風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」 -119ページ目
─伝説の祭り─

遥かなる昔、荒野に暮らす部族たちを恐怖に陥れる出来事があった。なんの前触れもなく黒い魔物の群れが襲来して、人々の命を次々と奪っていったのだ。

なすすべのない民たちはシャーマンを頼り、神にすがり祈り続けたが、あらゆる手立ては魔物に通じることはなかった。
子を喪(うしな)った母は泣き狂い、親を喪った子らは絶望に涙した。
容赦のない魔物はそんな彼らをも無残に殺戮していった。平和であった荒野は、やがて累々たる死体で埋まっていった。

人々の絶望の叫びが天を突き動かしたのか、あるときそこに、眩(まばゆ)く輝く黄金(こがね)色の剣を振りかざす、勇猛なる部族が躍り出た。

彼らは人々を導き、人々を慰め、人々の盾となり、わずか数日のうちに魔物どもを一掃して、何事もなかったかのようにその場から去っていった。

なにかの出来事が形を変えて言い伝えられた伝承であるのか、歴史上の事実であるのか、むろんそれを知っている者はいない。

しかし祭りは連綿と引き継がれ、魔物を撃退した勇者に感謝を捧げ、永劫(えいごう)の平穏を祈るため、近隣や遠くの村々から人々は町に集(つど)った。



ラクダを餌場に繋ぎ止め、イエナは町なかを歩いた。オアシスの畔に栄えるその町は祭りで賑わっていた。その中に、イエナはかの族長の娘を見つけた。そばにはお付きの女もいたが、それは瞳の美しいシェリではなかった。

「ご機嫌はいかがですか」イエナはその一団に近づいて声を掛けた。
「これはこれはイエナ様」
「相変わらず麗しい」
「わたしをお口説きになるおつもりで? それともシェリがお目当てですか」
図星を言い当てられてイエナは狼狽えた。
「いえ、そのようなことは……シェリ殿は、今はお付きをなさっていないのですね」イエナは己の耳たぶが熱くなるのを感じた。

「つい先日亡くなりました」
「それはまことに!?」

時が満ちる前に、それは動きを止めてしまったのか。何という理不尽。イエナをずしりとする悲しみが襲った。

「そうでしたか。お亡くなりに」
「ああ、いえ、シェリの母親です。まだお若かったのに病に伏し、幾日も持たぬうちにこの世を去りました。シェリは弟や妹たちの面倒を見るため、お付きをやめました」
「そうですか、お元気にお暮らしなのですね? それは何よりです」
イエナは安堵した。そう、縁などつながなくとも生きていればよいのだと、素直に思えた。

「シェリ!」
族長の娘は後ろを振り向いた。
「いるのですか!」
「この場にいたらどれほどか面白かろうかと」娘はいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「なんと悪い冗談を」
「はい!」遠くから女の声がした。
「荒野きっての優美なお方がシェリを所望のご様子じゃ」娘は大勢の人で賑わう広場に向かって声を張り上げた。
「いらっしゃるのですね!」
「さて、現れるのはご希望通り、シェリでしょうか」娘は顔を寄せ、企みを含んだ三日月形の目で微笑んだ。

「はい」つんのめるようにして立ち止まった女は、紛れもなくシェリだった。
シェリは何度も瞬きをした後、驚いたように頭を下げた。両の耳で編んだ髪が鞭のように跳ねた。
「シェリ、この方はお優しい方です。婚礼話の際も、自らが悪者におなりでした。よいご縁になればわたくしも嬉しいかぎりです」

「お付きをやめたというのは」イエナは小声で訊ねた。
「さらなる冗談でございます」娘は口元に指先を当て、ぷふっと笑った。
「母御がお亡くなりになったというのは」
「それは本当にございます。でも、悔やみの言葉程度で深くはお触れにならないほうがよいでしょう。シェリはまだ若いゆえ傷も深いことでしょうから」
シェリは目をぱちくりとして二人のひそひそ話を見つめていた。

「シェリ殿、ところで私のここに付いているのは何でございましょう」
「気になって仕方がないのでしょうか」
「はい、先ほどより気になって」
「それは……」
シェリは右手で日差しよけの庇をつくって、イエナを見上げた。

「わたくしの声が聞こえておいでなら、それは耳でございます。とれませぬ」
シェリは笑いをこらえるようにうつむき、イエナを上目遣いで見た。

翌年、その女シェリはイエナの妻となった。


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─シェリ─

「父には私の方から伝えておきましょう。もちろんありのままにではなく」
そのとき娘は初めて、少し微笑んだ。
「よい顔だ。笑顔は自分を、そしてなにより人を幸せにします。よき方がみつかりますように」イエナは腰の小刀に手を添えて立ち上がった。
「余計なお世話でございます」
背中に聞こえる勝ち気な娘の声に、イエナはふっと笑った。

石造りの集会所を出ると、辺りには村人たちのテントが立ち並んでいる。そして左には声の女が腰をかがめていた。
「日差しの中ご苦労なことです」イエナは声を掛けた。
いいえ。女はうつむいたまま首を振った。両耳の後ろ辺りで二つに編み込んだ、艶やかに日差しを弾く落ち葉色の髪が左右に揺れた。

「亜麻の布は被らぬのですか?」
「出かける時は使いますが、ご用の時は邪魔になりますゆえ」
「名はシェリ殿と?」
はい、女はうつむいたままだった。

「シェリ殿、私のここに先ほどから何かが付いているようで、気になって仕方がないのです」イエナはかがみ込んだ。
「取ってはくれませぬか」
顔を上げた女はしげしげとイエナを見た。女というよりまだ少女の面差しを持ったその白目は青みを残し、くりくりと動く淡い褐色の瞳は荒野に湧く泉のように澄んでいた。
「これです」
「はい?……」
「これは何でございましょう」
「指の先のものでございますか?」
「そうです。これです」
女は解せぬものにでも出会ったかのように、ゆっくりと小首をかしげた。

「それでございますよね」
「そう、これです」イエナは指さした。
「意図せぬ所を指さしておいででなければ、鼻、でございますが」
「ほお、なるほど鼻でしたか」
「はい。特別なにかがついていたりもしておりません」
「ならば取ってもらうわけにもいきませぬな」
女は珍しいものでも見るように、再び小首をかしげ、あごを小さく突き出した。

「オアシスの湧く町に行ったことは?」
「一度だけ」
「その清冽な水にも劣らぬほど美しい瞳だ」イエナの声に、女は驚いたように目を丸くした。
「本日はこの村に来たかいがありました。またお会いできることを」イエナは立ち上がり、ひとつ頭を下げた。


「気が合わぬようであったか」ラクダに揺られるシビルの言葉にイエナは頷いた。
「あのような女は気に入りませぬ」
「そうか」シビルは苦笑混じりに頷いた。
「向こうから舞い込んだ話じゃ、やんわりと断っておこう」
「ただ、気になる女がおりました」
「ほう、あの場にいたのか!」シビルが弾かれたようにイエナを見た。
「はい。娘に仕えていた女です」
「端女(はしため)か、お前はそんな女を嫁にする気か」前方に視線を戻し、軽蔑したかのようにあごを上げた。

「嫁にするとは言っておりません。しかし、同じく人間にございます。端女だのそんな女だのというお言葉はやめたほうが良いかと思います」
「わしに向かって説教か」
「どう受け取ろうとけっこうですが、父上はどうでしたか?」

シビルは怪訝そうな顔でイエナを見た。
「わしがどうした」
「これは血でございましょうか」
「血?……」
「血です」
しばらく黙り込んだシビルはあごを掻いたりしていたが、やっと理解したように破顔した。
イエナの母も、違う村の何の変哲もない娘であった。シビルが気に入り何度も足を運んだと母に聞いた。

「隊列を戻せ」シビルが命じる。
「その娘に会いに行こう」
「それはなりません」イエナは左手を広げた。
「どうしてじゃ」
「様々な方に恥をかかせましょう」
「では、お前ひとりで行ってこい」シビルは腕をぐいと振り回す。
「いえ、それは後日にいたしましょう。縁があればその日もやってこようかと」イエナはラクダを前に歩かせた。
「縁か、お前はまったく力むということをせぬ男よの」

荒野に陽が傾き始めていた。
「ものごとを動かすのはすべて時にございます。満ちれば滑らかに動き、満ちねば押せども引けども動きますまい」
「いったい誰に似たのか、お前は妙な理屈を言う」
「似ているのが父上でなければ、母でしょう」
「そうか、ま、そういうことにしておけ。お前いっそのこと僧にでもなれ」


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─婚礼話─

荒野に一陣の風が吹き、土埃を舞い上げた。それはにわかに渦となり、一隊の右手の向こうを走り抜けてゆく。
砂塵除けに顔を覆っていた衣の袖を手で払い、ラクダの手綱を握ったイエナは、遠ざかるつむじ風を振り返って見つめた。

「風というのはなにがしかの衣をまとわねば目に映らぬのはなぜでしょう。あれはいったい何でできているのでしょうな」
イエナの声に、彼の父である族長シビルは鼻を曲げた。
「お前はつくづくわけのわからぬことを考える男じゃな。土埃の衣服をまとわぬとも木々を揺らせば見えるではないか」
「それとて風のまことの姿を見たことにはならぬのです」

耳の穴の埃を小指でほじったシビルは鼻で笑った。
「ワシは別に目に見えないものの正体を知りたいとも思わんがな。それをイエナ、無駄な考えと言うのじゃ。生きていく上でなんの役にも立たん」

荒野を陽の沈む方へ半日ほど行ったところに、シビルと親交のある族長が住む村はあった。その族長の娘は大した器量よしということで、イエナもその名だけは知っていた。
互いの歳も近いため、その娘を嫁にどうかという話が舞い込んだのはつい先日のことだった。

会うだけは会ってみたらどうだというシビルの執拗な説得に、イエナはラクダにまたがり7人のお付きの者たちと共に村へ向かった。
「衣もターバンも新しい物にすればよいものを、お前はへそが曲がっておる」
「いつも通りでよいのです」
イエナは日に焼けた頬を撫で、ところどころに低木や草の生えた荒野を無言でラクダに揺られた。
陽は南中に昇りつつあった。


褐色の大きな瞳の上にはくっきりと細い眉。通った鼻筋と厚すぎず薄すぎず賢そうな唇。イエナが息を呑むほどに美しい娘だった。
しかし、自身の名を名乗ったきり、その娘は押し黙っていた。確かに近隣に名をとどろかせるだけの器量ではあったが、その所作はどこかよそよそしく、冷たい印象を与えた。

婚礼話が進む中、その娘はうつむくでもなくイエナを見るでもなく、終始斜め前の虚空に視線を止めていた。
若い者同士にしてやろう。シビルの言葉で双方の立会人たちはその場を離れた。

「どなたか好いたお方でもおありですか?」静寂を振り払うようにイエナは口を開いた。
「いえ、そのような方はおりませぬ」
「では、どうしてそうも虚ろなのです」
「口にせねばならぬいわれもございません」そのとき初めて、娘はイエナを見た。
「そうですか。では、そこはご自由にどうぞ」
「ですから、自由に振る舞っております」
「ただ、一言申し上げておきましょう。あなたの心のままに生きることです。無理は心と身体に悪い。こんな話など断ってもかまわないのです」
外から子供たちの声が聞こえる。荒野の村ののどかな昼下がりだった。

やがて娘は、張り詰めていた肩から力を抜いた。
「おります」
俯いた横顔はどこか力なく、外からの陽光に照らされた白い肌をよりいっそう白く見せた。
「ではその方とご一緒になればよろしいかと」
「それは叶わぬのです」娘は小さい声で答えた。
「どうしてです。身分ですか」
「もうこの世にはいらっしゃらないお方だからです」娘は天を指さした。
「そうでしたか。では、諦めなされほうがよろしいかと思いますが」
「諦めてあなた様と一緒になれと?」娘はキッとイエナを見た。
「そうは申しておりません。ただ、死せし者は戻りません。ゆえに諦めなされと」

「シェリ!」娘が外へ向かって呼ばわった。
「はい!」すぐに女の声が返ってきた。
「このお方に食事のご用意を」
「はい! すぐにご用意いたします」
「いえ、食事はして参りましたゆえ、おかまいなく」イエナはこの村のしきたり通りの返事を返した。
「シェリ、食事の用意はいらぬ」
「はい!」
すぐに返事が返ってきたということは、やはり支度に走らず様子を見たのであろう。

イエナはその娘に仕える女の声が気になった。凛としていながらも奥ゆかしく。ハキハキとした中にも柔らかみを含んだ優しげな声だった。


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続編を書くにあたり、加筆と共にタイトルを変更しました。しばしおつきあいください。


─荒野─

枯れ草色の砂礫(されき)が果てなく続く荒野には、今日も乾いた風が吹いている。その大地のあちこちには地を這うような低木が散在し、その木々は、およそ生命を維持しているとは思えないほどにひからびて、過酷な自然に刃向かうかつもりか、それぞれの枝にトゲを立てている。

多くの部族が暮らすこの荒野の、昼の日差しと夜の闇の寒暖差が、岩山を砕き、砂礫に変えていった。
今日も、大地を強烈に照りつけている太陽の周りには、雲ひとつない青い空が広がっている。

「ミランダ!」呼びかける声に振り向くと、ラクダに乗るミネラが手を振っている。わたしより二つ年嵩(としかさ)のミネラは、男らしい体軀や顔つきに似合わず、控えめで律儀だ。呼びかけに応えて、わたしは片手を上げた。


〝さて、遥かに遠い昔のお話です。荒野に暮らす我が部族に、いえ、もっと正確に言えば、荒野の部族全体に存亡の危機が訪れたのだそうです。わたしはこの話を曾祖父イエナに聞きました。

昔は村ももっと多かったそうですが、生き残った部族同士が合流してその数も減ったそうです。
わたしが物心ついた頃のイエナ爺は、もうずいぶんと歳をとっていました。部族の長をとうの昔に退き、暇をもてあましていたイエナ爺は、わたしを捕まえては問わず語りを始めました。

これがどこまで真実の話かはわかりませんが、似たような話は曾祖父のよき友であったクロン爺も語りましたし、曾祖母シェリも口にしましたのでほぼ間違いのないことなのでしょう。

わたしはイエナ爺が大好きでした。身振り手振りを交えて、まるで今、我が身に起こっているように話してくれた物語に、女児でありながらも心が踊りました。

でももう、大好きだったイエナ爺はこの世にはいません。宵の迫る時刻にはイエナ爺の残していった獣の毛皮を膝に掛け、夢を見るように微笑んだ曾祖母シェリも後を追うように亡くなりました。

彼らに代わってひ孫のわたくしミランダが、荒野に何が起こったのかを皆様にお話ししましょう。〟



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4月6日、東京に桜がまだ散り残っていた頃だろうか。
桜? なに今頃。それっていつの話? って感じに忘却の彼方に去って、ハナミズキが咲いて、その木はすっかり青葉になった。

桜は青春に似ている。華々しく長く思えて実は短い。
一瞬の花、それが青春なのかもしれない。

そして、僕のブログを読んでいる方なら自らご体験のように年々一年が短くなる。
だんだんお家が遠くなる~♪(意味不明)


ちっちゃい頃は一日がとても長かった。
「起きてる。起きて最後まで見る」そう断言していた紅白歌合戦をついに最後まで見たことがなかった幼い頃。

午前中がとても長かった。日が南中を過ぎた頃のTVのアフタヌーンショーは永遠に続くかと思われた。
昼寝しても昼寝しても昼だった。

お、まったくの無駄話になりつつある。

君は説明してほしがっていたね。
別れるだの別れただの、それって表面上のことで魂の部分では関係ない。僕の発した言葉は不思議だったかもしれないね。

「じゃあ、これで終わりにしよう」僕が電話で言った言葉は口から出任せではないけれど、僕にとってはあまり深刻な話ではないんだ。
それで繋がりが切れるとは僕はまったく思っていなかったから。

形にこだわるのはどうにも陳腐な感じがするんだ。深いところで繋がっているとなに疑うことなく思えるし、きっとどこかで、互いを高めあえる関係になれると感じるから。
だから僕は時々、不思議なことを口にするよ。

話は変わって、電話でも言ったけど、君はたまに口が悪い。僕は君みたいな人に会ったことがない。だからカルチャーショックを受けた。

僕が言うことに「面倒臭せぇ」って応じる人に会ったことがない。つけ麺フリークの君におつきあいして感想まで述べる僕に対してなんてことを言うんだろう。

僕は麺も好きだけど焼き肉が好きだ。パンケーキもいいけど、お寿司の方がもっと好きだ。フルーツサンドウィッチより居酒屋のなんてこともないおつまみが好きだ。

それに、僕はそんなに面倒臭いことは口にしていない。ただ、味にはうるさい。かといって君の手料理を食べたことはない。ちなみにこれは催促ではない。

僕は君のためにパスタを作ってたりするのが好きだ。あ、最近マッシュルームのオーブン焼き作ってないな。アンチョビペーストまだ残ってるのに。
焼きそばも作りたいな。

知っての通り、趣味と言えるほどのめり込んでいるものはない。ゴルフもやったことはあるけど興味が湧かない。パチンコもしない。麻雀すらできない。ギャンブルは一切しない。
読書と散歩と……いい加減な短編小説を書くぐらい。あ、あとお酒と煙草。

え? 4月6日は何かって? 僕がもっとも最近お休みした日です。そしてやっとお休みです。とうに一ヶ月は過ぎとるわい。髪の毛切ろう。短編小説の続編でも書こう。

そんな君に、再びこの歌を贈ろう。


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スピッツ「ロビンソン」

桜も散り、ハナミズキの季節がやってきたね。
あれって確か、日本がアメリカにソメイヨシノを送ったお返しにきた樹だったよね。

花が咲き、花が散り、葉が茂り、やがてその葉も紅となり地表に落ちてゆく。
命尽きるまでそのサイクルを繰り返す。



そのように人生にも四季がある。
それは年齢の四季ではなく、人に訪れる否応のない四季。それを偶然のことと諦めるか、必然と捉えてなにか一つでも学ぶか、それは君次第。

木枯らしの秋を過ぎて凍える冬が来る。

一葉、また一葉と散りゆき、これで木さえも枯れるかとさえ思える冬。
そんなときは、どんな努力も報われない。必死ながんばりも認められない。

僕はいつか書いたっけ?

〝ひとの思考も行動もすべて、愛か不安か、どちらかを根拠としている〟

〝あなたがたが最も不安に思い、恐れるものが、あなたがたをいちばん苦しめる。不安は磁石のように対象を引き寄せる。人類の聖なる書物のすべてが(人類が創り出したあらゆる宗教的説話や伝統のなかで)「恐れるなかれ」、とはっきりと諭している。これを偶然だと思うか?〟


─神との対話─

不安は何の役にも立たないどころか君にとても悪い影響を及ぼし、心身を蝕む。
不安ではなく愛を選び取ろう。

もう一度書こう。不安は何の役にも立たない。
処方箋は感謝の言葉「ありがとう」だよ。

春は再び巡り来る。
どんな人にも陽はまた昇る。


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吉田拓郎 人生を語らず
〝物事には、本来、善悪はない。ただ、我々の考え方いかんで善と悪が分かれる〟

シェイクスピアの『ハムレット』の言葉です。

僕は他の誰かの言葉としてこれに似た言い回しを知っていて、戒めの一つとしているのだけれど、それをどこで見たのかがどうにも思い出せない。

宇宙には「良い」状況も「悪い」状況もないことを第一に理解しておくべきだ。
すべてはあるがままにすぎない。だから、価値判断はやめなさい。
第二に、すべての状況は一時的だ。どんなこともいつまでもおなじままではいないし、静止してはいない。
どちらの方向へ変わるかはあなたしだいだ。


─神との対話① 第3章─

意味はそうなんだけど、頭に残っているのはこれとは違うような気もする。

「物事はただ起こっている」
起こった出来事そのものに善し悪しはない、それをどう受け止め、どう反応するかは本人次第。



日本には「折悪(おりあ)しく」という言葉がある。

ちょうど悪い時にその事態が起こるさま。
まがわるく。あいにく。

─大辞林 第三版─より

何でこんな時に?
う、嘘だろッ!
こんな時にタイミング悪すぎ!
イライラする!


ほら、ほら、ほら
まんまと罠にはまるコースへ舵を切っちゃったんじゃないの?

大きくゆっくり息を吸って、ふぅーっと口から吐いてみよう。
口角を上げて目尻にしわを寄せてみよう。
意味なんてなくていいから、〝ありがとう、ありがとう、ありがとう〟と唱えてみよう。

現実と闘おうとしたり、逃げようとしたり、否定したりコントロールしたりしようとする悪あがきは、事態をさらに悪化させる傾向があることは誰だって経験的に知っている。

物事はただ起こっている。
責任転嫁したり、無用に心折れたり挫けたりすることなく、特別な感想も持たず、過剰な反応もせず、ただ淡々と対処すればいいみたいだ。

それも、できうる限り前向きに、肯定的に。
それが一番上手く乗り切る方法だと、僕は思う。

すべては必然的に起こるし、乗り越えられない試練は現れてはこない。
それがなぜ起こったのかの意味など問わなくても、いつか分かるときが来るに違いない。

君が嫌な気持ちになってそれが顔に表れていれば、目の前の相手も、君の周りの現実もきっと嫌なものを返してくる。

だからこそ、君が笑えば世界も笑うんだ。

よくしくじる僕から〝すべてはうまくいっている〟君へ。


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好きなにおい ブログネタ:好きなにおい 参加中

石けんも好きだしお線香の香りもいい。
特に白檀(サンダルウッド)が好みかな。

早春の甘い沈丁花いいし、


秋の金木犀もいい。


でも、もっと好きなものがある。

僕が二十歳を少し過ぎた頃の話だから、どんな香りであったかさえ忘れてしまったけれど、おそらく複数回、それに出会っていたはずだ。
人混みでふっと鼻腔をかすめるフローラルの香りはとても強く印象に残った。

その名前が分からず、僕はそれを知りたかった。
けれど香りを言葉で人に伝えてその名前を知るなんてできるだろうか?
そう、できないのである。その名前を求めて、僕の長い旅路が始まった。

昼下がりの自由が丘駅。渋谷行きの東横線に乗り換えるため電車を降りた僕の鼻先に、風に乗ってふわりと、それが香った。
来た!
そう、滅多に出会えなかったのだ。

僕は人混みをかき分けるように、その香水の主を探した。目で追った、鼻を働かせた。けれど特定することなくその香りはかき消えてしまった。

目の前には自由が丘駅のロータリーが見えた。僕は肩を落とし、東横線のホームへと階段を上がった。
どうするつもりだったのかというと、その人に訊いてみるつもりだったのである。
「これ、何という香水ですか?」と。

落胆の日から、さらに月日は流れた。

ある日の仕事中、勤務する飲食店の通路で小さな円筒型のプラスティック容器を拾った。蓋の内側にはスティック状のものが付いている。
これ、何だろう? 興味を惹かれてその蓋をそっと外してみた。鼻先を近づけた僕に香ってきたもの……。

「こ、これだ!」
そう、それは紛れもなく僕が探し求めた香りだったのである。
やっとその名前の書かれた香水を手にしたのである。

僕は片っ端からアルバイトの女子たちに聞いてみた。
けれど、誰もそれを知らなかった。名前さえ読めなかったのである。
女子大生のアルバイトでは分からなくても仕方がなかったのかもしれない。

僕はいつもそれをポケットに入れて、ことあるごとに女子たちに訊いた。

あるときついに、その名を知ることになる。教えてくれたのは初めて会った女性だった。何人かで飲みに行った六本木だったろうか。

「ニナ・リッチのレールデュタン。時の流れって言うのよ」僕の隣で彼女は言った。

その名が表すとおり、僕の周りでは時が流れていた。

今度暇なときに引き出しを片っ端から開けてみようと思う。きっとどこかに、今でもあるはずだから。

二十歳そこそこの僕を虜にした香りは、今でも心を揺さぶるだろうか。

いや、間違いなく……。


*ニナ・リッチ(Nina Ricci)のもっとも有名な香水〝レールデュタン〟『時の流れ』
故ダイアナ元妃が使用していたことでも有名で、1948年に登場して以来、時を超えて愛されるレールデュタンは2014年秋、日本で再発売された。


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誰だっていいところもあれば悪いところもある。人っていろんなメジャーを持っているから上司とそりが合う合わないもある。

私的な話をすれば、僕は仕事に関しては口うるさい。ものすごくうるさい。
これはと思う人間には、一子相伝ではないけれど、持っているものをすべてつぎ込もうとするタイプだから余計だ。

僕だって踏まれて叩かれて今に至った。だから辛さは分かる。けれど乗り越えなければ次はない。
結局、耐えきれずに僕を嫌ってやめていった人も多いだろう。

逆に言えば、僕を当たり障りのない人、放任主義だと思う人は見込まれていない可能性が高いということになるんだ。
僕は取っつきの悪いタイプらしいから怖がられることが多いけれど、最初の難関を突破すれば右も左も分からない惚けた人に等しい。
「こ、これ、どうすんの?」
そんな質問が僕から出たら成長の証。

「○○さん、明日は来ますか?」
「ああ、明日は仕事だよ」僕の声に笑みを浮かべて帰るネパールの青年の後ろ姿が、「この大馬鹿やろう!」と罵り続けたダメ男とは思えないほどに愛おしい。

君の上司はどんなだろうね。
いろんな人に謙虚に学びつつ、君は君らしくあってほしい。
そして誰かを育てて欲しい。その人が育つスイッチを押して欲しい。

まずは考えさせるべし、それでダメなら解決策を提示するべし。
大いに文句は言うべし。不平不満も突きつけるべし。
そんな中、見つめる相手に愛情を注ぎ続ける限り、君はきっと誰かが育つ手助けをするようになる。



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宇多田ヒカル - Wait & See ~リスク~

好きな絵本 ブログネタ:好きな絵本 参加中

100万年もしなないねこがいました。100万回もしんで、100万回も生きたのです。
りっぱなとらねこでした。100万人のひとが、そのねこをかわいがり、100万人のひとが、そのねこがしんだときなきました。
ねこは一回もなきませんでした。




ある時は王様に飼われている猫だったり、船乗りに飼われていたり、サーカスのねこだったり、泥棒だったり、一人暮らしのお婆さんに飼育されていたり。
彼は100万人の人と共に暮らしました。



飼い主になった人たちはいつもねこが好きで、彼が亡くなる度に、みんな悲しんで涙を流しました。
でも、ねこはただの一度も飼い主を好きになりませんでした。

そしてある時、彼は初めて、誰にも飼育されていない「のらねこ」になりました。
ねこははじめて自分のねこになりました。 ねこは自分がだいすきでした。

生まれかわった彼の元に、たくさんのメスねこ達がやってきて、仲良くしようとしました。
けれど、その中に100万回生きたねこに見向きもしない白いねこがいました。

おれは100万回しんだんだぜ!きみはまだ1回も生きおわっていないんだろ
ねこ問いかけに、白いねこは「そう」と素っ気なく答えるだけでした。
幾度も空しい問いかけをしたあげく、彼はついに「そばにいてもいいかい」と尋ね、白いねこは「ええ」と答えます。

白いねこと暮らすようになった彼は、多くの子猫たちに囲まれて過ごし、やがて、年老いた白いねこは死にました。
100万回生きたねこは100万回泣きました。そして、彼はその後を追うようにひっそりと死ぬのです。
「ねこはもうけっしていきかえりませんでした」

100万回生きたねこが再び生き返らなかったのは、初めて愛することを知った白い猫のいない世界に意味を見いだせなかったからなのか、あるいは、自分を愛してくれた100万人のかつての飼い主の悲しみが分かったからなのか。
謎を残したまま絵本は終わります。


1977年に出版され、どちらかというと大人に大人気の絵本ですね。作者の佐野洋子さんは2010年11月5日に72歳でお亡くなりになっています。

もう一本。
幼い頃、いわば年相応な時期に大好きだったのは、オスカー・ワイルドの「幸福(しあわせ)の王子」
街に建つ銅像の王子と、その願いを聞いているうちに渡りの時機を逸して死んでしまうツバメの物語。

町の空高く、高い柱の上に、幸福な王子の像が立っていました。全身うすい純金の箔がきせてあり、目にはふたつのきらきらしたサファイアが、また大きな赤いルビーが刀の柄に輝いていました。



布団の中で娘に読み聞かせをするときも、ところどころ声の詰まる本でした。でも、意に反して娘は違う物語が好きでした。

もしかしたらこの絵本、僕の人格形成に多大な影響を与えているかもしれない、と感じたりする一冊です。

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