【このテーマの記事は、学術誌や学会等で発表した内容の紹介です。】
現在、撮影位置高精度測位型UAV(Phantom 4 RTKなど、撮影位置を数cm以下の誤差で測位できるドローン)を使い、標定点を省略した写真測量が注目を集めており、その精度を検証するための現地実験が、国内外で数多く行われています。
私たちは、適切な傾き(天底角)の斜め撮影が必要であることや、解析の設定も非常に重要であることを強調してきました。
本記事では、株式会社フジタさんとの共同研究で、造成現場(裸地)を対象に検討した成果の研究発表(共同発表)を2つ紹介します。
対象領域が裸地の現地実験は、植生の影響が少ないため、現地実験の中ではノウハウが蓄積しやすい(結果を一般化しやすい)利点があると考えています。
【1つ目の研究発表:MetashapeとrepeatSfMを使った検討】
書誌情報(論文へのリンク付き;対応する講演会はコロナで中止):
この論文で特に注目頂きたい点は次の通りです。
- 表4:キーポイント制限や画像の縮小倍率などの解析設定が、精度に影響しています。
- 表6:解析設定が大事と言っても、その画像セットに最適な解析設定を事前に(検証点で誤差評価する前に)知ることは困難です。また、精度が解析設定次第ならば、特定の解析設定のみで精度を評価しても画像セット自体には優劣をつけられないことになります。そこで、解析設定を数百通りに変えたときに高精度になる確率(研究室内では「打率」と呼ぶ)を評価しています。高打率の撮影方法は、解析設定が最適でなくても高精度が得られやすいという意味で、実務上優れていると考えられます。
- 表6:斜め撮影における傾き(天底角)については5°や10°よりも30°が高打率でした。条件は異なりますがこちらで紹介したCGシミュレーション結果でも15~30°で高精度となったことに符合しています。
- 表3:植生の多い斜め撮影画像を加えることで精度が低下しています。
書誌情報(発表スライドへのリンク付き):
松岡祐仁, 神野有生, 高田 雅也:斜め往復撮影による標定点不要の造成地UAV写真測量手法, 一般社団法人日本建設機械施工協会 (JCMA) 令和2年度建設施工と建設機械シンポジウム, 2020.
1つ目の研究発表と比べ、使用しているソフトウェアが異なる (Pix4Dmapper)ことに加え、
対象領域Ⅱでは天底角の数を増やした新たな現地実験を行っています。
結果として、天底角20 - 40°で高精度を得ている(1つ目の研究発表とも矛盾しない)とともに、
天底角を大きくすることのメリットとデメリットを論じています。
2つの研究発表や上述のCGシミュレーションから、
裸地の斜め往復撮影では、天底角(ピッチ)30°程度で良い精度を得やすいということが、
ある程度の一般性をもって言えるのかもしれません。
最適な撮影方法に関する研究は、現在も続けております。
またこの発表では、
- 撮影位置高精度測位型UAVの実務上の利点
- 鉛直下向き平行撮影の限界と、斜め撮影のメリット
などを、グラフィカルにわかりやすく示していますので、ご参照ください。