風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」 -123ページ目
今は梅雨のただ中だけれど、やがてそれも明け、日差しの照りつける夏がやってくる。
陽炎揺れる夏。

僕は夏を、あと何回経験できるだろう。

〝人生は短い。人間に与えられた時間は、束の間の虹のごとくである〟
                                   (ルキウス・アンナエウス・セネカ)

書棚に並ぶ本の背表紙を眺めて、心浮き立たせることはできるけれど、僕たちが手にとって読める本は、きっと一冊限りに違いない。

人生という名の一冊。

小さい頃、食事の前には両手を合わせて、その親指の間にお箸を挟んで頭(こうべ)を垂れた。もうその習慣は失せてしまったけれど、大事なことなんだなと思う。

だから、人生という書物も、ありがたみを感じながら読み進めなければならないのだろう。
苦労ばかりと感じたとしても。

できうるならば、僕は君と同じ本を、読んでみたい。



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ヒルクライム「春夏秋冬」



やっとお休みになりました。16連勤でした。本当はもっと続く予定でしたが、僕の身が危ないということで、急遽休みになりました。
急だったのでシフトの調整のために15時間働いてきました。責任者不在の時間を作らないためです。
で、わかったでしょ? 僕が疲れているからというのがお休みの理由じゃないのが。トドメを刺すように15時間労働だし。

何で危ないかって?
言っていいのかなぁ。やめておいた方がいいような気もするけど。

え? どうしても聞きたい?
うーむ、実はね、僕を狙うスナイパーが本格起動するかもしれないからなのです。
怖いでしょ? 意味不明で怖いでしょ?

何それ? って訊かれても答えません。
スナイパーの怨念に火を点けるからです。

こんな環境の中で、僕は誰にも何も言わずに16日間働きました。まあ、誰に言ってもどうしようもないことだし、だから僕は平然と(見えるように)仕事をしました。
でも、もうそろそろ危険だろうと判断が下されました。だから急遽お休みです。
日曜日に気をつけろ! って感じです。

けれど、来週こそ襲われるかもしれません。だって、来週のお休みの予定すら立っていないから。
もうちょっとしたらスナイパー絡みで、来てくれって電話が来るかもしれません。でも行けません。だって、お酒を飲んでしまったから。
ということで電話が鳴る前にそろそろ寝ます。皆様のブログへの訪問は後日と言うことで。
ま、僕が無事だったらだけど。



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Cocco 「強く儚い者たち」



吹き抜けた風にチリンと鳴る縁側の風鈴。足の不自由だった母が作る素麺。赤いの赤いのと言って箸でつまんだ一本の赤い素麺。
額を伝った粒の汗。

生まれた家の記憶は少しだけある。何だか長い土間があって、裏に井戸があって、ちょっと意地悪そうでたぶんあまり懐かなかった父方のおばあちゃんが住んでいた家。
けれど、靄(もや)の中にかすんで詳細がよく見えない。だから、いつも思い浮かぶのは僕の育った家。

僕が幼稚園に通う前に引っ越した家。小学校に上がる前、初めてのランドセルをしつこいくらいに背負って歩き回った家。

今は、生まれた家も育った家も跡形もない。特に記憶の中心にある育った家は、母の葬儀で帰省した際に、どこに存在したかすら特定できなかった。
その辺一体を造成してしまって道も変わっていたから。でも、記憶の中にはくっきりと残っている。

父と母と兄が息を引き取った、僕が知っている最後の家は、今は見知らぬ人が住んでいる。だから僕に、帰る故郷はない。
だけど無性に帰りたくなるときがある。暑い日差しと深い緑と海の見えるあの町にあった僕の育った家に。

そこに帰ると、たくさんの親不孝をした母が、笑顔で迎えてくれる気がしてならない。



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井上陽水「少年時代」



君は〝人〟っていうものを信用するかい?
僕? うーん……信用したい。
したいには、しきれないニュアンスが含まれるのは悲しいことだね。

なぜなら、伝わらなくてもいいことばかりが伝わって、伝わってほしいことは伝わらないのが世の中だったりするから。

なぜだか分かる? 人はうわさ話が好きなんだ。人の批判は刺激的なスパイス。だから、君のいいところはなかなか伝わらないんだ。悪いところばかりが面白おかしく尾ひれを付ける。

みんなも君の悪口を言ってるよ。ほら、今、君がしているように、蔑んだり、あるいはちょっとした笑い話の種にさ。
人が他人の心の中をすべて読めたとしたら、世を儚んだ自殺者が増えるに違いないと僕は思っている。
だから君も気をつけようね。陰で人を批判しないように。いつでも孤高を保って穏やかにいるように。

君の信頼していた人も君を裏切る時がある。己の保身のために君を売るよ。
違う。あいつがそう言ったんだって。あいつが悪いんだって。
でも、君は人を売ってはいけないよ。裏切ってはいけない。やがてそれが君の信用になっていくから。口は堅く。心は軽く。

陰での批判は慎もう。芭蕉の句にあるじゃないか。〝物言えば唇寒し秋の風〟ってさ。余計なことを言うと、それが原因で災いを招くんだ。後悔は絶対に先に立たないからね。

人を信じられなくなって落ち込んでしまったら、悲観も蔑みも自己嫌悪もいらない。必要なのは自分が人に信用される人間になる、という強い意志だ。
容易に人を信じてはいけないけれど、君を助けてくれるのもまた人だから。

春夏秋冬の〝春〟にいる年若き君に、〝晩夏〟を歩いている僕から送るエールだよ。


※皆様のブログになかなか訪問できません (。・人・`。)) 後日すべて読ませていただきます。しかし、僕はいつになったら休めるのだろう ≧Д≦))


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スガシカオ「春夏秋冬」




光を望むなら、
あなたが光になりなさい。

愛を望むなら、
あなたが愛になりなさい。

誰もが求める限りない豊かさに
あなた自身がなりなさい。

エネルギー・レベルを上げるとは
そういうことです。

ウエイン・W・ダイアー著
「宇宙の力」を引き寄せる365の方法より



僕はまた、歳を食ってしまった。
もういらん、満腹満腹 (;´Д`)ノ
そして、ブログを書いている暇も、ない 。゚(T^T)゚。



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90年代の曲で好きなのは? ブログネタ:90年代の曲で好きなのは? 参加中

って、ランキングを書くブログネタではなかったか (・Θ・;)
でも、やる。暇に飽(あ)かせてセールス枚数まで書いちゃう。

※暇に任せてという記述を時々見かけるけど、あれ間違いぢゃないの?
金に飽かせて手当たり次第女を手込めにする(ヾ(・ε・。)ォィォィ 使用例が妙だぞ)の飽かすなんでしょ?
ま、言葉は変化しますからね。

本来は「つまらないこと」に使った「こだわり」が今すごいことになっちゃって、もうネーミングの頭が「こだわり」だらけ。こだ割りなんてお煎餅だってある (〃゚д゚;A

そうやってあらためて考えてみると〝つまらぬこだわりは身を縮めるだけだった〟と歌う長渕剛のしゃぼん玉はものすごく正しい使い方なんだよね。

で、好きな歌並べてみました。年代順で売れた順です。

1991年
どんなときも。 槇原敬之 116.4万枚
あなたに会えてよかった 小泉今日子 100.7万枚

1992年
君がいるだけで 米米CLUB 276.2万枚

1993年
YAH YAH YAH CHAGE&ASKA 240.8万枚
真夏の夜の夢 松任谷由実 142.1万

1994年
Innocent world Mr. Children 181.3万枚

1995年
Hello,Again~昔からある場所~ MY LITTLE LOVER 173.6万枚
ロビンソン スピッツ 159.4万枚

1996年
名もなき詩 Mr. Children 230.3万枚
チェリー スピッツ 153.9万
空も飛べるはず スピッツ 143.2万
LA・LA・LA LOVE SONG 久保田利伸with NAOMI CAMPBELL 161.3万枚

1997年
White Love SPEED 116.5万

1998年
長い間 Kiroro 118.2万

1999年
Automatic 宇多田ヒカル 129.0万
Addicted To You 宇多田ヒカル 129.0万


う~む……好きな曲を書き出したらきりがない。90年代は名曲の宝庫だしね。
さてさて、ベストワンは♪

ミスチルも大好きだし、応援の意味も込めてCHAGE&ASKAにしようかとも思ったけど、そうそう、ASKAの年齢(56才)をテレビで見ていまさらながらびっくりしている僕 o(@.@)o
飛鳥涼しっかりしなちゃい (`(エ)´)ノ_彡☆

迷いに迷ってスピッツのロビンソンと行きたいけれど、これはブログですでに使っちゃったし……
そんな中でもブログに使っていなくて大好きな曲となると……これかな。なんだか切ない曲ですね。
季節も日だまりの嬉しい頃になってきました。こんな小説を書きたいなぁ。

ひだまりの詩 Le Couple 146.1万




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何が嫌なのかはさまざまだろうけれど、自分の周りに嫌な人の一人や二人はいるものだよね。

たとえば、自分のことばかりで人のことを考えないから嫌い。いますねえ。僕の周りにもいます。
人の悪口ばかりを言うから嫌い。いますねえ。それも100%陰口です。聞かされる方はたまったものじゃないよね。

完璧な人間なんていない。相手は自分を映す鏡。これは自分が人間的に成長する機会に違いない! o(><)o
なぁんて考える必要も、だからこれは否定するのではなく、ありがたく受け取って感謝しよう! m(;∇;)m 
なぁんて考える必要もない。と僕は思っている。

君や僕をとても好いてくれる人もいれば、嫌いな人もいるはず。
それはそうだよね。生まれも育ちも性格も価値観も違うんだし。ここが嫌いだ、あぁ嫌だ! そう思うだけ無駄だよね。自分が思うとおりに人を変えるなんてできっこないから、それは端(はな)から諦めるべき。

嫌だ、許せない、顔も見たくない。同じ空気吸いたくない。絶対嫌いだぅぅぅ ヽ(`⌒´メ)ノ。
そう思っていると、相手の存在がどんどん大きくなっていくんだね。ちっちゃな石くれが雪の上を転がって、どんどんと大きな雪だるまになるみたいにさ。
その雪だるまは、実は心の中で大きくなるだけなんだよ。だから逃げれば逃げるほど大きくなっていくんだ。

さ、君はお化け屋敷にいます。
来たよ。ほら、来たよ。前だよ、横だよ、後ろだよ!
うゎあ! 訳の分からないものが出てきた! ∑ヾ(≧□≦*)ノ
君は薄暗がりの中、こけつ転(まろ)びつ逃げる。すると、後ろを追いかけてきている(とは限らない)お化けがどんどんとおそろしい姿になって、今にも君の肩をつかもうとしているのです ξ(*〇o〇*)ゞ。

立ち止まって振り返れば何もないはずなのに、逃げるとそう思える。だから背後に迫る巨大な雪だるまも、おどろおどろしいモンスターも、実は自分の心が生み出したものなんだね。

僕のアドバイスは一つ。逃げないこと。むしろ一歩踏み出すこと。君の嫌いな人の言っていることを、ふぅん、ほぉお、なるほどぉ、なぁんていかにも納得したかのように聞いてみること。そして聞きながらも右の耳から左の耳へすいすいと抜いてしまうこと。しゃら~っと接すること。

何も言わずにどこか嫌みな人には、こんちは~とか挨拶した後は、自分の世界に入ってしまうこと。嫌いな人に意識を向けてはいけないよ。無視しようとするのは無理をしている証拠。その人は君の視界の隅でオゴオゴと、まるでゴキブリのように動き続ける。そして君は、イライラッとする。

嫌いな人が同じ空間にいると、どこで何をしているかまで分かったりするのはこのせい。君が意識を向けているから。だったらいっそのこと一歩踏み込んで、明るく礼儀正しく挨拶したら、何事もなかったかのように意識の外へ置こう。

嫌いな人を変えようとか、こ、殺したろか! (▼皿▼#) とか思わないこと。ましてや寛大になろうなんて無理はしないこと。嫌いな人と上手く付き合おうなんて無茶は考えないこと。
君の人生の中ではどうということもない人。過ぎてゆく人。だから君もその人の前を堂々と通過しよう。妙な虫もいるもんだ、と微笑みながら。
もしも君の心にもっと余裕が生まれたら、褒め殺してもいい。僕は今まで、褒められて嫌った人は……多分いない。だからみんなそうだ。嫌った人に好かれてみるのも面映(おもは)ゆくて癖になるかも。

自分を潰しそうなどでかい雪だるまの中身は、ちっちゃな石くれ。お化け屋敷にモンスターはいない。

それが分かれば、その嫌な人は君の意識の中で小さくなり、やがて消えてゆく。

原始仏典の一つでダンマパダ(真理の言葉)=法句経(ほっくきょう)42にこんな言葉がある。

中村元訳(岩波文庫『ブッダの真理のことば・感興のことば』)より

「憎む人が憎む人にたいし、怨(うら)む人が怨む人にたいして、どのようなことをしようとも、邪(よこしま)なことをめざしている心はそれよりもひどいことをする」


小池龍之介はこう訳している「超訳ブッダの言葉」

「君を嫌っている敵が君に対してする酷い仕打ち、
そんなものは大したことじゃない。
君を憎む人が君に対してする執拗な嫌がらせ、
そんなものは大したことじゃない。
怒りに歪んだ君の心は、
それよりもはるかに酷いダメージを君自身に与えるのだから」


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彼女はこんな字を書く人だったのかと、あらためて思った。淡いブルーの便せんに書かれたそれは、几帳面で柔らかな文字だった。その筆跡のひとつひとつを目で追い、そこに込められた思いを読み取ろうとした。


「パパ、おてがみ?」
「ん?」
「それ」息子の健介がおもちゃのラケットで僕の手元を指した。
「ああ、そうだよ」
「誰からの?」
「パパのお友達だよ。遠野っていう人」
「おともだち?」
「うん」
「パパの?」
「そうだよ」
ふぅん。

封書に書かれた日付を見た。200×年5月21日。
僕の誕生日だった。この四日後、彼女はビルの上から飛んだ。

あの時もそうだった。彼女の自殺の原因を思いつく限り考えてみたのだ。
この手紙を書く二週間ほど前に、あの医師との忌まわしい出来事が起きている。けれど今読んで考えてみても、それとこの手紙の内容は、どうにも結びつかない。だからというわけではないけれど、それが彼女を死に追いやったとは思えないのだ。

最終最期、何が彼女を死のダイブに誘(いざな)ったのか僕には分からない。
彼女が戻れない足場から空中に飛んだとき、何を捨てたのか、何を得たかったのか、何を願ったのか、何を残したかったのか。
僕は理解できないまま、心に無理矢理折り合いを付けて、ここまで生きてきた。

なぜ彼女が生きることを拒否したのか、あのときの僕はそれを追求しなければならない義務を負っているとすら感じた。けれど今は、触れずにいることが彼女を心安らかに眠らせることのようにも思える。
心療内科医が口にした言葉は、死人に口なしの類だったのか、それとも、真実だったのか。あるいは彼女の、嘘だったのか。
僕は訊いた。それは先なのか後なのかと。男は後だと答えた。彼女は、自分自身をそんな女に貶(おとし)めてみせたのか。だからこんな過ちは何でもないのだと伝えようとしたのか。

今になって振り返れば、お互いとても幼い男女だったけれど、初めて会ったときの彼女に、僕は永遠に追いつけそうもない。僕の中で彼女はずっと、笑顔の素敵な女性で居続けるのだろう。
だからこそ、三つ年上の生身の彼女が抱えた負い目も寂寞(せきばく)も、僕に理解することは叶わないのだろうけれど。

婚約者がいたのよ。
彼女は少しだけ疲れた笑みを見せたことがある。僕はそれ以上訊こうとはしなかった。
すべてを受け入れて丸ごと愛してあげる余裕を、僕は持っていなかった。そんな話を受け入れるスペースも、受け止める寛大さも、あの頃の僕の心にはなかった。
あえて口にしたからには、訊かれればすべてを話すつもりでいたはずなのに、いや、話して笑い飛ばしたかっただろうに、僕はそれをしなかった。青春の一途さと頑なさは、一面残酷ですらある。

二人に流れた気まずい沈黙の後、彼女は笑った。それ以来ミッキー・マウスが彼氏なんだよと。

僕もそのうち、彼女の希望である結婚に応じるだろうと、何疑うことなく思っていた。大学を卒業して就職をして、収入も安定して、そして、ある程度の蓄えが出来たら、と。
けれど、迂闊にも僕はそれを口にしたことがなかった。あえて言葉にしなくとも、ずっとそばにいるものと信じていたから。

「パパのお友達はどこに住んでるの?」
「うーん。何というか、パパを置き去りにして遠くに行っちゃったんだよ」
「ふぅん。健介はね、遠くに行かないから大丈夫だよ」慰めるように何度か頷いた健介に僕はにっこりと笑いかけた。
「ありがとう」
「どういたしまして」健介はラケットを振りながら台所へ走った。
息子は僕に似たはにかみ屋ではなく、妻に似てしっかりとした男の子だった。

もしもあの日あのとき、彼女が鳥になろうとしなければ、僕たちの今はどうなっていたのだろう。子供が生まれていたら健介のように幼くはなく、中学生ぐらいなのかも知れない。
家事や子供のお弁当作りに追われながらも、彼女は僕のそばで、あの弾けるような笑顔を見せていただろうか。
今年で不惑の40歳を迎えたはずの彼女は、やはり、僕の追いつけない大人だったろうか。

手紙に書いてある、彼女のひとつのお願いとは何なのだろう。
僕に対するお願いなのだろうか。それとも、彼女の過去の蹉跌(さてつ)、あるいは内面の葛藤(かっとう)の吐露だったろうか。それでも愛してほしいと綴ったのだろうか。

僕はその手紙の先を読まずに、元あったように丁寧に折りたたみ封筒にしまった。なぜなら、僕の愛した遠野美樹子のお願いを聞いてあげることは、もうできないのだから。

彼女は静かな寝息を立てている。少し長いまつげと、触れるとちょっとひんやりとした滑(すべ)らかな頬で、僕の記憶の中に眠っている。
起こさぬように僕はそっとその肩を撫で、優しくとんとんと叩く。目覚めて悪い夢を見ぬように、深く静かに眠らせる。

ごめんね。そして、手紙ありがとう。僕はつぶやいた。

─FIN─


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─200×年春─

「大変申し訳ないことをしたと思っている」
コーヒーカップに手を伸ばしかけた男は、それが空であることに気づき、やり場のない手を握りしめテーブルに乗せた。

「申し訳ないというのは、僕に対してですか」僕は足を組み、椅子の背もたれに背中を預けた。
「それとも……」僕の声に促されるように男がこちらを見た。

三人の間に、軋みも負い目も不自然さも呼び起こさない彼女の固有名詞を探しあぐねて、僕は沈黙に漂った。どう考えても、これはやはり自然ではないのだけれど、彼女は彼女でいてほしかったから。

やがてその無音に耐えかねたように、男が口を開いた。
「いや、どちらにかもしれない」
無造作にかき上げたようなヘアースタイルに銀縁めがねを掛けたその男を見据え、美樹子はこんなタイプが好みだったのだろうかと、複雑な思いを抱いた。それとも、僕とは違う何かをこの男に求めたのだろうかと。
目の前にいるのは心療内科医だった。自律神経のバランスを崩した遠野美樹子が通った病院の医師だ。

「したんですよね」
僕の質問を拒否するかのように窓外に目をやった男は、横顔を見せたまま言葉を発した。
「いや、そういう表現が適切かどうかは」
「表現方法で事実が変わるんですか?」
僕の語気の強さに、諦めたようにテーブルに視線を戻した男は、めがねの奥で忙しない瞬きをした。

「したんですよね」
男は困惑の表情を浮かべながらも、小さく頷いた。
「医師として不適切な行動だった。だから最初に謝ったはずだ」
「どこか責任逃れをしているように見えますよ」
「いや、そんなつもりはない」男はどこか不服そうに、中指でめがねを押し上げた。

「僕が訊きたいのは、そういうことではないんです」僕は片手を上げてコーヒーのお代わりを注文した。
「責任を問うているのではないんです。なぜなのかを知りたいんです。どうしてあんな行動を取ったのか、それが知りたいんです」
「それは私にも分からない」
「自分が引き金になったとは思わないですか」
「それも分からない」男は煙草に火を付けた。

「ひとつだけ分かっているのは」男は声をひそめるように身を乗り出した。
「何です?」
「彼女は誰とでも寝る女だったということ」
「あんた、何を言ってるんだ!」
空のコーヒーカップが落ちて派手な音を立てた。

「何を根拠にそんなことを言ってるんだ!」
ウェイターが箒とちりとりを持ってやってきた。
「すみません」僕は謝った。
「いえ」じゃらんじゃらんと音がしてコーヒーカップがちりとりに収まってゆく。
「あなた、自分が何を言っているのか分かっているんですか」僕は声を低くした。
「彼女がそう言ったんだよ」
「誰が」
「彼女、遠野美樹子が」
その引きつったようないびつな笑みは、開き直ったとしか思えなかった。



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─199×年冬─

「ゆず湯にしてあるわよ」
先に帰っていた彼女が、リンゴ模様のパジャマ姿で得意げな顔をした。
「ゆずゆ?」
「今日は冬至でしょ。あたしは先に入っちゃったけど」
「冬至? あぁそう言えばテレビで言ってた。で、ゆずゆ?」
「お風呂に柚子を浮かべるのよ。それに入れば一年間風邪を引かないのよ。ひろちゃんちの方ではその習慣はなかった?」
「実家で入ったことはないなぁ。その風習全国的なものなの」
「そう」
「じゃあさ、日本中で風邪を引くのは僕の一家ぐらいだね」
「ふぅん。おもしろいんだ」頭に巻いていたタオルをほどき、ガシガシと髪を拭き始めた。
「ん?」
「人の揚げ足とって」両手を止めて、タオルの隙間からじっと見られた。
「いや……全然」僕は逃げるようにお風呂場をのぞいた。

「丸ごと浮いてる」腰をかがめて見た浴槽には柚子が5個も6個もぷかぷかと浮いていた。
「皮に少し切り込みを入れてあるのよ」背後から、僕の肩に彼女のあごが乗った。
「地方によってやり方はいろいろあるだろうけど。入ってらっしゃいよ。ビールも冷えてるわ。それとも、一緒に入りたい?」
彼女がしゃべるたびに肩にカクカクと振動が来る。
「いや、一人でいいけど。ゆず湯だし」
「ゆず湯との関係づけがわかんないんだけど」
お互い住む場所は違っていたけれど、僕はほとんど彼女の部屋に入り浸っていた。


「夏になったらさ」着替えとタオルを手渡しながら彼女は目を輝かせた。
「夏?」
「神宮のプールに行こう」(※2003年に閉鎖)
「ちょっと待って……今、冬だよ。明後日のイヴでも、年末年始でもなく、何でまた夏の話?」
「だからあ、夏になったらって言ってるじゃない」
「季節端折(はしょ)りすぎだよ」
「夏だからこそのメークドラマよ」彼女はなぜか、一人悦に入(い)っていた。
「長嶋?」
「んーん、どうでしょうねぇ」腕を組み、あごを触った。
「それ、プリティ長嶋じゃないの」
彼女はとてつもなく大人だったけれど、その割に、どこか無邪気な子供だった。

「疲れてるとしたくなるでしょ」ベッドの中で、うふふと笑った。
というかひどく疲れていると意志とは関係なく、あそこが元気になるときがある。もっとも、そもそも意志などとは関わりのない部分ではあるけれど。
「疲れマラよ」
「何それ」
そんな言葉は初めて耳にした。
「つ・か・れ・ま・ら」
「何もゆっくりしゃべってくれって意味じゃないけど」
「ちゅかれマラ!」
「早くでもないんだけど」
「だーよーねー」
「遊んでる?」
「いたってまじめ。でさ、マラってそもそも何のことだか知ってる?」
「知ってると得する?」
「てゆうか、頭よさげにはみえるかも」
彼女の解説によると、マラとは仏教用語マーラからきていくらしく、釈迦が悟りを開く禅定に入った時に、瞑想を妨げるために現れたとされる魔神らしい。要するに煩悩の化身のことだという。
「煩悩の化ちん!」彼女はそう言いながら、僕のあそこを握った。



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