涼風文庫堂の「文庫おでっせい」469 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<A・バートラム・

チャンドラー>

 
 

1414「銀河辺境への道」 

銀河辺境シリーズ<1>

アーサー・バートラム・
チャンドラー
長編   野田昌宏:訳  早川文庫
 
 
星間運輸会社の商船<イプシロン・セキスタンス>が
突如宇宙海賊の魔手に襲われた!
 
いちはやく信号をキャッチし
救援にかけつける僚船<デルタ・オリオニス>。
 
だが、
そのかれらの前には無惨に破壊された宇宙船が、
そして犠牲者の累々たる屍体が残されているばかりだった。
 
しかもその中には
<デルタ・オリオニス>船長クレーヴンの婚約者さえいる。
 
そして、
復仇の怒りに燃える船長以下、
血気盛んな新任宇宙軍少尉、
美貌のパーサーらが急遽武装商船を仕立てあげ
壮烈な追撃戦を展開するのだった!
 
直径十万光年に達する大銀河にくりひろげられる
宇宙の男たちとそして女たちの哀歓を、
詩情豊かにつづる壮大な宇宙ロマン、
銀河辺境シリーズ第一弾!
 
                        <ウラスジ>
 
またまたSF。
またまたスペオペ。
またまた野田昌宏Capt.。
 
この流れはしばらく続きます……。
 
さて。
 
英国生まれの豪州人、
A・B・チャンドラー描くところの宇宙絵巻。
 
一等最初に、
 
大英帝国海軍提督、ホーンブロワー卿に
 
とありますので、
C・S・フォレスターの<ホーンブロワー・シリーズ>の
”宇宙版” を目ざしているんでしょうか。
 
ホーンブロワーの一作目は「士官候補生」で、
最終的には「海軍提督」にまで登りつめますが、
はたしてジョン・グライムズは?
 
ハミルトン、スミス、ジョーンズが活躍した
1930年代から一挙に1970年代に突入。
 
合作スペオペのローダン・シリーズが
1960年代前半に登場し、
この時点で ”オリジナリティに難あり” 
と言われたスペースオペラ。
 
その揶揄にも似た論評を
チャンドラーはいかに躱していったか。
 
<追記>
次の作品で露わにされるシリーズの特色の一つ、
それがこの一作目で早くも顔を出しています。
それがこのシーンの描写――。
 
 
いつの間にやら
ユニホームである彼女のブラウスのボタンははずれ、
固く張った乳房はグライムズの裸の胸におしつけられていた。
 
どっちが、どうやってジッパーをはずしたのかわからぬが、
とにかく彼女のショーツはその腰からはぎとられ、
グライムズの下着も、
もはや二人の肌をへだてる障壁ではなかった。
 
                      <本編 100P>
 
 
こういうシーンに関しては、
次作のあとがきで、野田昌宏さんが触れておられます……。
 
 
 
 
 

1415「エル・ドラドの生贄」 

銀河辺境シリーズ<2>

アーサー・バートラム・
チャンドラー
長編   野田昌宏:訳  早川文庫
 
 
惑星エル・ドラドは、
かつてすこぶるつきの大富豪たちの手によって、
死の惑星から文字通りの楽園へと造り変えられた世界だった。
 
住民たちは外部との交渉も断ち、
ぜいたくざんまいの日々を過ごしていたが――
 
しかし、
そのかれらにもたったひとつの悩みがあった。
 
エル・ドラドはなぜか人間の生命を一切拒絶、
そのため、
ただの一人として新生児は生まれない。
 
そして、
救難信号を受けた巡航宇宙艦エアリーズがこの惑星を訪れたとき、
恐るべき生と死のゲームが開幕を告げるのだった!
 
監察宇宙軍青年士官グライムズの数奇な運命を、
また恋を描く好評シリーズ第二弾!
 
                        <ウラスジ>
 
 
<ところてん方式>の人口調整。
 
この二巻目で
<銀河辺境シリーズ>の特徴のひとつが如実になってきます。
 
 
この作品がとくにというのではなく、
チャンドラーの作品には、つねに、いたるところに
なかなか艶ッぽい描写や会話がずばりとあらわれる。
 
また、それが非常にロマンティックだ――とか、
必然性がどうの――とか
事あたらしく云々するほどのものでもないのだが、
SFとしては異色なほどそのてのシーンが多いのは
たしかだろう。
 
<野田昌宏:あとがきより>
 
そうなんです。
それがイラストの加藤直之画伯の挿絵と相まって……。
 
加藤画伯と言えば、
ハインラインの『宇宙の戦士』で、
<スタジオぬえ>の一員として
宮武一貴画伯とともに
”パワードスーツ” のヴィジュアルを決定づけたお人。
 
 
『宇宙の戦士』 P66・67
 
元祖・ガンダム。
 
その先生が、
このシリーズでは毎回、
カラミのシーンや女性の裸体を描いているとは……。
 
次回作では<あとがき>も書いておられます。
 
 
 
 

1416「連絡宇宙艦発進せよ!」 

銀河辺境シリーズ<3>

アーサー・バートラム・
チャンドラー
連作短編集   野田昌宏:訳  早川文庫
収録作品
 
1.グライムズの実験
2.V・I・Pは名コック
3.ブリキの神様
4.眠れる美女の眼が覚めて・・・
5.頓馬な浮標ブイ
6.目をさました宇宙船
7.ロボットの仕返しは――
 
 
監察宇宙軍のはみだし男、
ジョン・グライムズの勇猛心あふれすぎる活躍は
あまねくとどろき、
ついに手を焼いた上司は、
かれを連絡宇宙艦<アッダー>の艦長に任命した。
 
しかし、
かれのトラブル・メーカーぶりは
かえって水を得た魚のごとくエスカレートするばかり。
 
密命を帯びたスパイはビルの窓からつき落とし、
銀河連邦にも数少ないという超高性能ロボットはぶちこわし、
蜜蜂女王にあやうく貞操を奪われかけ、
はては男まさりの婦人行政官に
つまみ喰いの現場を取り押えられ……
 
ますます好調のシリーズ第3弾は、
愛すべきグライムズをめぐる事件の数々を描く!
 
                        <ウラスジ>
 
前回で紹介したように、
今作ではイラストの加藤直之画伯が
”あとがき” も担当しておられます。。
 
しかもそれが、
表紙・口絵・そしてすべての挿入画について
コメントしているという大サービス。
 
これが実に面白い。
 
まずは表紙から。
 
シリーズも二十冊以上となると表紙は、
その巻の特徴を無理矢理にでも絵にしておかないと、
後の巻になるに従って、タネが無くなってしまう。
第三巻は連絡宇宙艦自体が最大の特徴だが、
口絵に入れる都合で、
何回も登場するシャアラ星人に決定。
 
シャアラ星人は蜂の進化した節足動物である。
艦長グライムズは、この蜂の女王に惚れられ、
意志を押付けられて、
その化物の姿が美しい女体に見え始め、
あわや貞操を……というエピソード。
 
<加藤直之:あとがきより>
 
そう言われて見ると、
かなりグロテスク表紙絵。
 
昆虫から進化した種族と性の快楽を味わうって
ファーマーの『恋人たち』があるけど、
あれほどロマンティックじゃない……。
 
ロジャー・コーマンの映画に、
『蜂女の恐怖』ってのがあったけど――
 
 
このイラストが、それっぽい。
 
<仮面ライダー>にもいたっけ。
 
 
こっちなら、何とか……。
 
もとい。
 
で、相変わらず女性の裸体のイラストも出てきます。
 
とにかく、この主人公のグライムズ、
下半身がゆるい。
 
一作ごとに違う女と事に及ぶなんて、
まるで宇宙の ”ジェームズ・ボンド” 。
 
<結論>
イラスト担当者からのメッセージ発信なんて、
よく考えれば珍しいことです。
 
とにかく
挿絵画家の苦労が窺える<あとがき>です。
 
<追記>
でも、若かりし頃ゆえ、
それらしき描写、シーン、
そして挿絵・イラストを期待して
読んでいた節もあるのは否めません。
 
バカですねえ……。
 
なお、
<外伝>をのぞき、
<銀河辺境シリーズ>は全15巻、
時を置いて登場します。
 
表紙やイラストもかなりハードになってきますので、
ご期待(?)下さい。