耳を澄ませてごらん。
天使の羽音を聞いてごらん。

天使たちはいつも、君を助けようとしている。
どんなに苦しくたって君はひとりではないことを忘れちゃいけない。
ひとりぼっちだなんて言ったら、天使たちはその羽をしぼませて、きっと泣く。

君に明日が来る前に、天使たちにはその羽を明日に向かって羽ばたかせている。
君を守ろうと、眦(まなじり)を決してね。
その羽を、ギリシャ神話のイカロスの翼にするもしないも君次第だ。

ありがとうと、呟いてごらん。
ありがとう、と、心を込めて三度呟いてごらん。
そのとき、天使の羽は、最強になる。


君の天使たち─2─


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来生たかお 「はぐれそうな天使」


「わぁ、お兄ちゃんやっと見えたね!」
「うん、やっと見えた。俺はお前よりちょっと前から見てた」
「あはは、お兄ちゃんが一番だね! 僕は二番!」
「うん、一番と二番だ」

「お兄ちゃん、あれが川っていうやつだね」
「うん、きっとそうだ。たくさんの水が流れてるんだ。ほら、向こうに見えるのがテニスコートってやつに違いない」
「じいちゃんが教えてくれたとおりだね」

「ワクワクするね、お兄ちゃん」
「うん、すごく楽しみだね」



「ほらお兄ちゃん、水が落ちてくる、コレが雨って奴だね」
「うん、雨は嫌だね。首がぐらぐらするよ。風も嫌だ。じいちゃんが風は気をつけろって言ってた」



「でもさお兄ちゃん、あまり人が通らないね……」
「うん、あまり通らないね」
「それにさ、たまに通る人も僕たちを見ることもない。変だと思わない?」



「じいちゃんが言ってたことと、ひとつ違うことがあるって気がついてたか?」
「何?」
「そこらじゅう緑色だって」
「それが何?」
「じいちゃん、そんなこと言ってなかった……」

「緑色……緑色……何だろう」
「俺さ、これって、葉っぱってやつじゃないかと思うんだ」
「葉っぱ?」
「きっとそうだ! 俺たちさ……」

「嫌だ! 聞きたくない!」
「俺たちさ」
「嫌だ嫌だ!」

「俺たちさ、一番じゃなくて、遅れたんだよ」
「嫌だよぉ……」
「だから、誰も見ないんだ。人間たちのお花見は終わったんだよ。俺たちは遅れて咲いた桜なんだ。きっともう、誰も愛でてくれない」
「お兄ちゃん……嫌だよぉ」




「あ、ほら人が近づいてきたよお兄ちゃん。女の人だ! あれがカメラに違いない! ほら、お兄ちゃん笑おう、笑おう! やっと気づいてくれた人がいる!」




「お兄ちゃん? お兄ちゃん!? 返事して! お兄ちゃん!!」

お花見の頃に咲きたかったねお兄ちゃん。みんなに見てもらいたかったね。僕ももう景色がよく見えなくなってきた。そろそろ散るのかな。
またいつか会おうねお兄ちゃん、満開の頃にこの木の下で。


——FIN——



同じように見えても、今年の桜は去年の桜とは違う。僕は最後の一輪まで、いや、遅れて咲く桜をこそ、愛でたいと思う。幹からちょこんと咲く桜が僕は愛おしい。



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コブクロ「桜」