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鈴木 彰の ミドル・シニアランナーのためのランニングブログ

@runnerのCEO、e-Athletesヘッドコーチの鈴木彰が、なるべくプライベートな部分は避けつつ、主に概ね40歳以上のミドル・シニア(中高年!)ランナー向けにランニング関係のあれこれを綴ってみようかなってとこです。

 

 

 男子20km競歩

 

 池田向希選手が銀メダル山西利和選手が銅メダル獲得!!

 陸上競技関係者が狂喜乱舞するほどのパフォーマンスです!!

  

 金・銀独占も、3人入賞も期待されましたが、実際、2人がメダル獲得というのは、「有り難い(あることが難しい)」ことですね。陸上で、1種目で複数メダルは85年振りとか!

 

 北海道とはいえ、この時期の持久系スポーツです。高温・高湿下でまともに闘えるはずもなく、その中で各国の選手もチームスタッフも、研究を重ね、この条件下で最大のパフォーマンスを発揮させようと、涙が出る…いや、止まらないほどの努力と工夫を重ねてきました。

 

 スローペースの展開から、終盤のスパート勝負になりましたが、疲労から歩形が崩れると反則を取られる…という難しい競技です。

 長身の方が有利とされる中、その長身を利したイタリアのスタノ選手のオーソドックスな歩形に対し、日本勢は非常に高い技術と戦略を示してくれました。

 

 池田選手は、みちょぱの親戚、山西選手は京大工学部卒ということでも話題になりましたが、マイナー競技的にはそういう話題作りが必要なことも百も承知。それを利用しつつ、<日本の競歩>をしっかり確立してきました。そして、こういう大舞台できちんと結果を出すアスリートには本当に感服します。

 

 ちなみに、みちょぱは、「みちょぱのはとこではなく、せめて銀メダリスト池田向希のはとこはみちょぱでお願いします」とツイートしています。主にメディアに向けて。ここはそうだよね。いいぞ、みちょぱ!

 

 

 

 

 すっかり競歩王国となった日本~

 今回も男子20kmWと50kmWとで、複数のメダルが期待できます。

 

 国内では、お尻フリフリのカッコ悪いスポーツというイメージがありますが、これは64年東京五輪の記録映画の中で、そういう演出があったことが要因だとされています。

 

 そういうマイナスイメージもあって、競技人口ももともと少なく、決して歴史的に強かったわけではありません。

 

 私が中高生の頃、国内の競技人口は200人ほどと言われていました。その8割以上が石川県にいたとされています。石川は今も競歩の聖地で、指導者も選手もいっぱいいますね。

 

 「長距離崩れ」と言われる、故障で走れなくなった高校生や大学生の長距離ランナーが「マネージャーになるか、競歩に転向するか」という選択を迫られ、競歩を選んだ~みたいなケースも非常に多かったものです。

 もちろん(石川県以外)指導者もほとんどいなければ、技術やトレーニング法なども分かるはずがありません。

 それが今では、小中学生のうちからきちんとした指導を受けられるシステムが確立されており(特に石川県)、そういう世代の選手が今回の代表にもなっています。

 

 それもこれも、このままではいかん!ということで、ある時期から関係者の皆さんが大変な努力をされて、普及や強化を進めてきたからです。

 やや無理やりにインターハイ種目にもなりましたが、そのことが普及につながったのも確かです。

 また、トップ級は経済的にも厳しい中、手弁当でスペインやメキシコなどの強豪国での合宿や合同練習等を繰り返してきました。長距離やマラソンの至れり尽くせりの海外遠征と比べると、月とスッポン状態だったそうですよ。

 

 研究熱心な指導者の方が多く、理論的な技術には定評があります。ただ、体力的な要素が今一つ…という状況が続く中、これもある時期から、マラソンのトレーニング方式に取り組み始めてから飛躍的に強くなり始めました。それまでは、ひたすら距離を踏むだけのトレーニングだったとか。

 この改革によってもともとの技術が生かされるようになり、それが今日の活躍につながっています。

 

 歩いても、キロヨン!ですから、走っても皆、速いですよ~。

 

 

 

 前回、「ほかの選手の転倒に巻き込まれてしまうことも普通にありますが、不可抗力としてそのまま流されてしまう場合と、妨害を受けたと認定されて救済(次のラウンドに進出)される場合とがあります。その境界はけっこう微妙です…。」とお伝えしましたが、男子800mで救済がありましたね。

 

 準決勝3組で2人が転倒し、仲良くジョグでフィニッシュした2人のうち、後ろを走っていたボツワナのアモス選手が、妨害を受けての転倒とされ、決勝に進出となりました。

 なかなか気持ちの切り替えも難しいところで、結局その決勝も8位でしたが…。

 

 見ていてもちょっと微妙で、一昔前なら議論の余地なく流されているところですが、近年は、出来るだけ救済~みたいな風潮があり、「もしかしたら救済されるかも」的なケースではありました。

 

 今夜は本家格闘技!男子1500mがありますが、激しいレースになる予感…。

 男子800m決勝もスローペースとなり、優勝タイムは準決勝通過タイムよりも悪くなりましたが、中距離走はどうしてもそういう傾向になりがちです。逆に言うと、準決勝が面白い!速いし、ボコボコだし…。

 5年前のリオ五輪でも男子1500m決勝は歴史的な超スローペース(高校生の県大会並み…)のラスト勝負となり、優勝タイムはその後のパラリンピックのタイムをも下回ったということでちょっと話題にもなりました。が、その時も、準決勝は凄かったです…。

 

 準決勝といえば、女子1500m!あろうことか、時間をちょっと間違えてリアルタイムで見ることができませんでした…。大失態です。

 田中希実選手―まさかこの種目で決勝に進出するとは…。自分が生きているうちに日本の女子選手が4分を切るのを目にすることができるとは…。(見てないんですけど…)

 大袈裟でなく、過去45年間のうちの、「個人的に選ぶ日本中長距離走・マラソン界の偉業ベスト10」に入ります。先に結果を知っちゃったのが本当に悔やまれ、あああ、リアルで見たかった…。喜ばしいことですが、自分的にはすごいショックです。。。

 

 ご本人もインタビューで「決勝はスローになる傾向がある」とおっしゃってましたが、場合によっては今回も先頭を引く局面があるかも知れませんね。

 入賞ラインは少し遠いような気もしますが、田中選手に限っては、まっとうな予想はあまり当たりませんので、、、

 

 

 

 男子5000m予選

 

 やはり<2組5着+5>でしたが、プラスはまたまた2組から全部出ましたね。

 

 1組は想定以上の超スローペース。ラスト勝負必至で、5着に入らないとかなり危ない状況。そのラスト勝負でもつれ、エチオピア勢2人が落選!と早速、大波乱です…。

 

 ところが2組も1組に合わせたかのような超スローペース。しかし、そこは2組の利で、3000m以降、少し調節して、ラスト2周の加減(ここが本当に上手かった!)で、10着までが+5で通過できるようなペースで行きます。9着までの選手は通過を確認し、最後は流して通過。10着の選手もラストスパートでプラスの5番目で入りました。

 

 正直、<2組7着+1~2>とかにした方が実力が反映されるのでしょうが、このギャンブル性がいいんですかね、、、

 

 さて日本の坂東(1組)・松枝(2組)選手ですが~同じような展開のレースで、同じように失速し、予選敗退となってしまいました。

 

 超スローペースの展開の中、いずれも集団の後方に着きます。こういう場合~

 

 ・集団の前から中ほどに位置する

   →小さな上げ下げの影響を受けやすい

     勝負どころのペースぺチェンジに対応しやすい

 

 ・集団の後方に位置する

   →小さな上げ下げの影響を受け難い

     勝負どころのペースチェンジに対応し難い

 

 というようなことがあります。サンショーの三浦選手や5000mの廣中選手、1500mの田中選手らが積極的に前を引いて成功しているのを見ていますので、やけに消極的で、それが失敗の原因のようにも思われがちですが、後方待機は、これはこれで1つの作戦ではあります。

 

 ただ!!やはりあまりに超スローペースだったので、後半~終盤のペースアップが激しくなるのは100%想定しなければなりません。それならやはり、「このペースなら、自分で先頭を引く」―というのも十分アリな戦略ではありましたね。

 

 残念だったのは、その100%想定でき、実際、そうなったスパート合戦に入る前段階で2人とも先頭集団から離脱してしまったことです。

 スローペースとはいえ、小さな上げ下げはけっこうあったはずです。「クリール」でも解説したように、テレビ画面を見ているとこれはちょっと分かり難いのですが。

 それで消耗してしまった…というのはないことではなく…てか、実際、そうだったのでしょう。でないと離されたりしないですね。

 

  とはいえ、完全にグジャグジャにされるほどのダメージを受けるような激しい揺さぶりがあったようにはさすがに見えませんでした。中盤までの超スローペースに対し、後半~終盤は離されてもペースはそれなりに上がるものですが、それもなかった…。前半楽々のペースを、後半は維持するのがやっとだったという感じですね。

 

 暑い中、スローで展開し、途中から切り替える~かなりの確率でそうなることは分かっており、それに備えた練習もしてきたはずなだけに、これは本当に残念なことでした。

 

 

 

 

 男子5000m 予選

 

 2組の実施ですが、おそらく女子同様、予選通過は「5着+5」だと思います。(確認できず…)

 

 女子5000mがそうだったように、片方の組に+5が偏る可能性もあります。リオ五輪の男子5000mもそうでした。女子の廣中さんのように、自分でハイペースに持って行けなければ、運次第となってしまいます。

 

 廣中さんや三浦くんのように、自分で先頭を引いてレースを作れれば良いのですが、それはそれで大変なことです。他の選手にいいように使われ、使い捨てにされることもあり、+5相当の10着に入れなければ元も子もありません。たまたま良いペースになり、なんとか中盤くらいに位置して頑張って10着に入る!というのが現実的な理想形ですね。

 

 さて5000m― 市民ランナーの場合、5kmも10kmもそう変わらないだろう…みたいなところもありますが、さすがにこのレベルになると大違いです。特に近年、ますますスピード化が進み、10000mのトップランナーでも5000mには対応できない…みたいなところも出てきました。その10000m自体、ものすごくスピード化しているのですが。もはや1500mに近いような競技になってきましたね。

 

 日本は、1組に坂東悠汰選手、2組に松枝博輝選手が出場します。ともに富士通の所属ですね。

 国内ではスピードランナーと称される彼らも、持ちタイム的にも、そのスピードレベル的にもかなり厳しい闘いにはなりそうです。

 日本記録が出るようなペースにはならず、揺さぶりの激しい展開になるような気がしますので、そこをなんとか切り抜けてもらいたいところです。