<ヴァン・ダイン、
チャンドラー、
フレミング>
1411「グレイシー・アレン
殺人事件」
クイーンが ”悲劇” 四部作で使った仕掛けだ。
1412「大いなる眠り」
<ウラスジ>
言わずと知れたチャンドラーの長編第一作目。
しかし諸事情から、
”マーロウ初登場”
と言い切れないところがあるんだよなあ……。
短編が曲者でして。
それはともかく。
『大いなる眠り』とは。
本編の最後から抜粋。
(最初は二、三行ぐらいを予定していましたが、
結局、一段落まるまる写すことになりました)
死んだあと、
どこへ埋められようと、当人の知ったことではない。
きたない溜桶の中だろうと、
高い丘の上の大理石の塔の中だろうと、
当人は気づかない。
君は死んでしまった。
大いなる眠りをむさぼっているんだ。
そんなことでわずらわされるわけがない。
油でも水でも、
君にとっては空気や風と同じことだ。
君はただ大いなる眠りをむさぼるのだ。
どうして死に、
どこにたおれたか、
などという下賤なことは気にかけずに眠るのだ。
が、私はどうだ。
下賤な存在の一部みたいなものだ。
ラスティ・リーガン以上に下賤な存在だ。
が、老人がそうなってはいけない。
彼は、天蓋つきのベッドに静かに横たわり、
血の気のない手をシーツの上にのせて、
待っているのだ。
彼の心臓は弱い。
不確かな音をたてている。
思考は遺骨のように灰色だ。
そしてもうじき、
ラスティ・リーガンと同じように、
大いなる眠りに入るのだ。
……一片の詩を読んでいるよう。
これだからチャンドラーは止められないんだよなあ……。
1413「ゴールドフィンガー」
女は、開いたバルコニーのドアから
【涼風映画映画堂の】
”読んでから見るか、見てから読むか”
今回はこの二本。
◎「三つ数えろ」
The Big Sleep
1946年(米) ワーナー
製作:ジャック・L・ワーナー
監督:ハワード・ホークス
脚本:ウィリアム・フォークナー/リー・ブラケット/
ジュールス・ファースマン
撮影:シド・ヒコックス
音楽:マックス・スタイナー
原作:レイモンド・チャンドラー
出演
ハンフリー・ボガート
ローレン・バコール
ジョン・リッジリー
マーサ・ヴィッカーズ
ドロシー・マローン
* ボギー&バコール夫妻の二作目。
* ……って言うより、
なんだ、この脚本陣は?
* ウィリアム・フォークナー
『八月の光』『サンクチュアリ』
ヘミングウェイと並ぶロスト・ジェネレーションの旗手
* リー・ブラケット
『地球生まれの銀河人』『リアノンの魔剣』
エドモンド・ハミルトンの奧様
『スターウォーズ/帝国の逆襲』の脚本が遺作。
* ジュールス・ファースマン
『モロッコ』を始めとする、
スタンバーグ&ディートリッヒ映画の脚本家。
* ブラケットとファースマンは59年の
『リオ・ブラボー』でも共作している。
* 「三つ数える間に外へ出ろ」
* そして……。
* 「撃つな! おれだ!」
の早期パターン。
* 映像になると、
ハードボイルド・ミステリーの解決法は
いささか荒っぽい。
◎「007 ゴールドフィンガー」
GOLDFINGER
1964年 (英)ユナイト
製作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ
監督:ガイ・ハミルトン
脚本:リチャード・メイボーム/ポール・ダーン
撮影:テッド・ムーア
音楽:ジョン・バリー
主題歌:シャーリー・バッシー
原作:イアン・フレミング
出演
ショーン・コネリー
オナー・ブラックマン
ゲルト・フレーベ
シャーリー・イートン
タニア・マレット
ハロルド・坂田
* 『007危機一発』(ロシアから愛をこめて)
と並んで評価の高い作品。
* ボンドガールの一番手は
『アルゴ探検隊の大冒険』でヘラを演じた
オナー・ブラックマンだが――
* ”プッシー・ガロワ” って物凄い名前。
* ”プッシー” は女性器を表わす隠語。
* 『プッシー・トーク』ってポルノ映画があった。
* それは良いとして……。
* 一番印象的だったのは、文庫の表紙にもなっている
シャーリー・イートン。
* 金粉を塗られて死ぬ役だが、
その前の黒い下着姿も忘れられない。
* 彼女は『姿なき殺人者』でも
黒い下着姿を披露している。
* これはクリスティの
『そして誰もいなくなった』も翻案した作品。
* 舞台は寒い冬山。
* 夏でも冬でも黒い下着姿。