涼風文庫堂の「文庫おでっせい」468 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<ヴァン・ダイン、

チャンドラー、

フレミング>

 

1411「グレイシー・アレン

殺人事件」

S・S・ヴァン・ダイン
長編   井上勇:訳  創元推理文庫
 
 
アラビア伝説の悪鬼のすみか
”ダムダニエル”を名のるカフェーの密室で、
いかなる怪奇な犯罪が行われたか。
 
中世紀の毒の花を思わせる歌姫と
脱獄囚の死を賭けた恋。
 
死期の近づいたギャングの首魁と
ファイロ・ヴァンスの禅問答。、
そうして、
すべては有限の世界から、
無限の世界にうつろい消え去る。
 
作者自身にも迫りつつあった
死期を予告するかのような、
暗い影のなかに、婉然とシトロンの香りを発散させて
大活躍を演じる少女。
 
巨匠ヴァン・ダインの第十一作。
 
付録として名探偵ファイロ・ヴァンス伝を付す。
 
                        <ウラスジ>
 
 
これが最後じゃないんだ……。
 
に、しても、ボワッとした<ウラスジ>。
 
で……。
 
グレイシー・アレン……香水工場の女工員
 
との紹介があって、
『ベンスン殺人事』みたいに
表題に上がった個人が殺されるわけではありません。
 
で……。
 
ああ。
思い出した。
 
絶対王者ファイロ・ヴァンスに替わって
大活躍する少女探偵――。
 
このパターン。
 
これだ。
 
探偵役が途中で交代してゆくという奴。
 
ペイシェンス。
 
『Zの悲劇』で登場、『レーン最後の事件』で
完全に探偵役に取って代わる――。
 
グレイシー・アレンはペイシェンスのモデルだったんだ。
 
そんなことを、どっかで読んだことがあります。
 
……ただし、
その後のストーリー展開はまるで違っていますが……。
 
 
 
 

1412「大いなる眠り」

レイモンド・チャンドラー
長編  双葉十三郎:訳  解説:中島河太郎
創元推理文庫
 
 
私立探偵フィリップ・マーロウは
富豪スターンウッド将軍の邸宅へ招かれた。
 
依頼の内容はゆすりの処理。
 
将軍の次女カーメンが、
賭博場でふり出した一千ドルの約束手形にからまる
強迫状の件だった。
 
マーロウは差出人のガイガーの家をさぐりに行った。
 
ところが、
突如として三発の銃声がとどろく。
 
室内にとびこんだマーロウの前には二人の人間がいたが、
それは猥褻な秘密写真撮影の現場だった。
 
意表をつく新鮮な刑容、会話の妙味、迫力ある描写、
チャンドラーは処女作「大いなる眠り」によって、
一流の批評家と読者を一挙に魅了し、
ハメットにつづくハードボイルド派のチャンピオンとなった。
 
翻訳権独占刊行!

 

                        <ウラスジ>

 

 

言わずと知れたチャンドラーの長編第一作目。

 

しかし諸事情から、

”マーロウ初登場” 

と言い切れないところがあるんだよなあ……。

 

短編が曲者でして。

 

それはともかく。

 

『大いなる眠り』とは。

 

本編の最後から抜粋。

(最初は二、三行ぐらいを予定していましたが、

 結局、一段落まるまる写すことになりました)

 

 

死んだあと、

どこへ埋められようと、当人の知ったことではない。

 

きたない溜桶の中だろうと、

高い丘の上の大理石の塔の中だろうと、

当人は気づかない。

 

君は死んでしまった。

 

大いなる眠りをむさぼっているんだ。

 

そんなことでわずらわされるわけがない。

 

油でも水でも、

君にとっては空気や風と同じことだ。

 

君はただ大いなる眠りをむさぼるのだ。

 

どうして死に、

どこにたおれたか、

などという下賤なことは気にかけずに眠るのだ。

 

が、私はどうだ。

 

下賤な存在の一部みたいなものだ。

ラスティ・リーガン以上に下賤な存在だ。

 

が、老人がそうなってはいけない。

彼は、天蓋つきのベッドに静かに横たわり、

血の気のない手をシーツの上にのせて、

待っているのだ。

 

彼の心臓は弱い。

不確かな音をたてている。

思考は遺骨のように灰色だ。

 

そしてもうじき、

ラスティ・リーガンと同じように、

大いなる眠りに入るのだ。

 

 

……一片の詩を読んでいるよう。

 

これだからチャンドラーは止められないんだよなあ……。

 

 
 
 

1413「ゴールドフィンガー」

イァン・フレミング
長編   井上一夫:訳  早川文庫
 
 
イギリス秘密情報部007号、
ジェイムズ・ボンドは知り合いの実業家に頼まれ、
オーリック・ゴールドフィンガーと名乗る男とカードゲームをし、
そのインチキを看破した。
 
だがボンドは知るよしもなかったが、
黄金をこよなく愛するこのゴールドフィンガーこそは
世界最強の犯罪組織を操る怪物であり、
仇敵スメルシュの手先であった!
 
やがて新たな指令を受けたボンドは、
ゴールドフィンガーの企む大犯罪計画に
単身たちむかっていった……!
 
007号の縦横無尽の活躍を綴って
圧倒的な人気を誇るスパイ冒険シリーズ!
 
                        <ウラスジ>
 
記念すべき、
早川文庫初登場の「007」がこの作品。
 
これとか『ロシアから愛をこめて』あたりとかは、
まだ映画との乖離がそれほどでもないので、
安心して(?)読めます。
 
では順を追って映画との関連性を。
 
<ジル・マスタートン>について

女は、開いたバルコニーのドアから

一ヤードばかり内側に引きよせたテーブルに、
クッションを二枚のせて腰を下ろしているのだった。
<中略>
昼下りの暑さも最高潮のときで、
女は黒のブラジャーに黒い絹のパンティだけで、
あとははだか。
52P
 
「あいつは、その女たちを麻酔で眠らして
――それから――
体中を金で塗るのよ」
「体を金ペンキですっかり塗られたら、
肌の毛穴が呼吸できなくなって、
死んでしまうのよ」
「ジルは体中すっかり塗りつぶされたのよ。
ゴールドフィンガーに殺されたんだわ。
きっと復讐のためよ」
219~220P
 
映画と違って事後報告。
 
<オッドジョブ>について
「この男のことは雑役(オッドジョブ)と呼んでるんだ」
<中略>
ボンドはなにげなくいった。
「なぜあの男は、いつも山高帽をかぶってるんです?」
「オッドジョブ!」
呼ばれたときは、朝鮮人は使用人出口についていた。
「帽子だ」
ゴールドフィンガーが煖炉のそばの羽目板を指さしていった。
オッドジョブはふりかえり、
のそのそとボンドたちのほうへ戻ってきた。
途中までくると、足も止めなければ狙いもつけずに、
帽子に手をあげ、へりをもつと、力一杯よこに投げた。
大きなカーンという音がした。
一瞬、帽子のへりが
ゴールドフィンガーの指さした羽目板に
一インチも刺さっていたが、
やがて床に落ちて、カランカランと音をたてた。
ゴールドフィンガーは愛想よく笑顔を見せた。
「軽いがとても丈夫な合金なんだ。
<中略>
あんたにも想像はつくだろうが、
いまの一撃で人間の頭なんかぶち割ってしまうし、
首の半分ぐらいはちょん切ってしまう」
169~170P
 
映画の設定はよく分かんないけど、
原作では ”朝鮮人” となっています。
 
映画でオッドジョブを演じた
日系人プロレスラー・ハロルド坂田のイメージがあるんで、
日本人もしくは日系人という思い込みが
刷り込まれています。
 
その他は<映画>に続く。
 
 

 

 

 

 

【涼風映画映画堂の】

”読んでから見るか、見てから読むか”

 

今回はこの二本。

 

 

◎「三つ数えろ」  

The Big Sleep

1946年(米) ワーナー

製作:ジャック・L・ワーナー

 

監督:ハワード・ホークス

脚本:ウィリアム・フォークナー/リー・ブラケット/

    ジュールス・ファースマン

撮影:シド・ヒコックス

音楽:マックス・スタイナー

原作:レイモンド・チャンドラー

出演

ハンフリー・ボガート

ローレン・バコール

ジョン・リッジリー

マーサ・ヴィッカーズ

ドロシー・マローン

 

* ボギー&バコール夫妻の二作目。

 

* ……って言うより、

  なんだ、この脚本陣は?

* ウィリアム・フォークナー

  『八月の光』『サンクチュアリ』

  ヘミングウェイと並ぶロスト・ジェネレーションの旗手

* リー・ブラケット

  『地球生まれの銀河人』『リアノンの魔剣』

  エドモンド・ハミルトンの奧様

  『スターウォーズ/帝国の逆襲』の脚本が遺作。

* ジュールス・ファースマン

  『モロッコ』を始めとする、

  スタンバーグ&ディートリッヒ映画の脚本家。

 

* ブラケットとファースマンは59年の

  『リオ・ブラボー』でも共作している。

 

 

* 「三つ数える間に外へ出ろ」

* そして……。

* 「撃つな! おれだ!」

   の早期パターン。

 

* 映像になると、

  ハードボイルド・ミステリーの解決法は

  いささか荒っぽい。

 

 

 

 

 


 

◎「007 ゴールドフィンガー」        

GOLDFINGER

1964年 (英)ユナイト

製作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ

 

監督:ガイ・ハミルトン

脚本:リチャード・メイボーム/ポール・ダーン

撮影:テッド・ムーア

音楽:ジョン・バリー

  主題歌:シャーリー・バッシー

原作:イアン・フレミング

出演

ショーン・コネリー

オナー・ブラックマン

ゲルト・フレーベ

シャーリー・イートン

タニア・マレット

ハロルド・坂田

 

* 『007危機一発』(ロシアから愛をこめて)

   と並んで評価の高い作品。

 

* ボンドガールの一番手は

  『アルゴ探検隊の大冒険』でヘラを演じた

  オナー・ブラックマンだが――

* ”プッシー・ガロワ” って物凄い名前。

* ”プッシー” は女性器を表わす隠語。

* 『プッシー・トーク』ってポルノ映画があった。

 

* それは良いとして……。

 

* 一番印象的だったのは、文庫の表紙にもなっている

  シャーリー・イートン。

* 金粉を塗られて死ぬ役だが、

  その前の黒い下着姿も忘れられない。

* 彼女は『姿なき殺人者』でも

  黒い下着姿を披露している。

* これはクリスティの

  『そして誰もいなくなった』も翻案した作品。

* 舞台は寒い冬山。

* 夏でも冬でも黒い下着姿。