クローバー(ノンフィクション小説) -2ページ目

絶望の果てに-16-


事件後も仕事を続けた。


シフト上、仕事を抜けるわけにはいかなかった。



寮は警備が強化され、
わたしは婦長の家から出勤。

車の中では身を低くし、外から見えないように……


周りには常に2人以上の病院スタッフが傍にいてくれた。



婦長の家にいる時も、仕事の時も寝る時も……


初めに幸也との間に入ってくれた先輩とも解り合う事ができた。




色んな話しをした


沢山笑って


沢山泣いて



去り際に……

みんなと心一つになれたような気がした。







わたしが
ここに居られる時間は……


あと僅か。

絶望の果てに-15-


事情聴取で
明らかになった事がある。


それは……

幸也が
仕事をしていなかった事。


生活費は母親に支給されていた
生活保護のお金。





今思えば疑わしき点はいくつもあるのに……


全然気がつかなかったよ





幸也……

絶望の果てに-14-

これまでのはなし 



そして次の日

2度目の事情聴取。



だけど……

どうしても
1人で外に出られない。



「あたし……1人で外に出るの怖いです……」


そう言う自分に
警察官は


「すぐ近くだから大丈夫大丈夫」


そう言った。


何を以って
大丈夫と言えるのだろうか……


恐怖が染み付いている
自分にとって


1メートル歩くのでさえ

命懸けなんだ。


結局高本さんが
送り迎えをしてくれた。


「ごめんねルナちゃん……」


前に高本さんに聞いていた。

刑事に
プライベートな時間はない


休みの日にはどこに誰と何をするのか報告しなければいけないそうだ。



それに次々起きる事件……

被害者1人1人を24時間守る事などできない。


少なからず
わたしはその姿を見ている……



これが現実。