ランニング・デビルマン -141ページ目

ランニング・デビルマン

走るデビルマンの平和を守る闘いの記録を綴ったブログ。家庭平和を守る為に、大会参加は少なくなってきましたが…。
大会で見かけたら声をかけてください。

これが台風デーモンの攻撃か…。


雨脚は強く、容赦無くデビルを叩く。一瞬でも正丸峠を越えてその先の正丸駅まで行こうと思った心をいとも簡単にへし折られる。


兎に角、野宿するにしてもこのままじゃ風邪ひいちゃうからなんとかしなくちゃな。


そう考えると峠前の最後のコンビニでビニール合羽上下を購入する。これがあればなんとか耐え忍ぶことが出来るだろう。デビルスーツを脱いだとしても合羽を着てれば電車に乗って帰ることもできるかもしれない。




負け犬…。


そう、俺の中で何かがガタガタと音を立てて崩れ落ちていく。もう早くこの闘いから逃げ出したくてしょうがなかったのだ。

雨は一層激しさを増し、歩道は川のようになっている。それでも車道に出ては時折通るトラックが危険だ。


無事に家まで辿り着く…。


何があろうともこれだけは守らなくてはいけない最後の約束なのだ。歩道をキープしながら進めば足元はびしょ濡れだ。
峠で泥だらけになったシューズもすっかり綺麗に洗われてしまった。真っ暗闇の中雨に打たれて独り進むのがこれほど寂しいこととは。

なんでこんな馬鹿げたことやってんだろうな…。


自問自答を繰り返しながらも少しずつ進んでいく。



好きでやってる事じゃないか?


いつの間にかデビルがデビルで完走する事に囚われすぎていたのかも知れない。自分が楽しんでこそのウルトラだ。
当然、何も準備しないで行って楽しめるほど甘いものじゃない。全ては自分の責任なのだ…。


「デビル、大丈夫か?」

「すいません、もう駄目です…。」


こうして、後ろから来た大会車両にリタイアを告げるとデビルの雁坂はおわりをつげた。


もう一度、この闘いに還ってくる。出直しを誓うデビルでありました…。



【終わり】








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秩父市街へ近付くにつれ、段々と賑やかさが戻ってくる。あれほど寂しく感じた道も遥か昔。目標物があるだけで距離感が戻ってくる。秩父のCPはもう少し先だ…。


ここでも、うしろから来るランナー何人かに抜かれていく…。


まだまだ諦めていない人達がいるのだ。それに引き換え早々にリタイアを決めたデビルの情けないことよ。


まだ行けるんじゃねーのか?いや、やっぱりもうだめだろう…。心の中で葛藤があったのは間違いない。それでもやはり自分の限界は見えていたのも事実なのだ。


こうして、なんとかよろよろと第5CPに辿り着いた…。





「デビル大丈夫?」
「もうだめだ…。」

「ああ、もう終電無くなっちゃったから、ここから帰るのは自力でね!」

「ゆっくり休んでいって!でも時間がきたら追い出すから~。」

「始発が動くまで峠で遊んで来てね♪」

「もうすぐそこまで台風が来てるから、この先は土砂降りだって♪」



この時デビルの頭の中にはキャンディーズの優しい悪魔がリフレインしていたのは言うまでもない。



しーちゃん、あんたデビル以上のデビルだよ…。

どうやらリタイアすることも許してくれないらしい。さすがスポーツエイドしーちゃんはスパルタだ。しばしの沈黙の後、デビルは重い重い腰をあげると再スタートを切った…。


CPを出た瞬間、遂に雨が降り出してくる。


もう、芦ヶ久保の駅で始発が動くまで野宿でもする以外に俺の生き残る道は無い。覚悟を決めて正丸方面へ向かうデビルなのであった…。


【続く】


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秩父市街へと向かう道は余りにも静かで寂しかった…。

台風が近付いているからだろうか、去年のようにキャンプで賑わうこともなく、ただひたすら暗闇の中を行く。当然ながら人通りも無く、車の往来も少ない。嵐の前の静けさだろうか、まだ宵の口だというのに真夜中かと思うような錯覚に囚われる。


(誰かと話がしたい。)


ふと、携帯電話に手を伸ばし、相方へ電話をかける。この時ほどタッチパネル対応に改造したデビルフィンガーが役に立った時はない。ただしデビルはガラケーですが何か?


「もしもし、俺だけど」
「もしもし、ちょっと大丈夫?山道で崖から落ちたりしてんじゃないかと思って心配してたんだよ!」

「ああ、ごめんよ。大丈夫だよ。」
「お姉ちゃんなんか、父ちゃんが落ちちゃって死んじゃってんじゃないかって泣いてんの」

「そうか、それはすまなかったね。」
「まだ途中なんでしょ。やめろって言ってもやめないんだろうけど、台風が来て凄いことになってるよ。」






「秩父の街中に行ったらエイドがあるから、そこでリタイヤするよ。心配かけてすまなかったね…。」




レース途中で家族に電話したのも、リタイヤを自ら決めたのもこれが初めて。
デビルは最早ヒーローズでもなんでもない。変な格好をしたただの弱い一般ランナーなのだ。まだ諦めずに頑張っている人が沢山いるというのに、まさかこんなに早くリタイヤを決めるとは…。


とりあえず第5CPで待っているであろうしーちゃんに会うことだけを目指して暗闇を行く。それがとんでもない間違いであることなどこの時のデビルには知る由もないのであった…。


【続く】


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最早、時間内完走は無理だろう…。


ゴールすぐそこ90キロ地点で味わった屈辱。それでも準完走はまだ行ける、そう信じて自分を鼓舞するしかない。幸いにも次のCPまでは下り基調である事はわかっていた。走れるところまで走って行こう。


前後にランナーはほとんどいない。


秩父湖までおりて来た時には私設エイドの方がいたのでちょっとホッとする。タイガーは既に30分以上先に通過したとのことで、美味いものばっかり食べて不摂生なくせにすげーなあと感心。
久々の売店で氷菓子を購入し、食しながら進む。

段々と日が暮れてきた…。


行けども行けどもCPが出て来ない。もう少しのはず、もう少しのはずと頭の中で繰り返しながら進むものの、一向にそれらしきものが見えない。遂にCP手前でヘッドライトを装着しなくてはならない状況に陥った。本来であれば次のCPで装着する予定であったのに、準完走すら最早危うい…。

心身共に疲れ果て、なんとか第4CPまで辿り着いた。



ここにはスタッフで食パンマンこと『なるDさん』がいる。昨日のスタッフ紹介でもコメントでも入れてもらえていたので事前に判っていた事だが、改めて知り合いがいるというのがこれほどありがたいことだとは思わなかった。

ここまでロスタイムを可能な限り削ってCP休憩も短めだったデビルが、初めて深く椅子に座り長めの休憩を取った。



「もう駄目かもしれない…。」


弱音を口にしたデビルは既に負け犬状態だ。
それでも秩父まで自分の脚で行かなければ川越まで帰ることは出来ない。この大会はスパルタなのだ。敗北者にも甘えは許されない。


しばし休憩をした後、デビルは重い腰を上げてCPスタッフにお礼を言い、再び闇のロードに踊り出す。


最早正丸峠デーモンと戦う力すら残されていなかった…。


【続く】



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雁坂峠ヘ近づくと、九十九折りの登りとなる。上を見ればまだまだ先の頂上も、コースがわかっているからこそ休憩無しで進むことが出来るのだ。

見晴らしが良くなるに連れ、強烈な風が吹き付ける…。
当然足元が滑るのも酷くなる。



それでもなんとか日本三大峠の一つを制覇!!


去年はベンチに座って一休み、記念撮影する人が多かったが、今年はそんな人は居ない…。っていうか遅すぎて人そのものが居ない。
デビルも休む間も無く下りヘ突入。滑って転びながら第2CPヘ到達。そこには今年も恒例の雁坂の魔女がナース姿でおかゆを振舞っていた。

(先を急ごう…)

無駄な時間は最早残されていない。この雁坂峠の下りこそがデビルにとっては鬼門なのだ。とにかくゆっくりでもいいからダメージを蓄積させないように気を付けながら進む。

(ここの距離表示は見るたびに心が折れる。信じられるのは自分の中のフィーリングのみ…。)

そう自分に言い聞かせながら進んでいく。気が付けば雨は止み、鎖場の見通しがいい場所では虹が見えた…。
虹は西洋では不吉なものなのだ。西洋かぶれの都会派デビルからしてみればこれは喜んでいられない状況なのだ。


予感は的中し、下りのあらゆるところでグリップを失い始める。何度滑って転んだことだろう。後続のランナーには次々抜かれ、泥まみれのデビルは無惨な姿を雁坂デーモンの前に晒す。お約束のように足の爪は痛み始め、想定タイムからは大きく遅れている。
登りで抜いたタイガーにもあっさりパスされ最早心は折れ始めていた。


(今年も駄目なのか…。)


こうして雁坂デーモンにたっぷり痛めつけられたデビルマンは、あまりにも遅すぎるために蜂に刺されることもなく第3CPに到達した。既に人はまばらで閑散としたCPで食べたカレーの味はきっと一生忘れられないだろう…。


(ここで止めるわけにはいかない…。)

敗戦濃厚なデビルマンはそれでも行くしか無いと悟っていたのであった。


【続く】


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